天使の詩(TELENET)

 さて今回は天使の詩について書きます。
「天使の詩」・・・・清純そうな名前ですね。いったいどんなゲームだと思いますか?
ビジュアルノベルとか
ギャルゲーとか、はたまた
パソコン特有の女の子の一杯出てくるゲームにも
思えるこのゲームは、なんと
RPG?!
FINAL(しかも全然最後じゃないし)とかQUESTとかやたら格好の良い名前が付くこのジャンルで
「天使」ですか?「詩」ですか?!!
(まぁ、最後で、というか途中でタイトルの由来は解るのですが)

 このゲームはトレビールによると、PC−エンジンである程度の評価を受けて移植されたやつだとか。
実際ゲーム自体はかなり面白かったですし、スーパーファミコンの性能の限界までいった作りになっていたと思います。
要所、要所にはビジュアルシーンが入りエンディングでは更にアニメーションしてました。
スーパーファミコンは以外にやるものです。(歌まで唄ってた物もあったし)

 ではその様な秀作が何故この様なところで紹介されるのでしょうか?
それは良くも悪くも今までの(といってもこの作品自体は1994年に発売された物ですが)
RPGの常識をぶち破った物になっていたからです。
では、これからこの作品を紐解いてみましょう。

 田舎の山奥にある小さな村の鍛冶屋の息子が本作品の主人公レイアードです。
ある日、彼の村に興業団体(サーカスみたいな物)がやってきました。
そのサーカスの歌姫クラーナとレイアードはふとしたことから仲良くなる、というのが出だしです。
 そのうち、次の町に行く日が来てしまい結局そこで別れてしまいました。
レイアード自身は引き留めたかったのですが、彼女のために敢えて今回は何も言わなかったのです。
しかし、次の公演先で彼女は町の権力者である悪徳商人のドラ息子に結婚を要求され、
一座の皆は人質として囚われてしまいました。
それを聞きつけたレイアードは、二人の幼なじみと彼女を救いに行くのでした。

 全く普通のRPGです、ここまでは。
で、町について情報を収集し結婚パレードの時に花嫁を奪いに行きますが、
そこでドラ息子と対決。
最初、悪徳商人の息子と言うくらいだから、
ちび、デブ、はげの三拍子揃ったもてない奴かと思いきや
凄いダンディーなおじさまでした。
これだったら多少性格が悪くてももてるのではないかと思いますが。
というか、最初は味方として登場させる予定ではなかったのかと思ってしまいました。

 結局、花嫁を奪って逃走するレイアード達。
で、残された彼の所に悪魔が出てきて魔族の力を与えてやると、彼は悪魔に姿を変え
奪われた花嫁を取り戻すために世界中に兵を送るのでした。
 一人の女にそこまで惚れ込むことが出来るとは、
何故か
悪者に思うことが出来なくなってしまうのはきっと私の気のせいでしょう。
やはりこいつは、当初の設定では味方だったのではないでしょうか?

 さて、逃げる主人公御一行ですが、幼なじみ二人は逃げる段階ではぐれてしまいます。
それ以降ほとんど出てきませんでした。
RPG史上、これほどないがしろにされた幼なじみも
珍しいのではないでしょうか?

 もっとも、
片田舎の農村に勇者御一行が固まっているという事の方が
むしろ
おかしいと思うので、ある意味正しいと言えば正しいのですけれども。

 

 また、このゲームは町の方々のセリフが非常にシビアです。

「きゃあ、何勝手に人の家に上がり込んでいるの?とっとと出ていって!」

などはまだ序の口。
別の人は、
「あんた勝手に話しかけてくるけど、
世界中全ての人がお友達だとでも思っているのか?
などと、話してくれます。
中途半端にリアルなためにそれまで、結構世界に入り込めていたところで、無理矢理現実に引き戻されてしまいました。
開発で疲れた制作者側の心の叫びではないか
と思ってしまうのは下衆の勘ぐりなのですかね?
でも確かに、
敵を倒して金品強奪では飽きたらず、勝手に人の家に入って
善良な市民のわずかな備蓄を奪う勇者は人としてはどうかと思ってしまいます。

 また、このゲームを語るにあたって忘れてはならないのは戦闘シーンです。
通常の「たたかう」「逃げる」の他に
「交渉」なるものがあります。
ためしに選んでみると「身振り手振り」というのがありました。
必死に狼相手にジェスチャーする主人公。
しかも成功すると、お金をもらえたり、アイテムを買えたり、
友好を結べたり出来ます。
狼に物を恵んでもらって嬉しいのですか?レイアード君。
先に進めていくと、古代語やら精霊語やら覚えていきます。
しかも交渉のレベルまであるあたりが何とも言えない味を醸し出しています。
しかし、侮る無かれ。この交渉のおかげ・・・かどうかは解りませんが、
堕天使ルシフェルまで仲間につける主人公達。
いえ、もう驚きませんよ。ええ、驚きませんとも。
それに交渉で敵から買うしか手に入れる方法がないアイテムなどが結構あったりするので
その手のマニアにもきちんとした対応が出来るゲームに仕上がっています。

 で、結局このゲームの勇者はパーティーの一人である勇者の養子のようでした。

(taka)

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