メイドとお嬢さま

第2話
               

  

「まさか本当にイクなんて。信じられないわ。すごく淫乱なのね」

 頭上から美園の嘲り声がふってくる。

 小百合は、激しい快楽の余韻にひたり、意識に靄がかかったような状態だ。脚をしどけなく開いたまま床にすわり込んでいる。股間の翳りはスカートにおおわれて見えないが、快楽に潤んでトロンとした瞳と幼さの残る顔立ちとは妖しい色香を醸している。そんな少女の姿を見せられては、男は言うに及ばず女ですら淫らな情を催すに違いない。床に放置されたままの小百合の白い下着が格好のアクセントになっている。

「いつまで呆けているつもり。立ちなさい」

 ヒュッと何かが空を裂く音がした。見るといつの間にか美園の手には細くしなやかな鞭が握られていた。

「ひっ……」

 小さく息を飲むと、小百合は足元をふらつかせながらも慌てて立ち上がった。怖くて鞭から目が離せない。

「なかなか可愛いオナニーショーだったわ。褒めてあげる」

 侮蔑を含んだような美園の言葉に小百合はどう反応してよいのかわからない。

「褒めてあげたのよ。お礼くらい言ったらどうなの」

「は……はい。ありがとうございます」

「こんな淫乱娘をメイドにするなんて気が進まないけど、約束だからしかたがないわね。ここに置いてあげるわ」

「あ……ありがとうございます」

「これからは私があなたの主よ。私のことは『お嬢さま』と呼びなさい」

「はい……」

 消え入りそうな声で小百合は返事をした。

「少しでも私に逆らったり、へまをやらかしたりしたら、容赦なくこの鞭で罰を与えるからね」

 抜群のスタイルと輝くばかりの美貌、そして支配者然とした美園は、まさに女主人にふさわしい。

「は……はい。気をつけます」

 幼い顔立ちで胸のふくらみに乏しい小百合は、さしずめ女主の引き立て役がお似合いだ。

「いいわ。じゃあさっそくメイドとして躾てあげる。家事は少しはこなせるようだけど、それだけではメイドは失格よ。メイドとしての礼儀作法をみっちりと仕込んであげるからね」

 ソファーに深く腰をかけつつ、美園は鞭を弄んでいる。

「まずは服装を整えなくてはね。制服を貸してあげるから服を脱ぎなさい。この場で」

「は……い」

 制服と言われた時から悪い予感はしていた。また辱められそうな予感が。小百合は、美園の手にある鞭にちらりと目をやると、上着にのろのろと手をかけた。

「待ちなさい。メイドが人前で服を脱ぐときは下半身から脱ぐのが決まりよ。その方が、女の園をさらしている時間が長くて見る人を楽しませられるし、見た目も淫らで美しいわ」

 一瞬、許しを乞うように美園を見たが、女主人の頬に浮かんだ冷酷な笑みに全てを諦めた。スカートを脱ぐ。面接の際に下着を脱がされていたので、小百合の下腹部が剥き出しになる。

 悦びを極めて間もない女の唇は、じっとりと濡れている。そんな淫らではしたない姿をさらしているかと思うと、小百合は思わず手で秘唇を隠した。

「ほら、見えないでしょ。隠している暇があったら、さっさと裸になりなさい」

美園は鞭の先端で小百合の手の甲を突いた。
「ひっ……」

 小百合は、弾かれたように手をどける。そして下半身裸のまま、女主人の見る前で上着を脱いでゆく。そうしている間中、下半身の中心に女主人の視線を感じ、小百合は恥ずかしさに責め苛まれる。

 気休め程度に身につけていたAカップのブラジャーを外すと、もはや少女の身体を覆っているのは足元の白いソックスだけだ。

「靴下も脱ぎなさい。私物を身につけることは一切許さないわ。知ってるかしら。マリーアントワネットがフランスに嫁ぐとき、フランスの国境で、身につけていたオーストリア製の物を全て剥ぎ取られて、フランス製品を身につけさせられたんですって。心の底からフランス人になりきるように。下着はもちろん、ヘアピンまで。さぞや屈辱的だったでしょうね。フランス人の侍女に裸に剥かれたんだから」

 靴下まで脱いだ小百合は、何も身にまとわぬ裸身のまま美園の前に立たされた。胸と股間とを手で隠したくて仕方がないのだが、そうすればどんな目にあうかわからないので気をつけの姿勢でいる。

「股間や胸に手をやったら、この鞭で打つからね」

 そう釘を刺しておいてから美園はじっくりと小百合の裸身を眺めまわす。可愛らしい顔。わずかにしかふくらんでいない胸。そして下腹部の翳り、その下に透けて見える女唇。

「胸はないのね」

 小百合の小さな胸の頂にある蕾を、美園は鞭の先でつついた。
「ひうっ……」

 思わず小百合は身を強ばらせた。最も気にしていることをあからさまに指摘され、苦いものがこみ上げてくる。身体の中で一番自信がないのが胸だった。肌の色、乳房の形には多少の自信はあったが、なにしろ小さすぎる。

「でも他はまあまあよ。特にアソコは……」

 鞭の先端が小百合の女唇を撫でる。しかし小百合は、どんなに侮蔑的な扱いを受けようとも、同性の前に陰毛をさらしたまま気をつけの姿勢でいなければならなかった。

「アソコはとっても可愛らしいわよ」

「あ……ありがとうございます」

 おもねるような返事をしてしまう自分に、小百合は多少の自己嫌悪を感じる。

「後ろを向きなさい」

「はい……」

 胸と股間とを美園の視線から遮ることができるので、小百合は急いで背中を向けた。何物をも身にまとっていない小百合の後ろ姿が美園の前にさらされる。

「いいお尻。胸に比べてお尻には人並みに肉はついているようね。お仕置きのし甲斐がありそうだわ」

白くむっちりとした小百合の尻。その尻肉の合わせ目を、美園は鞭の先でなぞり上げる。

「ひゃっ……」

 思わぬ感触に小百合は尻をすぼめた。腰がわずかに逃げる。

「こら、しっかりと立っていなさい。お尻の品定めをしている最中なんだから」

「は……い……」

 自分の身体を品物のように言われ、あらためて屈辱感を味わわされる。確かに小百合の身体は美園のものも同然だし、小百合の身体の秘密の部分はほとんど美園によって暴かれてしまっていた。

「ふふふ……このお尻に鞭で縞模様を刻んだら、さぞや綺麗でしょうね」

 双臀の合わせ目を鞭で撫でつつ美園はつぶやく。その口調には、冗談めいた響きなど微塵もない。

「そんな……どうかそんな酷いことはしないでください……お嬢さまのために努力いたしますから……」

「精々そうなさい。私はあなたのお尻を打ちたくってウズウズしているんだから。こっちを向いていいわよ」

 女主人の前に、小百合は再び股間の恥部をさらさせられた。

「だいたいサイズはわかったわ。制服は寝室に置いてあるわ。ついていらっしゃい」

 美園はそう言って席を立った。

 小百合は、裸のまま女主人の後に従った。何も身につけずに女の恥ずかしい所を全てさらしている心細さははなはだしい。前をゆく美園が服を着ていることに、自分が裸であるということを嫌と言うほど実感させられる。

 寝室に着いた。それほど広くは感じないのは、大きなベッドとクローゼットが置かれているからだろうか。美園はクローゼットからメイド服らしきものを選んで吟味している。

 やっと服を着させてもらえる、と思ったのも束の間……

「制服を着る前にこれを読みなさい」

 一枚の紙を渡された。高価そうな紙に美しい文字で文章が綴られている。そこに書いてある文章、あまりに屈辱的な文言は、まだ十七歳の少女を打ちのめすには十分だった。

「こ……これは……」

「メイドの契約書よ。声に出して読みなさい。服を着るのはそれからよ」

「で……でもこんなのって……」

「これはあなたがメイドになるための儀式なのよ。これしきのことができないようでは、さっそく鞭を味わうことになるわよ」

 小百合は目の前の女主人に目をやった。美園は悠然とベッドに腰かけ、鞭を弄んでいる。かすれたような声で小百合は、屈辱的な文章を音読し始めた。

「……若草小百合は、南条美園様にメイドとしてお仕えすることを誓います。若草小百合は、南条美園様が命ずる一切の命令に服従することを誓います。若草小百合は、南条美園様が気まぐれに罰を与えても……甘んじて受けることを誓います……」

 メイドの契約書というよりはむしろ奴隷の宣誓書だ。小百合はそれを、自ら読み上げねばならない。しかも裸のままで。目の前の美園が当たり前に服を着ているということが、小百合の惨めさをいっそう引き立てている。美園が美しい服を着ているのに、小百合は少女として恥ずかしい場所を手で覆うことも許されない。

 そしてさらに、この契約書には続きがある。辱められ貶められ、それらに少しは慣れたかに見える小百合ですら、読むのを躊躇うような内容の続きが。

「どうしたの。早く読んで」

 鞭の先端が、小百合の恥部を突く。

「ひうっ……」

 まばらな下草は、悪戯な鞭の先端から敏感な箇所を守ってはくれない。女の柔らかな器官に堅い鞭の先を感じ、小百合は手でそれを払いのける誘惑に駆られた。しかしそんなことをすれば主からどんな不興を買うかを思うとそれはできない。秘唇に鞭を意識させられながら小百合は先を続けた。

「若草小百合は、南条美園様の……性の玩具として……」

「それから?」

 鞭で性器をいじられ、小百合の脚がふるふると震える。肉の合わせ目を、鞭の先が上下する毎に腰がもじもじと揺れる。

「舌、女性器はもとより……身体のあらゆる器官を使って……美園様の快楽のためにご奉仕することを誓います……どうか末永く小百合を可愛がってくださいませ……」

 つっかえ、途切れながら、小百合はメイドの契約書を読み終えた。しかしそれは契約書とはいいながら、小百合にとってあまりにも屈辱的で淫らな内容が謳われている。また、その一方的な内容もさることながら、自分が素っ裸であるということに、胸も少女の肉割れもさらけ出していることに、小百合は己のこれからの身分を思い知らされる。

「よく読めたわね。いい娘よ。服を着ていいわよ」

 美園が用意した服は、紺のワンピースと白のエプロンであった。誰もがイメージするメイド服であるが、実物を目にするのは初めてだ。

 小百合は下着を探してみたが、キャミソールしかない。とりあえずキャミソールを身につけ、ワンピースとエプロンを着る。メイド小百合の誕生だ。

「似合うじゃない。そこの鏡を見てご覧なさい」

 姿見に映し出されるメイド姿の小百合。

 濃紺のワンピースと白いエプロンとのコントラストが美しい。スカート丈は太腿の中ほどまでしかなく、ともすると中が覗けてしまいそうだ。エプロンはピナフォアと呼ばれる胸まであるタイプだ。スカート丈に合わせて下は短い。レースの装飾が施され、実用よりも見た目が優先されている。

 制服を着るということは自由の一部を放棄させられることであり、望むと望まざるとにかかわらず役割が与えられることである。それはある種の拘束を連想させ、それゆえに制服を身にまとった女性は男の目を惹きつける。

 女主の見る前で全ての衣服を脱がされ、裸のまま屈辱的なメイド契約書を読まされる。そしてメイドの制服を与えられる。この一連の儀式にも似た行為を経る内に、いつの間にか小百合の心はメイドという職業に違和感を覚えなくなっていた。つまり馴らされたというか、メイドに染められたのだ。

「ありがとうございます……でも……お嬢さま……」

 小百合は言いよどむ。

「何?」

「あ……あの、下着が無いんですけれど……私の下着を取ってきてもいいでしょうか……」

「『いいでしょうか』じゃなくて『よろしうございましょうか』よ。それはそれとして……下着を取ってきていいかですって。駄目に決まっているでしょ」

 美園はベッドから立ち上がると、一歩小百合に歩み寄った。後ずさる小百合。美園は左手で小百合のスカートの裾を掴み、有無を言わさずにまくり上げる。

「ひぁっ……」

ただでさえ短い制服の裾はいとも簡単にまくれ、下着をつけていない小百合の下腹部があらわになる。

「メイドはショーツを穿いてはいけないの。主人に対して何も隠していないことを示すためよ。あるいは、メイドの身分をわきまえさせるためにね」

小百合はスカートの裾をおさえたかったが、それはしてはいけないことのように思えた。手のやり場に困り、自らの胸をかき抱いて、股間をあからさまにされるという恥辱を堪える。

「もっと厳しい家だと、メイドは陰毛を生やすことすら許されないのよ」

 美園の右手が、小百合の柔毛をさらりと撫でる。小百合の太腿がヒクンッとふるえた。

「常にオマンコをつるつるに剃っておかないと、お仕置きをされるの。私は慈悲深いからそこまでさせはしないけど、下着を穿くなんてもっての外よ。」

ピッと陰毛を引っぱられた。小さな、しかし鋭い痛みに小百合は顔を歪める。剥き出しになった小百合の秘唇を弄びながら、美園はメイドの実態を説き続ける。

「パンティを穿くことを許している家もあるようだけど、それでもメイド自身が選んだのなんて穿けないわ。全部ご主人様が選ぶのよ。もちろんご主人様に言われれば、いつでもどこでもスカートをまくって、下着を見て頂くの。下着を脱いで、オマンコを見せるように要求されることも珍しくはないわ」

 信じられないくらいに淫らなメイドの勤務実態を聞かされ、そして美園の指使いに翻弄され、小百合の花弁は蜜を滲ませ始めていた。

「んぅ……あぁ……お嬢さま……お許しください……」

 消え入りそうな声で小百合は哀願するが、美園の指の蠢きはますます淫らになる。

「ああっ……んぁ……くぅ……」

 脚と脚との間から湧き上がってくる快楽に、小百合は喘ぎを抑えることができない。それを女主人に聞かれまいと懸命に唇を結ぶ。しかし、上の唇からは艶めいた吐息が、舌の唇からはピチャピチャという濡れ音が、互いに響き合って淫らなハーモニーを奏でる。

「どうしたの、小百合。人の話はちゃんと集中して聞きなさい」

 懲罰を与えるとでもいうように、美園は、紅く芽吹いた小百合の肉芽を摘みひねった。

「んあぁっ」

 幼さの残る小百合の身体がビクンと跳ねる。あらわにされ、指で悪戯されている可愛い秘唇からは、蜜がぽたぽたと垂れ落ちている。脚はがくがくとして覚束ない。小百合の身体は、果てる一歩手前まで追いつめられていた。

「所詮、メイドの下着なんて物は、ご主人様の目を楽しませるための飾りでしかないの。まあ、たとえどんなにエッチな下着でも、言われればすぐに脱いでオマンコをあらわにしなければならないにしても、下着を穿けるだけましかもね。小百合も、一生懸命に奉仕すれば下着をあげないこともないから、頑張りなさい」

 小百合が昇りつめる少し手前で、またも美園は指を引いた。お預けを食らった小百合の女性器は、欲望を満たせないままヒクヒクと蠢いている。

「はい……お嬢さま……」

 身も心もとろかされ、小百合はもう半分以上は美園の手に堕ちていた。

 しかし、残った日常感覚は、下着を穿かないという破廉恥な行為を受け入れようとはしない。まして、こんな短いスカートを穿いているのだ。何かの拍子に腰の周りの布が中を舞えば、小百合の最も秘密の器官はいとも簡単に人目にさらされてしまう。

「で……でも……こんなの恥ずかし過ぎます。どうかお願いです。下着を穿かせてください……」

 一縷の望みをかけた小百合の哀願に、美園は笑みを浮かべた。冷酷な笑みを。

「そう。私がこれだけ説明してもわからないのね。仕方がないわね。あなたにはお仕置きを受ける作法から教え込む必要があるわね」

鞭を手に、美園はベッドから腰を上げた。

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