銀幕に俺たちがいた138

 父一人、娘一人の家族です。父は工場でプレス機の試作品の開発担当主任をやっている。娘は高校生。ゴミ置き場で見つけた大きなチェロを大事そうに宝のようにしてチェロの勉強をしている。どこにでもいる普通の親子だ。母は病気で他界したらしい。そうそう、うちにもいるが、金魚が3匹その父娘の野波家にも工場にも添えてあるのが意味深といえば言えなくもないです。ある日、黒塗りの乗用車が何台も工場へ押し寄せてきた。一人の社員が「倒産かも知れない」に、野並(小林薫)は「そんなばかな」と言って社長室へすっ飛んだ。社長(宝田明)は頭を下げるばかりで拉致があかない。社員は「寝耳に水」「注文はまだまだ来ているのにどういうことだ?説明しろ」俺だったらどうするだろう。組合というものがこの会社にはないのだろうか?組合もない社員たちに何ができるだろうか?と考えた時、何もない、としか言いようがない。
しかし、彼ら社員はあきらめない。主任の野波は「俺たちは物をつくる技術屋だから何が出来る?」と、はなからあきらめている。
 娘の加奈(佐藤千亜妃)は父に「父さんは工場を取られて平気なの?皆と一緒に工場を再建したいんでしょ。加奈は死んだ母さんから頼まれているの。父さんが困ったときは助けてあげなさい、と言われているの。わたしは絶対あきらめない。一番大切なもののためだったら絶対あきらめない。父さんは工場が一番なんでしょ?父さん」加奈は音大目指して拾ってきたチェロで市民グループに参加してがんばっている。
 工場に居座るぐらいな覚悟で社員は残っている受注分を仕上げている。弁護士からの要請で一社、一社、不足分を水に流してもらえるように頭を下げて回っている。しかしながらそんなにあまいもんじゃない。実際は責任者の自殺まで出てしまうのが普通です。とにかく社員は粘り強く一つ一つがんばった、が社長はあっさり工場を売りに出してしまった。差し押さえである。万事窮す。神も仏もねえ。たった4ヶ月分の退職金をもらって、これからどうしろと言うのか。職安にいっても50を超えたおっさんは使いもんになんねえし、子供はまだ小さいし、食い扶持をどうやって?「死ね」というのか?
 加奈は市民グループに頼んで光を失った工場でコンサートをして、父さんを皆を勇気付けたい、と本当に工場に乗り込んで演奏会を開く。感激し、涙するもの、工場にクラシックの音色が響き渡る。父は娘の行動に勇気付けられ一人でまた再建の道を求めて慣れない会社訪問に出かけて行く。運よく知人の計らいで工場をその会社に買い取ってもらい、利益が上がって軌道に乗れば、何時の日か工場を自分の下に買い取って新しく工場を創っていける。知人がいみじくも言っていた。「あんたらの技術をたよりにしている人がたくさんいるのを忘れないでよ」
社会に貢献している会社はたとえ倒産しても立ち上がる意識が社員全員にあれば助けてくれる船も見つけられる、てな、あまちゃんみたいなこと、だがわたしは信じたい。何のために働いているんだ。家族のため、は社会のためでもあるはずだし、それを上層部の怠慢で倒産されたら俺たちは一体何を?なかなか、こういう話の映画に出会えないため、今回あえて、BSドラマなれど掲載しました。これを機に骨太の労働者のドラマがあれば書き込んでいきますので、どうかお付き合い願います。
 2005年11月30日放送 NHK名古屋放送局製作。出演者は他に、弁護士役で段田安則、知人役で寺田 農、チェロ奏者として山本学、ほかです。 演出は西谷真一。

               2006年11月17日      マジンガーXYZ

『父に奏でるメロディー』

NHKBSドラマ