新・銀幕に俺たちがいた147

『大安に仏滅?』

 「銀幕に俺たちがいた77」で書いた「お日柄もよくご愁傷さま」(1996年)の続編、というよりPARTUとでもしたい和泉聖治監督の同スタッフによる和泉組ホームコメディとでも言いたい映画です。物語は青森からおじいさん(松村達雄)が息子の西岡哲夫(橋爪功)のところに同居するために町の人と惜別する場面から始まります。
一戸建てマイホームを建てた53歳のサラリーマンの家族を描いていて、現在のわたしと同い年ゆえに興味を持って見た。今回の題材は「欠陥住宅に悩むサラリーマン一家」。この映画が製作されたのが1998年、だから、もう9年前になる。欠陥住宅、欠陥マンションは最早社会的事件としてお昼のワイドショーでも散々流されている、人ごとではない問題になっている。一般社会においての重大な欠陥住宅を掘り下げて描くという視点に力点をかける、ということは避けてあくまでもそれはひとつの家族におきた問題のひとつという家庭問題というところに抑えて、重くならないように、重くならないように、という感じでスタッフたちはあくまでも西岡家の家庭問題を見せていく、日記風、というかアルバムの一ページ一ページをめくっていくような感じで描いていく。
 欠陥住宅の中で娘(酒井美紀)の婚約問題を結びつけ、長男(金子賢)は既成のサラリーマンを嫌ってお笑い芸人を目指していくなかで、焼肉屋をやっている年上の子持ちの女性(斎藤陽子)と結婚することを勝手に決めて、「出ていけ」と喧嘩してしまう。しかし、相手の女性に逢ってみると「彼のコントは下手です。でも、人を笑わすことが好きなんでしょうね。分かってます。分別はもっているつもりです。私は結婚しません。ただ一度彼のコントを見に行ってあげてください」欠陥住宅を笑いのネタにしてお客さんを笑わせている生き様に寂しさと、そして息子を理解している女性を見つけたことにある種の安堵感を持って長男を見直す父親像が描かれ、女房(吉行和子)は欠陥住宅を扱うテレビ取材を受けてテレビに欠陥住宅に悩む主婦として出演したり、同じ悩みを持ったサラリーマンと酒を飲んで欠陥住宅に交換放火して保険金で新築し直そうといった危険な相談をしたり、おじいちゃんが息子のマイホームの資金のため売り払った青森の古い家を恋しがって、ボケが嵩じて青森へ行ったと勘違いするも、長男とすぐに新幹線で旅立った父の姿はすごく心に染みました。そのあと、おじいちゃんが無事に帰宅したことを知って、長男とぶらんこに乗って語り合うシーンも望遠を使うなどしてしんみりさせる。父「俺たちは親から人には笑われないようにと言われて育ってきたが、お前は人に笑われてうれしがっている」長男「笑わせているんだ」父「あんないい人を裏切ったらバチあたるぞ」長男「今度は正式に紹介するよ」
 長女の結婚式の最中、家の近所で火事が起こった。駆けつけ喚き散らして火の粉が舞う我が家を必死でホースで水をかけて守りきった「欠陥住宅」。欠陥でも家はわが城には変わりない。「欠陥住宅」へ力点を注がず、映画は壊れかけた「自分の何か」を「自分の責任」において「守るべきもの」は「やれるとこまで守らなくては」というメッセージを込めて描いたのかも知れません。だから何となく暖かい気持ちにさせてくれるのかも知れません。ラスト、矢野顕子の飛んでる主題歌「Home,Sweet Home」を聞きながら家庭菜園を創っている土まみれの夫婦の姿でフェイドアウトの意味するところはなんだろう?
 和泉組でまたPARTVを創っていただきたい。

                                 2007年4月       マジンガーXYZ