新・銀幕に俺たちがいた149

『おしん』

 1983年NHKテレビで放送された朝の連続ドラマ「おしん」の297回のうちの少女編(1回から36回)までのドラマをアニメ化したのが映画「おしん」です。台詞、声、物語、すべてNHKテレビと同じです。主題曲までそのままなんだからまさにテレビ(少女編)の完全編集版が映画「おしん」です。少女編だけを完全アニメ化したのは何故か、という疑問はだれしも持ってしまいますがこれは世の子供たちに教育アニメとして或いは教材としての使用目的が大人側にあったのは想像できます。何故なら、このサンリオ映画シリーズはレンタル禁止になっているからです。サンリオシリーズとは「シリウスの伝説」「星のオルフェス」「くるみわり人形」「キタキツネ物語」とか「ハローキティーのしらゆきひめ」を筆頭にいろいろな世界の名作の主人公をハロー・キティーちゃんが演じる数々のアニメ映画のことです。
 あまりにも世界的にも知れ渡った名作「おしん」を今さらあらすじを書いたってつまらないかも知れませんが許してください。
 物語は今では○○ストアーの会長のような立場にいる「おしんばあさん」(乙羽信子)が孫を連れて少女時代からのルーツを探して旅する間の思い出話という方法で展開していく。岩手の雪深い村に生まれたおしん(小林綾子)は子沢山の5反百姓の小作人の作造(伊藤四朗)とおふじ(泉ピン子)の娘としてこの世に生を受けた。貧乏生活が描かれていく。貧乏でも貧乏なりに家族みんなが生きていくだけの収入があれば何も問題ないのだが、そんな夢物語はなかったんだ、おしんばあさんは孫に語ることで見るものに叫んでいたのでしょう。
「だいこんめし」というのが良く出て来る。だいこんをちいさくちいさくきざんでかまのなかでごはんを炊くようにしてつくる。石川啄木の世界でもある。働けど働けどーーーーです。とどのつまり「くちべらし」と言って子供を年季奉公に出して家計を助ける。子供を何人も何人も産めばそこは繁盛するとは何人も何人も奉公に出せるからその家は楽になる、ということです。ドレイそのものが当時の、つまりは明治の世の中であった。おしんは家のために数えで7歳の時から徹底的にいじめられながらも辛抱辛抱で奉公先の女中頭からたたき上げられていく。そしておしんにも限界がある。7歳の子供。ここで思った。世界に目を向ければ戦争孤児で路上生活をしながら同様の仲間たちと組織を作って生き延びていき、その先がどんな世界が待っているかは知る由もないが不幸な事態も多々あるのでしょう。おしんは、今で言う、辛抱辛抱に<きれて>すべてを投げ捨て母親に逢いに行く。子は親を慕い、親は子を慕う。しかし、どこもかしこも雪の世界ではのたれ死ぬことは必死です。救い主がここで登場する。テレビでは中村雅俊が演じた俊作にいちゃんである。彼は人を殺すことに疑問を感じ犯罪である逃亡して山の中に篭って生活していた。おしんはその恩人を目の前で兵隊に殺されるところを見てしまう。7歳で戦争の悲劇に遭遇してしまう。あんちゃんには読み、書き、算数を教えてもらった。そして再出発の酒田の米問屋での奉公は彼女の人生を決めてしまうほどの出会いがあった。大おかみのくに(長岡輝子)にそろばんを教えてもらう。行儀、作法、手習い一切を仕込んでもらうようになっていく。

 製作は辻信太郎。原作、脚本は橋田寿賀子。監督は山本暎一。

                        2007年5月         マジンガーXYZ

「一生働いて50銭しかのこらねえなんて
おらはいやだ。ばっちゃんみていにはな
りたくねえ。小作にだけはおらはならねえ。」

「あの戦争を知ってるもんは
もうあなたとわたしだけに
なってしまった。」