新・銀幕に俺たちがいた163

『プラダを着た悪魔』

 2006年製作のアメリカ映画。キャリアウーマンのサクセスストーリー。女性に歓迎される映画はヒット間違いなし、という計算された商業映画の見本のような映画です。しかもこの映画の一人の主演がメリル・ストリープとくれば何をか謂わんやです。舞台はファッション誌を扱う業界NO1の会社で、主人公はその会社に新人アシスタントとして入ってきた一人の女性の物語です。アメリカの今の姿が見えてくるかも知れない、といった軽い感じで見ましたが、かなり面白く見れた。努力だけではどうにも出来ないことはどの世界にもあることがわかる。新人の主人公を演じるのはアン・ハサウエイという初めて見る女優です。その彼女がこの業界に足を踏み入れた時は普通の格好で、回りから「異人」として蔑視され笑われながらも「ゴーイングマイウエイ」の若さと体力では何にも負けない、という感じで「恐れを知らない」ヤングウーマンで突っ走っていく。そして、挫折という当たり前の話になり、それを乗り越えて栄光を掴んでいく、という話の筋が見え見えの「ど根性映画」だと思いました。ところが、というか、やっぱりというか、主人公はNO1のこの会社はステップのための一時的な働き場所で、本当の目標の勤め先は別にある、というところなんかはわたしのような年配には「いまどきの働きマンはそうなんだ」といった感じでした。とにかく、映画的に面白く見れるのはアンが努力だけではどうにもならない、ファッション業界で、「人に見られる格好」に変身して、回りを驚かしていくところが、女優だから当たり前に抜群のプロポーションと最高のファッションセンスを備えているNO1の素質をフルに見せ付ける映画的な目くるめく彼女のファッション映像集は日本映画では味わえない煌びやかな写真集でした。
この作品は2003年、アメリカの20代の新人女性作家の本を原作にしたもので世界27カ国語に翻訳されている大ベストセラーの映画化らしいけど、作家の実体験が元になっていることからして世界に通用する世界の女性がこの地球を動かしている、と何を言っているのか分からない表現になってしまいそうな、想像を超えた世界のトップの女性たちが今、駆け巡っている。1980年代の証券会社で働く「ワーキング・ガール」のシガニー・ウエーバーとメラニー・グリフィスから20年を経ての「プラダを着た悪魔」のメラニーとアンの上司と部下の関係を考察してみるだけでも得るものは深いと思います。
                        2007年11月       マジンガーXYZ