新・銀幕に俺たちがいた166

『キンキーブーツ』

 2005年製作のアメリカ映画だが、舞台はイギリスのノーサンプトンという田舎町である。主人公は靴工場の跡取り息子チャーリー(ジョエル・エドガートン)である。だけど、彼はべつに工場を継ごうなど夢にも考えていない今時の青年である。彼には婚約者がいて彼女がロンドンへ転勤することになりチョー度いい機会だと思い、跡取りという責任から逃れられるのを喜んで新しい新婚生活のためのロンドンで手に入れた家で二人ハシャいでいた。現実はそんなに甘くない、の言葉どおり父親の訃報が届いて急遽葬式をすませ、会社従業員の前で父の靴工場を継ぐ宣言をする。継いだはいいものの工場の内情は火の車であったことが分かってしまう。おかしいことに注文が来ないのにどんどん靴を製造しているではないか?調べると、倉庫に売れない箱詰めの製品が山積みされている。父親のつてをあたって売れない靴をほんの少し引き取ってもらえることになるも足元をみられてどうにも今の経営を立て直すどころか倒産寸前の現状を逃れれるためにはまず人員削減しかない、というこで何人かの従業員と面接しながら首を切っていく。この場面は結構あっけらかんとした描写で日本映画では殴り合いとかとげとげしいうらみつらみのはき捨て言葉から殺し文句がとびかうのが通常ですが、その辺はイギリスと言えば紳士の国だからいいたいことだけは言って泣き言もあるがさっぱりと退散していく面接シーンは現在の世界の労働者に響く共通な問題ではある。その面接でひとりの女性従業員が「他の靴への転換をしてみたら?その言葉からロンドンでの出来事を思い出し、おかまが履いていたブーツを思い出した。おかまである彼女は「履いているブーツは女性用だから弱くてすぐに壊れてしまうの」とか何とか言っていたのを思い出し、急遽、首切りする予定の従業員を臨時顧問に任命してロンドンへ行き、おかまの彼女ローラの店に行くことにする。そして男の足でも壊れない強くて華麗な「セクシーブーツ」「キンキーブーツ」を製作することになる。試作品にがっかりするローラをチャーリーは専属デザイナーとして工場へ来てくれるように頼む。おかまが工場に入ってくると、当然のようにローラを見る従業員の目はめずらしいものを見る目で工場は異様な雰囲気が立ち込める。ローラにとってはチャーリーだけが心を許される相手となる。そうは言っても仕事は仕事だから、従業員はチャーリーから命令されたとおりのおかまのでっかいブーツを作っていく。ローラは出来た製品を見て悪いところをデザインし直したり、従業員を手伝ったり、ときにはみんなを和ましたり、次第に溶け込んでいく。そんな中で次第に変に見ないで語り合う人、笑いあう人がローラを勇気づけていく。一人の老職人が踵に長めの金属を埋め込めば方崩れしない、ということを教えて、直ちに改善作をつくってみると、それはローラが夢にまでみた最高のドラッグクイーンのセクシーブーツであった。
 改善された靴にはチャーリーだけは不満があった。従業員へ細心の技術を要求していく。何度も何度も改善の要求に従業員はさじを投げて「あんたがやれば」と言って出て行く。ローラになじめない男性従業員もいた。ローラはローラで誰もいない布切れがたまった倉庫の片隅でさびしくデザインのアイデアに模索していた。最初はドラッグクイーンの女装の格好で工場に登場したが、今では女装のない普段の男性の格好で工場に来るが、いまいちうまくかない。ついに腕相撲大会で偏見で見る男性と勝負する。ローラが勝てるところまで来て、何故か偏見男に勝ちをゆずってしまう。「何故勝たしてくれた?」「おかまに負けたらこの工場でいられなくなるでしょ」工場の中で酒を酌み交わすふたりに偏見の文字は拭き飛んでいた。ローラは初めて心を許して工場のみんなと唄い踊る。チャーリーはその様子を社長室から見ている。ローラは彼を下から見ている。ロとーラ踊っているのはチャーリーに新しい靴をつくるように面接でいってくれ、ロンドンへ着いてもらったり、ブーツの第一回の試作品をチャーリー自ら製作したときに人形として何日も協力してくれた同志がいつか婚約者よりも大事な人になっていた、その彼女だったから気になっていたのだ。ローラではなく彼女に気になっていた。一方ローラはチャーリーを好きになっていた。ミラノ見本市でのキンキーブーツのお披露目を控えてのレストランでの待ち合わせにローラはドラッグクイーンの姿で登場し彼に自分の華麗な姿をみてもらいたかった。しかし、チャーリーは「そんな格好で来るな。みんなに見られるじゃないか」と一括される。泣いて帰るローラはミラノには来ない。せまってくる見本市の会場には多くの来賓客。ついにチャーリーが自分でブーツを身に着けて登場する。最高のサスペンスフルに満ちた静寂と緊張とそして笑い。人生には試練はつきものです。やってだめなら仕方ないです。そうはいかないのがフィクションの世界、ではあるけど、この映画はある程度は脚色されてるだろうが、事実からなる映画ということです。最後にローラが颯爽と登場してブーツを履いてのミュージカルショータイムは最高の締めくくりでした。主演はこのドラッグクイーンローラを演じたキゥエテル・イジョフォーといっても過言ではないです。調べると、第64回ゴールデングローブ賞主演男優賞にノミネートされます。イギリスを舞台にした映画には労働者が何とか頑張っている風景が染み込んでいる。その絵はまるで労働者たちがいろいろな技術で真っ白なキャンパスに魂を塗りこんでいるような感覚を覚えます。

                         2007年12月            マジンガーXYZ