新・銀幕に俺たちがいた174ー@

『なつのひかり(テレビドラマ)』

 この作品は2003年に放送された日本テレビドラマです。日本テレビシナリオ登竜門2003大賞受賞の作品でもあります。舞台はある町工場です。経営難で金策に翻弄している経理担当の冬柴と現場で新製品を創作する木田社長は経営のことでいつも喧嘩している。冬柴の家族である女房と一人娘、それに年配者と青年の二人の従業員がいる家族のような工場で借金を苦に生命保険で工場を守ろうと冬柴は自殺してしまう。「夫を返して。人殺し」と社長に泣き叫ぶ女房。しかし、自殺の現場を見た娘は泣くことを忘れたように声を失ってしまう。工場をどうするのか?町工場といっても、順調に業績を伸ばして、第一上場に名前を載せる工場もあれば、取引先のコスト削減のため単価を半分以下に下げられて事実上倒産という町工場の現状をテレビドラマ化してくれたことはそれだけで意義深い作品と思います。なかなか、映画では描かれなくなった分野だし、興行的には儲からないお話だから仕方がないけど、せめてテレビではこういう作品を放映して欲しい。ということで貴重な「なつのひかり」の採録をします。

 登場人物  一人娘・冬柴宏美(相武紗季)、従業員の青年・北原哲夫(内田朝陽)、従業員の年配・坂下清次(山崎満)、木田社長(大杉蓮)、冬柴雄一郎(モロ師岡)、雄一郎の女房洋子(高橋ひとみ)、宏美の高校生友人篤子(サエコ)
 
 町工場の中を自転車に乗った高校生の宏美が自宅の工場目指してペダルを漕いでいる。町工場が連なるなかにはシャッターを降ろして(貸工場)の張り紙を貼ったところがある。雄一郎がプレス工場から出て来る。落ちていたチラシを見ている。そこには(お金貸します。100万円迄即時ご融資OK)と書いてある。
 宏美「ただいま」工場に帰ってくる。 哲夫「おう」清次「おかえり」 木田社長「おかえり」 母洋子も笑顔でうなずく。 冬柴洋子「無理を承知でそこをなんとか今までと同じ値段でお願い出来ませんか?3分の1では」 営業マン「10年も前に開発された部品なんですよ。当時40円でも今20円しない。私どもメーカーとしても価格を下げていただくのが当然のことなんです」 木田「てめえ、誰に向かってもの言ってんだ」 営業マンの胸倉をつかむ。 営業マン「ちょっと何するんですか」 木田「おい、おい、」 哲夫「社長、社長」 木田「あの部品 最初に作ったのは俺なんだよ。俺が決めた値段で売って何が悪いんだよ」  営業マン「今じゃ、どこの工場でも作れるんです。中国じゃ2割の値段で済むんです」 木田「なら中国 行っちまえ。取引中止だ」洋子「社長!」 営業マン「いいんですか?うちはお宅の売り上げの6割を担っているはずですよ」 木田「俺んとこの心配するより、自分とこの心配するんだな」 営業マン「失礼します」洋子「待ってください。お願いします」 木田「二度と来るな」 ネジをじっと見ている。  木田「仕事しろよ。おら!」  哲夫「あちい!」2階の自分の部屋に上がって、戸を開ける哲夫。入ると宏美がいる。哲夫「おーい!おーい! 宏美「寝てしまった?」 哲夫「部屋 間違ってんじゃねえよ バカ お前の部屋 あっち なあ」 宏美「てゆうか あんたの布団 油の匂いすんだもん つい眠くなんじゃ ん」 哲夫「油臭さに安心してんじゃねえよ バカ」  宏美「そのバカと結構仲良しなのは誰?」 哲夫「何だよ 俺 こんな事してる暇ないの」 宏美 工場のこと?大変なのはいつものことだよ」  哲夫「慣れてんじゃねえよ」  宏美「動じないって言ってよ」 哲夫「お前なあ」  宏美「哲夫なんか嫌いだよ」 宏美が哲夫の唇の皮をはぐ 哲夫「イッテえ!お前 何すんだよ」 いきなり宏美が哲夫の唇にキスする。  宏美「嫌いだよ」  哲夫「お前は嫌いなヤツとキスすんのか」  宏美「これはキスではありません」  哲夫「そうですか」 携帯の着信音がする  宏美「あ、彼氏だ」  哲夫「じゃ、彼氏んとこ行けよ なあ」  宏美が哲夫唇を噛む。 哲夫「なんなんだよ。痛いんだって だから もう お前 何しに来たんだよ」  宏美「今日 授業で 耳輪作ったんだもん」 哲夫「あ そう」  宏美「哲夫にどうかなって思って」耳輪を哲夫に投げて部屋から出て行く。  哲夫「耳輪って言うなよ」




                                                        つづく