燃料気化爆弾の話(現実が空想科学を超えて)

 最近、いいかげんたまってきた新聞(約3年分)を読み始める。時折、このように発作的に1ヶ月程で、半年分ぐらいの新聞を読むのだが、その期間が少々、長すぎた。
 本当は最新情報として読むべき新聞なのだが、このようにして読んだ場合、それはそれでいろいろと分かる事があるので面白い。何といっても、人類の歴史は「毎日」という切り取られた日々の営みが刻んでいるのだが、長い目で見ると、その「営み」は、「毎日」のそれが連続し、過去の因果関係が現在の「毎日」に対してどのような影響を与えたのかを知る事ができるからである。

 例えば「炭そ菌」騒ぎであたふたし、その犯人は「アルカイダ」だか「タリバン」だかと騒がれ出す数ヶ月前、アメリカ国内の生物兵器研究所で、炭そ菌の秘密研究を行っている事を政府が認めていたり(2001/9/6日。まだ飛行機はビルに突っ込んでいません!)、その後、12月19日になって、大統領報道官が炭そ菌の国内紀元を認めたり……

 しかし、そのような事を問題にした報道は、何故か、それ程流される事はありませんでした。これを情報操作と言わずして何と言うのでしょうか? まぁ、少し考えてみれば、アフガニスタンという世界でも特に赤貧にあえいでおり、生物兵器の設備がどうとかという問題以前の国の技術力ごときで、「兵器として使えるような、遺伝子操作され純粋培養された強力な炭そ菌」なるものなど、どうあがいても作りようがないことぐらい誰でも分かる事の筈なのですが……

 このように、一連の事件を系統立てて追う事ができるので、本来の「新聞」の読み方とは違うかもしれないが、こういうのもありかな? と思っている。

 少々、前置きが長くなってしまったが、ここからが本題。
 そうやって新聞を読んでいる時「燃料気化爆弾」の文字が飛び込んでくる。そう言えば、どこかのニュース番組でやっていた資料映像を見たら、キノコ雲上がってたよなぁ……あれは一体、どれぐらいのシロモノなんだろうか? そう思い、ちょこちょこと調べてみると、とんでもない兵器である事が分かる。

 一番、有名になったBLU−82(本当は燃料気化爆弾と言うよりFAEと言う方が名称としては正確なのですが、ここでは別に正式名称とかを問題にしているのではないので、そういう無意味なクレームは却下します。それに、構造的には「燃料」に相当する物を空中にばらまき、それに着火させる事で物を破壊する、というシークェンスその物は全く大差ないので広い意味ではこいつもやっぱり燃料気化爆弾です。まだ、そういう種類のクレームは来てはいないが、先手を打っておきたかったので。気分良く読んでいた皆様、ごめんなさい)

最大火球直径:約550m
最大被害半径:約3km
 衝撃波は、地上の構造物と比較的脆弱な地下施設をことごとく破壊し、地表に巨大なクレーターを作り出す。また遠くまで届く衝撃波は、肺胞の破壊、内蔵破裂といった致死的な効果を広い範囲に及ぼす。さらに広大な空間が一挙に千度以上に加熱されるので、数百メートル四方が焼き尽くされ、激しい燃焼は周辺地域の酸素を奪う。激しい上昇気流は、大気上層に達するようなキノコ雲を作り出す。たとえ、地下壕に隠れ、衝撃波を免れたとしても、高温の炎と窒息効果によって、投下地点周辺に存在する人間は、ことごとく殺される。

 数字だけ見ると「ふ〜ん」程度の感覚しか持てない人がほとんどと思われる。それはそうだろう。「直径550mの火球」と言われてピンと来る人間の方が珍しいのだから。
 そこに、今回のコラムの存在意義がある。このような場合、自分のよく知っている物に置き換えるとそのメチャクチャさがよく分かる。

木之元さんや墨東署の課長さんがよく行く東京タワー:約330m
コンバトラーV:約10機分
初代ゴジラ:約11体分(最近の奴なら7体分ぐらい)
イデオン:約2機半
日本の平野部でよく見かける山:平均500m(ちなみに金比羅のある象頭山は324m)
平均的な日本の家屋(平屋建て):約3mなので180軒分ぐらい
初代ウルトラマン:約14人分
サンバルカンロボ:約11体分
戦艦大和:全長267mなので二隻とちょっと

 等々。
 妙にスーパーロボットや特撮ヒーローが多いのは、一様に「東京ドーム×個分」とか「サッカー場5枚分」とかだけ書いても、そういう物を直に見、直感的に感じる事のできる人が、果たして何人いるのかが疑問だったので、この文章を最もよく読むであろう人達に分かりやすい尺度に変換しているだけである。
 とにかく、人は、そのように自分に分かりやすい尺度に物を置き換えられた時、始めて、その事象を実感できるのである。

 こうして、実感してみた感想はどうであろうか?
 いかなコンバトラーやウルトラマンでも、たった一撃でここまでの破壊を振りまく事はない。正義の使者というのもあるが、せいぜい、自分と同等の大きさを持つ機械獣や宇宙怪獣を木っ端微塵にする程度の破壊である。現実の兵器は、それを遙かに上回っているのである。(イデオンソードは別格)
 こんな物を「正義の鉄槌」とか、「テロリストに対する報復だ」という美辞麗句の下に、無実の人々の頭上に躊躇うことなく投下する。それでもまだ足りないのか、核兵器の使用すら口にする、前線には絶対に行かずに、安全な場所から勝手な檄を飛ばす戦争遂行者達……

もう十分だ!!

 確かに「核兵器」と比べるなら、中心部の温度が約千度しかないので(核兵器なら約六千度)プラズマ火球で影も残さず焼き尽くす程の芸当まではできないものの、この威力で何の不満があると言うのだろう?
 そして、最も重要な事は、この兵器が安く(一発約324万円。ミサイル1発1千万円とかというレベルと比べるなら、信じられない程低価格)、低い工業力でも容易に生産でき、核兵器のように厄介な放射性物質を残さないから、使用者側は何の気兼ねもなく使用できる点である。
 これらの事を考慮に入れるなら、正に、人類は「核兵器」を超える兵器を手に入れたと言っても過言ではない。(ただ、強いて言うなら、現状、この種の爆弾を運用しようと思うなら、広い搭載スペースが確保できる輸送機でなければならない部分が弱点である)

 ……しかし、だが、しかしである。人間が、より強い武器を、より破壊力の高い兵器を求める事を、歴史が証明している。
 第二次大戦中に実際に運用された最大重量の爆弾はイギリス軍が用いた10t(2万2千ポンド)地震爆弾「グランドスラム」である。かの有名な、唯一実戦投入された核兵器「リトルボーイ」と「ファットマン」ですら各々、4tと5tしかない(こいつらを積むにはB−29の胴体ではタイトすぎたのだ)のだ。
 歴史上10t級の爆弾まで運用している実績があるので、そのうち、10t級燃料気化爆弾というのが実用化される日もあるだろうと、思いつつ、資料を漁っていると、もっとトンデモナイものがこの世に実在している事が分かる。

20t級燃料気化爆弾

 現実は、人間のチャチな空想や想定を遙かに超えていたのである。
 これは、戦術核の被害をシミュレートする為に特別に作られた、いわば実験専用の爆弾である。詳細は分からないが、恐らく、上空から投下して使うのではなく、地面や高所に固定させて使用したと思われる。一応、つたない計算(こういう物は通常、重量差の2乗で威力が上がる。しかし抵抗値は3乗で増すので、結果として威力は(その他、高度による酸素濃度とか燃料の分散度等考慮に入れるべきデータはたくさんある)押さえられるのだが、その辺のデータまで考慮に入れるまでこちらの解析能力が高くないので、残念ながらそこまで正確には算出できない。だが、概算値としては悪くないと思っている)ではあるが、10t級と20t級のそれらが爆発した時の予想被害半径を載せておく。

10t級
予想火球直径:1188m(約1.2km)
予想被害半径:6480m(約6.5km)

20t級
予想火球直径:4753m(約4.8km)
予想被害半径:25930m(約26km)

 しかし人類は、歴史上で繰り返し行われているように、より強力な兵器を求めて、更なる上を目指すのである。

 以上
 2002/1/28 スライム君

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