[45−01] 日本国との平和条約第14条(a)2(1)によれば,戦時中日本占領軍の支記下にあった日本国民の在外財産処分は,連合国軍の自由に委ねられるとされている。この場合,その条約の条項による日本国民の在外資産の喪失に対して,日本国には補償義務はないとする最高裁判所の見解に適合するものはどれか。

(1) 外国にある日本国民の財産には,日本国の統治権が及ばないものであり,その処分は連合国軍の自由に委ねられるから,そもそも日本国憲法29条3項による損失補償の対象たり得ない。

(2) 賠償するか否かは,当該条約によって定められるべきものであるが,この条約には賠償をする旨の条項が存在しないから,日本国は賠償義務を負わない。

(3) 在外財産喪失は,一種の戦争賠償であり,日本国がその賠償義務を負うが,日本国憲法29条3項は経過綱領的な規定であり,賠償に関する具体的な法律が定められていない以上,日本国は29条3項による賠償義務を負わない。

(4) 日本国は,これらの日本国民に対して喪失財産交付金(給付金)を支給してその義務を果したのだから,賠償義務を負わない。

(5) 平和条約の当該条項は,外交保護特権を行使しないとするもので,一種の戦争損害として不可避的な止むを得ないものとして,国民がひとしく受忍すべきものであり,日本国憲法29条3項によって補償請求をなし得ない。

[45−04] 皇室に関する次の記述中,誤りはどれか。

(1) 旧憲法時代の皇室典範は,大日本帝国憲法と並ぶ最高法規であり,その形式的効力において優劣はなかったが,現行の皇室典範は,国会の議決によって成立した純然たる法律である。

(2) 皇室典範には,天皇に養子を禁ずる規定はあるが,皇族が養子をすることができるかどうかについては規定がない。

(3) 皇室に関する特別の機関として,皇室会議および皇室経済会議があるが,後者には,皇族がはじめて独立の生計を営むことを認定する権限がある。

(4) 憲法上,皇室が財産を賜与するには,国会の議決にもとづかなければならないとされるが,皇室経済法によれば,外国交際のために儀礼上の贈答にかかる場合,その他一定の場合には,いちいち国会の議決を経なくてもよいとされている。

(5) 皇位について,旧憲法は「皇男子孫之ヲ継承ス」と規定しているが,現皇室典範においても,皇位は,皇統に属する男子が継承するとしている。

[45−07] 司法審査等に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。

(1) 行政機関の処分を不服とする訴を提起する出訴期間を制限することは憲法に違反する。

(2) 行政機関が前審として行なった事実認定は裁判所を拘束し,裁判所は法律判断のみをなしうるとすることは憲法に違反する。

(3) 行政機関の処分を不服とする訴の第一裁判所を高等裁判所とすることは憲法に違反する。

(4) 家庭裁判所は特別裁判所であるが,憲法に違反しない。

(5) 行政裁判所を設けるのは前審としてでも憲法に違反する。

[45−09] 参政権に関する次の記述のうち,誤りはどれか。

(1) 日本国憲法が直接規定する国民または住民の参政の機会は,(イ)国会議員の選挙,(ロ)地方公共団体の長,その議会の議員および法律の定めるその他の吏員の選挙,(ハ)一つの地方公共団体のみに適用される特別法に対する住民の同意,(ニ)憲法改正における国民の承認,の四つの他にもある。

(2) 主権在民を徹底している民主主義憲法の下では,国防その他国の重要事項についての法律の成立を国民投票にゆだねることは,当然に許される。

(3) 憲法改正手続において国民投票制を探ることは,硬性憲法を採用する民主主義諸国家に共通のことであるとはいえない。

(4) 地方公共団体において,選挙された議員ではなく,選挙権をもつ住民全員によって組織された議事機関を設けても現憲法に反しない。

(5) 皇族については,現在までのところ,(1)の参政権は認められていない。

[45−10] 公務員に関する次の記述のうち,誤りはどれか。

(1) 明治憲法には「官吏」という言葉はなかったが,日本国憲法では2箇所で使われている。

(2) すべて公務員は,全体の奉仕者であるが,だからといって,すべての公務員が政治的活動を禁止されたり,政治的中立性を要求されるわけではない。

(3) 公務員のうち,裁判官のみがその職務の特殊性にかんがみ政治的行為を制限されている。

(4) すべて公務員は,全体の奉仕者であるが,公務員が職務に基づいてある特定の人に役務を提供した場合,その役務に相当する対価を取得しうることを法律を以て規定しても違憲とはいえない。

(5) すべて公務員は,全体の奉仕者であるとされるが,上司の命令が「全体の奉仕者」の趣旨に反し一部の利益をはかるものだと考えても命令に従わなければならない。

[45−13] 刑事手続に関する次の記述のうち,最高裁判所の判例の趣旨に適合するものはどれか。

(1) 捜索押収令状の捜索押収の場所の記載に誤記があった以上,この令状にもとづく押収物については,たとえ裁判所の証拠調があったとしても,これを有罪の証拠とすることはできない。

(2) 逮捕の際,犯人に対して警察官の暴行,陵虐の行為があったとしても,それにもとづく公訴提起の手続が直ちに憲法第31条に違反するとして無効となる訳ではない。

(3) 憲法37条3項は「刑事被告人はいかなる場合にも資格を有する弁護人を依頼することができる」旨定めているが,被告人の署名のない弁護人選任届であっても,その弁護人選任届が明らかにその被告人により作成されたものと認められる場合には,その弁護人選任届を有効としなければならない。

(4) 刑事被告人は憲法37条3項によって,弁護人を選任する権利を認められており被告人が自らこれを依頼することができないときは,国で付することになっているので裁判所は審理を開始する前にその旨を具体的に説明しなければならず,もし弁護人選任権が告知されなかった場合には憲法34条に違反し違憲である。

(5) 憲法38条1項は「何人も自己に不利益な供述を強要されない」と規定しているから,被告人は刑事事件において自己に不利益なる場合に,供述を拒否できるのはもちろん,それ以外にもおよそ法律上何等かの不利益となる場合にはそれに関する供述を拒否できると解さざるを得ない。

[45−20] 国会の運営に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。

(1) 衆議院議員の任期は4年とされ,衆議院解散の場合にはその期間満了前に終了するが,日本国憲法施行以来,任期の満了した例は1度しかない。

(2) 内閣は,衆議院の解散中,国に緊急の必要があるときは参議院の緊急集会を求めることができるが,日本国憲法施行以来,緊急集会が開かれた例は1度もない。

(3) 衆議院で可決し,参議院でこれと異なった議決をした法律案は,衆議院で出席議員の3分の2以上の多数で再び可決したときは,法律となるが,日本国憲法施行以来,衆議院が再可決した例は1度もない。

(4) 衆議院が解散されたときは,解散の日から40日以内に衆議院議員の総選挙が行なわれ,その選挙の日から30日以内に特別会が開かれるが,日本国憲法施行以来,この特別会中に衆議院が解散された例が1度ある。

(5) 内閣総理大臣は,国会議員の中から国会の議決で指名されるが,日本国憲法施行以来.衆議院と参議院とが異なった指名の議決をした例は1度もない。

[45−22] 次の記述のうち,正しいものはどれか。

(1) 衆議院議長は衆議院が選任し,天皇が認証する

(2) 最高裁判所の長たる裁判官以外の裁判官は,内閣総理大臣が任命し,天皇が認証する。

(3) 内閣総理大臣は国会が指名して天皇が認証する。

(4) 特命全権大使は内閣の指名に基づいて,天皇が任命する。

(5) 天皇の国事行為の臨時代行は,天皇が委任するが,内閣の助言と承認を必要としない。

[45−24] 会議の公開等について次の記述のうち,正しいものはどれか。

(1) 常任委員会は議員のほか,委員長の許可を受けた者でなければ傍聴することができない。

(2) 両議院の会議は,出席議員の3分の2以上の多数の議決をもって秘密会とすることができるが,この憲法第3章で保障する国民の権利が問題となっているときは常にこれを公開しなければならない。

(3) 両議院は,その議員の資格争訟に関する議事は秘密会で行なうことはできない。

(4) 両院協議会は出席両議員の3分の2の多数をもって秘密会とすることができる。

(5) 裁判所は選挙に関する訴訟の対審を常に公開法廷で行なわなければならない。

[45−29] 内閣に関して,次の記述のうち,正しいものはどれか。

(1) 内閣総理大臣は,内閣を代表して議案を国会に提出し,一般国務および外交関係について国会に報告し,ならびに行政各部を指揮監督する。

(2) 内閣総理大臣は,国務大臣を任命するが,その過半数は衆議院議員の中から選ばなければならない。

(3) 国務大臣は,その在任中,内閣の同意がなければ,訴追されない。

(4) 内閣が総辞職したとき,内閣は,あらたに内閣が組織されるまで引き続きその職務を行なう。

(5) 内閣は,衆議院で不信任の決議案を可決し,または信任の決議案を否決したときは,20日以内に衆議院が解散されない限り,総辞職をしなければならない。

[45−32] 刑事補償制度につき,正しいものはどれか。

(1) 刑事補償は,憲法40条によって初めて認められたもので,それまで刑事補償されることはなかった。

(2) 刑事補償は公務員の適法行為による損害の救済として認められ,憲法17条による公務員の不法行為に対する国家賠償が認められる時には,40条の適用はない。

(3) 刑事補償の制度は捜査機関の故意・過失を推定するものであるから,それに対する反証は許され,それを基礎として裁判所は補償しないことができる。

(4) 意思無能力者の抑留または拘禁については,損害はないのであるから,刑事補償の必要はない。

(5) 本人が捜査または審判を誤らせる目的で,虚偽の自白をし,または他の有罪の証拠を作為することによって,起訴,未決の拘留,もしくは拘禁,または有罪の裁判を受けるに至ったと認められる場合には,裁判所の健全な裁量により,補償の一部または全部をしないことができる。

[45−34] 法令に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。

(1) 国民の権利義務を制限する内容を持つ法律・命令・条例は官報その他一般に周知しうるような公報によらない限り,その効力を生じない。

(2) 最高裁判所は法律の異時公布は認められないから,特別の事情のない限り,官報が大蔵省印刷局より最初の販売所に向けて発送された時点をもって公布としている。

(3) 最高裁判所は期限の定めのある法律も,その期限が来る前に,両議院でその法律の失効期限を延長する旨の議決をすれば,たとえ,期限後に公布されたとしても,失効しないとしている。

(4) 最高裁判所は明治憲法下の法令で現行憲法下で,解釈の基準となるものはないとしている。

(5) 法律は公布の日から30日を経て施行される。

[45−35]  男女の差別的取扱に関する次の事項のうち,憲法に違反するものはどれか。

(1) 女子に対してのみ再婚禁止期間を定めること。

(2) 売春防止のため,売春した女子のみを補導処分に付するよう定めること。

(3) 男子にのみ入学資格を認める料理学校の設置を認可すること。

(4) 女子に対する強制猥褻の行為のみを罰すること。

(5) 国の支給する老齢年金について女子に対する支給開始年齢を男子の場合よりも低く定めること。

[45−41] 司法権に関する次の記述のうち,最高裁判所の見解の趣旨に適合しないものはどれか。

(1) 裁判所法第3条1項の「………法律上の争訟」とは,法令を適用することによって解決し得べき権利義務に関する当事者間の紛争をいう。

(2) 法令の適用によって解決するに適さない技術上または学術上に関する争いは,裁判所の裁判を受けうべき事柄ではない。国家試験における合格不合格の判定も学問または技術上の知識,能力,意思の優劣,当否の判断を内容とする行為であるから,その試験実施機関の最終判断に委せられるべきものであって,裁判所はその判断の当否を審査し具体的に法令を適用して,その争いを解決調整できるものではない。

(3) 法律が両院において議決を経たものとされ適法な手続によって公布されている以上,裁判所は両院の自主性を尊重すべく議会の法律制定手続の有効無効を判断することはできない。

(4) 憲法第81条は,最高裁判所が違憲審査権を有する終審裁判所であることを明らかにした規定であって,下級裁判所が違憲審査権を有することを否定する趣旨をもっているものではない。

(5) 地方公共団体の議会の議員の除名処分および出席停止処分は,いずれも議会の内部規律の問題であるが,重要な権利が問題となっているのであるから裁判権が及ぶ。

[45−44] 権利章典に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。

(1) 世界人権宣言(1948年)は,恐怖と欠乏からの自由を宣言している。

(2) アメリカ独立宣言(1776年)は,圧制に対する革命の権利を宣言している。

(3) ソヴィエト連邦憲法(1936年)は、祖国に対する反逆は最大の犯罪であることを宣言している。

(4) 西ドイツ基本法(1949年)は、良心に反する武器をとる軍務は強制されないことを宣言している。

(5) フランス憲法(1946年)は,政治的亡命の権利を宣言している。

[45−45] 内閣に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。

(1) 閣議の決定は全員一致または内閣総理大臣を含めた過半数で決せられるのが慣行である。

(2) 閣議で決定された事項について国務大臣が決定に反する行政措置を取ったときは,内閣は国会に対する責任を果たすため総辞職しなければならない。

(3) 閣議で決定された事項について国務大臣が決定に反する国会答弁をしたときは,内閣の国会に対する責任を果たすため内閣総理大臣はその国務大臣を罷免しなければならない。

(4) 衆議院が国務大臣につき不信任案を可決したときは,内閣総理大臣はその国務大臣を罷免するか,または総辞職しなければならない。

(5) 内閣総理大臣は国務大臣の訴追に同意したときは,その国務大臣を罷免しなければならない。

[45−53] 憲法および国会法に関する記述のうち,誤りはどれか。

(1) 憲法は,法律案の議決,予算の議決,条約の承認および内閣総理大臣の指名につき衆議院の優越を認めているが,国会法でも臨時会および特別会の会期の決定ならびに,国会の会期の延長につき衆議院の優越を認めている。

(2) 国会法は,「常任委員及び特別委員は各会派の所属議員数の比率によりこれを各会派に割り当て選任する」と規定している。

(3) 国会法は,「会期の延長は,常会にあっては1回,特別会及び臨時会にあっては,2回を超えてはならない」と規定している。

(4) 国会法は,「特別会は,常会と併せてこれを召集することができる」と規定している。

(5) 国会法は,「両議院の一において否決した法律案は,同会期中において再び提出することができない」と規定している。

[45−56] 両院協議会についての次の記述のうち,正しいものはどれか。

(1) 法律案について,両議院の議決が一致しないときは,両院協議会を開かなければならない。

(2) 予算について,両議院の議決が異なったときは,両院協議会を開く必要がない。

(3) 会期の決定について,両議院の議決が異なったときは,両院協議会を開く必要がある。

(4) 内閣総理大臣の指名について,両議院の議決が異なったときは,両院協議会を開く必要がある。

(5) 参議院の緊急集会においてとられた措置について,衆議院の同意を得られなかったときは,両院協議会を開かなければならない。

[45−60] 評議・表決等に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。

(1) 下級裁判所の合議体による裁判の評議については,裁判官は秘密を守らなければならないが,各裁判官の意見は全員の合意があるときは,裁判書に記載することができる。

(2) 有罪無罪の評議において,無罪の意見の裁判官は,刑の量定の評議においては意見を述べる必要がない。

(3) 国会の議案の審議において,修正の動議が提出されたが,その動議を先議することなく,直ちに原案の表決をすることができる。

(4) 国会議員は国会開会中に自己の資格に関する争訟を提起されていても,あらゆる法律案の表決に参加することができる。

(5) 各大臣は法律の定めるところにより,主任の大臣として行政事務を分担管理するものであるから,案件を提出して閣議を求めることは主任の大臣に限られる。


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