[61−01] イギリス憲法学の伝統的理論に,国会主権という原理がある。

この場合の主権とは,国内法秩序における最高法規定立権を意味する。伝統的理

論にしたがえば,イギリスにおける最高法は国会制定法(法律)であって,法律

を制定するのが国会であるから,イギリスの主権者は国会であり,主権者に優越

する根本規範の存在を認めない。つまり,国会は万能であって,一切の法的制限

を受けないから,無効の法律はあり得ないというのが,国会主権の原理である。

次の1から5までのうち,この国会主権の原理から導き出されないものはどれか。

1. 国会の立法権は,国民の権利を制約する場合を除き,制限されていない。

2. 国会が法律の形式をとって制定する限りそれが実質的憲法規範であっても,

細則的規定であっても,その効力に差がない。

3. 国会は,過去に国会が修正し得ないものとして制定した法律も修正するこ

とができる。

4. 過去の国会が制定した法律を現在の国会は改廃できるので,現在の国会が

国の最高機関である。

5. 裁判所は,国会制定法の内容ばかりでなく,その制定手続の違法性につい

ても審査することができない。

[61−02] 天皇の国事行為に対する内閣の「助言と承認」の意味について次のA,B,C三つの見解とこれらに関するア,イ,ウの記述との組合せとして正しいものは,後記1から5までのうちどれか。

A 内閣の天皇に対する事前の申出が「助言」,助言に一致することの事後の確認が「承認」であって,その両方が必要である。

B 「助言」と「承認」を区別せず,一体としての「助言と承認」が事前にあれば足りる。

C 内閣から天皇への申出が「助言」,天皇からの提案に対する内閣の同意が「承認」であり,その一方のみで足りる。

ア この見解では,天皇は,国事行為のイニシアティブをとることが可能であり,内閣の意思によって他律的に意思を決定し表示するだけの存在ではなくなる。

イ この見解では,国事行為のうち内閣以外の機関が憲法上実質的決定権を持っている事項については内閣の助言も承認も必要でないとの説は採り難い。

ウ この見解では,「承認」の文言を不要とするのと同じである。

1.Aとア,Bとイ,Cとウ

2.Aとア,Bとウ,Cとイ

3.Aとイ,Bとウ,Cとア

4.Aとイ,Bとア,Cとウ

5.Aとウ,Bとイ,Cとア

[61−03] 憲法の概念をAからDまでのように定義した場合,後記1から5までのうち,正しいものはどれか。

A 実質的意味の憲法ーーーー実質的に国家の基本秩序を構成する法である

B 根本規範としての憲法ーー憲法の制定を根拠づけ,その内容を制約する,いわば「憲法の憲法」としての根本法である

C 近代的意味の憲法ーーーー立憲主義の政治思想を採り入れる憲法である

D 事実概念としての憲法ーー法的概念としての憲法とは区別される事実状態としての基本的国家体制である

1.「憲法は,国家機関及び国民の行動を規律の対象とし,国家機関により執行され,国民により遵守されることによって実現されるところに成り立つ法である。」と言われるときの憲法は,Aの意味である。

2.「憲法は,一国において存在している事実的権力関係である。」と言われるときの憲法は,Bの意味である。

3.「権利の保障が確保されず,権力の分立が定められていないすべての社会は,憲法を持つものではない。」と言われるときの憲法は,Bの意味である。

4.「憲法は,改正権力によってこれを改正できず,制定権力によってもこれを動かすことはできない。」と言われるときの憲法は,Cの意味である。

5.「憲法は,慣習法や判例法としても存在することがある。」と言われるときの憲法は,Dの意味である。

[61−04] 一定の除外事由のある者を除く外,「猶予ノ言渡前他ノ罪ニ付

キ禁錮以上ノ刑ニ処セラレタルコト発覚シタルトキ」は,「刑ノ執行猶予ノ言渡

ヲ取消ス可シ」と規定する刑法26条3号の規定が,二重処罰を禁止する憲法3

9条に違反しないとする立場からの説明として,次の1から5までのうち,最も

不適当と思うものはどれか。

1.元来刑の執行猶予は,刑の執行の条件に関する一つの恩典で,一定の事由が

あれば既に言い渡した執行猶予を取り消すことも立法政策の問題であるから,法

律によって自由に定め得る。

2.刑の執行猶予は,事情の変化によって被告人の不利益に取り消すことのでき

る性質を当然内包していると見るべきであって,過去の事実の発覚をも一種の事

情変更とみて取消事由とすることは合目的的である。

3.刑法26条3号は,執行猶予を一種の解除条件付きのものとしている。従っ

て,法定の条件が具備すれば執行猶予が取り消されるにすぎず,同一犯罪につい

て重ねて刑罰を科するものでもなければ,確定判決の刑を重く変更するものでも

ない。

4.刑の執行猶予を付した判決が確定した場合に,本人のその後の行状いかんに

よって取消をみとめることは制度そのものに内在する当然の事柄であって何ら

憲法39条には違反しない。

5.憲法39条は,有罪無罪という実体に関する規定である。従って,刑の言渡

の付随的処分である執行猶予の言渡とは本来関係がない。

[61−05] 「西ドイツ基本法が,国家みずからが憲法的価値の担い手となって国民に『憲法への忠誠』を要求するという『現代憲法』の在り方を示しているのに対し,日本国憲法は,『近代憲法』の基礎にある国家の価値中立性=思想の自由競争という大前提を貫いている。」という見解を採った場合,「天皇又は摂政及び国務大臣,国会議員,裁判官その他の公務員は,この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」と定める憲法99条の解釈論として,この見解と両立しないものはどれか。

1.憲法99条は,公務員の憲法尊重擁護義務をうたっているが,国民の憲法忠誠義務はうたっていないと解される。

2.憲法99条は,憲法裁判所によって憲法秩序そのものを裁判的に確保することに主眼をおいた西ドイツ型と同様の違憲審査制を,日本において採用することが可能であるという解釈論を採るための根拠にならない。

3.憲法99条には,憲法とは国民が国家に対して尊重を要求すべきものだという近代憲法思想が表れている。

4.憲法99条は,公務員に対し職務遂行中においても,職務を離れた私人としての活動においても,憲法の価値を実現すべきことを要求していると解される。

5.憲法99条は,憲法の保障する言論の自由を否定する日本国民の行為を憲法擁護義務に違反するとして処罰する法律の根拠にならない。

[61−06] 次のAからDまでは,憲法改正には限界があるとする諸説をその論拠とともに示したものである。後記1から5までの説明のうち,誤っているものはどれか。

A 憲法には,憲法制定権者がそれが変更されればその憲法の同一性,継続性が失われるであろうと考えた基本的原則があるから,憲法改正には限界がある。

B 権力の制限と合理化によって国民全体の自由を確保することこそが憲法制定の眼目であり,この眼目が憲法の核心をなすものであるから,憲法改正には限界がある。

C 憲法改正権限は,実定憲法を定立する憲法制定権力から由来し,その下でのみ成り立つものであるから,憲法改正には限界がある。

D 基本的人権の宣言を含む根本規範は,憲法制定権をも拘束する規範であるから,憲法改正には限界がある。

1.A説は,「もし憲法改正に限界がないとすれば,憲法みずからその自殺を承認することである。」という立場である。従って,憲法の自己否定の否定論ということもできる。

2.A説とC説は,憲法の存在様式から考察しているが,B説は憲法の存在意味から考察しているということができる。

3.C説からは,「憲法は,新しい憲法を制定する権能を与えるものではない。」との考えを導くこともできる。

4.D説を採れば,理論的にC説を否定することになる。従って.D説とC説は両立しない。

5.改正限界を超えて改正された憲法は,D説の立場からは,理論上およそ正統性を認められないが,A説の立場では,新たな実定憲法として受け入れられることが可能である。

[61−07] 基本的人権の発展に関する1から5までの,各A,Bの文を,

「A。しかし,B。」という文章に組み合わせた場合,最も不適切なものはどれ

か。

1.A 人権思想の萌芽は,古代世界や原始キリスト教のなかにも見出される

  B 人間性そのものがひとつの基本価値とされ,政治価値の座標の原点に置

かれたのは,そう古いことではない

2.A 近世自然法に基づく人権思想の展開は,アンシャン・レジームに対する

抵抗又は抗争の過程をとった

  B 今日では全く自明な基本権の原則でも,近代以前の身分的支配の秩序の

下では,超実定法的な抵抗権の形態をとらざるを得なかった

3.A 人権を尊重する民主主義の下では,抵抗権の存在理由は,極限まで小さ

くなっているはずである

  B 現代では実定化された権利となった人権も,実際には横暴な権力によっ

て無視・蹂躪される可能性につねにさらされている

4.A 近代憲法における自由権又は個人的人権の特質は,「権力からの自由」「私

的自治」の保障という個人自由主義の要請に基づいて,「生命,自由及び幸福追

求の権利」の保障を政治価値の座標の原点に置いた点にある

  B ここでの自由が,野放図なエゴイズムを意味したのでないことは,本来

自由の存立が他者の自由の承認から始まる以上,当然であろう

5.A 抵抗権の規定が,19世紀にはほとんど姿を没したのは,旧体制からの

解放が一応達成され,市民階級の政治・経済上の覇権が確立された後には,抵抗

や革命の権利は不必要だと考えられたからであろう

 B その結果,立憲民主主義の名による不当な圧制に対して,人権宣言の創始

者達が示したような抵抗の意志までが減退するとすれば,憲法の精神を守る社会

的支柱も,それだけ弱化せざるを得ないであろう

[61−08] 憲法14条1項の「法の下の平等」の「法」とは,自然法も実定法も含めたすべての法規範であるとする説がある。この説とAからDまでの考えとの関係について,後記1から5までのうち,正しいものはどれか。

A 平等原則は憲法以前に存在するものであり憲法14条は確認的な性格のものである。

B 法の下の平等を求める権利は普遍的な権利であるから,憲法14条は外国人にも適用される。

C 合理的な区別が許されるのは正義として当然であるから,憲法14条の「平等」は,画一的絶対的平等ではなく,相対的平等の意味である。

D 差別的取扱いは人権の観念と相客れないものであるから,憲法14条は,法令の適用の平等だけでなく,法令の内容の平等をも保障している。

1.A以外の考えは,この説と矛盾しない。

2.B以外の考えは,この説と矛盾しない。

3.C以外の考えは,この説と矛盾しない。

4.D以外の考えは,この説と矛盾しない。

5.いずれの考えも,この説と矛盾しない。

−−[61−09]から[61−10]まで−−

 次の文章を読んで,後記の[61−09]と[61−10]の各問に答えよ。

憲法解釈の方法について,AとBが論争している。Aは,「広く社会一般の憲法感覚に合致しないことが明らかな憲法解釈は,いかに理路整然としていても必ずどこかに欠陥があり,妥当ではない。」と主張する。Bは,「現実を突き放し,憲法典の論理的構造を文理に照らして明らかにする解釈論こそ優れた機能を果たすことができる。」と主張している。

[61−09] 次の1から5までのうち,A,Bの論争の内容として,最も適切なものはどれか。

1.Aは,「現代社会では価値観が多様化しているので一般的市民ないし代表的市民というものは存在しない。」と相手を非難している。

2.Bは,「私は,ホームズ判事が,憲法規範はその形式に本質がある数学的公式ではないから,その意味は,単に言葉と辞書とによってではなく,憲法規範の法源とその発展路線を考慮することによってとらえられるべきである,と述べた意見に共鳴する。」と主張している。

3.Aは,「憲法は,国家権力を制限する基礎法であるところに最大の特色があり,理想を掲げて現実の政治に指標を示し,現実を理想に近づけようとする理念的性格の強い法であるから,その時々の現実的必要性により動かされる余地をできる限り少なくする枠組みがないと,憲法の理念性を傷つける解釈論が登場するおそれがある。」と相手を非難している。

4.AとBは,「法に生命を与えるものは,正義と社会的必要性である。つまり目的のための手段でありその達成する結果によって判断されるべきである。」という考えを立論の基礎としている。

5.Bは,「人権規制立法の合憲性を判定する指標として考えられた『合理性』の基準が,『有能で教育もあり私心のない自治的国民が,合理的と考え,行うものであること』という内容であったにもかかわらず,実際には,立法府の判断をもって『合理的人間』の判断とみなされるようになったことに類似する現象を生じるおそれがある。」と相手を非難する。

[61−10] Aは,Bとの論争の過程で,次のような意見を述べている。下記のアからオまでの語句から一つずつ選んで文中の[ ]に入れた場合,最もわかりやすい論述となる順番は,後記1から5までのうちどれか。

「私の立場を採れば,我が国の[ ]を発展させるためには,[ ]を活発にすることはもちろん,さらに,憲法学以外の学問を専攻する研究者及び一般市民の[ ]に謙虚に耳を傾け,それぞれの解釈を再検討してみること,いわば,憲法学者の[ ]と市民の[ ]をぶつけ合わせてみることも,必要であるといえよう。」

ア 憲法解釈  イ 憲法学の解釈論  ウ 憲法問題に関する見方  エ 学説上の議論  オ 憲法感覚

1.イエアウオ  2.エイオアウ  3.イエウアオ

4.エイオウア  5.オエアイウ

[61−11] 次の文章中の[ ]に,AからEまでの文のうちから四つを選んで入れると,「輸入貨物の品名数量等を税関長に対して申告するよう義務づけている関税法の規定を,輸入を禁止されている貨物を輸入しようとした者に適用しても憲法38条1項に違反しない。」という趣旨の論述となる。その順番として最も適切なものは,後記1から5までのうちどれか。

「本邦に入国する者がその入国の際に貨物を携帯して輸入しようとする場合には,関税法67条により,当該貨物の品名,数量,価格等を税関長に申告しその許可を受けなければならないが,右の申告は,[ ]であって,[ ]ではない。また.この輸入申告は,[ ]であり,前記の目的を達成するために必要かつ合理的な制度ということができる。このような輸入申告の性質に照らすと,[ ]である以上通関のため欠くことのできない申告・許可の手続を経ないでこれを輸入し又は輸入しようとした場合に,関税法111条の罪の成立を認めても,憲法38条第1項にいう『自己に不利益な供述』を強要したことにならない。」

A 関税の公平確実な賦課徴収及び税関事務の適正円滑な処理のためのもの

B 申告すれば,関税支払の義務は原則として免れないが,当然に輸入が許可となるもの

C 通関のため当然に申告義務の伴うこととなる貨物の携帯輸入を企てたもの

D 本邦に入国するすべての者に対し,携帯して輸入しようとする貨物につきその品目のいかんを問わず義務づけられているもの

E 刑事責任の追及や,そのための資料の取得収集に直接結び付く作用を一般的に有するもの

1.ABCD

2.ABED

3.AEDC

4.DBEC

5.DEAB

[61−12] 天皇の行為は,国事行為と私的行為だけであるとする二分類説と,国事行為と私的行為のほかに,その中間の行為があることを認める三分類説がある。また,天皇には象徴としての地位があり,それに伴う行為をすることが認められるとする説がある。この説は,象徴としての行為は,国事行為のみであるとする第一説,国事行為とそれ以外にもあるとする第二説,国事行為は含まれずそれ以外にあるとする第三説に分かれる。他方,象徴としての行為という概念を認めない第四説もある。これらの説相互の関係,及びこれらの説と天皇が外国元首へ慶弔電を打つ等の公的色彩の強い行為ができるとする積極論との関係について,次のうち,誤っているものはどれか。

1.二分類説と第一説を採ると,積極論にはなり得ない。

2.二分類説を採ると,第二説と第三説を採ることはあり得ない。

3.二分類説と第四説を採ると,積極論になる。

4.三分類説と第二説を採ると積極論になる。

5.三分類説と第三説を探ると,積極論になる。

[61−13] 次の文中の[ ]には,「民衆の支配」,「民衆のための支配」

又は「民衆による支配」のいずれかが入るが,「民衆のための支配」が入る回数

は,後記1から5までのうちどれか。

「民主主義という言葉は多義かつ曖昧であるが,語源的には[ ]を意味する。

この[ ]の概念も[ ]と[ ]の二義性をもっており,[ ]は民意確認の

手続を必要とする。これに対し,[ ]は何が真に民衆のためかの認定権の所在

によってさまざまな政治体制と結びつき得る。しかし,いずれにせよ[ ]も支

配の一種であり,支配とはそれに服さない者を強制する可能性を含むから,他者

の支配を拒否する個人主義・自由主義と矛盾する。もっとも,民主主義と自由主

義は対立を含むというものの,両者は全面的な敵対者ではない。自由主義が『個

人による自律的な意思決定』を意味するとしてこの自由主義を無政府主義にまで

徹底するのでなければ,一定の権力はいずれにせよ存在せざるを得ないが,その

場合,[ ]によって,団体の次元での自律が実現されれば,これは自由主義に

とっても,他者による支配よりも好ましいものだからである。また,[ ]とい

う概念における民主主義は,複数の選択肢からの自由な意思決定を前提としてい

るから,一定限度の自由の存在を前提とせざるを得ない。こうして両者は自律と

いう基本的価値の個人的及び団体的な発現形態として,相補い合うという関係に

立っているのである。」

1. 2回  2. 3回  3. 4回  4. 5回  5. 6回

[61−14] 営業の自由に対する規制は,その目的から,(A)社会公共の安全と秩序に対する危害の発生の防止のための消極的規制,(B)福祉国家的理念の下における社会経済政策のための積極的規制の二種類に分類できる。次のアからオまでの規制を(A)(B)に分類した場合,後記1から5までのうち,正しいものはどれか。

ア 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律により風俗営業について許可制を定めること。

イ 医師,薬剤師,弁護士等の技術・技能・経験などを必要とする一定の職業について,それぞれ法律により一定の資格要件を定めること。

ウ 事業の公共性の観点から一定の事業について国の独占事業とすること。

エ 中小の小売業を保護育成するために大規模小売店の営業を規制すること。

オ 食品衛生法により食品の販売業などについて検査その他の規制を定めること。

1.ア・イ・ウが(A),エ・オが(B)。

2.ア・イ・オが(A),ウ・エが(B)。

3.ア・オが(A),イ・ウ・エが(B)。

4.イ・エ・オが(A),ア・ウが(B)。

5.ウ・エが(A),ア・イ・オが(B)。

−−−[61−15]から[61−17]まで−−−

 次の文章を読んで後記の[61−15]から[61−17]までの各問に答えよ。

 法律に関する違憲審査制は,非集中型と集中型の二つの型に分類できる。非集中型では,一国のすべての司法機関に審査権限が与えられており,集中型では,審査権限が単一の司法機関に限定されている。非集中型の論拠を示すと,「[A]。したがって,事件を裁判する裁判官はすべて,後者を無視し前者を適用しなければならない。」というようになる。

 また,集中型の論拠の一つとして次のように,権力分立の観点から基礎づけるものがある。それは,「[B]。したがって.立法を審査する権限を司法部一般に与えることはせず,通常の裁判官は法をそのまま適用しなければならない。」というものである。

[61−15] 次の1から5のうち四つを選んで一連の文章を作成すると,[A]に入る記述になる。残るものはどれか。

1.裁判官は,優位にある法を適用する場合は,それが新たな法創造的機能を有する面のあることを忘れてはならない

2.二つの立法が規範として同等の力をもつ場合に,優位にある方を決定するのは「後法は前法を破る」とか「特別法は一般法を破る」などの伝統的基準によるべきであり,規範として異なった力をもつ二つの立法の間に矛盾が存する場合には,「上位の法は下位の法を破る」との明白な基準によるべきである

3.裁判官の機能は担当の具体的事件に法を適用するため法を解釈することにある

4.憲法と法律を比べた場合には,憲法はそれと矛盾する法律より優位に立つ

5.法の解釈には,二つの立法が矛盾するときは裁判官はそのうち優位にある方を適用しなければならない,という原則がある

[61−16][B]に入る文として,最も適切なものはどれか。

1.法律は議会において制定された以上,当然有効性の推定が働く

2.先例拘束性の原理が存在しないところでは,法律の合意性を判断する事案で,一般的拘束力を有する判決ができるような裁判機関の必要性が痛感される

3.司法部によるいかなる法解釈も政治的行為であり,解釈により制定法を無効とすることなどその最たるものであって,立法部が独占する立法権への侵害である

4.通常の裁判官は,制定法の政策的適用能力よりその機械的適用技術をみがく訓練を受けており,法律の違憲審査を行うのに必要なメンタリティを持ち合わせていない

5.先例拘束性の原理が存在しなければ,ある裁判官がある法律についてどのような態度をとるのかわからない

[61−17] 上記の文章の筆者は,また次のような論述をしている。これに小見出しをつけるとしたら,最も適当なものは,後記1から5までのうちどれか。

「20世紀にいたって,それまで長い間守られてきた自然法と実定法の区別,先例指向型の裁判所と制定法指向型の裁判所の区別,あるいは権力分立についてのいろいろな理論の間の違い,これらはすべて司法審査に対する態度の違いの奥に存したところのものであるが,これらの区別や違いがあいまいなものになってきたのであった。憲法に適合しないとの理由で制定法を審査の上無効とする権限を持つ特別の憲法裁判所を設立すること自体まさに権力分立観念との大幅な妥協なのであり,権力分立論からいえばそのような権限はいかなる司法機関にも与えられないはずである。じっさい,集中型審査が行われる国々では通常裁判所は司法審査を行うことができないことになっている。しかし,このような国でも通常裁判所が司法審査のための一定の役割を演じることはできる。通常裁判所はある憲法問題が憲法裁判所に送付さるべきものかどうかについてしばしば最初の判断をしなければならない。この義務は憲法裁判所判決の拘束力に従わなければならない義務とともに,ヨーロッパの司法部にある種の『憲法感覚』を育てる助けとなりうるのである。そしてこのような意識はアメリカの司法部の中に2世紀近くにわたって存したのと同様のものである。」

1.憲法裁判の対世的効力

2.権力分立観念の現代的意味

3.20世紀における憲法感覚

4.現代における裁判と政治の接点

5.違憲審査制の集中型と非集中型との合一化傾向

[61−18] 次のAからDまでの文を,「[ ]。というのは,[ ]。だから

[ ]。このように考えるから,[ ]。」と並べると,「憲法変遷に限界があるか」

という問題についての論述となる。その順番として最も適切なものは,後記1か

ら5までのうちどれか。

A どこの国でも成文憲法典のほかに,憲法上の慣例とか慣習と言われるものが

存在するが,そういう憲法慣習のうちで,憲法の本来の意味を発展させるものと

か,憲法の明文の規定が存在しない場合にその空白を埋めるものは,特に問題は

ないが,憲法規範の本来の意味と違う内容の慣習は,あくまでも違憲の慣習であ

り,それが憲法規範を改廃することのできる効力まで持つことはできない,と考

えるからである

B 改正権の限界と一般に解されている憲法の基本原理に反する慣習はもちろ

んだが,それ以外の規範についても,それに反する慣習は原則として憲法規範と

同じ法的効力を獲得することはできない,と思うのである

C 事実上憲法規範の実効性が失われ,規範に反する現実が長く継続することは

あっても,それによって規範が改廃されるという法的な効力が生じるわけではな

いと思うのである

D 憲法変遷は憲法改正と法的性質が違うから,限界があるといっても,その理

由も違うのであるが,硬性憲法であることを重視する立場をとれば,憲法改正の

場合よりももっと大きな限界があるという結論になると思う

1.ABCD   2.ADCB   3.BADC

4.DBAC   5.DACB

[61−19] 次の1から5までの文は,いずれも両院制における上院(第二院)の議員の任期に関して述べたものである。誤っているものはどれか。

1.上院の議員の任期は,下院に比べて長いのが一般的である。

2.立憲君主制下の上院では,民主制下の上院に比べて,議員の任期が短い場合が多い。

3.貴族院型の上院では,世襲による議員が含まれるのが一般的である。

4.上院の議員の任期は,選挙制の方が非選挙制に比べて短い場合が多い。

5.元老院型の上院では,国家に功績のあった者や学識の高い者が議員に含まれる場合には,その議員は,終身制であるか相当長期の任期制であることが多い。

[61−20] 公職選挙法は,選挙運動の期間中及び選挙の当日において,新聞が,選挙に関する報道・評論を掲載するには,毎月3回以上定期に有償頒布し,かつ,第三種郵便物の認可を受けていること等の要件を満たさなければならないと規定し,この要件を満たさない新聞が上記報道等を掲載したときは,その編集担当者等を処罰すると規定している。これらの規定に関するAからDまでの説について述べた後記1から5までのうち,誤っているものはどれか。

A これらの規定による制限は,一応言論に対する制限ではあるが,選挙運動を公平かつ実質的に各候補者に保障するために必要な制限である。

B 選挙の公正を害する報道等を掲載した新聞が頒布された場合に事後的に処罰することによっても,これらの規定の目的とするところは達成することができる。

C これらの規定は,その要件に該当しない新聞が特定の候補者の得票について有利または不利に働くおそれがある報道等を掲載することを防止するための制限である。

D これらの規定は,表現そのものに禁止を課するものであり,しかも,禁止を課せられる新聞とこれを課せられない新聞とを合理的でない基準で差別している。

1.これらの規定の要件を満たさない新聞でも,選挙に関する健全な報道等をする場合があり得るから,そのような新聞を含めて一律に表現の自由を奪うのは行き過ぎであるとの批判をA説に対し加えることができる。

2.選挙の公正を害する報道等を掲載した新聞が公衆の目にふれると,新聞のもつ信用力からその影響力は大きく,その結果侵害された選挙の公正を回復し,得票結果を是正する道がないとの批判をB説に対し加えることができる。

3.選挙運動の規制には,明確性を確保するための技術的要請も無視できないとの批判をD説に対し加えることができる。

4,B説は,公職選挙法上の罰則の定め方に関する立法論であって,これらの規定が合憲か否かとは直接関係のない見解である。

5.C説は,小規模な新聞が差別的な取扱いを受けることにならないように,これらの規定の限定合憲解釈をしようとする見解である。

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