[63−01] 主権の概念は,@国家権力そのもの(統治権),A国家権力の最高独立性,B国政についての最高の決定権の三つの意味に分けられる。次の1から5について,文章中の主権の意味が同じものを二つずつ組み合わせた場合,一つだけ残るものはどれか。

1.日本国民は,正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し,われらとわれらの子孫のために,諸国民との協和による成果とわが国全土にわたって自由のもたらす恵沢を確保し,政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し,ここに主権が国民に存することを宣言し,この憲法を確定する。

2.連合国は,日本国及びその領水に対する日本国民の完全な主権を承認する。

3.政治道徳の法則は,普遍的なものであり,この法則に従ふことは,自国の主権を維持し,他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。

4.日本国ノ主権ハ本州,北海道,九州及四国並ニ吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セヲルベシ

5.連合国としては,日本国が主権国として国際連合憲章第51条に掲げる個別的又は集団的自衛の固有の権利を有すること及び日本国が集団的安全保障取極を自発的に締結することができることを承認する。

[63−02] AからEまでの文章を,「[  ]。けれども,[  ]。したがって,[  ]。そして,[  ]。したがって,[  ]。」と並べると,裁判に関する論述となる。その順番として最も適切なものは,後記1から5までのうちどれか。

A 法というものは,まずこのような裁判を通じて自覚され,法的規準も,当初はこのような裁判が繰り返されるうちに集積した裁判例を中心に,宗教・道徳などの社会規範から独立した自律的裁判規準として生成し整備されてきたものである

B 裁判というものは,今日では,あらかじめ一般的抽象的に定められた裁判規準の存在を前提として,これに準拠して法的権利義務をめぐる抗争や法的制裁の発動の当否を裁定するという方式をとって行われているところが多い

C 具体的紛争の事後的個別的解決という裁判の本来的機能に即してみた場合,既存の法の適用という方式は,あくまでもその一手段であるという原理的視座が,現代社会における裁判過程の固有の特質やその構造・機能の在り方を解明するにあたっての原点にすえられねばならない

D 裁判は,必ずしも一般的抽象的な法的規準の存在を前提とするものではなく,むしろ沿革的には,法秩序が整備されていなかった時代においても,既に,このような一般的抽象的な規準なしに,個々の事件ごとに裁判を行う法的権威を与えられた者の具体的判断に委ねるという形で行われていたと言われる

E 裁判は,もともと,価値・利益の対立から生じる紛争を,第三者が法的な権威に基づいて解決するメカニズムとして生成し整備されてきたものであり,今日の裁判方式は,あくまでもこのような裁判を行う一つの手段にすぎないのである

1.B D A C E

2.B E D A C

3.D B C E A

4.E A C D B

5.E B C A D

−−[63−03]から[63−04]まで−−

 次の論述を読んで後記の[63−03]と[63−04]の各問に答えよ。

「エイズ法案の特色は,公衆衛生維持のためにエイズ感染者の人権を制限するところにある。そこで,まず,エイズの蔓延の防止という目的による規制が,憲法に照らして許されるかどうかが検討されなければならない。確かに,伝染病,性病などは,人々の重大関心事でありそれらの疾病から社会を防衛するのは,国家の責務と一応いえよう。したがって,公衆衛生維持のための人権制限は,一般的には,憲法の認めるところといえるだろう。しかし,プライバシー保護などにみる最近の憲法理論の顕著な発展を考えると,公衆衛生維持というだけで無条件に人権規制が認められると考えるべきではない。また,医学の進歩も,憲法上の人権の発達に寄与する。例えば,かつては検疫,種痘などが人権侵害の少ない方法と考えられたが,今日,このような広範な行政手段は医学上承認されていない。調査研究,教育,個別的措置こそが,今日の公衆衛生を特徴づけると考えられている。公衆衛生上の問題については,一般公衆の常識や恐怖心は政策判断の基準にはならず,医学的判断がそれに優先するのである。」

[63−03] 次の1から5は,上記論述に続いて同じ筆者がエイズ法案について述べた文章を抜粋したものであるが,その中に,反対の論調の他の学者の文章が一つ紛れ込んでいる。それはどれか。

1.エイズは,確かに未解明な点の多い難病であるが,既に判明している事実も多いのであって,それらが,まず法案作りの基礎とされなければならない。

2.我が国のエイズ感染者はさほど多いとはいえず,しかも,その大部分が医師の指示に従い治療に努め,二次感染のおそれのない血友病患者で占められている現状では,このような立法化の必要は,慎重な検討を必要としよう。

3.今回の法案により,二次感染防止対策を進める上で必要な質問権などの法的な権限が認められたことは,長野県や兵庫県の場合のようにエイズパニックに振り回されるのを防止する点でその有用性は認められよう。

4.今後の医学的な研究の進展をにらんで,速やかに厳しい規制を解く心構えが,今からなければならない。

5.法案作りに当たっては,医者のみならず患者やその家族等の意見をも十分聴取する必要があり,立案の過程での拙速は慎むべきであろう。

[63−04] この筆者は,上記論述の後,更に,「エイズ法案を考える上で,エイズ感染者のプライバシー保護は,とりわけ重要な意義を持つ。」として,その具体的な理由を四つ述べている。次の1から5には,この四つの理由がすべて掲げられているが,それ以外のものが一つ含まれている。それはどれか。

1.この法案は,エイズ患者をあたかも人類に対する犯罪者のごとく扱い,治療の勧告等の対象としているのであり,患者が病気の犠牲者であるという単純な事実を無視している。

2.エイズは,主に性行為を通して感染するため,エイズ感染者の検診等は個人の性生活や性関係に触れざるを得ない。

3.エイズ患者に対する調査,質問は,病院内で行われる医療行為とは異なり,人目にさらされやすいことが,この方法の持つ問題点であろう。

4.現在の社会的状況下では,エイズ感染者であることが知られると,様々な差別を受け,ときには家族もろとも社会的に抹殺されかねない。

5.エイズ患者に対する質問調査に従事した者等の守秘義務の遵守についても,患者からの告訴等を期待しにくい現状では,罰則を重くしてもその効果はあまり期待できない。

[63−05] プライバシーの権利について,「公権力が,個人に関する個別的情報を,正当な方法を通じて取得・保有しても,直ちにはプライバシーの権利の侵害とはいえない。しかし.かかる情報も用いられ方によっては,個人の道徳的自律と存在に影響を及ぼすものとして,プライバシーの権利の侵害の問題が生ずる。」と論述している学説がある。次の1から5までのうち,上記論述が最もよくあてはまるものはどれか。

1.個人の私生活上の自由として,何人も,その承諾なしに,みだりにその容貌,姿態などを撮影されない自由を有する。警察官が,正当な理由もないのに,個人の容貌等を撮影することは憲法第13条の趣旨に反し,許されない。

2.表現の自由とプライバシーの権利のいずれが一般的に優先するかを決定することはできないが,表現に含まれる価値とプライバシーの価値とを比較考量し前者が優先すると認められるならば,プライバシーの侵害があっても違法性を欠くと考えるべきである。

3.前科は人の名誉・信用に直接かかわる事項であり,前科のある者もこれをみだりに公開されないという法律上の保護に値する利益を有するので,例外的な場合を除き,市区町村長が弁護士法に基づく照会に対して前科を回答することは,違法となる。

4.指紋が個人を識別する身体的特徴であることに照らし一個のプライバシーとして,何人もみだりにその意に反して指紋を採取されない権利を有するといってよい。

5.近代法の根本理念の一つである個人の尊厳という思想は,私人間においても,相互の人格が尊重され,不当な干渉から自我が保護されることによって初めて確実なものとなるのであるから,私人が相当な方法で入手した他人に関する情報であっても,正当な理由なしにこれを公開することは許されない。

[63−06] 以下の文章は報道の自由と受け手の知る自由とに関する論述である。[ ]内には,次の語句のいずれかが入る(ただし,同じアルファベットのところには同じ語句が入る。)。次の2段のうち下段の語句のいずれかが入る[ ]の総数は何個か。

 報道の自由 発表の自由 送り手の自由 話す自由 書く自由

 民衆の持つ自由 知る自由 受け手の自由 聞く自由 読む自由

「[A]の担い手は誰か。いうまでもなく,直接にはそれは報道機関である。しかし,ここには考えなければならない問題がある。それは,報道機関は情報の提供者として確かに[A]を享受するけれども,正確な事実を報道することは,何よりも受け手の[B]を充足するところに重点があり,ある意味では,送り手は受け手たる[C]の受託者のような地位にあることである。[A]の場合,その自由の真の享受者は受け手であるということができる。ある意見の[D]の場合は,[E]であると同時に[F]であること,すなわち[G],[H]であると同時に,[I],[J]であるという二つの面がでてくるが,[A]においては,むしろ[F],すなわち,社会に生じた事実を偏ることなしに正確に[B]という面が重要になってくるのである。」

1.5個  2.6個  3.7個  4.8個  5.9個

[63−07] A県は,異常な地価の原因となる不適正な土地取引を規制するため,@知事が指定する区域について一定面積の土地の取引をするには,知事に対する事前の届出を必要とする,Aその取引予定価格が著しく適正を欠くときは,知事は,当該取引の中止又は予定価格の変更を勧告することができる,B勧告を受けた者が,その勧告に従わないときは,その氏名等を公表する,C届出を怠って取引をした者は罰金に処する,以上のような内容の土地取引適正化条例(以下「本条例」という。)を制定しようとしている。本条例に関する次の論述のうち誤っているものはどれか。

1.知事の勧告に従わない者の氏名等を公表することは,憲法第13条の保障する人格権としての名誉を毀損するおそれがあるが,著しく適正を欠く価格による取引を放置することにより生ずる弊害を考慮すれば,氏名と勧告の内容等の客観的な事実を摘示して公表が行われる限り,勧告に従わない者にこの程度の不利益を課すことは違憲ではない。

2.本条例は宅地建物取引業者等の職業活動の自由を制限するものであり,本条例のように自由な職業活動による弊害の防止を目的とする規制措置は,その目的を達する上で必要最小限度のものでなければならないが,本条例の規制は,その内容,手段等からみて,必要最小限度のものといえるから,憲法第22条第1項に違反しない。

3.憲法第29条第2項の解釈として,財産権の「内容」に関する規制は,法律の専属事項であり,法律による特別の授権のある場合を除いて,条例で行うことはできないが,財産権の「行使」についてはこの限りでないとの見解を探った場合,本条例は,財産権の行使について規制しているのであるから,憲法第29条第2項に違反しない。

4.公共のための財産権の制限が特定の人に対し特別の犠牲を課している場合には,損失補償を認めた規定がなくても,直接憲法第29条第3項に基づき損失補償請求ができるのであるから,本条例により現実に土地取引の規制を受けた者は,条例に補償に関する定めがなくとも,規制により損失を被ったとしてその損失の補償を受けることができる。

5.本条例は届出義務違反について罰金刑を定めているが,憲法第31条は,本来,行政府による刑罰権の濫用を防止するための規定である。条例は,行政官庁の命令と異なり,住民の代表機関である議会の議決によって成立する民主的立法であるから実質的には法律に準じて考えてよい。したがって,本条例は憲法第31条に違反しない。

[63−08] 議員の資格争訟に関する下記の記述のうち,誤っているものはどれか。

1.議員は,他の議員について,その議員が被選挙権を失っていることを理由に資格争訟を提起することができる。

2.著しく議院の秩序を乱す議員については,懲罰によって除名することは格別,資格争訟において議員の資格なしとの判決をすることはできない。

3.資格争訟の裁判により資格がないとされた議員は,資格に関する事実認定の誤りを理由としては,司法裁判所に資格の回復を求めることはできないが,憲法の定める三分の二以上の議員の賛成がないことを理由とする場合には,その回復を求めることができる。

4.資格争訟は,議員になっている者の資格が争われるのに対し,公職選挙法に定める当選の効力に関する訴訟は,当選自体の効力を争うものであるから,両者は,別個独立のもので併存し得る。

5.議員は,資格争訟を提起されたからといって,直ちに議員としての地位及び権能を失うことはないが,自己の争訟に関する表決に加わることはできない。

[63−09] 憲法と条約との間の効力の優劣をめぐって憲法優位説と条約優位説の対立があるが,両説に関する説明として誤っているものは,次のうちどれか。

1.憲法第7条第1号(天皇の国事行為としての条約の公布),同法第73条第3号(内閣の職務としての条約の締結)の各規定は,いずれの説の根拠にもならない。

2.憲法第41条(国会の最高機関性等)は憲法優位説の根拠となり,同法第98条第2項(条約及び国際法規の遵守)は条約優位説の根拠となる。

3.憲法第61条(国会における条約の承認)及び同法第96条第1項(憲法改正の手続き)は,憲法優位説の根拠となる。

4.憲法第81条(違憲立法審査権),同法第98条第1項(憲法の最高法規性)の各規定の文言は,条約優位説の根拠となる。

5.憲法第99条(公務員の憲法尊重擁護義務)は憲法優位説の根拠となり,憲法前文をはじめ,この憲法全体を貫く国際協調主義は,条約優位説の根拠となる。

[63−10] AからFまでの記述を二つのグループに分け,それぞれ「[  ]。しかしながら,[  ]。このようなことから,[  ]。」と並べると,統治行為に関する論述と自由裁量に関する論述とになる。その組合せに関する後記1から5までの記述のうち,正しいものはどれか。

A 法令の中には,行政庁に対し,その活動を包括的に授権し,授権の範囲内での判断や選択の自由を委ねて,時宜にかなった行政活動の自由を保障するものがある

B ある種の行為については,裁判所による法的判断が可能であっても,立法府及び行政府の判断を尊重して,主権者である国民の政治的統制を及ぼすにとどめ,司法権による統制は及ぼすべきでないと考えられる

C 裁判所が政治部門の判断に立ち入ると,多少とも政治的な機能を営まざるを得ず,裁判所の中立性,独立性が脅かされる危険性があり,また三権分立の建前からみても,裁判所が,政治部門の判断に介入することは望ましいことではない

D 法律による行政の原理は,国会の定める法律によって行政活動を拘束することにより,国民の権利自由を保障しようとするものである。この法律による行政の原理を形式的に徹底すれば,すべての行政活動について,その要件と効果を一義的に規定すべきであるということになろう

E 司法審査の究極の目的は,国民の権利保護を図ることにある。違法な行為によって国民の権利が侵害されている場合には,裁判所が,その侵害を救済するために,積極的に司法判断をすべきであるのは当然であろう。その意味で,およそ一切の法律上の争訟は司法審査の対象とされるべきである

F 行政は,その対象が広範であり,内容的にも専門化,技術化しているから,法令がすべての行政活動をもれなく網羅することは不可能であるのみならず,法令の硬直化は,かえって対象の変化に応じた適切な行政判断を妨げることとなる

1.AとEは同じグループに属し,EのほうがAの前にくる。

2.AとBは別のグループに属し,いずれも論述の最後にくる。

3.CとDは同じクループに属し,DのほうがCの前にくる。

4.EとFは別のグループに属し,いずれも論述の最初にくる。

5.FとDは同じグループに属し,FのほうがDの前にくる。

[63−11] 憲法第9条第1項は,「日本国民は,正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し,国権の発動たる戦争と,武力による威嚇又は武力の行使は,国際紛争を解決する手段としては,永久にこれを放棄する。」とし,同条第2項は,「前項の目的を達するため,陸海空軍その他の戦力は,これを保持しない。国の交戦権は,これを認めない。」としている。次のAからEまでは,憲法第9条に関する論述である。これらの論述についての後記1から5までの説明のうち,誤っているものはどれか。

A 第9条第1項は,国際紛争を解決する手段としての戦争・武力の行使,すなわち侵略戦争を放棄している。

B およそ戦争は国際紛争を解決する手段として行われるものであり,侵略戦争と自衛戦争との区別は明確でなく,侵略戦争も自衛の名において行われてきた。第9条は,この事実を踏まえて「国際紛争を解決する手段としては」と述べているにすぎない。

C 第9条第2項は,侵略戦争を放棄するという前項の目的を達するために戦力を保持せず,交戦権を認めないとしている。

D 第9条第2項にいう「前項の目的」とは,前項を定めるに至った目的,すなわち戦力不保持の動機を示すものに過ぎず,不保持の範囲を限定する意味を有しているものではない。

E 国際慣習法上,独立国家であれば当然に固有の自衛権があると考えられており,第9条も,この固有の自衛権までは放棄しておらず,自衛のための必要最小限度内においては実力を持つことを禁止していない。

1.第9条第1項に関しAの考えを採り,第2項に関しCの考えを採った場合には,自衛のための戦力を持つことも憲法上許される。

2.第9条第1項に関しBの考えを採り,第2項に関しDの考えを採った場合には,自衛のための戦力といえども,これを保持することは許されない。

3.第9条第2項に関しCの考えを採った場合には,同項の「戦力」は自衛のための戦力を含まないこととなるのに対し,Eの考えを採る場合には,自衛のための実力であっても必要最小限度の範囲を超えるものは同項により保持を禁止されている戦力に当たることとなる。

4.第9条第2項に関しDの考えを採ったとしても,第1項に関しAの考えを採る場合には,結果的には,自衛のための戦力であれば保持が許されることになる。

5.第9条第2項に関しDの考えを採った場合であっても,警察力,民衆が武器を持って対抗する群民蜂起などによる自衛権の行使は認められる。

[63−12] 次の1から5までの文章を,「[A]。しかし,[B]。[C]。[D]。もし,[E]。」と並べると完結した論述となる。[D]に入るものはどれか。

1.このことから直ちに,法の形成は,立法府がこれを独占的に行うものだという結論を導いてはならない

2.この権限を裁判官に認めないならば一裁判官は,擬制に訴えるのでなければ,彼に与えられた紛争解決の使命を全うすることができなくなるであろう

3.この権限によってはじめて裁判官は,法律の規定を具体的事案に適合させることができるのである

4.裁判官は,法の形成に不可欠な補充的権限を有しているからである

5.裁判官が法律に服従しなければならないということは,法規範の形成に関して立法府の優位が認められていることを,はっきりと物語っている

[63−13] 憲法第14条及び第19条の私人間における適用に関し,「私人間においても,相互の社会的力関係の相違から,事実上一方が他方の意思に服従せざるを得ない場合があり,私的自治の名の下に,このような優位者の支配力を無制限に認めることは,劣位者の自由や平等を著しく侵害することになるから,このような場合には,これらの規定を私人間にも適用すべきである。」との見解がある。次の1から5までのうち,この見解に対する反論として適切でないものはどれか。

1.国又は地方公共団体の私人に対する関係は,権力の法的独占の上に立って行われるものであるのに対し,私人間においては,このような裏付けを欠く単なる社会的事実としての力の優劣の関係にすぎず,その間に画然たる性質上の違いがある。

2.私的関係において,個人の基本的な自由や平等に対する具体的な侵害又はそのおそれがあり,その態様,程度が社会的に許容される限度を超えるときは,これに対する立法措置によってその不都合な結果の是正を図ることも可能である。

3.民法第1条,第90条や不法行為に関する諸規定等の適切な運用によって,一面で私的自治の原則を尊重しながら,他面で社会的許容性の限度を超える侵害に対し基本的な自由や平等の利益を保護し,その間の適切な調整を図る方法もある。

4.事実上の支配関係なるものは,その支配力の態様,程度,規模等において様々であり,どのような場合にこれを国又は地方公共団体の支配と同視すべきかの判定が困難である。

5.私人間における差別について,裁判所が,その事実の有無を認定するには,必然的に差別をしたとされる私人の内心の意思に踏み込まざるを得ず,判決の結果いかんによっては,その内心の自由を無視してその内容実現を強制する可能性もあり,そのことが法の下の不平等な取扱いを招く結果となるおそれもある。

[63−14] 次の1から5は,憲法に関する諸見解を,憲法前文が裁判規範となり得るか否かの観点から論じたものであるが,誤っているものが一つある。それはどれか。

1. 「前文は,本文の諸規定を貫いている憲法の基本原理を宣明しているものであり,憲法の構成部分となっている。したがって,前文を改正するには第96条の憲法改正手続を経なければならない。」とする見解は,裁判規範否定説と矛盾するものではない。

2. 「前文は一般条項的であり,その具体的な内容は本文の各条項において展開されているが,本文にも,前文と同じく一般的抽象的な内容を持つ条項は多く,この点で前文と本文を完全に区別することはできない。」という見解は,裁判規範肯定説に傾きやすい。

3. 「憲法が裁判規範として機能するのは,具体的事件を解決する際に適用される法律の憲法適合性を判断する場合であり,その内容は,法律に比べて一般的抽象的なものであってもよい。」とする見解は,裁判規範肯定説の論拠として利用できる。

4. 「平和的生存権は,単に国政の指導理念にすぎないのではなく,第9条や第3章の人権規定により保障されている法的権利であり,前文は,この権利が存在していることを確認したものである。」という見解は,裁判規範否定説と結びつくことはない。

5. 「憲法には,国政の指導理念を宣明した条項があり,この点については,個別的検討が必要である。」という見解は,裁判規範肯定説・否定説いずれとも矛盾しない。

[63−15] 次の1から5までのAとBは憲法の規定を一定の関係に着目して組み合わせたものであるが,その組合せの関係が他と異なるものが一つだけある。それはどれか。

1.A 両議院は,各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め,又,院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。

  B 国会は,国権の最高機関であって,国の唯一の立法機関である。

2.A 最高裁判所は,一切の法律,命令,規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。

  B 天皇又は摂政及び国務大臣,国会議員,裁判官その他の公務員は,この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。

3.A 国会は,罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため,両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設ける。

  B 特別裁判所は,これを設置することができない。行政機関は終審として裁判を行ふことができない。

4.A 両議院は,各々その議員の資格に関する争訟を裁判する。但し.議員の議席を失はせるには,出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。

  B すべて司法権は,最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。

5.A 両議院の議員は,法律の定める場合を除いては,国会の会期中逮捕されず,会期前に逮捕された議員は,その議院の要求があれば,会期中これを釈放しなければならない。

  B すべて国民は,法の下に平等であって,人権,信条,性別,社会的身分又は門地により,政治的経済的又は社会的関係において,差別されない。

[63−16] ある論者は,「近代以降,法解釈においては,なぜ論理的厳密性,特に形式的な論理的厳密性が強く要求されるのであろうか。これは,次のような実践的要因からの要請であると考えられる。」と述べた後,これを具体的に説明している。次の1から5のうち,理論上この説明になっていないと思われるものが一つある。それはどれか。

1.近代的な三権分立制が完成すると,そこでは,立法者が苦労して作った完全な法律が骨抜きにならないよう,法律による裁判官の厳格な拘束が必要とされる。

2.資本主義社会においては,行動の予測ができることは大きな社会的要請であり,裁判の結果がまちまちにならぬよう法的安定性の要請が重視される。

3.裁判が公開され,判決が公刊されると専門化等による判決の批判的研究が行われるようになるので,裁判の結果及び過程が一般の批判に耐えるものであることが要求される。

4.近代的司法制度の下では,裁判については上級審による審査が予定され,特に上告審では法律問題のみが判断の対象となる制度が生まれるなど,事後審査の制度がとられる。

5.社会的に多様な価値観が生まれるとともに,社会正義の観念もおのずと多様化し,価値の大小やいわゆる利益衡量により妥当な結論を出すという判断手法が重視される。

[63−17] 次のAからDまでの文章中の[ ]に,(a)租税法律主義,(b)法治主義のいずれかの語句を入れた上で,これらの文章を「[  ]。すなわち,[  ]。したがって,[  ]。しかしながら,[  ]。」と並べると,まとまった論述となる。その論述のなかで(a)及び(b)の語句の並ぶ順番は,後記1から5までのうちどれか。

A 近代以前の国家において,国王によって恣意的な課税が行われることが多かったところこれを制限するため「代表なければ課税ないというスローガンのもとに,租税の賦課・徴収は,国民代表議会の制定する法律の根拠に基づくことなしには行使できないという憲法原理が成立,発展することになったのであるが,この意味における[ ]が[ ]の確立に影響を与えたのである

B 現代の取引社会において,[ ]は,国民の経済活動に対して,予測可能性と法的安定性を与えることにその積極的意味があると考えることもできるであろう

C 租税の賦課・徴収は,公権力の行使であるから,[ ]は[ ]の一環としての意味をもつが,歴史的にみると,むしろ[ ]が,[ ]の確立の上で,先導的,中核的な役割を果たしてきたということができる

D 憲法第84条がないとしても,法律によらないで租税を課することができないのは当然であるにもかかわらず,憲法が特に租税について別個の規定を設けたのはこのような歴史的な背景があったこともその理由の一つとして指摘できよう

1.(a) (b) (a) (b) (a) (b) (a)

2.(b) (a) (b) (a) (b) (a) (b)

3.(a) (b) (b) (a) (b) (a) (a)

4.(b) (a) (b) (a) (b) (a) (a)

5.(a) (b) (a) (b) (b) (a) (a)

[63−18] 次の文章中の[ ]に下記のAからFまでの語句を入れる場合,その組合せとして最も適切なものは,後記1から5までのうちどれか。

「憲法第29条第3項の『正当な補償』とは,原則として完全な補償を要求するものであるが,例外的には相当な補償で足りる場合もあり得ると解すべきである。そして,相当な補償で足りる例外的な場合というのはできる限り限定的に解すべきである。すると,[ ]の場合([ ]の場合を除く。この場合は[ ]。)には[ ]が,[ ]の場合には[ ]との立場は,上の例外的な場合をあまりに拡大するものであって正当でない。ちなみに.土地収用法は,広く公共の利益となる事業の用に供するための土地の収用につい『近傍類地の取引価格等を考慮して算定した事業の認定の告示の時における相当な価格に,権利取得裁決の時までの物価の変動に応ずる修正率を乗じて得た額とする。」と定め,さらにそのほかに『通常受ける損失』をも補償すべきものとしている。この趣旨は[ ]ことを意味するものと解される。すなわち現行法は,[ ]の場合においても原則的には[ ]としているのである。」

A 消極的・警察的規制        D 補償を要しない

B 積極的・社会経済政策的規制    E 相当な補償で足りる

C 内在的制約として受忍すべき規制  F 完全な補償を要する

1.A B E F C D E B F

2.B C D F A E F B F

3.C A F D B E E A E

4.B A D E C F E B E

5.A C D F B E F B F

−−[63−19]から[63−20]まで−−

次の文章を読んで,後記の[63−19]と[63−20]の各問に答えよ。

「アメリカ合衆国においては,憲法解釈の在り方をめぐって,選挙を通じて責任を負う立法部および行政部によってなされた政策選択にかわって,積極的に司法部が自己の政策選択に従って判断することを是認する“非解釈的司法審査主義”と司法部が自己の政策選択をなさず憲法を制定した者によって憲法化された政策選択を単に守るにとどまるべきであるとする“解釈的司法審査主義”との二つの立場の対立がある。」

[63−19] 次の文章のAからEまでの論述は上記の二つの主義のいずれかを主張する者の発言であるが,“非解釈的司法審査主義”を主張する者の発言は何個あるか。

A 裁判官の任務は,憲法上の価値に意味を与えることである。裁判官は,これを,歴史及びその時々の社会の理想を参酌して行う。

B 制憲資料が優先されるべき価値を明確に特定していない場合には,ある人間的価値を他よりも優先させることを憲法上合理的に説明することはできない。

C ある利益が他の利益よりも重要である場合を裁判所はどのようにして判別するのかと尋ねられれば,裁判官は,立法者と同様に,経験と研究と思索,一言でいえば人生そのものから,知識を得なければならないと答えるほかないであろう。

D 個人の権利に関する憲法判例の大部分の正当性は,18世紀末葉の価値よりも20世紀の価値にはるかに多くを依拠しているのである。

E 裁判所は,立法部の行った価値選択が明らかに合衆国憲法の制定にあたって行われた選択と衝突しない場合には,それを受けいれなければならない。

1.0個  2.1個  3.2個  4.3個  5.4個

[63−20] 次の論述は,“解釈的司法審査主義”を主張する者の論述である。[  ]内には「多数派」又は「少数派」のいずれかが入るがその組合せとして正しいものはどれか。

「[  ]の横暴は,立法が個人的自由に委ねられるべき領域を侵害するという形で生起する。[  ]の横暴は,[  ]の権限が正当性を持っているのに支配を妨げられるという現象となって現れる。しかし,多数派にも少数派にも,他方の権利の範囲を画定することを任せることができないことは明らかである。このジレンマは,合衆国憲法の解釈によって多数派及び少数派の両者の自由を解決する最高裁判所の権限により解消されるのである。社会は,合衆国憲法の中で表明され,かつ合衆国憲法によって[  ]の手の届かないところに置かれた一定の永続的な諸原則によって画定された領域においては,非民主的に統治されることに同意を与えている。したがって,最高裁が多数派と少数派の自由のそれぞれの領域についての憲法から導き出された有効な理論を示し得る場合においてのみ最高裁の権威は正当であるということになる。」

1.多数派 多数派 少数派 少数派

2.少数派 多数派 少数派 多数派

3.多数派 少数派 多数派 少数派

4.少数派 多数派 多数派 多数派

5.多数派 少数派 多数派 多数派

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