[H03−01] 次の1から7は,日本国憲法の規定と当該規定を具体化した法律との対比関係を示したものであるが,適切でない組合せはいくつあるか。

1 何人も,公務員の不法行為により,損害を受けたときは,法律の定めるところにより,国又は公共団体に,その賠償を求めることができる(第17条)。……刑事補償法

2 すべて国民は,法律の定めるところにより,その能力に応じて,ひとしく教育を受ける権利を有する(第26条第1項)。……教育基本法

3 賃金,就業時間,休息その他の勤労条件に関する基準は,法律でこれを定める(第27条第2項)。……労働基準法

4 何人も,法律の定める手続によらなければ,その生命若しくは自由を奪はれ,又はその他の刑罰を科せられない(第31条)。……刑事訴訟法

5 両議院の議員及びその選挙人の資格は,法律でこれを定める(第44条)。……国会法

6 内閣は,法律の定めるところにより,その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する(第66条第1項)。……内閣法

7 すべて司法権は,最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する(第76条第1項)。……裁判所法

1.1個  2.2個  3.3個  4.4個  5.5個

[H03−02] 裁判の公開を保障した憲法第82条第2項ただし書の「この憲法第3章で保障する国民の権利が問題となってゐる事件」の解釈について「この規定の目的とするところを考え,限定的に解釈すべきである。すなわち,第3章で保障されている国民の基本的人権に対し法律によって制限が課せられ,その制限に違反したことが犯罪の構成要件とされている犯罪の事件と解すべきである。」との見解に立った場合,次のうち,「この憲法第3章で保障する国民の権利が問題となってゐる事件」に該当するものはどれか。

1.財産権の不可侵(第29条第1項)を守るための窃盗罪

2.営業の自由(第22条第1項)を守るための威力業務妨害罪

3.信書の秘密(第21条第2項)を守るための信書開披罪

4.奴隷的拘束を受けない自由(第18条)を守るための公務員による暴行陵虐罪

5.人の名誉,プライバシー(第13条)を守るための名誉毀損罪

[H03−03] 居住の自由に対する制約として,最も違憲の疑いの強いものはどれか。

1.人口の過密化防止,美観保持の観点から,特定の都市への移転を制限すること。

2.破産者は,裁判所の許可を得るのでなければ,その住所を離れることができないとすること。

3.特定の疾病に罹患した者を隔離して,病院に強制入院させるとすること。

4.住民が住所を変更したときは,市町村長に届出をしなければならないこととし,これを怠った者に過料を科することとすること。

5.刑事被告人を保釈するに際し,裁判所がその住居を制限できるとすること。

[H03−04] アメリカ合衆国憲法は,修正第6条で「すべての刑事訴追において,被告人は,犯行があった州及びあらかじめ法律によって定められるべき地区の公平な陪審によって行われる,迅速かつ公開の裁判を受ける」と,修正第7条で「普通法上の訴訟において,訴訟物の価額が20ドルを超えるときは,陪審による裁判の権利が認められる。陪審によって認定された事実は,合衆国のいずれの裁判所においても,普通法の規則によるほか,再審理されることはない」と,それぞれ規定して,同国における刑事及び民事の各裁判につき陪審制の保障を定めている。我が国の裁判にこのような陪審制を採り入れるとした場合に考えられる憲法上の問題点に関する次の記述のうち,最も不適切なものはどれか。

1.憲法第32条は裁判を受ける権利を保障しているが,裁判とは裁判官による裁判であるから,陪審員を裁判に関与させることは同条に違反する。

2.裁判官は,下級裁判所の場合であっても,最高裁判所の指名した者の名簿によって内閣で任命される必要があるから,かような任命手続を経ていない陪審員が判決に関与することは,裁判官の選任手続を定めた憲法第80条に違反する。

3.憲法第76条第2項は特別裁判所の禁止を定めているが,陪審員が裁判に関与することは,通常の裁判所のほかに特別の裁判所を設置することになるから,同項に違反する。

4.憲法第76条第3項は「すべて裁判官は,その良心に従ひ独立してその職権を行ひ,この憲法及び法律にのみ拘束される」と定めているところ裁判官が裁判をなすに当たり陪審員の評決に何らかの意味で拘束されることになれば,同項に違反する。

5.日本国憲法は,全体としてアメリカ合衆国憲法を継受しているが,後者に陪審制に関する規定があるのに前者に陪審制に関する規定が設けられなかったことは,前者においては陪審制を否定していると解釈すべきである。

[H03−05] 国の統治制度と普通地方公共団体のそれとの対比を述べた次の各記述のうち,憲法解釈として正しいものはどれか。

1.国会に代えて,選挙権を有する国民の総会を設置することはできず,また町村についても,議会に代えて,選挙権を有する住民の総会を設置することはできない。

2.ある政策問題について国会と内閣が対立したり,国論が分裂するような場合に,一定数の国会議員の発案により,国民投票によって国会の決定に代えるという制度を定めることはできず,また,普通地方公共団体の住民による条例の制定又は改廃についての直接請求制度を設け,これを議会に付議しなければならないと定めることもできない。

3.衆議院の解散について,内閣以外に国民が解散権を行使することはできず,また,普通地方公共団体の議会の解散についても,議会が長に対する不信任の議決をした場合の長による解散のほかに,住民による直接請求制度に基づく解散を定めることはできない。

4.内閣総理大臣の指名について,国民の直接選挙によると定めることはできず,また,普通地方公共団体の長の選挙についても,住民の間接選挙によると定めることはできない。

5.内閣の総辞職について,衆議院が内閣に対する不信任の議決をした場合でも総辞職の効果は発生しないと定めることはできず,また,普通地方公共団体の長の解職についても,議会が長に対する不信任の議決をした場合でも解職の効果は発生しないと定めることはできない。

[H03−06] 天皇は,象徴としての地位と私人としての地位の二つの側面を有し,後者の場合は日本国憲法第3章の定める国民の権利及び義務の主体となるが,象徴としての地位を有することから,私人たる一般国民と異なる取扱いをうける権利又は義務があるとする見解がある。そのような権利又は義務は各群ごとにいくつあるか。後記1から5までのうち最も適切なものはどれか。

ア群 a 通信の秘密           b職業に就く自由

   c 公務員の選挙に立候補する自由  d思想良心の自由

   e教育を受ける権利

イ群 a 政治活動の自由  b学問をする自由  c外国移住の自由

   d信仰の自由     e国籍離脱の自由

ウ群 a 婚姻の自由  bプライバシーの権利  c財産権の保障

   d 財産譲渡又は譲受の自由  e納税の義務

1 ア2個  イ2個  ウ3個   2 ア2個  イ3個  ウ2個

3 ア3個  イ3個  ウ2個   4 ア3個  イ3個  ウ3個

5 ア4個  イ2個  ウ3個

[H03−07] 憲法第25条において,次のアないしウを根拠とした諸見解が主張されているが,下記の@ないしBの論点をそれぞれの見解をもとに検討した場合,それぞれの見解の説明として,下記の1から5のうち適当なものはどれか。

ア 国家の積極的施策の決定は,政府との関係においては,責任内閣制のもとでの政府が財政その他を考慮して自らの貴任にもとづいてなされるものであり,全て政府の裁量に委ねられている。又,国会との関係においては,国権の最高機関である国会に対して裁判所が法律の作成を命じることはできないという権力分立の原則が要請されている。

イ 国の国民の生存権を保障する義務は全く任意自由な立場にあるわけではなく,法律上具体化されたものに関しては,その権利としての性格を無視することはできないので,生存権は憲法第25条のみを根拠とした場合,権利は形骸としてしか存在しないが,それを実施する法律によって空白が埋められ,権利が実質化される。

ウ 憲法第25条はその権利主体・権利内容・規範の名宛人において合理的にかつ客観的に確定可能な規範内容をもっており,その諸要素は行政権がその規範内容を施行する要件としては十分とは言えないが,立法権・司法権がその規範命令内容を実現する要件としては十分である。

論点 @生活困窮者が裁判所に訴えて,憲法第25条のみを根拠に生活費を請求することができるか。

   A立法府が生存権具体化立法を制定しない場合,立法府の不作為による違憲確認訴訟は提起できるか。

   B憲法第25条は特定の法律・国家行為を違憲と判断する根拠となりえるか。

1.アを根拠とした見解によるとAにつき肯定し@およびBについて否定することになる。

2.アを根拠とした見解によるとBにつき肯定し@およびAについて否定することになる。

3.イを根拠とした見解によるとAおよびBにつき肯定し@について否定することになる。

4.ウを根拠とした見解によるとAおよびBにつき肯定し@について否定することになる。

5.ウを根拠とした見解によるとBにつき肯定し@およびAについて否定することになる。

[H03−08] 次のAからFまでの記述は,司法審査の限界に関する下記アないしウの法理のいずれかと関連を有するが,その関連する個数につき正しいものは後記1から5までのうちどれか。

A 宗教活動は,憲法上国の干渉からの自由を保障されているものであるから,宗教上の教義にわたる事項のごときものについては,仮にそれが訴訟上の当否を判断するにつき不可欠な前提問題であるとしても,国の機関である裁判所がこれに立ち入って実体的な審理判断を施すべきものではない。

B 衆議院解散の効力は,訴訟の前提問題としても,裁判所の審査権限の外にある。

C 行政事件訴訟法第27条によれば,行政処分取消訴訟の提起に伴う執行停止の申立があった場合において,内閣総理大臣から,処分の効力を存続しなければ公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあることを理由として異議の陳述があったときは,裁判所は執行停止決定をすることができないとされている。

D 地方公共団体の議会の議員に対する出席停止の懲罰議決の適否は,裁判所の審査権限の外にある。

E 大学における授業科目の単位授与行為は,一般市民法秩序と直接の関係を有するものであることを是認するに足りる特段の事情のない限り,司法審査の対象にならない。

F 土地区画整理法第66条第1項に基づく土地区画整理事業計画の決定は,その公告がなされた段階においても抗告訴訟の対象とならないものと解すべきである。

ア 三権分立  イ 部分社会の法理  ウ 事件性

1.ア1個 イ3個 ウ2個   2.ア3個 イ2個 ウ1個

3.ア3個 イ3個 ウ0個   4.ア2個 イ2個 ウ2個

5.ア2個 イ3個 ウ1個

(注)土地区画整理法第66条第1項

 「建設大臣,都道府県知事又は市町村長は,第3条第4項の規定により土地区画整理事業を施行しようとする場合においては,施行規程及び事業計画を定めなければならない(以下略)」

[H03−09] 憲法の保障する権利・自由は,元来公法秩序に属するものとして,対国家との関係で理解されてきたが,今日,社会の複雑化に伴い,私人間でも憲法の人権規定の適用が問題となるに至り,基本的人権の保障の効力は公法・私法を問わず全法領域において妥当すべきものであり,私人間においても直接基本的人権を主張し得るとする見解と,人権規定は私人間には直接適用されないという伝統的立場に立ち,法律の概括的条項又は文言,特に民法第90条の公序良俗違反のような私法の一般条項の解釈を通じて,憲法を間接的に私人間の行為に適用するとする見解とが主張されている。しかし.後者の見解に立っても,憲法の規定上,あるいはその趣旨・目的から,当然に直接的な私人間効力を持つと解し得る人権規定があるとされている。そのような人権規定は,次のAからGまでのうちいくつあるか。

A 法の下の平等(第14条第1項)

B 投票の秘密(第15条第4項)

C 奴隷的拘束及び苦役からの自由(第18条)

D 思想及び良心の自由(第19条)

E 表現の自由(第21条)

F 児童の酷使の禁止(第27条第3項)

G 勤労者の団結権(第28条)

1. 1個  2. 2個  3. 3個  4. 4個  5. 5個

[H03−10] 憲法第19条の「思想及び良心の自由」の意義につき,人の内面における精神的活動全般を広く包摂し,世界観などに限らず,事物に関する知識,是非弁別の判断を含むとする見解と,人の内面的精神活動のうち,宗教上の信仰に準ずべき世界観,人生観,主義等個人の人格形成の核心をなすものに限定する見解があるが,後者の見解に立った場合,次の1から5までのうち,誤っているものはどれか。

1.判決で謝罪広告を強制することは,謝罪広告が名誉毀損にかかる事実の存否に関係し,世界観や人生観や主義などに関係しないから,第19条の「思想及び良心の自由」を侵害しない。

2.裁判において,証人に偽証罪の警告をして証言を強制することは,証言が事実に関する知識に関係し,その開示を強制されるにすぎないから,第19条の「思想及び良心の自由」を侵害しない。

3.国家公務員の採用に関し,「憲法を尊重し擁護する」旨の宣誓を課すことは,その者の主義や主張に関係するが,国家公務員は憲法尊重擁護義務を負うから第19条の「思想及び良心の自由」を侵害しない。

4.国家公務員の採用に関し,過去における政治活動や思想団体への所属について,申告を求めることは,過去の事実の存否に関係するにすぎないから,第19条の「思想及び良心の自由」を侵害しない。

5.戦前の「教育勅語」は,国が一定の思想又は世界観を勧奨した例であり,同様のことを国が行うことは,日本国憲法のもとでは第19条の「思想及び良心の自由」を侵害する。

[H03−11] プライバシーの権利の内容を「私生活をみだりに公開されないという権利」(A説)と「自己についての情報をコントロールする権利」(B説)とに区別して,次のaないしeの請求をプライバシーの権利に基づくものと考えた場合,請求の理由付けにおいて,B説を根拠とした方が説明の容易なものはいくつあるか。

a テレビ放送で自己の名前を誤って呼称されたことにより精神的苦痛を受けたとする者からのテレビ局に対する慰謝料の請求。

b 病院内に患者として入院中の姿を無断で撮影され,その写真を雑誌に掲載・販売されたことにより精神的苦痛を受けたとする者からの出版社に対する慰謝料の請求。

c 再審で無罪が確定したにも力め・わらず,市町村長がろQ罪人名簿にその旨の記載をせず,放置したことにより,精神的苦痛を受けたとする者からの市町村長に対する慰謝料の請求。

d 自宅内で休息中の姿を塀越しに無断で撮影され,その写真を雑誌に掲載された者からの出版社に対する既に頒布済みの雑誌を読者から回収することを求める広告掲載の請求。

e 厚生省援護局の旧日本軍の兵役時代に関する身上調査票上,逃亡により兵役から離れたという誤った記載があるとする者からの国に対する訂正・抹消の請求。

1.1個  2.2個  3.3個  4.4個  5.5個

[H03−12] 次の1から5までのうち,わが国の衆議院議員選挙で採用されている中選挙区制と明らかに結び付かないものはどれか。

1.同一選挙区内に複数の候補者を立てることができる政党があれば,選挙人は同一党派内の候補者の中から自分の気に入った個人を選択できること。

2.人口の変動に伴って選挙区間の一票の重みも変化するので,絶えずその調整が必要であり,そのため選挙区の境界変更が必要になることもあり得ること。

3.共食い共倒れ,すなわち同じ党派の候補者又は与党もしくは野党の候補者同士が互いに争い,同じ程度の得票で一緒に落選することがあり,逆に有権者はどちらでもよい2人以上の候補者について思い迷うことになること。

4.わずかの得票差の場合でも議席差を大きくでき,安定した議会勢力を作ることができること。

5.小選挙区制の結果よりは比例代表制,すなわち国民の意見分布に近い結果になること。

[H03−13] 仮に次の1から5のような内容の法律改正をした場合,明らかに憲法に抵触することになるものはいくつあるか。

1 現行の弁護士法は,行政官庁及び裁判所の,弁護士及び弁護士会に対する監督権を一切認めず,いわゆる弁護士自治を定めているが,これを改め,法務大臣又は最高裁判所長官の監督に服すること。

2 現行の警察制度は,国家警察と都道府県警察の二本立てとなっているが,内閣の治安責任を明確ならしめるため,警察法を改正し,国家警察に一元化すること。

3 現行の刑事訴訟法第247条は,刑事につき公訴を提起する権限を国家機関たる検察官に与えているが,これを廃止して,刑事訴追するか否かは,有権者の中から公正な方法で選任された数名の者の議決するところによると改めること。

4 現行の裁判官分限法は,裁判官に対する懲戒処分として戒告及び過料を定めているが,一般職国家公務員と同じく,減給処分もできるように定めること。

5 公害紛争処理法は,総理府の機関たる公害等調整委員会に,公害に係る民事紛争につき責任を裁定する権限を与え,一定の要件をみたすとき,「その損害賠償に関して,当事者間に当該裁定と同一内容の合意があるとみなす」と定めているが,これを改め,この裁定には確定判決と同一の効力があるとすること。

1.1個  2.2個  3.3個  4.4個  5.5個

[H03−14] 次のA群は選挙に関する憲法上の諸原則を表示したものである。B群の各記述のうち,A群のいずれの原則にも全く結び付かないものはいくつあるか。後記1から5までのうち,正しいものを選べ。

A群 1 平等選挙  2 普通選挙  3 直接選挙

   4 任意投票  5秘密投票

B群 1 選挙権のない者のした投票について,その投票が何人に対してなされたかは,議員の当選の効力を定める訴訟手続においても,取り調べてはならない。

   2 衆議院議員の選挙における選挙区割と議員定数の配分をどうするかは,基本的には,立法府である国会の権限に属する立法政策の問題と解されるが,各選挙区の議員1人当たりの選挙人数と全国平均のそれとの偏差が約5対1の割合に達しているときは,国会の政策的裁量の範囲を越えている。

   3 多数の選挙人の存する選挙においては,誰を選ぶかを各選挙人の完全な自由に放任したのでは選挙の目的を達成することが困難であるため,公職選挙法は自らの代表になろうとする者が自由な意思で立候補し,選挙人は立候補者の中から自己の希望する代表者を選ぶという立候補制度を採用している。したがって,選挙に立候補しようとする者がその立候補について不当に制約を受けるようなことがあれば,選挙人の自由な意思の表明を阻害することとなり,自由かつ公正な選挙の本旨に反する。

   4 例えば参議院議員の選挙について都道府県議会の議員が選挙人となって選挙すると定めることは,憲法上許されないわけではない。

   5 国民が選挙権を行使することは,公務としての側面を持っており,この意味で投票は義務としての性格を帯びている。したがって,課される不利益が合理的な種類・範囲にとどまる限り,投票義務を法的義務とすることは,憲法上許されないわけではない。

1.1個  2.2個  3.3個  4.4個  5.0個

[H03−15] 仮に「新聞紙が選挙の特定候補者を批判する場合,同新聞はその候補者からの請求があれば,同人のその点に関する回答を,その回答を必要とさせた記事と同じ程度の形式で直ちに無料で公表しなければならない」という法律が制定されたとする。同法律については,次の〔A〕及び〔B〕の見解が考えられ,下記1から7まではそのいずれかの論拠を列挙したものであるが,〔A〕の見解の論拠となり得るものはいくつあるか。

〔A〕 この法律は,表現の自由を制限するものでなく,合意である。

〔B〕 この法律は,表現の自由を侵害するものであり,違憲である。

1 読者の側における「知る権利」を保障するために,新聞の掲載した記事とは相反する情報をも読者に伝達する必要が大きい。

2 この法律は,公職の立候補者に対する批判記事に関する反論のみという狭い分野に限っておりまた新聞社は反論を掲載した場合,その再反論を掲載することまで禁止されるものではない。

3 新聞社は,反論の内容が編集方針に反するときでも,その掲載を強制されることになり,このことが批判記事に対する萎縮効果を生じさせるおそれがある。

4 この法律は,名誉毀損でもない記事の掲載について新聞を懲戒し,かつ真実にして善意の批判が相手方に反論の権利を生じせしめるものである。

5 何人に対してもその欲する発言を禁止し,規制してはならないと同時に,何人に対してもその意に反する発言や発表を強制することは許されない。

6 この法律は,新聞による批判を排斥するものでなく,自由な討論の雰囲気を確保しようとするものであり,新聞紙に特定の記事の排斥を命ずるものではない。

7 新聞社は,何を掲載すべきかというジャーナリズムの判断の行使に影響する事項について,国家による規制に服せしめられるものではない。

1.1個  2.2個  3.3個  4.4個  5.5個

[H03−16] 後記1から5までの記述のうち,次の考え方と相容れないものはどれか。

「憲法は,第10章として『最高法規』の章を設け,第98条1項において,憲法が国法秩序の中で最も強い形式的効力を有していて,それに反する一切の国内法は効力を有しない旨を宣言しているが,『最高法規』の章の冒頭には,基本的人権の本質に関する第97条を置き,国民に保障される基本的人権が永久,不可侵であることを確認している。後者は,憲法の根本規範性に着目して性質・内容面からみた実質的な最高規範性を規定したものということができ,前者が宣言する形式的な最高規範性と密接な関連を有していると考えられる。」

1 憲法第98条第1項は,憲法第96条が憲法の改正に通常の立法手続と異なる特別厳重な手続を要求している以上,第96条の論理的帰結を確認したものである。

2 個人の人権を国家権力から不可侵のものとして保障することは,近代憲法において核心的原理であった。基本的人権の思想と根本法である憲法とは,歴史的に密接不可分に結び付いて生成されてきたものである。

3 実定法に内在する価値ないし理念の探究は自然法的・政治的なものとして排斥されるべきであり,憲法の形式的論理構造の解明こそが重要であると考えられるから,このような観点から日本国憲法の「最高法規」の条項を検討すれば,憲法第97条は,基本的人権の享有について規定した憲法第11条と重複する規定ということになる。

4 「最高法規」の章の冒頭に基本的人権の本質に関する憲法第97条が置かれているのは,日本国憲法の「最高法規」性の実質的根拠が何よりも基本的人権の実現にあることを明確にしようとする趣旨である。

5 憲法規範はすべて価値的に同列にあるのではなく,より本質的な規定とそうでない規定とがある。人格不可侵(基本的人権の保障)の原理や,国民主権を中核とする民主政治の原則は憲法の各規定の中でも,他の規定に比し価値的にみてより本質的な規定というべきである。

[H03−17] 国会議員の不逮捕特権に関する次のAからEまでの記述のうち,明らかに誤りと考えられるものはいくつあるか。

A この制度は,歴史的には議会制度の発展過程において生成してきたものであり,その趣旨は,政府が反対党の議員を政治的・政略的な目的で不当に逮捕して議会を支配しようとすることを防ぎ,議員及び議院の自由な活動を保障しようとすることにある。

B 憲法第50条にいう不逮捕特権の例外である「法律の定める場合」として院外における現行犯罪の場合があるが,これは現行犯罪の場合は犯罪の事実が明白であり,理由なく不当に逮捕されるおそれがないからである。

C この特権は国会の会期中においてのみ妥当するが,緊急集会中の参議院は国会の代行機能を果たすのであるからその期間中の参議院議員にも同様の特権が妥当する。

D 不逮捕特権の制度趣旨からすると,この特権には訴追されない権利をも含むと解すべきである。

E 逮捕には,司法的な逮捕・勾引・勾留のほ行政的な拘束(保護拘束や保護措置)も含むと解すべきである。

1.1個  2.2個  3.3個  4.4個  5.5個

[H03−18] 裁判と民主主義の関係についての次の文章の( )に,下記のaからfまでの語句を入れた場合,最も適当な順序となるものは後記1から5までのうちどれか。

「裁きの神ディーケーは,正義の秤を手に毅然として独り立つのである。そこには( )ならぬ,本来の意味での( )が象徴されていないか。本来のノモスコフチア(規範の支配)とは,相対的正義として決断されるそのときどきの民衆意思ではなく,事物の本性から認識される恒常的な合理的( )判定を委ねることを意味している。裁判はたとえ民主主義政体の下でも,究極的にはそのようなノモスクラシー的要素を払拭することはできないのではなかろうか。

 ここにおいての( )と( )は相対主義と絶対主義の関係として根本的な違和を生ずるであろう。このことは現実におけるデモクラシーの作動原理として,必然的な多数決原理が( )の場面では大きくその妥当性を制約されている。又,制約されざるを得ないところに端的に競われる。すなわち( )の認識は冷静で専門的( )の働きとして本質的に主意的で政治的な( )になじみ難い。かくて判決は決して裁判関係者全員の多数決によっては下されないであろう。それは実に訴訟当事者にとっては第三者であるところの法的判断の専門家,すなわち,現代のディーケー裁判官の専権とされるのである。」

a 裁判  b 民主主義   c 多数決

d 理性  e 規範の支配  f 規範

1.abdcfeafb 2.dadebfdca 3.fdcfebdab

4.befbaafdc 5.eadcdfbaf

[H03−19」 憲法第21条第2項は,「検閲は,これをしてはならない。」と規定しているが,この条項の解釈についての学説として,@「検閲とは,AがBという行為をすることであり,その禁止は絶対的なものである。」,A「検閲とは,CがDという行為をすることであり,その禁止は絶対的なものである。」,B「検閲とは,EがFという行為をすることであるが,例外的に禁止されない場合もある。」という三つの説があるとする。以下の1から5までの記述は,上記のAないしFの意味内容について一定の仮定に立った場合に,ある具体的な行為が違憲とされるかどうかということについて述べたものであるが,誤っているものはどれか。

1.AとCが同一で,DがBを含むより広い概念であった場合には,ある行為が@説では合憲とされるがA説では違憲とされるということもあり得る。

2.AとE,BとFがいずれも同一概念であった場合には,@説で合意とされる行為はB説によっても必ず合憲とされるということになる。

3.AとEが同一,BがFを含むより広い概念であった場合でも,@説で合憲,G説で違憲という場合も考えられる。

4.CがEを含むより広い概念で,DとFとが同一であった場合には,A説で合憲とされる行為はB説によっても必ず合憲とされるということになる。

5.EがCを含むより広い概念で,DとFが同一であった場合には,ある行為がA説では合意であるがB説では違憲であるということも,逆にB説では合憲であるがA説では違憲であるということも,いずれも考えられる。

[H03−20] 憲法は,第12条において,国民が人権について「常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ」ことを,第13条において,人権は「公共の福祉に反しない限り,立法その他の国政の上で,最大の尊重を必要とする」ことを定める一方,個別の人権規定である居住移転及び職業選択の自由(第22条)並びに財産権(第29条第2項)において,特に明文で「公共の福祉」による制限を規定している。このような規定のもとで,基本的人権と公共の福祉との関係について次の2説があるが,後記1から5までのうち,A説からB説に対する批判の論拠となり得ないものはどれか。

A説 「公共の福祉」を基本的人権の一般的制約原理と捉え,第12条,第13条の「公共の福祉」による制約に実定法上の法的意味を認めるとともに,第22条,第29条第2項のそれは注意的規定であると解する見解。

B説 基本的人権が「公共の福祉」により制約されるのは,第22条,第29条第2項のように憲法が特におく人権規定によって明らかにしている場合のみであり,それ以外の人権は「公共の福祉」によって制約されることがなく,第12条,第13条の「公共の福祉」についての定めは訓示的規定であるとする見解。

1,憲法第13条の「生命,自由及び幸福の追求に対する国民の権利」は,憲法に列挙されていないプライバシー権等個人の人格的権利を包括的に保障した規定と解され,その実定法上の効力も認められているのに,同一文中の「公共の福祉」に限って別異の解釈をされるのは便宜的であって整合的でない。

2.「公共の福祉」を理由にすべての人権が制約できるとすれば,日本国憲法が明治憲法と異なって「法律の留保」を認めずに個人主義の立場から人権を保障した意義が失われることになる。

3.憲法第13条の規定を訓示的規定であるとすると,第13条を新しい人権を基礎付ける包括的な人権条項と解釈することが困難となる。

4.自由権と社会権の区別は相対的に止まることからすれば,権利・自由の性質上の差異から一律に限界の有無を導き出すことが可能かどうか疑問である。

5.憲法第22条,第29条2項には第13条の保障が及ばないことになり,第22条,第29条第2項の制約につき広範な立法裁量が認められることになってしまう。

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