[H05−01] 国政調査権に関する次の1から5までの記述のうち,誤っているものはどれか。

1.適法な調査に付随して個人の犯罪容疑が明るみに出たとしても,直ちに当該調査が国政調査権の範囲を逸脱したということにはならない。

2.裁判所が審理を開始した事件を議院が並行して調査し,議院が当該事件の担当裁判官を証人として喚問することは,司法権の独立を侵害することになり,国政調査権の範囲を逸脱する。

3.深刻な物価問題に対する国民の不信と疑惑に応えて,その原因を解明し,将来の法律の制定改廃に資するために行う調査は,国政調査権の範囲を逸脱する。

4.特定の人が罪を犯したか否かを探索し,摘発する目的で行われる調査は,国政調査権の範囲を逸脱する。

5.国政調査権は,議院の憲法上の権能を実効的に行使するために認められた補助的権能であるという見解に立てば,ただ単に国民の知る権利に応えるという目的のみで調査することは,国政調査権の範囲を逸脱する。

[H05−02] 検閲の概念について,次のA及びBの定義がある。後記1から5までの記述のうち,正しいものはどれか。

(定義A) 公権力が,外に発表されるべき思想の内容を事前に審査し,不適当と認めるときは,その発表を禁止すること

(定義B) 行政権が,表現行為に先立って,その内容を事前に審査し,不適当と認めるときは,その表現行為を禁止すること

1.監獄法,監獄法施行規則に基づき,刑務所長が在監者に対し,一定の犯罪報道記事が掲載されている新聞の閲読を禁止することは,定義Aによっても定義Bによっても検閲に該当する。

2.公職選挙の候補者の名誉を著しく害する内容の出版物について,裁判所がその販売,頒布を事前に差し止めることは,定菱Aによっても定義Bによっても検閲に該当する。

3.青少年保護育成条例に基づき,知事が有害図書を指定しその販売を規制することは,定義Aによっても定義Bによっても検閲に該当する。

4.公安条例に基づき,公安委員会が集団示威行進を日時,場所について規制することは,定義Aによっても定義Bによっても検閲に該当しない。

5.風俗の取締りを目的として,行政機関がわいせつ物にあたる写真集の出版を事前に差し止めることは,定義Aによっても定義Bによっても検閲に該当しない。

[H05−03] 請願権に関する次の1から5までの記述のうち,誤っているものはどれか。

1.請願は,広く一般公共的事項について行うことができるが,請願者自身の利害に関するものであることが必要である。

2.請願は,国籍の内外を問わず,することができる。

3.請願は,国家機関がその内容について審理し,何らかの判定や回答をすべき義務まで含むものではない。

4.請願は,憲法第16条に掲げられた対象に関してのみならず,憲法の改正の発議についても行うことができる。

5.請願権には,参政権的機能を認めることもできる。

[H05−04] 天皇が国会の開会式に出席して「おことば」を述べる行為の合憲性を認める見解の論拠として,次のA,B及びCの三つがある。これに関する後記1から5までの記述のうち,誤っているものはどれか。

A「おことば」を述べる行為は,国事行為の一つとして,憲法第7条第10号の定める「儀式を行ふこと」にあたる。

B「おことば」を述べる行為は,憲法第1条による天皇の象徴としての地位に基づく公的行為である。

C「おことば」を述べる行為は,内閣総理大臣や最高裁判所長官などの場合と同様に,一般的な公的地位に伴う社交的活動としての天皇の公人的行為である。

1.Aの論拠によると,「天皇は,この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ」と規定する憲法第4条の文言を軽視することとなる。

2.Aの論拠によると,憲法第7条第10号の「儀式を行ふこと」とは一天皇が儀式を主宰する場合だけでなく,国家的性格を有する儀式に天皇が参列する場合をも含むこととなる。

3.Bの論拠に対しては,天皇が象徴であり得るのは,憲法の定める権能を行う限りにおいてであるとの批判が可能である。

4.Cの論拠によると,Bの論拠と異なり,摂政や国事行為代行者のように象徴の地位にない者の行為についても,天皇が行う場合と同様に合憲性を説明できる。

5.Cの論拠によっても,内閣は,天皇の公人的行為に対して最終的な責任を免れない。

[H05−05] 条約が直接国内法的効力を有するとの考え方に立った場合に,形式的効力の点で条約と憲法のどちらが優位するかについて,次のAからEまでの記述のうち,憲法優位説の立場からの主張と考えられるものはいくつあるか。

A 憲法は,憲法改正手続に関して加重要件を設けているのに対し,条約の締結手続は,憲法改正手続に比べてはるかに容易である。手続の難易は,形式的効力の優劣に対応すべきである。そうでないと硬性憲法性を損なう。

B 憲法第98条第2項は,条約及び確立した国際法規を誠実に遵守すべき義務を規定するが,これは,有効に成立した条約の国内法的効力を認めその遵守を強調するものであって,違憲の条約をも遵守すべきことまで定めたものではない。

C 条約の締結・承認は,憲法の授権により認められた国家機関の権能であるから,そのような機関の権能の根拠となる憲法を,条約により変更できるというようなことは,背理である。

D 憲法第98条第1項は,法律等の国内法現との関係で憲法の最高法規性を規定しているが,条約は除かれており,しかも,同条第2項では,条約が国内法として効力があることを規定している。

E 憲法は,国際協調主義にのっとり,国家主権を超えた国際秩序を目指すものといえるが,現段階では,そのような国際社会が確立されたとはいえない状態にあるから,このような現状を踏まえた憲法解釈をすべきである。

1.1個  2.2個  3.3個  4.4個  5.5個

[H05−06] 次のAからEまでの記述のうち,明らかに誤っているものが二つある。その組合せは,後記1から5までのうちどれか。

A 憲法第99条は,公務員がこの憲法を尊重し擁護する義務を負うことを明記しているのであるから,公務員に対して,憲法に服従しこれを擁護する旨の宣誓を義務づけても,良心の自由を保障した憲法第19条に違反することはないし,憲法の規定をその定める手続以外の方法で変更することを唱道する公務員を懲戒処分にすることも,憲法第19条及び表現の自由を保障した憲法第21条第1項に違反しない。

B 憲法第27条第1項は勤労の義務を規定しているが,これは国民の勤労の義務を課したものではなく,単に国民は自分の勤労によって生活すべきであるとの建前を宣言したもので何ら法的効果を伴うものではないから,勤労能力を有しながら勤労の義務を果たさず,利用し得る資産,能力その他あらゆるものをその最低限度の生活の維持のために活用することを怠っている者といえども,その者に対して国が生活保護を行わないのは,生存権を保障した憲法第25条第1項に違反する。

C 非常災害その他の緊急時において,防災・救助のために,国民に対して応急的一時的な措置として労務負担を課すことは,それを強制する態様や程度が相当である限り,憲法第18条で禁止される「その意に反する苦役」にはあたらないが,積極的な産業計画のために国民を徴用することは,憲法第18条に違反するおそれがあるのみならず,憲法第22条第1項の職業選択の自由を侵害するおそれもある。

D 租税とは,国又は地方公共団体がその経費に充てる目的で強制的に無償で徴収する金銭であり,新たに租税を課すには法律によるのが原則であるが,地方税については,地方議会が制定する条例によって定めることも可能である。しかし,条約は,国会の承認手続の点で,法律と比べて衆議院の優越が容易に認められるから,条約によって租税を定めることは,租税法律主義を規定した憲法第84条に違反し,許されない。

E 憲法第12条は,国民が自由・権利を濫用しない義務を規定しているところ,この規定に,民法の一般規定を介して私法行為を解釈する原理としての法的意味を認めることも可能である。

1.A B  2.A C  3.A D  4.B D  5.C E

[H05−07] 次の1から5までの記述のうち,正しいものはどれか。

1.国家の政党に対する態度の歴史的変遷を,@政党を敵視する段階,A政党の存在を無視する段階,B国会法や公職選挙法などで政党を承認し合法化する段階,C憲法的編入の段階,に分けた場合,我が国の憲法の下での政党は,Cの段階にあるといえる。

2.政党は,本来民主主義の理念を追求すべきものであるが,この理念を否定する政党を法的に禁止することは,政権を保持する者による恣意的な適用の危険もあり,また理論上も不可能であって,現実にそのような法的規制を行っている国は存在しない。

3.政党による拘束は,自由委任に基づく国民代表の観念とは矛盾するものであるが,国会議員がその所属政党の党議に違反した場合に,当該政党がその議員を除名することは,議員が全国民の代表であることを定めた憲法第43条第1項に違反しない。

4.政党は,憲法第21条第1項の結社の自由の保障を高度に与えられてしかるべき団体でありその保障の中には,組織運営についての自治の権利の保障も含まれるから,政党が党員に対してした除名処分の当否は,それが適正な手続によって行われたか否かの点も含めて司法審査の対象とはならない。

5.憲法は,政党の存在を当然のこととして容認していると考えられる。例えば,議院内閣制は,憲法が政党の存在を前提としていることの表われであるし,また,議員の免責特権も,政党政治の下で初めて重要な意義を持つといえる。

[H05−08] 次のAからEまでの[ ]内に「学問の自由」と「教育を受ける権利」のいずれかの語句を補充した上,これらの文章を「〔@〕。ただ,〔A〕。これに対して,〔B〕。ところで,〔C〕。確かに,〔D〕。」の順に並べると,まとまった論述となる。後記1から5までの記述のうち,誤っているものはどれか。

A [ ]が,これらの自由権と別個独立に憲法により保障されたのは,過去の歴史において政治その他の権力による干渉の対象になりやすかったことに照らして,その主要な担い手である研究教育機関における研究者や教育者の自由な活動を確保する必要性があるという,沿革的な理由によるものである

B [ ]は,下級教育機関については,その目的が真理の探究というよりは,むしろ児童生徒の心身の発達に応じて普通教育をなすことにあることや,児童生徒は必ずしも十分な批判能力を備えていないことなど,大学における活動とその目的や機能上差異があるので,下級教育機関の自治や教師の教授の自由を含むものではないという見解もあるが,公権力によって特定の意見のみを強制されるべきではないという本質的な要請は同じであるから,ある程度の自治や教師の教育の自由を含んでいると考えるのが妥当であろう

C [ ]は,国によって条件整備や機会保障が積極的に配慮されることによって,初めて充足される点において,生存権などとその性格は同じであり,国に対して合理的な教育制度を通じて適切な教育の場を提供するよう求める社会権の性格を有する

D [ ]は,真理の究明のためには,権力からの干渉を排除し,自由な研究活動を保障することが不可欠であることから認められたものであり,内容的には思想及び良心の自由,信教の自由,表現の自由等の自由と本来的に何ら異なるものではない

E [ ]は,その内容を実質的に保障するために,高度な学術研究及び教育の場である大学がその本来的機能である研究教育活動を外部からの圧力を受けることなく自主的自律的に遂行することができるように,大学の自治という制度的な保障や大学における教授の自由を含むということができよう

1.〔@〕に入るべき文章中の[ ]には「学問の自由」が入る。

2.〔A〕に入るべき文章中の[ ]には「学問の自由」が入る。

3.〔B〕に入るべき文章中の[ ]には「教育を受ける権利」が入る。

4.〔C〕に入るべき文章中の[ ]には「学問の自由」が入る。

5.〔D〕に入るべき文章中の[ ]には「教育を受ける権利」が入る。

[H05−09] 次の1から5までの憲法上の原則には,いずれも例外があるが,例外の具体的内容が憲法の明文に定められていないものはどれか。

1.国会単独立法の原則       2.議員不逮捕の原則

3.会議公開の原則         4.両議院同時活動の原則

5.両議院の議決における過半数主義の原則

[H05−10] 次の1から5までのうち,Bの記述がAの見解に対する反論となっていないものはどれか。

1.A 憲法第13条の「生命,自由及び幸福追求に対する国民の権利」には,実体的な権利ばかりでなく,適正な手続的処遇を受ける権利をも含むものと解すべきである。

  B 憲法第13条は,憲法に個別に列挙されていない基本的人権を包括的に保障した規定とみるべきであるところ,適正な手続的処遇を受ける権利は,憲法第31条により保障されている。

2.A 憲法第13条の「生命,自由及び幸福追求に対する国民の権利」は,単に自由権のみならず社会権をも含むものと解すべきである。

  B 憲法は,社会権に関する一群の規定の冒頭に憲法第25条の生存権規定を置いて,その総則的性格を明示している。

3.A 憲法第13条の「公共の福祉」は,基本的人権を制約するための根拠となり得る。

  B 「公共の福祉」を根拠に法律で基本的人権を制約することができるとなると,明治憲法下の法律の留保とかわらないことになる。

4.A 憲法第13条は,裁判上の救済を受け得るような具体的権利の根拠規定と解することはできない。

  B 憲法は,詳細な人権のカタログを設けているが,「個人の尊厳」原理を実質的に保障する上で必要不可欠な権利・自由をすべて個別に挙げることは困難である。

5.A 憲法第22条第1項,第29条第2項のように,憲法が特に「公共の福祉」による制約を認めている場合のほかに,憲法第13条を根拠に基本的人権が「公共の福祉」により制約されていると解すべきではない。

  B 憲法第13条は,すべての権利・自由の基礎となる個人の人格を国政において尊重すべきである旨を宣言した規定であって,いわば訓示規定と解すべきである。

[H05−11] 次の文章は,裁判所の違憲審査権に関して一定の立場に立つ論者の見解である。後記AからEまでの記述のうち,この論者の見解に対する批判となっていないものは,いくつあるか。

「裁判所に違憲審査権を認めながら,その判断に一般的な効力を認めないとすると,裁判所によって違憲とされた法律が,その後も他の者に対して効力を有するものとされ,それを争わない者は常にその適用を免れることができない。このような結果を容認することは,裁判所に違憲審査権を認めた趣旨と矛盾する。」

A 具体的な法律上の争訟の裁判に付随して認められる違憲審査権の性格からいってもまた法律は国会の廃止行為によってのみその存在を失うという原則からいっても,妥当ではない。

B 著しく法的安定性を欠き,一般的に平等かつ普遍的に効力を持つべき法律の性質に反することになるから,妥当ではない。

C 最高裁判所裁判事務処理規則第14条が,最高裁判所において法律が違憲であるとの裁判をしたときは,「その要旨を官報に公告し,且つその裁判書の正本を内閣に送付する」と定めるだけにとどまらず,「裁判書の正本を国会にも送付する」と定めているのは,事後の措置をそれぞれの機関にゆだねる趣旨を示したものと解されるから,妥当ではない。

D 最高裁判所が,法律を違憲と判断したにもかかわらず,国会があくまでもその法律を合憲と解してその廃止を拒否することを許容することになるから,妥当ではない。

E 一種の消極的立法作用を認めることになり,憲法第41条に抵触することになるから,妥当ではない。

1.1個  2.2個  3.3個  4.4個  5.5個

[H05−12] 憲法第90条第1項は,「国の収入支出の決算は,すべて毎年会計検査院がこれを検査し,内閣は,次の年度に,その検査報告とともに,これを国会に提出しなければならない。」と規定しているが,次のうち誤っているものはどれか。

1.決算は,内閣が両議院に同時に提出し,両議院がそれぞれ各別にこれを審査することとし,両院交渉の議案(法律案などのように,先議の議院が決議すれば後議の議院に送付されるもの)として取り扱わないことは許される。

2.決算の審査は,予算の場合と異なり,国会がそれに修正を加えることはできず,また,仮に国会が収入・支出を違法・不当として決算の不承認の議決をしたとしても,その議決は,すでになされた収入・支出の効力になんら影響を及ぼすものではない。

3.決算についても,法律案などと同様に両院交渉の議案として国会の議決を経べきことを国会法で定めることは,憲法上可能である。

4.予算については,衆議院の先議権及び両院の意思が一致しないときの衆議院の議決の効力の優越が認められているのに対し,決算については衆議院の先議権及び議決の効力の優越を法律で規定することは,違憲の疑いがある。

5.決算は,一会計年度における国の収入・支出の実績を示す確定的計数書であり,予算同様法規範たる性質を有する。

[H05−13] 次のAからEまでのうち憲法違反となるものはいくつあるか。

A 検察官の起訴に関し,議院が必要であると判断した一定の事件に限ってその起訴の当不当を国政調査権で調査し,不当であると判断した場合には,国政調査権に基づいて起訴できるとすること。

B 裁判所法を改正し,最高裁判所判事が,国会議員を兼ねることができるとすること。

C 行政事件については,内閣に属する特別な裁判所が審査しそれに対しては普通裁判所に不服を申立てることができるが,事実認定に関して実質的証拠があれば裁判所はそれに拘束されるとすること。

D 財政法を改正し,国会,裁判所のように憲法上独立が認められている機関に対しては,内閣は予算の作成・提出権を有さず,それぞれの機関が独自の予算を作成して提出するものとすること。

E 国会法を改正し,国会議員が国務大臣に選任されたときは,他の議院の議員になった場合にその職を失うのと同様,当然退職者となるとすること。

1.1個  2.2個  3.3個  4.4個  5.5個

ー[H05−14]から[H05−15]までー

 次の教授と学生の会話を読んで,後問の[H05−14]及び[H05−15]について答えよ。

教授「憲法第7条第3号には,天皇の国事行為として『衆議院を解散すること。』と規定されているが,君はこれをどのように解釈するのかね。」

学生「内閣が,憲法第7条第3号の天皇の国事行為に対する助言・承認を通じて,衆議院の解散を決定する実質的権限を持つことの論拠となると考えます。」

教授「しかし,そもそも天皇の国事行為というのは,形式的・儀礼的な行為にすぎないはずだから,それに対して内閣が助言・承認を行うことができるからといって,直ちに内閣が衆議院の解散を実質的に決定することができるということにはならないのではないかね。」

学生いいえ。衆議院の解散をはじめとする天皇の国事行為は,本来的には政治的な行為なのですが,内閣がこれに対する助言・承認権を持つことによって,形式的・儀礼的な行為になると考えます。つまり.内閣が助言・承認によりその実質的な決定権を持つことによって,天皇の国事行為が,形式的な『国政に関する権能』という性質を有しないものになると考えるわけです。」

教授「君のように考えると,天皇の国事行為とされるもののうち,憲法上実質的な決定権の所在が定められている〔 〕については,内閣の助言・承認は無意味であるから,あえてこれを要求する必要はないということになりそうだが,それでは,国事行為のすべてについて内閣の助言・承認を必要としている憲法第3条の文言に反するように思えるがね。まあ,その点はさておくとして,憲法第69条は,『内閣は,衆議院で不信任の決議案を可決……したときは,十日以内に衆議院が解散されない限り,総辞職をしなければならない。」と規定しているが,この規定は,実質的解散権の所在についての一つの論拠になるとは考えられないだろうか。そうだとすると,内閣が解散権を行使できるのは憲法第69条の場合に限られるというのが憲法の趣旨であると考えることはできないかね。」

学生「しかし,私は,内閣の衆議院解散権の論拠を,憲法第7条第3号についての内閣の助言・承認権に求めることができると考えますから,内閣は,憲法第69条の場合に限らず無制限の解散権を持つと考えるべきであると思います。」

[H05−14] 文中の〔 〕に入る天皇の国事行為として不適切なものはどれか。

1.内閣総理大臣の任命   2.国会の常会の召集

3.国務大臣の罷免の認証  4.最高裁判所長官の任命

5.恩赦の認証

[H05−15] 次の1から5までの記述のうち,正しいものはどれか。

1.議会の内閣不信任決議権に対し内閣の議会解散権が対抗することにより,両者が均衡するというところに議院内閣制の本質があると考える立場に立ったとしても,上記の学生の見解のように内閣に無制限の解散権行使を認めることにはならない。

2.上記の学生の見解は,議院内閣制の本質を,専ら内閣の存立が議会の信任に依存しているという点に求める考え方を背景としている。

3.内閣が,衆議院を解散できる場合を憲法第69条の場合に限定する見解は,上記の学生の見解と比べて,議会と内閣に対し,絶えず国民の意思に近づこうとする動因をより強く与えることにより,議院内閣制をより民主的に機能させようとする考え方である。

4.内閣の助言・承認を形式的・儀礼的な天皇の行為に対するものであるとする見解に立った場合,衆議院解散の実質的決定権の論拠を憲法第7条第3号に求めることはできないから,内閣が衆議院を解散できる場合は,恵法第69条の場合に限定されると解するほかはない。

5.内閣の助言・承認を形式的・儀礼的な天皇の行為に対するものであるとする見解は,上記の学生の見解と比べて,内閣の助言・承認の性質を伝統的な立憲君主制における大臣助言制により近いものと考える立場である。

[H05−16] 次のAからEまので文章を,「[ ]。また.[ ]。一方,[ ]。このように,[ ]。ところで,[ ]。」と並べかえると,財産権の制約に関するまとまった論述となる。それぞれの文章に挙げられている具体例(各文章中の下線を付した部分)の中には,具体例として適切でないものが一つ含まれているが,それは並べかえた後の何番目の文章の中にあるか。

A 財産権が,それ自体に内在する制約を受けることについては,他の人権と同様に当然であるということができ,このような観点からの制約は,憲法第12条,第13条に基づくものと解することも可能である。例えば,人の健康を害するおそれのある食品の販売を禁止することや,火災が発生した場合に人命に危険を及ぼすものの移転を求めたりすることができるとすることは,このような制約の一例である

B 「正当な補償」を要するか否かの基準は,財産権の制約が,財産権を剥奪するような結果につながる著しい制限であり,特定の者に対する特別の犠牲といえるかどうかという点に求められるべきである。そこで.政策的考慮に基づく積極的目的の制限においても,特定の者に特別の負担を課して,財産権を剥奪するような場合に当たるものについては,正当な補償を要することとされよう。例えば,重要文化財保護のために,文化的価値のある財産の現状変更などに制限を課し,その損失を補償するための規定を置くことは,このような制約の一例である

C 憲法第29条第3項は,私有財産を「公共のために用ひる」ことができることとし,この場合は「正当な補償」を要するものと規定している。例えば,土地を公共事業の用に供したときには,事業者が土地所有者の受けた損失を補償しなければならないが,これも同項の要請を受けた制約の一例である。この「公共のために用ひる」ことができる場合については,直接公共の用に供するために私有財産を強制的に剥奪する場合のみを指すのではなく,広く「公共の福祉」のために財産権を侵害するような場合をも含むと解することができる

D 財産権は,このような制約を超えて,「公共の福祉」の観点から,社会権の実現ないし経済的自由の確保という政策的考慮に基づいた積極的目的により制約され得るものであって,憲法第29条第2項は,こうした観点からの制約を根拠づけているものということができよう。例えば,私的独占の排除や公正な取引の確保のために,会社の一定割合以上の株式保有に制限を加えたり,借地権者を保護するために,土地所有者の権利行使に制限を加えることとしているのはこのような観点からの制約の一例である

E 「公共のために用ひる」ことができる場合を広い意味に解するならば,憲法第29条第2項によって財産権に制約を課することが許されると同時に,同条第3項によって「正当な補償」を要すべきものとする範疇も当然に存在することになろう。例えば,相隣関係上の理由から,土地所有者は,隣人が建物を建築又は修繕するにあたり必要がある場合や公道に出るために必要がある場合に,土地の使用や通行を受忍しなければならないとするのはこのような制約の一例である

1.1番目  2.2番目  3.3番目  4.4番目  5.5番目

[H05−17] 憲法第14条第1項は,前段で「すべて国民は,法の下に平等」であると規定し,後段で「人種,信条,性別,社会的身分又は門地により,…差別されない」と規定しているが,同条項の前段・後段の意味及び両者の関係について次のA説からC説までの三説がある。それらについて述べた1から5までのうち誤っているものはどれか。

A説 前段の「法の下の平等」は,行政・司法を拘束するだけでなく,立法者をも拘束し,後段所定の事項は,前段の保障内容を例示的に挙げているにすぎない。

B説 前段の「法の下の平等」は,行政・司法を拘束するだけで,立法者までも拘束するものではないが,後段は,立法者を含めてすべての国家機関に対して,差別を絶対的に禁止する意味である。

C説 前段の「法の下の平等」は,行政・司法を拘束するだけでなく,立法者をも拘束するが,後段所定の事項は,裁判規範として,特に重要な意味を認められたもので,それら以外の事由にかかわるものと比べて,合憲性を判断する基準がより厳しくされるべきであるとの趣旨を含むものである。

1.前段の解釈に関し,A説は「法の下の平等」は,法適用の平等と法内容の平等とを併せ意味するととらえているが,B説は「法の下の平等」は,法適用の平等を意味するととらえている。

2.平等の理念について,歴史的には,形式的平等の下で生まれた不平等の自覚によって,実質的平等の実現をめざすことになり,形式的平等から実質的平等へと推移してきたが,A説はそれにそぐわない。

3.A説及びC説は,「法の下の平等」を制度上の単なる保障ととらえ,合理的な区別は許されると考えている。

4.B説によれば,親族関係を社会的身分ととらえた場合,尊属に対する犯罪について重く処罰する刑法の特別規定は,憲法違反であるということになる。

5.B説及びC説によれば,後段所定の事項は,例示的列挙ではなく,限定的列挙であると考えられる。

[H05−18] 次のAからEまでの論述は,法秩序の構造に関するものであるが,そのうち二つの論述は,他の三つの論述と異なる立場からのものである。この二つの論述の組合せは後記1から5までのうちどれか。

A 近代立憲主義の確立以来,「権力」とは専ら公権力を指すのであって,一般社会には権力的関係は存在しないものと観念されてきた。このような「権力」との結びつきにおいてのみ,法は把握されるべきである。

B およそ法的現象は,人間の社会に普遍的なものであり,必ずしも国家のみに限られるものではない。国家の中にも様々の社会,例えば,宗教団体・政党・スポーツ団体等が存在し,それぞれの法秩序を持っている。

C 各種の小社会には,必ず社会の規範が存在するものであるが,そのような社会に存在する規範であっても唯一の権威によってつくられた法に抵触する場合には,その効力が否定される。

D ある秩序が法秩序として成り立つための最小限の要素は,当該社会の中で構成員の義務を割り当て,内容を確定し,構成員を統制するための一定の基準が承認されていることである。

E いやしくも人間が社会において独りで生活を営むのではなく,他の者との何らかの関係に組み込まれて生活する以上,人間の特定の外部的行動を規律することを目的とする法は,総体的にそのような関係ごとに生ずるものである。

1.A C  2.A D  3.B C  4.B E  5.D E

[H05−19] 以下の文章の〔@〕から〔C〕までに,後記AからDまでの文を1回ずつ選択して挿入すると,法と行政に関するまとまった文章となる。後記1から5までの記述のうち,明らかに誤っているものはどれか。

「行政を法律により規制するという原理は,歴史的には,絶対主義的な君主制において,本来国王に無制限に帰属していたと考えられていた行政権能について,例外的に一定の権利・自由を侵害する場合に限っては国民の代表である議会の定めた法律の根拠がなければこれを行使し得ないという思想を背景として成立した。このような背景に照らすと,この原理の内容を,形式面に着目して〔@〕と理解することも,また,侵害面に着目して〔A〕と理解することも可能である。しかしながら,このような理解に立つと,法律の根拠がありさえすれば,国民の権利・自由を奪うことができるという結論をも是認しなければならなくなり,かえって憲法が保障する基本的人権の効力を弱めることにもなりかねない。そこで,この原理は〔B〕と理解すべきであるという見解が主張される。さらに,これらの原理と歴史的,社会的な背景を異にする原理,すなわち〔C〕と理解されている原理が妥当すべきであるとする主張もなされることになる。」

A 行政権限の行使は,形式的な意味における法律の根拠が必要であるという原則

B 行政権のみならず,あらゆる国権の発動・行使は形式的な意味の法律のみならず,より上位の憲法など一切の法規範,即ち「法」に従わなければならないとする原則

C 行政作用は,ただ単に形式的な意味の法律のみならず,憲法的な価値基準の中で,一定の実質を備えた法律の根拠が存在しなければならないという原則

D 国民の権利・自由を侵害する行政を行う場合には,法律の根拠を必要とするが,国民に権利・利益を与える行為については行政の自由を認めて,法律の根拠を要しないという原則

1. @に入るべき原則は,租税法律主義が有している意義と同様の意義を期待しようとするものである。

2. Aに入るべき原則に対しては現代のように,行政活動の内容が複雑になると,一面では国民に権利・利益を与える行為であっても,他面恩恵を受けない者にとっては不利益と考えられる側面があるから妥当ではないという反論がある。

3. Bに入るべき原則は,憲法が前提としている福祉国家・給付国家の理念を積極的に実現することを行政に要求することになる。

4. Bに入るべき原則は,憲法において当然にこれを前提としているとみることができ,憲法第98条〔憲法の最高法規性〕や憲法第99条〔憲法尊重擁護義務〕などの規定にその趣旨が表われている。

5. Cに入るべき原則は,憲法において当然にこれを前提としているとみることができ,憲法第11条〔基本的人権の享有と本質〕や,憲法第81条〔法令等の合憲性審査権〕などの規定にその趣旨が表われている。

[H05−20] 次の文章中の〔 〕に,「立法過程」「立法行為」「政治的評価」「政治的責任」「法的評価」「法的責任」の中から適当な語を選んで入れると,立法に関与した国会議員の国民に対する責任についての論述になる。このうち,「法的評価」「法的責任」が使用される回数は,あわせて何回か。

「国会議員は,多様な国民の意向をくみつつ,国民全体の福祉の実現を目指して行動することが要請されているのであって,議会制民主主義が適正かつ効果的に機能することを期するためにも,国会議員の〔 〕における行動で,〔 〕の内容にわたる実体的側面に係るものは,これを議員各自の政治的判断に任せ,その当否は終局的に国民の自由な言論及び選挙による〔 〕にゆだねるのを相当とする。さらにいえば,立法行為の規範たるべき憲法についてさえ,その解釈につき国民の間には多様な見解があり得るのであって,国会議員は,これを〔 〕に反映させるべき立場にあるのである。憲法51条が,『両議院の議員は,議院で行った演説,討論又は表決について,院外で責任を問はれない。』と規定し,国会議員の発言・表決につきその〔 〕を免除しているのち,国会議員の〔 〕における行動は〔 〕の対象とするにとどめるのが国民の代表者による政治の実現を期するという目的にかなうものである,との考慮によるのである。このように,国会議員の〔 〕は,本質的に政治的なものであって,その性質上法的規制の対象になじまず,特定個人に対する損害賠償責任の有無という観点から,あるべき〔 〕を措定して具体的〔 〕の適否を法的に評価するということは,原則的には許されないものといわざるを得ない。ある法律が個人の具体的権利利益を侵害するものであるという場合に,裁判所はその者の訴えに基づき当該法律の合憲性を判断するが,この判断は既に成立している法律の効力に関するものであり,法律の効力についての違憲審査がなされるからといって,当該法律の〔 〕における国会議員の行動,すなわち〔 〕が当然に〔 〕に親しむものとすることはできないのである。

 以上のとおりであるから,国会議員は,立法に対しては,原則として,国民全体に対する関係で〔 〕を負うにとどまり,個別の国民の権利に対応した関係での〔 〕を負うものではないというべきである。」

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