[H06−01] 労働基本権に関する次の1から5の記述のうちで誤っているものはどれか。

1.憲法第21条が保障する結社の自由は結社に加入しない自由をも含むが,憲法第28条で労働者に団結権が保障されていることから,労働者に労働組合への加入を強制することは許される。

2.憲法第28条は私人間にも直接的に適用され,契約自由の原則を制限することが認められる。

3.労働組合は,団結権を確保するために自律権を有しており,組合員に対して統制権を行使できるから,労働組合の組合員の除名処分に対しては,司法審査は及ばない。

4.公務員は,憲法第28条の「勤労者」に該当する。

5.正当な争議行為に対しては,刑事責任のみならず,民事責任も課されることはない。

[H06−02] 次の文章中の〔 〕に,後記語群の中から最も適切な語句を選んで入れると,まとまった論述となる。後記語群の中の語句のうち,いずれにも入らないものの組合せは,後記1から5までのうちのどれか。

「憲法第三章の諸規定による〔 〕の保障は,〔 〕上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き,わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶものと解すべきであり,〔 〕についても,わが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位に鑑みこれを認めることが相当でないと解されるものを除き,その保障が及ぶものと解するのが,相当である。しかしながら,外国人は,〔 〕上わが国に在留する権利ないし引き続き在留することを要求することができる権利を保障されているものではなく,ただ,「出入国管理及び難民認定法」上法務大臣がその〔 〕により更新を適当と認めるに足りる相当の理由があると判断する場合に限り在留期間の更新を受けることができる地位を与えられているにすぎないものであり,したがって.外国人に対する憲法の基本的人権の保障は,このような〔 〕の枠内で与えられているにすぎないものと解するのが相当であって,在留の許否を決する国の〔 〕を拘束するまでの保障,すなわち,在留期間中の憲法の基本的人権の保障を受ける行為を在留期間の更新の際に消極的な事情としてしんしゃくされないことまでの保障が与えられているものと解することはできない。在留中の外国人の行為が合憲合法な場合でも,法務大臣がその行為を当不当の面から〔 〕にとって好ましいものとはいえないと評価し,またその行為から将来当該外国人が〔 〕の利益を害する行為を行うおそれがある者であると推認することは,その行為が上記のような意味において〔 〕の保障を受けるものであるからといって何ら妨げられるものではない。」

<語群>

 条文の文言,立法政策,日本国,政治活動の自由,外国人在留制度,権利の性質,裁量,基本的人権,出人国の自由,外交関係,憲法

1.条文の文言,政治活動の自由,外国人在留制度,裁量,外交関係

2.立法政策,日本国,政治活動の自由,権利の性質

3.立法政策,権利の性質,出入国の自由,外交関係

4.条文の文言,立法政策,出入国の自由,外交関係

5.条文の文言,立法政策,政治活動の自由,外交関係

[H06−03] 次のAからEまでの記述は,憲法の前文に関するものであるが,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。

A 前文には直接の裁判規範としての効力はないとする見解も,前文が法的性格を有することは否定しない。

B 前文に直接の裁判規範性を認める見解でも,前文を直接の根拠として憲法本文に規定されていない権利を認めるものではない。

C 前文には,憲法の基本原則が謳われているほかに,憲法制定権力の所在も示されている。

D 前文は憲法改正の限界を画するものではない,とする見解がある。

E 前文を変更するには,憲法改正手続によらなくてもよい。

1.ABC  2.ACD  3.ADE  4.BCD  5.BDE

[H06−04] 次の1から5までは憲法第21条第2項後段に関する記述であるが,明らかに誤っているものはどれか。

1.「通信の秘密は,これを侵してはならない」とは,通信業務に従事する者が職務上知り得た通信に関する事項を他に漏らしてはならないことを意味するが,「捜査については,公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。」(刑事訴訟法第197条第2項)との規定に基づく捜査機関の照会に応じて,郵便官署が通信に関する情報を捜査機関に報告しても憲法第21条第2項後段の違反になることはない。

2.「通信の秘密」の保障を,プライバシー保護の一環としてとらえると,差出人や受取人の住所や氏名,通信の日時等の通信の存在それ自体に関する事柄も「通信の秘密」の保障の対象となる。これに対して,「通信の秘密」の保障を表現の自由の一環としてとらえると,秘密の範囲は手紙などの内容に限られることになる。

3.「通信の秘密は,これを侵してはならない」とは,捜査機関等の公権力が,通信の内容及び通信の存在を積極的に知ることの禁止を意味しており,保護の対象として通信の存在をも含む点で,憲法第21条第2項前段にいう「検閲」が禁止される対象よりは広い。

4.「通信の秘密」の保障は,封書や葉書のみならず,電信や電話をも保護の対象とする。

5.「通信の秘密」には,憲法の文言上制限は明示されてはいないが,ー定の内在的制約があると考えられ,その例として,在監者に対する通信の制限や,破産管財人が破産者あての郵便物を開披できることを挙げることができる。

[H06−05] 内閣の責任に関する次のAからFまでの記述のうち誤っているものが3個あるが,その組合せとして正しいものは後記1から5までのうちどれか。

A 内閣の連帯責任は,憲法の条文上は国会に対するものとなっているが,その責任追及は各議院においてすることができる。

B 内閣の連帯責任は,本質的には政治責任である。

C 議院内閣制の本質について,内閣は国会の信任に依拠するという「責任本質説」の立場に立つと内閣が衆議院を解散できるのは憲法第69条所定の場合に限定されることはないという結論を導きやすくなる。

D 内閣の連帯責任は,必ずしも国務大臣の個人責任を排除するものではない。

E 閣議の議決方法につき全員一致とする現在の慣行は,内閣の連帯責任から論理必然的に導き出されるものである。

F 天皇の国事行為についての内閣の責任は,国会に対するものではない。

1.ACD  2.BDF  3.BEF  4.CDE  5.CEF

[H06−06] 基本的人権の制約根拠である「公共の福祉」についてのA群(アからウ)を前提として,これに,各説からの主張であるB群(aからe)と,各説に対する批判であるC群(TからX)の中から,それぞれ適切なものを組み合わせた場合,その組合せとして正しいものは,後記の1から5のうちどれか。

A群 ア 公共の福祉は,人権の外にあって,すべての人権を制約することのできる一般的な原理であり,憲法第22条,第29条が,公共の福祉による制約があり得る旨特に明文で規定するのは,念のためにそのことを繰り返したにすぎず,特別の意味はない。

   イ 公共の福祉によって制約される人権は,経済的自由(憲法第22条,第29条)と社会権(第25条ないし第28条)のみであってその他の人権については内在的制約が課されるにとどまる。

   ウ 公共の福祉による制約は,憲法の明文の規定の有無に関わらず,全ての人権に論理必然的に内在しているものである。

B群 a 憲法第12条は国民に一定の倫理的な指針を示した規定であり,憲法第13条はいわば,国家の心構えを示した訓示的な規定と解される。

   b 「社会国家的公共の福祉」は,「自由国家的公共の福祉」を実質的なものにするための原理であるから,二つの「公共の福祉」は別個のものではなく,一つの「公共の福祉」が権利・自由の性質の相違に応じて異なる調整的な作用をするものである。

   c 「公共の福祉」は,社会的な公益あるいは公共の安寧秩序である。

   d 「公共の福祉」は,権利・自由に内在する制約以外の福祉国家に特有の政策的原理としての意味に限定して用いるべきである。

   e 「公共の福祉」は,人権相互間に生じる矛盾や衝突についての調整を図るために機能する実質的公平の原理である。

C群 T 個々の人権について,「法律の留保」を認めない憲法の基本思想に反する危険性が高い。

   U 人権を制約することの具体的限界の判断基準として,自由権に対しては,「必要最小限度の規制」,社会権に対しては,「必要な限度の規制」という抽象的な原則しか示されず,基準が明確ではない。

   V 憲法第13条の解釈と結びつくことにより,「プライバシー権」等憲法で個別的に保障されている人権以外のいわゆる「新しい人権」を,憲法上の人権として基礎付ける根拠を失わせることになる。

   W いかなる程度までが内在的制約であり,どの程度になればそれを超える政策的考慮に基づく制約であるのか,その境界が明確でない。

   X 現代社会においては,自由権と社会権の区別が相対化しつつあるのにそれを峻別して,その性質上の差異を理由として一律に内在的制約と外在的制約という人権制約の限界の程度についての区別を根拠づけるのは妥当ではない。

1.ア−e−T  2.イ−a−V  3.イ−c−U  4.ウ−d−W

5.ウ−b−X

[H06−07] 最高裁判所裁判官の国民審査の性格については,一種の国民解職(リコール)であるとする見解(A説)と国民解職であると同時に内閣の任命行為の事後審査であるとする見解(B説)とがある。次のAからEまでの記述のうち誤っているものはいくつあるか。

A. A説は,憲法第79条第3項が,国民審査の法的効果として裁判官が罷免されると定めていることに着目したものである。

B. B説は,国民審査が,憲法第79条第2項により,裁判官の任命後初めて行われる衆議院議員解散総選挙の際にまず行われるという点に着目したものである。

C. A説は,罷免を可とする裁判官の氏名の上欄に×印を記載し,罷免を可としない裁判官に関しては何ら記載しないという現行法の定める投票方式は,憲法の趣旨に沿うものと考えることになる。

D. B説では,任命された後国民審査までの裁判官の地位を説明することができない。

E. A説に対しては,任命後間もない時期の審査では裁判官としての業績の資料も不足しているので,この国民審査を解職制度とみることには無理があるとの批判が可能である。

1.1個  2.2個  3.3個  4.4個  5.5個

[H06−08] 次のAからFまでのうち,問題となる権利の性質が他と異なるものが2個ある。その組合せとして正しいものは,後記1から5のうちどれか。

A 新聞記者が取材源を秘匿すること。

B わいせつの疑いがある写真集を輸入すること。

C 条例に基づき公の情報の公開を求めること。

D 公園で集会をすること。

E ある意見を掲載した新聞に対しその反論の掲載を求めること。

F 街頭で署名運動をすること。

1.AC  2.AE  3.BD  4.BF  5.CE

[H06−09] 次の文章中の〔 〕内の(a)と(b)のいずれか適切な方の語句を選択していくと,多数決原理に関するまとまった論述となる。(a)の入る〔 〕の個数はいくつあるか。

 「多数決原理,すなわち,会議において,多数者の意見に,構成員全員を拘束するような効力を付与することを認める原理は,憲法においても採用されているところであって,〔(a)民主主義,(b)自由主義〕における不可欠の構成要素として高く評価されている。ただ.多数決原理がどのような論拠に基づいて正当化され得るかについては,様々な見解が存在する。

 第一に,多数決原理を政治的平等の思想から正当化する考えがある。万人が生まれながらにして平等であるという思想が正しいとされるならば,多数者の意見が少数者の意見に優先されるのは当然ということになろう。このように,多数決原理は〔(a)実定法,(b)自然法〕の上から正当化されることになる。

 第二に,多数決原理を価値基準の,〔(a)相対性,(b)絶対性〕から根拠づける考えがある。すなわち.法を制定する場合には,どういう法が正しいかにつきときには当然にいろいろな意見が生ずるが,その中のどれか一つの意見が絶対に正しく,他の意見は正しくないということを客観的に決定する基準はあり得ないところ,このような意見が分かれた場合にどれを正しいとするか決定しないでいては,法秩序の確立は不可能となるので,多数者の意見を評価しようとする考え方である。

 第三に,多数決原理の正当化を〔(a)経験論,(b)演繹論〕によって根拠付ける考えもある。すなわち,仮に,多数決の結果が正しくないならば,その誤った結果は,実際の政治や立法の推移の上で現れることとなり,かつての多数決の結果を修正することによって,政治と立法を一歩でも正義と真理とに接近せしめることができ,そこに多数決原理が成り立つ根拠を見いだすことができるとする考えである。

 第二の見解と第三の見解は,非常に近似した考えであるが,〔(a)第二の見解,(b)第三の見解〕は,客観的な正しさの存在を前提としている点で,価値相対主義とは,相客れないものといえよう。

 第四に,多数決原理を,このような多数決による結果が,正しいかどうか,価値があるかどうかと切り離して,純粋に〔(a)論理,(b)機能〕のみに着目して,社会における相互に対立する様々な利害関係を,多数者対少数者という形で二元化することによって統合し,最終的には,一つの政策を円滑に形成するためのメカニズムにすぎないとする考え方もある。

 多数決原理は,このように様々な正当化が試みられ,極めて重要な制度であると評価されているが,もとより万能なものではなく,限界も存在するところであって,憲法第三章の規定は,〔(a)民主主義,(b)自由主義〕的な観点からの重要な制約であるということもできよう。

1.2個  2.3個  3.4個  4.5個  5.6個

[H06−10] 憲法第19条の定める「思想及び良心の自由」の内容についての次のA説とB説に関するアからオまでの記述のうち,明らかに誤っているものの組合せは,後記1から5までのうちのどれか。

A説:「良心」とは,基本的には「思想」の内面化であり,世界観,人生観,思想体系,政治的意見などのような人格形成に役立つ内心の活動に限られる。

B説:「良心」とは,世界観,思想などに限られず,単なる事実の知不知や,事物に対する是非善悪の判断を含む内心領域を広く包摂するものである。

ア A説は,事態の真相を告白して陳謝の意を表明する謝罪広告の掲載を命ずる判決が憲法第19条に違反しない.とすることの論拠になり得る。

イ B説に対しては,人の外部的行動ではなく内面的態様それ自体を対象とする以上憲法第19条は原理的保障規定の意味を強く持っているということができ,B説はそのような同条の性格に最もかなった説であるとする意見があるが,他方,それではかえって,思想・良心の自由の高位の価値を希薄にしてその自由の保障を軽くすることになり採り得ないとする反論もある。

ウ A説によると,具体的な判断や事実の知不知にかかわる判断について沈黙する自由は,およそ憲法上保障されないことになる。

エ B説によると,外国人登録法に基づく登録外国人の特定とその同一性を確認する手段として当該外国人に対して指紋押捺を義務付ける制度を探っても憲法第19条には違反しないことになる。

オ A説によると,教職員の勤務評定について「自己観察」の記入を求める方式を採用しその中で各人の思想信条にわたることの記入を強制したとしても,憲法第19条には違反しないことになる。

1.アウ  2.アエ  3.イエ  4.イオ  5.ウオ

[H06−11] 表現の自由に対する規制について,(イ)表現内容を直接規制する場合と,(ロ)表現の時・場所・方法に関する間接的・付随的規制の場合とに区別した上で,その規制の合憲性の判断基準に関して,(イ)の場合には厳格な審査基準を適用し,(ロ)の場合には,規制の態様につき立法目的を達成するためにより制限的でない他の選び得る手段があるか否かによるべきである,とする見解がある。

 この見解に従って,表現の自由に対する次のAからFまでの規制を,上記の(イ)と(ロ)のいずれかに分類した場合,同じ分類に属するものの組合せとして正しいものは,後記1から5までのうちのどれか。

A 新聞の記事が人の名誉を毀損したとして,新聞社の経営者を名誉毀損罪によ

り処罰すること。

B 都市の美観風致を維持するため,電柱などへのビラ貼りを屋外広告物条例により禁止すること。

C 一般交通に著しい影響を及ぼすような道路上での街頭演説につき,道路交通法に基づく所轄警察署長の道路使用許可を受けなければならないとすること。

D 内乱罪や外患誘致罪を実行させる目的を持ってする煽動を,破壊活動防止法により処罰すること。

E 選挙に関して,投票を得若しくは得しめ又は得しめない目的で戸別訪問をすることを,公職選挙法により処罰すること。

F 青少年の健全な育成を阻害するおそれがあるとして知事が指定した,著しく性的感情を刺激し又は著しく残忍性を助長するような有害図書の販売を,青少年保護育成条例により禁止すること。

1.(ABF)(CDE) 2.(ACD)(BEF) 3.(ACE)(BDF)

4.(ADE)(BCF) 5.(ADF)(BCE)

[H06−12] 次のAからEまでの記述のうち,明らかに誤っているものはいくつあるか。

A 国会議員は,議院で行った演説を理由に懲罰を受けることがあり得るが,裁判官は,法廷内での発言を理由に懲戒処分を受けることはない。

B 国会議員を国会の会期中に,院外の現行犯の場合を除いて議院の許諾なしに逮捕することは許されないが,裁判官を,所属する裁判所の長の許諾なしに逮捕することは許される。

C 国務大臣を,その在任中,内閣総理大臣の同意なしに起訴することは許されないが,国会議員を,国会の会期中,議院の許諾なしに起訴することは許される。

D 国会議員と裁判官については,相当額の収入を得られることが憲法で保障されている。

E 国政調査のために,裁判官に対して議院への参考人としての出頭を求めることは憲法上許されないが,国務大臣に対して議院への参考人としての出頭を求めることは可能である。

1.1個  2.2個  3.3個  4.4個  5.5個

[H06−13] 次のアからオまでの文章を,「[ ]。この点について,[ ]。また,[ ]。更に.[ ]。ところで,[ ]。」と並べ変えた上で,各文章中の〔 〕内に,後記AからDまでの文の中から各〔 〕内に記号で示したもののうちいずれか適切な方を選択して補うと,まとまった論述となる。後記1から5までのうち,並べ変えた後の文章の各〔 〕内に入る文を,その記号で順に正しく並べたものはどれか。

ア 〔A,B〕という見解を前提として〔C,D〕との見解を探ると,表現の自由に対する事前抑制禁止の趣旨は徹底することになるが,名誉やプライバシーの侵害に当たるような書籍の発行によって被害を受けた者が司法救済を受けられないという不都合な結果を招く可能性もあり得る

イ 以上の三つの見解のうち,第一及び第二の見解のように,書籍の発行を事前に差し止める裁判所の行為が,憲法第21条第2項前段の検閲に当たらないという結論を採り得たとしても,更に,当該行為が同条第1項の趣旨に照らして許されないか否かを併せて吟味しなければならない。そして.表現の自由が,名誉,プライバシー等の他者の利益と衝突する場合には,双方の利益を比較考量して表現の自由に対する規制の可否を決すべきであるという見解を採ると,概括的な理由により表現の自由を制約することが可能となるが,他方,明確な基準が集積されていない分野においては,予測が立たない結果,言論に対し抑圧的な効果を招くおそれもあり得よう

ウ 〔A,B〕という見解を前提として,〔C,D〕との見解を探ると,検閲の禁止はその形式性・絶対性にあるという原則に一切修正を加えることなく,しかも,名誉を毀損する記事を掲載した書籍の発行につき,その被害者が裁判所に対して差止めという方法により救済を受けることが可能となる。ただ,検閲の概念を狭くとらえる結果として,およそ裁判所の行う判断については,たとえ,非訟的要素の強い判断とか著しく簡易な手続による判断も,すべて検閲には該当しないという結果となり,実質面での配慮に欠けるのではないかという問題点は残るであろう

エ 憲法第21条第2項前段は,検閲を禁止しているが,同項は,表現の自由の重要性にかんがみて,言論・出版が外部に発表される前に権力的に制限されることは許されないとする趣旨を規定したものということができる。そこで,裁判所が仮処分手続により,他人の名誉を毀損する記事を掲載した書籍の発行を差し止めることは憲法上許されるかという事例に沿って,検閲を禁止した趣旨を具体的に考えることとする

オ 〔A,B〕という見解を前提として,〔C,D〕との見解を探ると,裁判所の救済を受けることが可能であるという点では上記と同じ結論となる。この説によれば,検閲の主体がどこかというような形式的な論理で結論を左右する点を回避することができるが,反面,検閲の禁止の絶対性の原則を放棄する結果となり,表現の自由に対して重要な制限を加えることになるので,検閲を禁止した趣旨が尻抜けとなる危険性があろう

A 憲法第21条第2項前段にいう検閲は,行政権が主体となるものに限定される

B 憲法第21条第2項前段にいう検閲は,行政権が主体となるものに限定されない

C 検閲の禁止は,例外を許さない絶対的なものである

D 検閲の禁止は,合理的な理由がある場合には,許される余地がある

1.A−C−B−D−B−C   2.A一C−B−D−B−D

3.A−D−B−C−B−D   4.A−D−B−D−B−C

5.B−D−A−C−B一C

[H06−14] 次のAからIまでの記述は,いずれも憲法の条文の一部であるが,各〔 〕の中には「5分の1以上」「4分の1以上」「3分の1以上」「過半数」「3分の2以上」のいずれかが入る。その使用回数の組合せとして正しいものは,後記1から5までのうちどれか。

A いづれかの議院の総議員の〔 〕の要求があれば,内閣は,その召集を決定しなければならない(第53条)。

B 両議院が,議員の議席を失はせるには,出席議員の〔 〕の多数による議決を必要とする(第55条)。

C 両議院は,各々その総議員の〔 〕の出席がなければ,議事を開き議決することができない(第56条第1項)。

D 出席議員の〔 〕の多数で議決したときは,秘密会を開くことができる(第57条第1項)。

E 出席議員の〔 〕の要求があれば,各議院の表決は,これを会議録に記載しなければならない(第57条第3項)。

F 議員を除名するには,出席議員の〔 〕の多数による議決を必要とする(第58条第2項)。

G 衆議院で可決し,参議院でこれと異なった議決をした法律案は,衆議院で出席議員の〔 〕の多数で再び可決したときは,法律となる(第59条第2項)。

H 一の地方公共団体のみに適用される特別法は,法律の定めるところにより,その地方公共団体の住民の投票においてその〔 〕の同意を得なければ,国会は,これを制定することができない(第95条)。

I この憲法の改正は,各議院の総議員の〔 〕の賛成で,国会が,これを発議し,国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には,特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において,その〔 〕の賛成を必要とする(第96条第1項)。

1.「3分の2以上」が4回,「過半数」が2回  2.「3分の2以上」が4回,「過半数」が3回

3.「3分の2以上」が5回,「過半数」が1回  4.「3分の2以上」が5回,「過半数」が2回

5.「3分の2以上」が6回,「過半数」が1回

[H06−15] 次の文章の内容の解釈として正しいものは,後記1から5までのうちどれか。

「職業の自由は,精神的自由に比較して,公権力による規制の要請が強く,憲法の規定も,特に公共の福祉に反しない限りという留保を付している。しかし,職業の自由に対する規制措置は事情に応じて各種各様の形を採るため,その憲法第22条第1項の適合性を一律に論ずることはできず,具体的な規制措置について,規制の目的,必要性,内容,これによって制限される職業の自由の性質,内容及び制限の程度を検討し,これらを比較考量した上で慎重に決定されなければならない。一般に許可制は,単なる職業活動の内容及び態様に対する規制を超えて,狭義における職業選択の自由そのものに制約を課するもので,職業の自由に対する強力な制限であるから,その合憲性を肯定し得るためには,原則として,重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要する。他方,租税法の定立については,国家財政,社会経済,国民所得,国民生活等の実態についての正確な資料を基礎とする立法府の政策的,技術的な判断にゆだねるほかはなく,裁判所は,基本的にはその裁量的判断を尊重せざるを得ない。以上のことからすると,租税の適正かつ確実な賦課徴収を図るという国家の財政目的のための職業の許可制による規制については,その必要性と合理性についての立法府の判断が,右の政策的,技術的な裁量の範囲を逸脱するもので,著しく不合理なものでない限り憲法第22条第1項に違反しない。ところで,酒税法による酒税の賦課徴収の仕組みは必ずしも合理性に欠けるものではなく,酒税は,本来,消費者にその負担が転嫁されるべき性質の税目であること,酒類の販売業免許制度によって規制されるのが,そもそも,致酔性を有する嗜好品である性質上,販売秩序維持等の観点からもその販売について何らかの規制が行われてもやむを得ないと考えられる商品である酒類の販売の自由にとどまることを考慮すると,立法府の判断は,前記のような政策的,技術的な裁量の範囲を逸脱するものとはいえない。」

1.これは,国税全体における酒税収入の割合がどの程度であるかということとは無関係に,常に酒税法の合憲性が肯定されるとするものである。

2.これは,酒税法の立法目的の中に致酔飲料としての酒類の販売について国民の保健衛生管理の見地における警察的消極的規制の必要があることも含まれているとし,酒税法の合意性について,明白性の原則より厳しい基準によって審査したものである。

3.これは,経済的自由の規制の合憲性審査の場面において一般に採用されている積極目的規制と消極目的規制の二分論を採らず,酒税法という法律の性質に着目して,その憲法適合性を判断したものである。

4.これは,間接税が課される商品に関する販売業一般について免許制を採るかどうかは,単なる立法政策の問題と考えるものである。

5.これは,既存の酒類販売業者の権益を保護する必要のあることを強調し,これによる業者の経営の安定を通じて国の税収確保が図られる必要があるとして,合憲の結論を導いているものである。

[H06−16] 次のAからEまでの記述のうち,誤っているものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。

A 現行憲法上,司法権の概念は,明治憲法とは異なり,行政事件の裁判も司法作用に含まれることを前提としている。

B 裁判官は,憲法の明文上,非行を犯した場合にも,公の弾劾によらなければ罷免されることはないが,裁判所には司法行政権が認められるから,その行使として,裁判によらないでその富を免ずることは許される。

C 憲法上,特別裁判所の設置が禁止されているから,裁判所法を改正して行政裁判所や労働裁判所を設置することは,一切許されない。

D 憲法上,行政機関は終審として裁判を行うことができないから,行政機関の処分に対して不服があるとして提起された訴訟において,行政機関が認定した事実が無条件に裁判所を拘束するような制度は,憲法違反となる。

E 憲法上,裁判を公開しないで行うことは,憲法で定める例外の場合を除いて認められないから,家庭裁判所における少年審判を非公開で行うことは,憲法違反となる。

1.AB  2.BC  3.BD  4.CD  5.DE

[H06−17] 次の文章は,各〔 〕の中のいずれか適切な方の語句を選択すると,あるまとまった論述となる。後記1から5までの記述のうち,この論述にいう主権論と同じ立場のものはどれか。

「フランス革命によりアンシャン・レジームを倒した後,どのような政治体制を打ち立てるべきかについて,二つの異なった立場が対立した。その一つである〔ナシオン(国民)主権,プーブル(人民)主権〕の立場にあっては,国民は抽象的観念的存在であってそれ自体としては自然的な意思能力を持たないから主権の行使を若干の自然人からなる代表者にゆだねざるを得ないところ,ここでは代表と被代表の関係は〔命令委任,自由委任〕が原則となる。もともとこの主権論は,〔制限選挙制度,普通選挙制度〕を正当化するために唱えられたものであって,フランス革命期の1791年憲法はこの原理を採用した。」

1.この立場では,有権者の総体が主権主体となる。

2.この立場では,小選挙区制に比べて,比例代表制の方がより適した選挙制度ということになる。

3.この立場では,代表制が採られる場合,リコール制といった代表者に対する政治責任追及手段を制度化することが必要となる。

4.この立場では,政治が従うべき主権者の意思とは,すべての人民(国民)の利益にかなった意思,すなわち,「真の人民の意思」を指し,過去・将来の人民の意思をも含むものとする。

5.この立場では,議員が所属政党からの除名により,議員資格を失うものとする制度は合理的であるということになる。

[H06−18] 憲法第81条の定める違憲立法審査制について,具体的な訴訟事件を前提として,その手続の中で裁判所の違憲審査権は行使されるべきであるとする見解がある。次の1から5までのうち,この見解の根拠とならないものはどれか。

1.憲法判例となり得るのは,違憲又は合憲とする結論に至るうえで,純粋に必要とされる理由付け(レイシオ・デシデンダイ)の部分に限られるべきである。

2.司法権とは,具体的紛争に法を適用・宣言することにより,これを解決する国家作用をいうところ,憲法第81条は,第6章「司法」に規定されている。

3.いわゆる抽象的違憲審査権の重要性に照らすならば,憲法上,これに関する基本的規定や提訴の要件,判決の効力等に関する手続的規定が必要とされるが,そのような規定は存在しない。

4.民主主義体制の下にあっては,裁判所の有する違憲審査権限は,できる限り自己抑制的に行使されるべきである。

5.いわゆる抽象的違憲審査制を認めると,その違憲判決の効力は一般的効力を有し,違憲とした法律を無効にさせることになるが,そうすると裁判所が消極的立法作用を営むことになる。

[H06−19] 集会・集団行進及び集団示威運動(以下「集団行動」という。)を規律することを目的として定められた公安条例の合憲性に関する次の1から5までの記述のうち,明らかに誤っているのはどれか。

1.多くの公安条例が許可制をとっている点に関してそれが実質において届出制と異ならないことを合憲性肯定の理由とする見解にあっては,当該条例において,集団行動の申請の不許可事由が厳格に制限されていて,それ以外の場合には公安委員会の許可が義務付けられていることを前提としている。

2.公安条例が許可制を探っている点に関してそれが実質において届出制と異ならないことを合意性肯定の理由の1つとするのであれば,公安委員会が集団行動の申請に対し一定の日時までにこれを不許可とする旨の処分をしない場合には,許可があったものとみなす旨の条項を公安条例に設けることは,その趣旨に沿う措置といえる。

3.公安委員会が集団行動の申請を不許可にした場合,行政事件訴訟法第25条に基づいて,裁判所にこの不許可処分の執行停止を求めることができ,執行停止がなされれば申請どおり集団行動ができるということは,公安条例の採る許可制が実質において届出制と異ならないという考えに基づいている。

4.現行の公安条例の合憲性を肯定する見解によれば,当該条例の規制基準が文面審査に耐え得る程度に明確であるならば,集団行動の時,場所又は方法のみならず,集団行動の目的をその規制対象とするような場合であっても合憲性を肯定するのが一般である。

5.現行の公安条例を合憲とする見解の多くは,一般的な許可制を定めて集団行動を事前に規制するような方法は憲法上許されないということを前提としている。

[H06−20] 地方自治の本質について,次のA群のTからVの三つの説があり,B群の1から5までの記述はその各説に対する批判である。A群の説のうちの二つに対してはB群の批判のうちの二つの批判がそれぞれ妥当し,A群のうちの残りの一つの説に対してはB群のうちの一つの批判のみが妥当する。B群の記述のうち,後者に該当するものはどれか。

A群 T 個人が国家に対して固有かつ不可侵の権利を持つのと同様に,地方公共団体も固有の基本権を有するという考え方

U 地方自治制度は国家の統治権に伝来するものであるから,国は,地方自治の廃止を含めて地方自治保障の範囲を法律によって定めることができるという考え方

V 地方自治の保障は,地方公共団体の自然権的・固有権的基本権を保障したものではなく,地方自治という歴史的・伝統的・理念的な公法上の制度を保障したものであるという考え方

B群 1.この説は,憲法が地方自治の本旨に基づいて組織,運営に関する事項を法律で定めるとしている関係上,地方自治を認めない地方自治の本質というようなことになってしまい,矛盾をきたす。

2.この説は,一面において地方自治権の最低限を保障する機能を営むが,反面においては国の立法による規律を広く容認,許容することになるから,地方自治権の制約の方向に作用する危険性を有する。

3.この説は,地方自治の組織と運営について国の法律で定めることとしている憲法第92条の規定の下では,一般的な法律の留保を否定している基本的人権の保障の方式とは明らかに異なることを無視することになる。

4.この説は,法律をもってしても侵すことのできない本質的内容ないし核心を,制度の歴史的伝統に求めているが,それでは悪しき伝統をも含めて,旧来の制度をそのまま温存する方向に作用しかねない。

5.この説は,法律によりいかようにでも,地方自治の内容を定めることができるとするので,憲法が特に一章を設けて地方自治を定めた意義が没却される。

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