[H09−01]

 次の文章は,平等原則について論じたものであるが,( A )から( L )に下記のアからタまでの語句を挿入した場合,後記1から5までのうちで正しい組合わせとなっているものはどれか。

「自由と( A )に示される自由放任政策は,19世紀において,社会経済生活における自由競争を力づけ,資本主義の発展と高度化を促したが,他方,富の偏在,( B )などの重大な社会問題を引き起こした。「すべてのものに等しく自由を」という市民国家の権利保障は,各人の事実上の不平等を問題にしなかった。( C )は,権利主体や当事者の経済的・社会的地位を考慮しない抽象的普遍性の外観のもとで,現実には,資本制社会の矛盾を激化させたのである。

 市民社会がその矛盾を自ら克服することができない状態は,市民社会が事実性を失ったことを意味し,その存在と補強のための国家の介入が必要となったことを意味する。( D )ではなく,生存に対する脅威から個人を解放し,人間に値する生活を各人に保障することが国家の任務となった。市民法の体系からはみ出す( E )が形成せられ,所有権の絶対性と契約の自由の制限を手段とする( F )へと国家機能の転換が見られるのである。20世紀の憲法に登場する( G )と一連の( H )はこのような事情を基本権の内容に反映させるものである。平等の観点から見た場合,この国家機能の変化は,平等の意味を形式的なものから実質的なものへと転換させることを意味し,( I )の理念を思想的根拠としている。

 平等は,はじめは自由主義の原理であったが,ついで( J )の原理になる。国民主権の下においては,法律は国民全体の意思の表現であり,国民の自治が実現するのであるが,国民の平等な政治参加がその前提条件となる。政治の領域における平等も,( K )を排除したほかは,市民の立場から見た国家に対する貢献の資格と能力に応じた相対的な意味のものであった。財産・性別等を理由とする( L )から出発したのはそのためである。しかし,政治の領域においても,各市民を正当に遇するために必要と考えられて来た伝統的な区別の要素が,国民の政治的統合にとり本質的なものでないことが明らかになり,政治的権利の絶対的平等化が思考されるに至った。19世紀後半から20世紀初頭にかけて進行する普通選挙,婦人参政,選挙年齢の引き下げは,徹底した平等主義の方向を歩んでいる。」

ア 労働者の有産階級化  イ 労働立法や経済統制立法  ウ 国家権力による解放  エ 財産権の相対化  オ 財産の不可侵  カ 労働者の貧困,失業  キ 民主主義  ク 国家権力からの解放  ケ 社会国家ないし福祉国家  コ 社会的基本権  サ 配分的正義  シ 資本主義社会  ス 封建的特権  セ 不平等・制限選挙  ソ 所有権の自由と契約の自由  タ 平均的正義

1.  ( A )オ( D )ウ( F )ケ( I )タ( K )ス

2.  ( B )カ( E )イ( G )ア( J )シ( L )セ

3.  ( A )オ( C )ソ( F )ケ( H )コ( K )ス

4.  ( B )カ( D )ウ( G )ア( I )サ( L )セ

5.  ( A )オ( C )ソ( E )イ( H )コ( J )シ

[H09−02]

 憲法改正手続に関し,次のAからFまでの事項を法律をもって定めた場合,憲法に違反して許されないと考えられるもの(2個とは限らない。)の組合せは,後記1から5までのうちどれか。

A 憲法改正のための国民投票について憲法第96条第1項は「過半数の賛成」を要求しているが,国民投票において過半数の賛成があっても,その投票率が10パーセント未満の場合には国民の承認があったものとはせず,憲法改正は効力を生じないものと定めること。

B 憲法改正のための国民投票に際し,賛否の対象となる条項が複数あるときは,対象条項ごとに賛否を問うのではなく,全体をまとめて賛否を問うことができるものとすること。

C 憲法改正の議案を国会に提出するには,衆議院においては議員20人以上,参議院においては議員10人以上の賛成を要するものとすること。

D 憲法改正のための国民投票における投票方法は無記名投票とするが,国の根本規範である憲法を改正するか否かについて主権者である国民自身の責任で判断するものであるから,投票の中に記名投票によるものがある場合でも,それを有効なものとすること。

E 憲法改正のための国民投票の投票権については,それが極めて重要な事項の判断をするものであることに照らして,年齢の要件として参議院議員の被選挙権を有する者,すなわち満30才以上の者に与えるものとすること。

F 憲法改正案の各議院における審議の定足数については,議決をする場合を除いて,一般の法律案の審議の場合と同様に,各議院の総議員の3分の1以上とすること。

1.AC   2.BD   3.AF   4.DE   5.BE

[H09−03]

 国籍に関する次のAからEまでの記述のうち,正しいものを2個組合せたものは後記1から5までのうちどれか。

A 日本人でありながら戸籍に記載されていない者については,家庭裁判所の許可を得てその本籍を設け戸籍に記載するという就籍の制度が戸籍法で認められているが,就籍許可の家事審判の際には,申立人が日本国籍を有する事実を証明できなければ許可の審判を受けることができない。したがって就籍許可の家事審判は公法上の地位である国籍の有無を確定する裁判手続としての性格を有するものであるから,その手続は公開の法廷で対審手続により行われなければならない。

B 日本国憲法は国籍離脱の自由を認めているが(第22条第2項),国家による国籍のはく奪については規定を設けていない。したがって,国籍を有する者に対し一定の場合に選挙権を制限することは可能であっても,いったん付与された日本国の主権者たる地位そのものまでも法律で奪うことは認められず,単に外国の国籍を自らの意思で取得したという理由だけで日本の国籍を失わせることは憲法上許されない。

C 日本国憲法は「日本国民たる要件は,法律でこれを定める。」(第10条)と定めるのみで,国籍の要件を何ら具体的に規定していないから,国籍の得喪に関する事項については国会に広範な立法裁量権が認められるが,具体化する法律(国籍法)は憲法の他の条項と調和しなければならず,国籍法がそれに反する場合には違憲の問題を生じうる。

D 国籍法で「出生のときに父が日本国民であるときには日本国籍を取得する。」という定めをし,いわゆる父系優先血統主義を採用したと仮定した場合,この条項は憲法第14条に違反するとの見解によれば,この国籍法の下で日本人の母親と外国人の父親の間に出生した子は日本国籍を取得することになる。

E 憲法は,国籍取得の要件について出生地主義を採ることを要求しているわけではないから,いわゆる血統主義を採用して,永住資格を持つ外国人を父母として日本国内で出生した子であっても,無国籍者とならない限りは日本国籍を取得できないとすることは合憲である。

1.AD   2.AE   3.BC   4.BD   5.CE

[H09−04]

 次の文章の@からDまでに後記AからEまでの記述を適切な順序で挿入し,その[ ]内に後記アからセまでの語句の中から適切なものを入れると(複数回使用する語句もある。),宗教法人の解散命令の合憲性に関するまとまった論述となる。各記述を正しい順序に挿入した後,第3番目,第12番目の[ ]内に入れるべき語句の組合せ(ただし,順序は問わない。)として,正しいものは,後記1から5までのうちどれか。

「宗教法人は,宗教団体が礼拝の施設その他の財産を所有し,これを維持運用し,その他その目的達成のための業務及び事業を運営することに資するため,所轄庁の認証等所定の要件を満たすことを前提にして,宗教法人となることができるとする。そして,法令に違反して著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をした場合等には,裁判所が解散を命ずることができると規定しているが,これは,会社の解散命令と同趣旨のものと解される。このような宗教法人の解散命令の合憲性について,以下検討する。まず,『@』.そうだとすると『A』.次に『B』.しかし,『C』。このように『D』。」

A [ ]は,法人財産を信者から分離すること自体を目的としているわけではなく,清算の結果そのような自体が生じ得るにすぎず,その支障は,[ ]の信仰にとっては,間接的で事実上のものでしかない

B 一定の要件の下に法人格を剥奪する解散命令の制度は,法人格の有無を問題にするのにとどまり,[ ]としての存在にまで干渉するわけではないことになるから,[ ]の自由を侵すとはいえない

C この制度は,[ ]を対象として,かつ,専ら[ ]によるものであるから,当該法人が極めて違法性の高い行為をしたことを理由として解散命令が発せられる場合には,信者らの[ ]に及ぼす影響も考慮しても,やむを得ない法的規制と評価できる

D [ ]を行うなどの[ ]の自由との関係を検討すると,[ ]のこれらの行為が[ ]に帰属する財産としての[ ]等に依拠していた時は,解散命令の結果,財産が清算されることによって,これらの行為に支障が生じないとはいえない

E [ ]の自由,すなわち,当該宗教目的を達成するための組織体を結成する自由との関係が問題となる。この法律により法人格を付与され得る宗教団体は,憲法上の宗教団体より[ ]ことになるが,法人格のない結社を作ることは自由であるから,法人格の取得に一定の要件を課していることは,憲法上許されると考えられる

ア 広い  イ 狭い  ウ 解散命令  エ 世俗的側面  オ 精神的な宗教的側面  カ 世俗的目的  キ 宗教的行為  ク 組織的犯罪行為  ケ 宗教法人  コ 信者  サ 礼拝施設  シ 宗教上の儀式  ス 非宗教的結社  セ 宗教的結社

1. エセ   2. オコ   3. クサ   4. クス  5. サセ

[H09−05]

 各議院の国政調査権に関する次のAからFまでの記述のうち,誤っているものはいくつあるか。

A ある人物が政治的・社会的に極めて大きな影響力を有するとの理由に基づく場合には,その信条それ自体を調査目的とすることも許される.

B 現に裁判所に係属する私人間の民事訴訟事件に関する調査であっても,その調査目的によっては違法ではない.

C 裁判官訴追委員会が特定の裁判官を訴追すべきか否かを調査することは,特に法律が裁判官訴追委員会に認めた権能であり,各議院の国政調査権によるものと解するのは誤りである。

D 検察庁は準司法機関であり,検察権の行使もその性質は準司法作用であるから,検察庁が現に捜査を行っている刑事事件について調査することは,目的のいかんを問わず許されない。

E ある省庁の行政活動については調査し得るけれども,その省庁自体ではなく,その監督下にある独立の法人格を有する公益法人の活動について調査することはできない。

F 調査目的が,実質上ある中央省庁に所属する幹部職員の刑事責任の追及にある場合には,違法な国政調査になる。

[H09−06]

 次のAからDまでの文章をその〔  〕内に後記アからサまでの語句の中から適切なもの(使用する語句が1回とは限らない。)を選んで挿入した上,「『@』。しかしながら,『A』。そして,『B』。もっとも,『C』。」と並べ換えると,裁判手続と憲法との関係に関するまとまった論述となる。各文章を正しい順番に並べた後,第3番目,第8番目,11番目の〔  〕内に入れるべき語句の組合せ(ただし,順序は問わない。)として正しいものは,後記1から5までのうちどれか。

A 〔  〕との関係を考えた場合,現代においては,情報等に接し,これを摂取する自由は,〔  〕の派生原理として導かれると解すべきであるところ,〔  〕は,情報等を受領する上においてそれを補助補強するものとしての意義があり,また,受領した情報を他者に伝達する上においても主要な役割を営むものと評価でき,〔  〕の自由は,〔  〕を認める憲法の精神に照らして尊重されるべきである

B 憲法は〔  〕を制度として保障しているが,このことを直接の根拠として,〔  〕に対して法廷において〔  〕ことが憲法上保障されているということはできない

C 〔  〕の自由も,一定の合理的制限を受けることがあるのはやむを得ないというべきであって,〔  〕行為が法廷における公正かつ円滑な訴訟の運営を妨げる場合には,それを制限または禁止することも許されるが,そのような事態は通常はあり得ないから,特段の事由がない限り,〔  〕の自由に任せるべきである

D 前述のとおり,〔  〕は制度として憲法上保障されており,〔  〕は法廷における裁判を見聞することができるから,〔  〕が法廷において〔  〕ことは,その見聞する裁判を認識,記憶するためにされるものである限り,尊重に値するものといわなければならない

ア 表現の自由  イ 取材の自由  ウ 裁判を受ける権利  エ 裁判の公開  オ メモを取る  カ 事件を傍聴する  キ 裁判を報道する  ク 筆記行為  ケ 取材行為  コ 傍聴人  サ 報道機関

1. アオコ   2.イキサ   3.ウカク   4.エオク  5.イカケ

[H09−07]

 次の文章は,未決勾留により拘禁された者(以下「被勾留者」という。)と14才未満の者(以下「幼年者」という。)との接見について定めていた旧監獄法施行規則に関するある判例の要約であるが,これに関する後記AからEまでの記述のうち正しいものはいくつあるか。

「被勾留者には一般市民としての自由が保障されるので,監獄法第45条は,被勾留者と外部の者との接見は原則としてこれを許すものとし,例外的に,逃亡又は罪障隠滅のおそれが生ずる場合にはこれを防止するために必要かつ合理的な範囲内において接見に制限を加えることができ,これを許すと監獄内の規律又は秩序の維持上放置することのできない障害が生ずる相当の蓋然性が認められる場合には,その障害発生の防止のために必要な限度で接見に合理的制限を加えることができるとしているに過ぎず,この理は,被勾留者との接見を求める者が幼年者であっても異なるところはない。これを受けて,監獄法第50条は法務省令をもって,面会の立会,場所,時間,回数等,面会の態様についてのみ必要な制限をすることができる旨を定めているが,命令によって許可基準そのものを変更することはもとより許されない。ところが,旧監獄法施行規則第120条は,原則として被勾留者と幼年者との接見を許さないとする一方で,同規則第124条がその例外として限られた場合に監獄の長の裁量によりこれを許すこととしている。したがって,これらの規定は,たとえ事物を弁別する能力の未発達な幼年者の心情を害することがないようにという配慮の下に設けられたものであるとしても,それ自体,法律によらないで,被勾留者の接見の自由を著しく制限するものであって,法律の委任の範囲を超えるものといわなければならない。」

A この判例は,委任立法の司法審査について,立法権の行政権への授権自体の合憲性について判断を示したのではなく,委任立法の内容的な適法性について判断を示したいわゆる越権審査に関するものである。

B 憲法第3章の「国民の権利及び義務」の「国民」には未成年者も当然に含まれるが,未成年者は未だ成熟した判断能力を持たないので,一般的にはその基本権の制約は成人の場合よりもやや緩やかに認めるべきであるとする説もあるが,この判例は,被勾留者との接見の権利については,14才未満の者に対してもその者の人格的自律権を尊重して積極的に保障すべきことを認めている。

C この判例は,被勾留者の接見交通の事案についてのみ判断を示したものであるが,監獄内の規律又は秩序の維持が被勾留者の権利制限の根拠になるというのであるから,刑事裁判の判決確定前か否かで被拘禁者に対し異なる取扱いをすべき理由はなく,一般的に,監獄内に拘禁中の者の権利・自由を制限できる範囲は,受刑者の場合も被勾留者の場合と原則として同じである。

D この判例で問題とされている親族との接見は,被疑者,被告人の防御権の保障という観点から憲法第34条又は第37条で保障されているものと解するべきであるが,被勾留者の外部交通の自由という観点から人格的権利として憲法第13条でも保障されているものと解することもできる。

E この判例は,被勾留者との関係で旧規則第120条は法第50条の委任の範囲を超えていると判断しているが,拘禁施設という特殊な環境から幼年者の心情を保護し,幼年者の将来に悪影響を及ぼさないようにするという目的の合理性を否定しているものではなく,監獄を訪れる幼年者の保護も法の目的に含まれているのであるから,旧規則第120条は法律を実施するためのいわゆる執行命令としての性格をも有していることになり,その面からは違法無効なものとはいえない。

1. 0個   2. 1個   3. 2個   4. 3個   5. 4個

[H09−08]

 次の教授甲と学生乙の会話の(  )内に「第29条2項」「第31条」「第41条」のいずれかを挿入した上,〔 ア 〕から〔 ケ 〕までに適当な語句を入れると,ある憲法問題に関するまとまった会話となる。〔 〕内に入る語句として正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。

甲 「ある法律では,自分の所有地であっても,その土地の形質の変更を行うには行政庁の許可が必要とされているとする。この場合,行政庁がその内部で設けた許可基準を公表しないまま,申請に対して不許可処分をしたときに,行政手続上の問題は別として,どのような憲法問題があり得ますか。」

乙 「内部的にせよ,そういう基準がある以上,それを申請者に知らせて〔 ア 〕の機会を与えるべきですから,(  )の定める適正手続に違反するのではないかという問題が起こります。」

甲 「〔 イ 〕の問題ですね。それもそうだが,許可基準を法律で定めていない点をとらえて,法律によらずに国民の権利・自由を制限することは適正手続に反するものとして,(  )違反だという議論はできないのだろうか。」

乙 「国民の権利・自由を制限するには法律によらなければならないということは,むしろ(  )から出てくる要請ではないでしょうか。また,説例のような〔 ウ 〕の場合には,(  )からも同様のことがいえると思いますが。」

甲 「よく勉強していますね。一般に適正手続というと〔 エ 〕に関することのように思われがちですが,そもそも権利・自由を制限するためには,それが法律に基づき法律に従って行われること自体が,まさに適正な手続だといえますね。」

乙 「逆にいうと,法律によらない権利・自由の制限は,適正な手続によるものとは認められないということですね。」

甲 「そうです。〔 オ 〕が(  )に含まれるかという議論があるが,同条は〔 オ 〕の保障を含むとするのが通説でしょう。つまり,(  )は,単に〔 カ 〕を科す場合の手続を法律で定めるというだけでなく,〔 キ 〕とそれに対する〔 カ 〕も法律で定めるべきことを要請しているわけです。」

乙 「なるほど。そこで,(  )は,〔 エ 〕だけでなく〔 ク 〕についても適正手続を要請している場合があるとの解釈を基準にすれば,権利・自由を制限する場合にも法律で定めるべきだということが出てくるのですね。」

甲 「そうです。それは同時に,先程話に出た(  )の問題でもあり,〔 ウ 〕の場合なら(  )の問題でもあるでしょう。要するに,これらの条項に競合的に違反するということでよいと思います。ただ,このうち(  )は〔 ケ 〕に関する原理を定めているものであることからすれば,訴訟で人権問題として争うとすると(  )の方が使いやすいということはあるでしょう。」

1. 〔 ア 〕に「主張と証拠提出」,〔 キ 〕に〔人権保障〕

2. 〔 イ 〕に「告知と聴聞」〔 ケ 〕に「国民主権」

3. 〔 ウ 〕に「平等原則違反」,〔 カ 〕に「罪刑法定主義」

4. 〔 エ 〕に「行政手続」,〔 オ 〕に「罪刑法定主義」

5. 〔 ウ 〕に「財産権」,〔 ケ 〕に「国家の行為」

[H09−09]

 次のAからEまでの記述のうち,誤っているものはいくつあるか。

A 予算について参議院で衆議院と異なった議決をした場合,両院協議会を開催しなければならず,同協議界で成案が得られたときは,その成案が国会の議決となる。

B 衆議院の可決した予算の送付を受けた参議院が議決しないうちに衆議院が解散された場合,衆議院の可決した予算の送付を受けてから30日の期間が経過しても予算は成立しない。

C 財政投融資(政府又はそれに準ずる機関が,財政の機構を通じて得られる資金又は政府の影響のもとにある資金を一定の目的に従って出資若しくは融資すること)は,仮に,その性質上,財政民主主義を規定する憲法38条の範囲外であるとしても,宗教上の組織又は団体のための利用に供することはできない。

D 内閣は,新たな会計年度の開始前に予算が成立しない事態に備えて暫定予算を作成することができる。暫定予算は,当該会計年度の予算が成立するまでの緊急措置であるから,暫定予算に基づく支出又はこれに基づく債務の負担がある場合は,当該会計年度の予算にこれを組み入れて事後的に国会の議決を受けなければならない。

E 予備費は予見しがたい予算の不足に当てるために設けられるものであるから,既に予算が成立した後に予算を伴う法律を制定する場合は,その施行を翌会計年度とするか,又は補正予算の措置を採るべきであって,予備費を当てることはできない。

1. 1個   2. 2個   3. 3個   4. 4個   5. 5個

[H09−10]

 次のAからEまでの記述のうち,正しいものを2個組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。

A 裁判を受ける権利を保障している憲法第32条は,憲法第37条第1項と異なり「公平な裁判所」で裁判を受けることを明文では保障していないが,刑事手続と民事・行政訴訟手続とではその保障が異なる理由はないから,その保障はすべての裁判について及ぶものと解すべきである。そして,これを具体化した原則の一つとして「何人も自己の関する事件に関し,裁判官たるべからず。」という法格言があり,例えば,最高裁判所の規則制定の合憲性が争われている行政訴訟については,その規則制定に関与した最高裁判所裁判官は,その上告審の裁判に関与することができないことになる。

B 事件につき予断を抱いている裁判官による裁判は公平な裁判とはいえない。したがって,ある訴訟事件の審理の前にその事件の保全処分を担当した裁判官は,その訴訟事件に関する資料を保全処分を出す際に検討して既に心証を形成しているので,その訴訟事件を担当することはできない。

C 行政庁は,終審としてでなければ裁判を行ってもそれが直ちに憲法違反ということはできないので,行政庁は行政処分を受けた者の申立てに基づき処分の当否について行政不服審査を行うことができる。この場合,行政庁による審査ではあるが,審査の公正を保つため,処分を行った者と不服審査の判断をする者は,別々でなければ憲法第32条に違反することになる。

D 憲法第37条第1項で保障されている「公平な裁判所」とは,裁判所の構成等において公平さの保障がなされていなければならない趣旨であるが,実際に地方裁判所で関与した事件を高等裁判所で担当しなければ,ある裁判官が地方裁判所と高等裁判所の裁判官を兼務することも許される。

E 憲法で保障されている「公平な裁判所」による裁判とは,偏頗や不公正のおそれのない構成等による裁判をいうのであって,仮に,ある裁判において,裁判所の事実認定や法令解釈に多くの誤りがあり適正妥当な結論とは正反対の結論を出した場合であっても,そのことを理由に公平な裁判所による裁判を受ける権利が侵害されたということはできない。

[H09−11]

 次の文章の【  】内に下記アからオまでのうちの適当な文章を補って挿入すると営業の自由に関するまとまった論述となる。【  】内に入れるべき文章に関する後記1から5までの記述のうち,もっとも適切なものはどれか。

「営業の自由の制限は,通常,その目的に応じて,消極的(警察的)制限と積極的(政策的)制限とに大別される。前者の制限は,当該営業行為により社会や他人に害悪を及ぼすのを未然に防止するための制限である。【 A 】。

 この場合,制限の目的は害悪の発生を防止することにあるから,なんら害悪を及ぼす可能性のない営業行為を制限することは許されない。

 すなわち,消極的制限が合憲とみなされるためには,まず第一に,【 B 】。換言すれば,【 C 】。ただし,【 D 】。第二に,【 E 】。この点を明らかにしたのが,薬事法の定める薬局の適正配置規制を違憲とした最高裁判所判決である。ここで最高裁判所は,薬局営業に対する許可規制を,不良医薬品の供給防止を目的とする保健衛生上の制限,すなわち,消極的制限としてとらえ,許可条件の一つとして定められていた距離制限を,前期目的達成のための手段としては行き過ぎであるとしたのである。」

ア 当該営業行為の制限を必要とする社会的事実(いわゆる立法事実)の存在が明らかにされなければならない

イ 何人も社会や他人に害悪を及ぼす自由は有しないということは,すべての人権に内在する限界であるから,この制限は,営業の自由の内在的制約と見ることができる

ウ 制限の程度・手段は,害悪の防止という目的達成のための,必要最小限度のものにとどまらなければならない

エ 当該営業行為が何らの制約もなくなされたならば発生するであろう害悪の存在が証明されなければならない。

オ いわゆる「優越的地位」にある精神的自由の場合とは違って,この場合には,害悪発生の抽象的危険をもって足りるとすべきであろう

1. Aの前の部分では消極的制限について述べているのだから,Aにはその制限の性質に関する記述であるイが入り,Eには消極的制限が合憲とみなされる二番目の要件であるエが入る。

2. Bには消極的制限が合憲とみなされる要件のうちの一つであるウが入り,それとの関連でDにはアが入る。

3. CはBと同義的文言が入らなければならないから,Cにはオが入り,Eには消極的制限が合憲とみなされる二番目の要件であるイが入る。

4. Aの前の部分では消極的制限について述べているのだから,Aにはその制限の程度に関する記述であるウが入り,それとの関連でDにはオが入る。

5. Bには消極的制限が合憲とみなされる要件のうちの一つであるエが入り,CにはBと同義的文言が入らなければならないからアが入る。

[H09−12]

 次のAからEまでの記述のうち,正しいものはいくつあるか。

A 最高裁判所規則は,実質的意味の立法に当たり,国民の権利義務にかかわるものもあるから,法律,政令等と同様に,内閣の助言と承認に基づく天皇による公布が憲法上必要とされている。

B 議院規則は,通常,議院の内部規律を定めるにすぎないから,憲法上公布が必要とされていない。

C 法律は,官報,新聞その他国民が周知し得るような方法で公布することにより成立する。

D 主任の国務大臣,内閣総理大臣は,法律につき,署名,連署の義務を負うものでありが,署名,連署を欠く法律も効力を否定されるものではない。

E 条約は,それだけでは直ちに国内法的効力が生じないものでも,また,国家間の権利義務に関わり直接国民の権利義務に関わらないものでも,天皇による公布の対象となる。

1. 1個   2. 2個   3. 3個   4. 4個   5. 5個

[H09−13]

 次の会話は,学生3人が租税法律主義について話し合っているものであるが,学生Bの@からDまでの発言のうち正しいものを2個組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。

A 「税金というのは一方的に賦課・徴収されたりしてしまうのでその仕組は難しくてよくわからないが,憲法第84条でいう租税法律主義とは,何が法律で定められている必要があるということなのかな。」

B 「要するに,課税要件,つまりそれを満たすと納税の義務が成立するという実体的な要件を明確に定めろということに尽きるよ。具体的にいえば,まず,誰が納税義務を負うのかという納税義務者,何に対して課税するかという課税物件,それを金額,価額,数量等で示した課税標準,そして,税率という4つの要件を法律で明確に定めておくことを意味するわけだ。」……@

A 「確かにその4つを決めれば税金の具体的な額が決められるとは思うが,そのせいか実際の法律は非常に複雑で難解だね。すべての税金についてそんなに詳しく法律で決めておかなければいけないのかな。」

B 「委任を必要とする特別の事情があれば法律が他の法形式に委任することが認められるが,その場合でも,法律による委任は,明示的,具体的,個別的でなければならないんだ。」……A

A 「厳格なんだね。そうすると,地方税の課税要件等についての具体的な定めは条例によることとしている地方税法の規定は問題ないのだろうか。」

B 「地方税を国の課税権の一部が分与されたものととらえる立場からは,地方税も当然に法律の根拠を必要とするが,地方自治の本旨の要請から法律の定める範囲内で地方公共団体の自治権に委ねるのが適当であり,国税と異なり大幅に条例に委任することができると解されているよ。」……B

C 「地方公共団体の課税権は地方自治に不可欠なものであるから,地方公共団体の固有の権能とみるべきではないから。」

B 「その立場によれば,地方税については憲法第84条の『法律』は『条例』と読み替えることになる。『代表なくして課税なし』という原則からすれば,住民を代表する地方議会が制定する条例が,国民の代表議会である国会の制定する法律に対応することになるからね。」……C

C 「国税についてはおびただしい数の解釈通達が出されているが,あれはどういう意味を持っているのかな。」

B 「通達は,一般的には上級官庁が下級官庁に対して,法規の運用等の準則や解釈基準を示すもので,それ自体としては法規の性質を有しないとされているけれども,租税にかかる法律で定める課税要件の文言が抽象的で一定の幅のある解釈をする余地があるときなど,行政庁による解釈の補充を必要とする場合には,上級庁がその専門的判断の結果として通達で示す公権解釈が,法律の施行に必要な法規としての効力を持つことになるんだよ。」……D

1. @A   2. @B   3. AC   4. BD   5. CD

[H09−14]

 日本国憲法の地方自治に関する次のAからEまでの記述のうち明らかに誤っているものを2個組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。

A 地方自治の保障に関し,地方公共団体の自然権的・固有権的基本権を保障したものとみる見解と,地方自治という歴史的・伝統的・理念的な公法上の制度を保障したものとみる見解とでは,国家と地方公共団体の関係をどうみるかについての基本的な考え方が異なる。しかし,憲法第92条にいう「地方自治の本旨」の内容の具体的判断に当たっては,前者の見解では地方公共団体の固有の自治事務は何かが,後者の見解では地方自治制度の本質的内容ないし核心的部分は何かが問題になるのであるから,両者の間にそれほど大きな差異があるわけではない。

B 法律で,「町村は,条例で,議会を置かず,これに代えて選挙権を有する者の総会を設けることができる。」と定めることは,地方公共団体には議事機関として議会を設置し,地方公共団体の議会の議員は住民が直接これを選挙する旨規定している憲法第93条に違反する。

C 憲法上の地方公共団体といい得るためには,事実上住民が経済的文化的に密接な共同生活を営み,共同体意識を持っているという社会的基盤が存在し,沿革的にみても,また現実の行政の上においても,相当程度の自主立法権,自主行政権,自主財政権等地方自治の基本的権能を付与された地域団体であることを必要とする。したがって,政令指定都市の区は,憲法上の地方公共団体とはいえない。

D 都道府県知事は,法律に基づき委任された国の事務(いわゆる機関委任事務)を処理する関係においては,国の機関としての地位を有し,主務大臣の指揮監督を受けるべきものとされている。この関係については,あくまでも国の機関としての地位を有するのであるから,いわゆる上命下服の関係にある国の本来の行政機構内部における指揮監督の方法と同様の方法を採用しても,都道府県知事本来の地位の自主独立性を害し地方自治の本旨に反することはない。

E 特定の地方公共団体の地域の住民にのみ不利益を及ぼすような法律であっても,国の事務や組織について規定し,地方公共団体の組織,運営,権能に関係のないものは,憲法第95条にいう「一の地方公共団体のみに適用される特別法」に該当しない。

1. AC   2. AD   3. BD   4. BE   5. CE

[H09−15]

 次のAからFまでの文章を,その〔  〕内に適切な語句(4種類の語句がある)を挿入した上,「『 @ 』。その結果,『 A 』。したがって,『 B 』。殊に,『 C 』。また,『 D 』。したがって,『 E 』。」と並べ換えると表現の自由の規制に関するまとまった論述となる。CからEに挿入する文章の順番として正しいものは,後記1から5までのうちどれか。

A 〔  〕を規制する法律の規定は,それ自体〔  〕な基準を示すものでなければならない。

B 〔  〕を規制する法律の規定が〔  〕であって,何が規制の対象となり,何がその対象とならないのかが〔  〕な基準をもって示されていないときは,国民に対してどのような行為が規制の対象になるのかを適正に告知する機能を果たしておらず,また,規制機関による恣意的な運用を招く危険がある。

C 〔  〕を規制する法律の規定自体が何を規制の対象としているのかという点について〔  〕でないとしても,憲法上規制することが許されない行為までをも規制の対象とするものである場合には,同様に本来許されるべき行為の自己抑制を招くものといわなければならない。

D 国民がその規定の適用を恐れて本来自由にすることができる範囲に属する〔  〕までをも差し控えるという効果の生ずることを否定できない

E 〔  〕を規制する法律の規定の適用範囲が広範に過ぎ,当該規定が本来規制の許されるべきでない場合にまで適用される可能性を無視しえない場合には,やはり憲法第21条1項によって違憲無効と判断されなければならない

F 〔  〕の規制が事前のものである場合には,その規定は,立法上可能な限り〔  〕な基準を示すものであることが必要である。それ故,〔  〕を規制する法律の規定が,国民に対し何が規制の対象となるのかについて適正な告知をする機能を果たしえず,また,規制機関の恣意的な運用を許す余地がる程度に〔  〕な場合には,その規定は,憲法第21条1項に違反し,無効であると判断されなければならない。

1. DFE   2. FCE   3. CFA   4. EFC 5. BCD

[H09−16]

 次のAからHまでの記述のうち5つを選び,「憲法第36条は,残虐な刑罰を絶対に禁じている。したがって,『 @ 』。ところが『 A 』。しかし,『 B 』。したがって,『 C 』。このような場合には『 D 』。」と挿入して並べると,死刑制度に関するまとまった論述となる。@とDに入る記述の組み合わせ(ただし,順序は問わない)として正しいものは,後記1から5までのうちどれか。

A 憲法は,その制定当時における国民感情を反映してこのような規定を設けたにとどまり,死刑を永久に是認したものとは考えられない。ある刑罰が残虐であるかどうかの判断は国民感情によって定まる問題である。国民感情は時代と共に変遷することを免れないのであるから,ある時代に残虐な刑罰でないとされたものが,後の時代に反対に判断されることもあり得る

B 死刑廃止に向かいつつある国際社会の動向を重視し,一定期間の死刑の執行停止や仮出獄を許さない無期刑の新設などの立法政策により国民感情が変化し得ることを前提とするならば,もはや死刑は憲法第36条に反するものとなったと解することができよう

C 国家の文化が高度に発達して正義と秩序を基調とする平和的社会が実現し,公共の福祉のために死刑の威嚇による犯罪の防止を必要と感じない時代に達したならば,死刑もまた残虐な刑罰として,国民感情により否定されるに違いない

D 死刑の執行方法は絞首刑であり,火あぶりや釜ゆでのように不必要な苦痛を与え,人道上の見地からみて残虐性を有する方法とはいえないから,憲法第36条には違反しないことになろう

E 憲法第31条の解釈もおのずから制限されて,紙型は残虐な刑罰であり憲法に違反するものとして排除されることもあろう

F 死刑が残虐な刑罰であるとすれば,憲法は他の規定で死刑の存置を認めるわけがない

G 憲法第31条の反対解釈によると,法律の定める手続によれば,刑罰として死刑を科し得ることが窺われるので,憲法は死刑をただちに残虐な刑罰として禁じたものとはいうことができない

H 憲法第13条によれば個人の生命は最大の尊重を必要とし,個人の基本的人権の根幹であるから,これを否定する死刑制度の是非は国民感情という多数決で決められる性質の問題ではないというべきであろう

1. AE   2. BD   3. BH   4. CE   5. EF

[H09−17]

 次のAからEまでの文章を,その【  】内に後記アからコまでの語句の中から適切なものを選んで挿入した上,「『@』。『A』。しかし,この説に対しては,『B』。他方,『C』。したがって,『D』。」と並べ換えると,衆議院の解散に関するまとまった論述となる。各文章を正しい順番に並べ換えた後の【  】内に入れるべき語句の組合せとして正しいのは,後記1から5までのうちどれか。

A 【  】としての解散に関する内閣の【  】は【  】にすぎないとして,【  】の所在について【  】を根拠とすることはできないとの批判がある

B 衆議院の解散の【  】が内閣にあるという根拠は,個別の条文ではなく,日本国憲法の採用する【  】ないし【  】に求めざるをえないとする説が登場するのである。しかし,後者を根拠とする論者は,衆議院解散の【  】が内閣にあることを【  】の内容としていると解せざるを得ず,したがって,循環論法であるとの批判を免れない

C 衆議院の解散の【  】が内閣にあるとする根拠を,憲法第7条以外に求める説の中には,【  】を根拠とする説がある。この説は,行政権の範囲につき,いわゆる控除説に拠った上で解散権は内閣に属するとするのであるが,この説に対しては,立法・行政・司法の分立ないし相互抑制が法治行政確保のために必要であり,憲法上【】の所在が明確でない権限をおしなべて行政権に属せしめることは妥当でないとする権力分立観からの批判がある

D 【  】を根拠として,衆議院の解散の【  】は内閣にあるとする説の中には,内閣の【  】を,旧憲法下の大臣輔弼制の立憲主義的発展形態として理解し,憲法に列挙された【  】のうち,その【  】の所在が憲法上必ずしも明らかでないときは,内閣にその権限があると考えるべきであるとするものもある

E 衆議院の解散が,【  】の場合に限定されるのか,それとも限定されないのかについては争いのあるところであるが,限定されないとする説の根拠も多種多様である

ア 憲法第7条  イ 憲法第65条  ウ 憲法第69条  エ 国事行為

オ 議院内閣制  カ 権力分立制  キ 実質的決定権  ク 形式的決定権

ケ 助言と承認  コ 衆議院の優越

1. 2番目にア,7番目にエ,16番目にオ

2. 3番目にキ,6番目にク,13番目にイ

3. 4番目にケ,10番目にキ,17番目にオ

4. 5番目にエ,11番目にア,14番目にイ

5. 8番目にケ,15番目にキ,19番目にク

[H09−18]

 次のAからEまでの記述のうち,誤っているものはいくつあるか。

A 現行の国家賠償制度は,違法な行為をした公務員の使用者としての責任を国又は公共団体に負わせるものであり,民法の使用者責任と基本的に同じ性質を有するから,公務員の故意又は過失により違法に損害を発生させた場合であっても,使用者としてその公務員の選任や監督に注意を尽くしたことを国又は公共団体が証明したときは,その賠償責任を免れることができる。

B 消防吏員が,消防署長の命により,消火活動のために通路を確保する目的で民家を損壊した場合,それがやむを得ない措置であったとしても,その家屋の所有者に対し消防署の属する地方公共団体は損失補償をしなければならない。

C 私有財産は,正当な補償の下に公共のために用いることができるのであるから,私有地を国や公共団体がその事業のために収用することはできるが,私企業が事業主体である場合に私人の土地をその事業のために強制的に収用することは憲法第29条第3項に違反して許されない。

D 憲法第40条の規定する刑事補償請求権の制度は,誤って起訴されて無罪になった者に対して,その被った不利益を金銭に換算して補償する制度であるから,身柄を拘束されずに起訴されて無罪になった被告人の場合にも,その被った精神的苦痛に対する慰謝料,裁判に出頭したための逸失利益,弁護費用等の裁判に要した費用等を補償しなければならない。

E 従来は自由な土地利用が可能であった地域が,都市計画により市街化調整区域に指定され,開発行為が厳しく制限されてその地価が下落した場合でも,憲法上は,その地域の土地の所有者に対し損失補償をすることを要しない。

1. 1個   2. 2個   3. 3個   4. 4個  5. 5個

[H09−19]

 自家用ないし自己消費のための酒類製造についても免許制度による規制の対象とされることに関して次のような趣旨の判例があるが,この判例についての後記AからEまでの説明のうち,もっとも適切なものはどれか。

「酒税法の各規定は,自己消費を目的とする酒類製造であっても,これを放任するときは酒税収入の減少など酒税の徴収確保に支障を生じる自体が予測されるところから,国の重要な財政収入である酒税の徴収を確保するため,製造目的のいかんを問わず,酒類製造を一律に免許の対象とした上,免許を受けないで酒類を製造した者を処罰することとしたものであり,これにより酒類製造の自由が制約されるとしても,そのような規制が立法府の裁量を逸脱し,著しく不合理であることが明白とはいえず,憲法第31条,第13条に違反するものではない。」

A この判例は,酒類を自己消費の目的で製造する自由は,経済活動の一環としての営業の自由の問題であって,個人が公権力に対して自己の私生活に関する自主決定を主張し,公権力の干渉を拒否する自由として憲法第13条により保護されるものではないとするものである。

B この判例は,酒類の製造免許制度は,社会経済政策の一環として,経済的弱者を保護する目的から採用されているものであるから,立法府がその裁量権を逸脱し,当該法的措置が著しく不合理であることが明白である場合に限ってこれを違憲とするという「明白性の原則」が妥当するというものである。

C この判例は,自己消費を目的とする酒類製造の自由は,憲法上保障されている自由権とは異なる単なるし生活上の自由にすぎないことを前提とし,その規制は法律によれば原則として自由になし得るというものである。

D この判例は,自己消費目的で酒類を製造する自由が憲法第13条の保障を受ける個人の権利ないし自由に属するのかについて格別の実質的判断をしていないが,その製造の自由が酒税の徴収確保という規制目的に優越しない自由であることを前提にして,いわゆる「明白性の原則」に相当する審査基準で免許性の合憲性を判断するものである。

E この判例は,租税法の分野における政策的・専門技術的判断を尊重する観点から立法府の裁量的判断について「明白性の原則」を採用するものであり,規制される個人の権利の種類には関係なく,規制目的に正当性があり,規制手段との合理的関連性が認められる限りは,合憲性の推定が働くことを明らかにするものである。

1. A   2. B   3. C   4. D   5. E

[H09−20]

 次の文章のAからEには甲群の中から,アからオには乙群の中からそれぞれ適当な語句を挿入すると,権力分立に関するまとまった論述となる。挿入する語句の組合せとして正しいものは,後記1から5までのうちどれか。

「権力分立制は,18世紀から19世紀にかけて,近代諸国の憲法で基礎的な原理として採用され,今日では多くの国に根強い地盤を有している政治組織原理である。1789年の( A )は,『[ ア ]。』と断言し,権力分立制が国民の権利の保障とともに立憲国の憲法に欠くことのできないものであることを強調している。権力分立論の重点は,自由主義的な政治的要請としてその実現を求めるところにあり,その真価も主としてそこに見られる。すなわち,国家の権力から国民の自由を守るために考えられた原理であって,国家の権力が誰かの一手に集中してあまりに強大になるのを防止し,各権力を分離・独立させて,それを抑制し,緩和する必要があるとするものである。

 したがって,自由主義的であるということは,権力分立の意味そのものからただちに流れ出てくる,権力分立の第1の特性である。次に,権力分立は,もともと積極的に能率を増進するための原理でなく,消極的に権力の濫用又は権力の恣意的な行使を防止するための原理である。( B )の言うように[ イ ]。このような消極的特性が第2の特性である。第3の特性は,国家権力及びこれを行使する人間に対する懐疑的又は悲観的態度にある。( C )は,『[ ウ ]。』と述べている。また,アメリカの独立やその憲法制度への寄与で知られる( D )の『[ エ ]。』という言葉は,この分立論の意図を率直に表明している。第4の特性は,その政治的中立性又は中和性にある。本来の性格が自由主義的であるから,ワイドナーの述べるように『[ オ ]。』ということができる。17世紀のイギリスにあって当時の母国の政治の現実に即して立法権の優位を説いた( E )に対し,立法権と行政権の分立・均衡を主張して,極端な民主制の中和を求めた( C )が唱えた立憲君主型の権力分立制は今日では廃れてしまったが,民主主義の下でも権力分立原理の働く場は決してなくなりはしないのである。」

【甲群】@ロック  Aルソー  Bモンテスキュー  CJ.S.ミル

Dブランダイス  Eマーシャル  Fジェファーソン  Gフランス人権宣言第16条

Hアメリカ合衆国憲法前文  Iヴァージニア権利章典

【乙群】

T われわれの選良を信頼してわれわれの権利の安全に対する懸念を忘れるようなことがあれば,それは危険な考え違いである。信頼はいつも専制の親である。自由な政府は信頼ではなく猜疑に基づいて建設される。権力に関する場合は,人に対する信頼には耳を貸さず,憲法の鎖によって,非行を行わないように拘束する必要がある。

U いろいろな歴史的情勢に対する反動の可能性こそ,権力分立原理の超時間的価値である

V その目的は,摩擦を避けることではなく,政府の権力を3つの部門に配分することに伴う不可避的な摩擦によって国民を専制から救うことにある

W いかなる委任された権力も,決して委任の条件を変えることはできない

X 主権は「人民」の意思力であるから,分割された主権はありえない。主権の一部とみなされている諸々の権力は,すべて主権に従属しているのであり,常に最高の意思を予定し,その意思を執行するにすぎない

Y すべて権力を持つ者はそれを濫用しがちである。彼は極限までその権力を用いる。それは不断の経験の示すところだ

Z 権利の保障が確保されず,権力の分立が定められていない社会は,憲法を持つものではない

1. A−H,イ−U,C−A,エ−V

2. B−D,ウ−Y,エ−T,E−F

3. ア−Z,C−B,D−F,オ−U

4. ア−W,B−E,ウ−T,E−@

5. A−G,イ−V,D−C,エ−X

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