[39−03] 事故により右腕に重傷を負って意識を失った乙が病院に運ばれてきた。その腕は切断するよりほかに治療の方法がないことは医学上明らかであるが,乙の意識が回復するまで手術を待っても,特に症状が悪化するほどではなかった。

 しかし外科医甲は,直ちにその腕を切断した。甲の行為が罪とならないことを説明するのに役立つ余地のないものは,次の記述のうちどれか。

(1) 正当業務行為である。

(2) 乙の承諾が推定される。

(3) 社会的相当行為である。

(4) 緊急避難行為である。

[39−07] 「鳥獣保護及び狩猟に関する法律」によれば,都道府県知事が銃猟禁止区域を設けた時は,その区域で銃猟をした者は,1年以下の懲役または5万円以下の罰金に処せられることになっている。その場所が銃猟禁止区域であることを知らずに銃猟した場合にも,上記の罪にあたるとした判決があるが,次の考え方のうち,この判決の結論と矛盾するものはどれか。

(1) この罪は故意犯に限るが,銃猟禁止区域であることを知らないのは法の不知であり,故意犯の成立には,違法性の意識(認識)を必要としないという考え方。

(2) この罪は故意犯に限るが,銃猟禁止区域であることを知らないのは法の不知であり,故意犯の成立には,違法性の意識(認識)が可能であれば足りるという考え方。

(3) この罪は故意犯に限るが,銃猟禁止区域であることの認識は事実の認識であるという考え方。

(4) 「鳥獣保護及び狩猟に関する法律」は取締法規であるから,明文はなくとも過失の場合も含まれるという考え方。

[39−09] 誤りはどれか。

(1) 甲は,いくら出て行けといっても立去らない押売を無理に戸外に押い出した。甲の行為は正当防衛である。

(2) 甲は深夜路上で飼主乙のけしかける犬に噛みつかれそうになったので,その犬を棒でなぐり傷つけた。甲の行為は正当防衛である。

(3) 電報配達人甲は,深夜乙宅の玄関先で「電報」「電報」と叫んだところ,乙はこれを強盗と思い甲に襲いかかったので,甲は乙をつき倒した。甲の行為は正当防衛である。

(4) 甲が不法にもなぐりかかってきた乙をつき倒したところ倒れるときに乙は足をくじいて起きあがれなくなった。甲は更に側にあった棒で乙の頭をなぐりつけた。出の行為は正当防衛である。

(5) 乙が甲を背後から短刀で刺そうとしているのをみていた丙は甲を救うため乙の腕を強打した。身の危険を感じた甲は丙をつきとばして逃げた。甲の行為は正当防衛ではない。

[39−11] 次の事例で甲と乙とが共犯となるのはどれか。

(1) 甲は辻強盗をする目的で丙をなぐって気絶させたが,たまたま通りかかった乙の足音に驚いて逃走した。乙は丙が気絶しているのに乗じて,その懐中から財布を盗んだ。

(2) 甲と乙とは偶然にも丙を殺す目的で同時に発砲したところ,弾丸が一発だけ命中して丙は死亡した。命中した弾丸は甲,乙のいずれが発射したものか分らなかった。

(3) 甲は不注意にも農薬をびんに入れ,台所の棚の上に放置した。翌朝甲の妻乙はよく確かめもせずにそれを料理に使ったため,料理を食べた丙は死亡した。

(4) 甲は夫乙が深夜外出するのを不審に思い,後を追ったところ,乙は丙家に入って行った。甲は丙家の門前で様子を案じて持っていたら,乙が衣類を盗んで出てきた。甲は乙の挙動に驚いたが,しかたなく一緒に帰宅した。

(5) 甲は日頃快く思っていなかった丙を殺害する目的で飲物に毒物を混入したが,それは致死量の半分であった。乙はこのことを知らず丙を殺害する目的でその飲物に同じく毒物を混入したが,これもやはり致死量の半分であった。毒物は両者を合せて致死量となったため,飲物を飲んだ丙は死亡するに至った。

[39−14] 甲は友人乙が丙に対し暴行を加える決意をしたことを察知して,乙にやめるように説いたが,乙はこれを聞き入れずかえって他言しないでくれと頼んだ。甲もまた丙に対し快く思っていなかったので,乙のなすに任せて人に告げなかった。そこで乙は計画どおり,丙に対し暴行を加えた。甲の行為は次のうち,どれにあたるか。

(1) 暴行罪の共同正犯

(2) 暴行幇助罪

(3) 暴行教唆罪

(4) 犯人隠避罪

(5) 犯罪不成立

[39−15] 甲は乙をそそめかして丙を傷害することを決意させた。乙は飼犬を連れて散歩中の丙に向って石を投げたが,石は丙の身をかすめて犬に命中し,その足を折った。いわゆる法定的符合説の立場に立つ時,甲について成立する罪はどれか。

(1) 傷害未遂教唆罪

(2) 暴行教唆罪と器物損壊罪

(3) 暴行教唆罪

(4) 傷害未遂教唆罪と器物損壊教唆罪

(5) 器物損壊教唆罪

[39−19] 甲は,夫が精神病にかかって白痴同然となったので世をはかなみ,夫と共に心中しようと決意し,その同意を求めたところ,快く同意したので,手を取りあって電車の走ってくる線路にとびこんだところ,甲は全身打撲傷を負っただけで助かり,夫は奇跡的にかすり傷ひとつ負わなかった。甲の罪!は次のうちどれか。

(1) 犯罪不成立

(2) 自殺教唆罪の未遂

(3) 承諾殺人罪の未遂

(4) 殺人罪の未遂

(5) 自殺幇助罪の未遂

[39−23] 次の記述のうち,共犯の制限従属形式と呼ばれる考え方によらなければ説明することのできないのはどれか。

(1) 拘留または科料だけにあたる罪については教唆犯は成立しない。

(2) 身分により刑の軽重あるときは,身分のない者には通常の刑を科する。

(3) 正犯が実行に着手しなくても未遂処罰の規定があるときは,教唆者には教唆の未遂が成立する。

(4) 正犯が有責に実行行為をした場合でなければ教唆犯は成立しない。

[39−25] 文書毀棄罪の成否に関する次の記述のうち,誤りはどれか。

(1) 県庁に提出した自己の退職願を破る行為は刑法258条にあたる。

(2) 他人が所蔵する書画の箱書(その書画の真正な旨を記載した文書)を破る行為は刑法259条にあたる。

(3) 検察庁に証拠品として保管中の偽造手形を破る行為は刑法258条にあたる。

(4) 夜間,私立学校の生徒が学校に忍びこんで自己の答案の誤っている部分を訂正しておく行為は刑法259条にあたらない。

(5) 友人宅に遊びに行った者が友人の留守中に来た恋人からの友人宛の手紙を破る行為は刑法259条にあたらない。

(注)

〇刑法258条 公務所ノ用ニ供スル文書ヲ毀棄シタル者ハ3月以上7年以下ノ懲役ニ処ス

〇刑法259条 権利義務ニ関スル他人ノ文書ヲ毀棄シタル者ハ5年以下ノ懲役ニ処ス

[39−28] 次のうち,没収できないのはどれか。

(1) 強盗予備罪における強盗の準備のために買い入れた短刀

(2) 賄賂供与申込罪において提供した賄賂

(3) 窃盗罪において窃取した他人の衣類

(4) 賭博罪における賭金

(5) 賍物運搬罪において運般の報酬として受領した金銭

[39−31] 次の事例のうち甲の行為が窃盗罪(既遂・未遂を問わない)にあたらないものはどれか。

(1) 甲は電車の中で財布をすりとろうとして他人のポケットに手を入れたが,ポケットの中には何もはいっていなかった。

(2) 甲は駅の待合室で,隣りにいた人が荷物を腰掛の上に置いたまま,隣室の食堂に入って行ったのを見てその荷物を持って逃げた。

(3) 甲は運賃を払わないで乗車しようと思い金属片を乗車券の自動販売機に入れ,乗車券を入手した。

(4) 甲は路上に駐車してあった自動車を無断拝借してドライブしようとし約1時間乗り廻した後,市外の小川のほとりに乗り棄てた。

(5) 甲は,取引先乙の資材置場に置いてある乙所有の鉄材を自分のものだと偽って丙に売却し,丙はそれを真実甲のものだと借用して鉄材置場から運び出した。

[39−34] 甲と乙とは強盗を共謀し,夜間丙宅に侵入し,甲は寝ていた丙の枕をけって起したが,丙に意見されて後悔し強盗することをやめ,乙にだまって立ち去った。一方乙は甲が丙から意見されている間に奥座敷で家人丁に短刀をつきつけて金を出せと脅かし,格闘の末丁を傷つけ金品を強奪した。甲はそのことを全く知らなかった。住居侵入の点を除いて,甲の罪責は次のうちどれか。

(1) 暴 行 罪

(2) 強盗罪の障碍未遂

(3) 強盗罪の中止未遂

(4) 強 盗 罪

(5) 強盗傷人罪

[39−36] 次の記述のうち,誤りはどれか。

(1) 有期懲役を加重するぱあい,いくら加重事由があっても,20年を超えることはできない。

(2) 刑の執行猶予には,必ず保護観察に付さなければならないぱあいと,保護観察に付しても付さなくてもよいぱあいとがある。

(3) 有期懲役の刑にあたる2個のまだ確定裁判を経ていない罪が,併合罪になる場合と牽運犯になる場合とを比較すると,その処断刑は前者の方が重い。

(4) 累犯加重をするかどうかは,裁判官の裁量に任されているのではない。

(5) 法律上の減軽をしたうえで,さらに酌量減軽をすることはできない。

[39−40] 次の記述のうち,誤っているのはどれか。

(1) 「法律がなければ刑罰なし」という標語をはじめて用いたのはフォイエルバッハである。

(2) べ一リングは,はじめて構成要件を要素とする犯罪論を唱えた。

(3) ベッカリーアは,刑罰法規は犯人の心理を強制することによって,犯罪より遠ざけようとするものであるとの理論を唱えた。

(4) フェリーは意思の自由を否定して社会的責任論を唱えた。

(5) 「罰すべきは行為でなく行為者である」と主張したのはリストである。

[39−42] 次の記述のうち,いわゆる「責任なければ刑罰なし」という刑法上の責任主義に直接関係ないものはどれか。

(1) 心神耗弱者の刑は減軽しなければならない。

(2) 両罰規定により使用者を処罰するのは被用者(行為者)に対する選任監督を怠った場合でなければならない。

(3) 結果的加重犯においては,その結果について少なくとも予見の可能性がなければならない。

(4) 故意の成立に違法の認識を必要とする。

(5) 未遂は,未遂処罰規定がなければ罰せられない。

[39−45] 障碍未遂の刑に関する刑法の規定は次のうちどれか。

(1) 「其刑ヲ減軽ス」

(2) 「其刑ヲ減軽スルコトヲ得」

(3) 「其刑ヲ減軽又ハ免除ス」

(4) 「其刑ヲ減軽又ハ免除スルコトヲ得」

(5) 「其刑ヲ減軽スル場合ハ各本条ニ於テ之ヲ定ム」

[39−47] 甲は金もないのに,古着屋の店頭で客を装い,たまたま留守中の主人の息子乙(未成年者)に「上着を買いたいから見せてくれ」といって,乙が出してくれた上着を手にとり,その色合,寸法を調べる振りをしながら,「もっと別のを見せてくれ」といった。乙がそれを信じて奥へ入ったすきに,甲は手にしていた上着をもって逃げた。甲の罪責として次のうちどれが正しいか。

(1) 窃盗罪

(2) 横領罪

(3) 占有離脱物横領罪

(4) 詐欺罪

(5) 準詐欺罪(未成年者誘惑取財罪)

[39−50] 甲は乙の住んでいる家屋に延焼させるつもりでこれに隣接する乙所有の物置小屋の雨戸に火をつけたが,雨戸を焼いただけで通りがかりの人に消し止められた。甲の行為は次のうちどれにあたるか。

(1) 非現住建造物放火罪

(2) 非現住建造物放火の未遂罪

(3) 現住建造物放火の未遂罪

(4) 現住建造物放火の予備罪

(5) 建造物以外の放火罪

[39−53] 次の行為のうち,詐欺罪になるのはどれか。

(1) 甲は乙からレコ-ドを借りていたが,惜しくなったので盗まれたとうそをいって返さなかった。

(2) 甲は乙から写真機を借りて撮影中こわしたのでだまって返した。

(3) 甲は乙から5万円で売却をたのまれた品物を6万円で売却したが,5万円で売ったようによそおって,1万円利得した。

(4) 甲は磁石を使ってパチンコ玉を当り穴に誘導して玉を流出させた。

(5) 甲は模造真珠を買うつもりで真珠店へ行ったところ見習店員がうっかりして本当の真珠をだしたので,これさいわいと模造真珠の代金を支払って本物の真珠を受け収った。

[39−56] 乙は,他から盗んできた時計を甲に見せて,甲のもっている時計と交換してくれと言った。甲はその時計が盗品であるとは知らなかったが,もしかすると乙がだれかから預っているものをかってに交換しようとしているのではないかとの疑いをもった。しかし,甲はその時計が欲しかったのでそれ以上確かめようともしないで,自分の時計と交換した。次の記述のうち正しいものはどれか。

(1) 甲は自分の時計と交換したのであって,乙から時計を買ったのではないから賍物故買罪にならない。

(2) 甲はその時計が盗品であることを知らなかったのであるから賍物故買罪にならない。

(3) 甲は被害者が誰であるかを知らなかったのであるから,賍物故買罪にならない。

(4) 甲は乙が他人から頼っている時計だということをはっきり認識していたわけではないから,賍物故買罪にならない。

(5) 現行法上,過失による賍物故買を罰する規定がないから犯罪は成立しない。

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