[41−03] 次のうち,誤っているものはどれか。

(1) 過失犯について,理論上未遂犯を考えることができるとする立場がある。

(2) 過失犯に対する自由刑として禁錮が規定されているのは,過失犯が非破廉恥犯だからであるとする立場がある。

(3) 重過失とは,犯罪の結果が重大だという意味ではない。

(4) 過失犯にも共同正犯を認める立場がある。

(5) 過失犯を処罰するのは「責任なければ刑罰なし」という原則の例外である。

[41−06] 次のうち,併合罪にあたるものはどれか。

(1) 人を逮捕し監禁する場合

(2) 約束手形を偽造し,それを真正なものとして行使し,財物を騙取した行為

(3) 飼犬を連れて散歩している人に向って散弾を発射し,飼主と飼犬を傷つけた場合

(4) 賍物を故買し運搬した行為

(5) 猥褻のフィルム50本を仕入れ,5本を甲に売り,3日後に7本を乙に売却した行為

[41−09] 不能犯に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。

(1) 人を殺そうとして,その者を殺すには少し足りない量の毒物を投与しても,その量による限り結果発生は絶対に不能であるから不能犯である。

(2) 人を殺そうとしてピストルを発射したが,そのピストルには弾丸が入っていなかったので殺すことができなかった。これは事実の欠缺である。

(3) 現行法上姦通は犯罪でないのに犯罪だと思って姦通したときは幻覚犯である。

(4) 病気になっている信者に「これを飲めば必ず直る神水だ」と言って,ただの水を与え,代金を領収したことは迷信犯である。

(5) 捜査機関に対し,真犯人でないことを承知で,14歳未満の責任無能力者を真犯人だとして申告した者は,これによって無能力者が処罰されることはないから不能犯である。

[41−11] 次に掲げるのは,いずれも犯人が葬祭を営む義務を負わない他人を殺した場合であるが,これらのうち死体遺棄罪が成立しないのはどれか。

(1) 墓地で人を殺して,その場所に穴を掘って死体を埋めたとき。

(2) 人里離れた山中で人を殺し,死体をそのままにして立ち去ったとき。

(3) 自動車の中で人を殺し,そのまま10数キロを走り,自動車ごと死体を置いて逃げたとき。

(4) 寝室で寝ている人を殺して,死体を天井裏に隠したとき。

(5) 人をその自宅の前で殺し,自殺を装うため死体を家の中に運び込み,寝室の床の上に置いて逃げたとき。

[41−15] 刑罰と保安処分に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。

(1) 刑罰は犯罪を必然的に前提とするが,保安処分は理論的には必ずしも現に犯罪のあったことを前提とするものではない。

(2) 応報刑論の立場からは,刑罰のほかに保安処分を認めることは矛盾である。

(3) 刑罰と保安処分を併科した場合,保安処分の執行を先にし,刑罰の執行を後にするのは刑罰の本質に反する。

(4) 保安処分は刑事責任を認めることのできない者に対しては,これを科することができない。

(5) 刑罰と保安処分との区別を解消して,完全に一本化することは近代派の立場に立たなくとも肯定できる。

[41−18] 刑事責任能力について次の記述のうち正しいのはどれか。

(1) 責任能力は,刑罰を科すために必要な能力であるから,行為時だけでなく裁判時にも存することを要する。

(2) 責任能力とは是非を弁別する能力をいう。

(3) 現行法が,一律に14歳未満の者の行為を罰しないとしているのは,14歳未満の者が,是非を弁別する能力を持たないと考えたからである。

(4) 精神病質はいわゆる精神病ではないから精神病質者が,責任無能力者または限定賃任能力者とされることはない。

(5) 刑罰を社会防衛処分と解する立場からは現行刑法が,心神耗弱者について,刑の必要的減軽を規定していることは,理解が困難である。

[41−24] 次の記述のうち,正しいものはどれか。

(1) 同居している友人と共同で買入れ,共同で使用していたビアノを勝手に他人に売却した場合,窃盗罪と横領罪との観念的競合になる。

(2) 石炭商の店員が店の石炭をトラックで配達中,小遣銭を得るためその一部を売却した場合,窃盗罪となる。

(3) 借家人が賃料不払いのため賃貸借契約を解除されたのに立ち退かない場合,不動産侵奪罪となる。

(4) 招待された者のみが入場できる無料の観菊会に資格を偽って入場した時は,詐欺罪になる。

(5) 会社員が会社の業務にたいした支障はなかろうと思い,友人の結婚式に出席するため無断欠勤した結果,会社に財産上の損害を与えた場合は背任罪となる。

[41−27] 賍物罪に関する次の記述中,誤っているのはどれか。

(1) 窃盗の実行を決意している者を古物商に紹介し将来窃取してくるものを一手に買受けるようあっせんする行為は賍物牙保にならない。

(2) 窃盗犯人が窃取後一時その場に置いてある品物であることを知りながらこれをひそかに持ち去る行為は賍物運搬罪になる。

(3) 遺失物を拾得した者からその物の質入れを申し込まれ,その情を知りながらこれを質受して保管する行為は賍物寄蔵罪になる。

(4) 情を知りながら他人の所持する賍物と自己の財物を交換する行為は賍物故買になる。

(5) 窃盗犯人から同人の窃取してきた金銭で馳走してくれるものであることを知りながら馳走にあずかる行為は賍物収受罪にならない。

[41−30] 甲と乙は共同して丙を殺害することを決意し,甲乙ともに実行に着手したが,甲は殺人を思いとどまり,乙をも説得してこれを止めさせた。ところが,乙は翌日思い直してひとりで丙宅に行き,先の計画どおり丙を殺害してしまった。

 甲の刑事責任について正しいものはどれか。

(1) 甲は犯行を中止したから中止犯

(2) 甲は犯行を中止し,乙の犯行を思い止まらせたのたから中止犯

(3) 甲は乙と共謀して結局既遂の結果を生じたのだから共同正犯

(4) 丙が死んでしまったのだから,甲は殺人罪の教唆犯または従犯

(5) 共謀共同正犯の理論によれば,甲は殺人既遂の共同正犯

[41−32] 現行刑法の刑に関する規定について次の記述のうち,正しいものはどれか。

(1) 仮出獄は刑の執行中の行状を考慮して宣告した刑の期間を短縮する制度である。

(2) 累犯の刑を加重するのは,常習として罪を犯した者を重く処罰するためである。

(3)併合罪は数個の犯罪を全体として統一的に処断しようとする制度である。

(4) 自首減軽は行為の違法性の減少をその理由とするものである。

(5) 保護観察の主たる目的は,その期間内に更に罪を犯した者に対し,再度の刑の執行を猶予することが出来ないようにすることにある。

[41−37] 共犯従属性説および法定的符合説の立場に立つ時,共犯者の罪責に関する次の記述のうち誤りはどれか。

(l) 甲が乙に丙の住居に侵入して窃盗をすることを教唆したところ,乙はまちがって,丁の住居に侵入して強盗をしたとき,甲は住居侵入および窃盗の教唆が成立する。

(2) 甲は乙に丙の住宅に放火するよう教唆したところ,乙は丙の住宅に延焼させる目的で,丙の住宅に隣接する物置小屋に放火したが,結局,その物置小屋を焼いたのみで終った。甲は現住建造物放火未遂の教唆の責を負う。

(3) 甲は乙と丙を傷害することを共謀し,甲が丙を棍棒で殴打している間に,乙はひそかに殺意を生じ,丙をナイフで刺殺した。甲は傷害致死罪の限度で共同正犯の責を負う。

(4) 甲は乙と強盗を共謀し,共に現場へおもむき,甲が丙を脅して財物を奪っているとき,乙は甲の知らない間に,隣室で丙の妻丁を強姦した。甲は,強盗強姦罪の共同正犯である。

(5) 甲は乙と,窃盗を共謀し,丙方で財物を窃取した。甲は家人に見つからぬうちに先に外へ出たが,乙は丙に見つかったので,暴行をはたらいて逃げた。甲は,窃盗罪の限度で共同正犯の責を負う。

[41−39] 次の(イ)から(へ)の各文は,共犯従属性説の根拠となりうるものと,そうでないものとをあげてある。

(イ) 責任とは非難可能性である。

(口) 犯罪は悪性の徴表である。

(ハ) 実行行為とは,刑法各本条(基本的構成要件)に該当する行為をいう。

(ニ) 行為者を処罰すべきである。

(ホ) 特別法には,教唆につき軽い刑を規定したものがある。

(へ) 因果関係については条件関係で足りる。

 次の組合せのうち,共犯従属性説の根拠として正しい組合せはどれか。

(1) (イ)と(ニ)

(2) (ロ)と(ハ)

(3) (ハ)と(ホ)

(4) (ニ)と(ホ)

(5) (ホ)と(へ)

[41−41] 甲は窃盗の目的で夜間隣家に侵入し,金品を物色中乙に発見されたので,自分が犯人であることを隠すために乙を殺そうとしてナイフで刺した。乙が死んだものと誤信した甲は,さらに物色を続けていたところ,その場に現われた乙の妻丙女に邪心をおこし,強姦しようとしたが,丙が必死に抵抗したため,目的を遂げずにそのまま裏口から逃走した。甲の罪責は住居侵入罪を除き次のうちどれに当たるか。

(1) 窃盗未遂罪と殺人未遂罪と強姦未遂罪

(2) (準)強盗未遂罪と殺人未遂罪と強姦未遂罪

(3) (準)強盗殺人未遂罪と強姦未遂罪

(4) (準)強盗殺人未遂罪と(準)強盗強姦未遂罪

(5) (準)強盛強姦殺人未遂罪

<参照条文>

第240条 強盗人ヲ傷シタルトキハ無期又ハ七年以上ノ懲役ニ処ス死ニ致シタルトキハ死刑又ハ無期懲役ニ処ス

第241条 強盗婦女ヲ強姦シタルトキハ無期又ハ七年以上ノ懲役ニ処ス因テ婦女ヲ死ニ致シタルトキハ死刑又ハ無期懲役ニ処ス

第243条 第235条乃至第236条,第238条乃至第241条ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス

[41−43] 次の記述のうち,正しいものはどれか。

(1) 甲と乙は共謀して散歩中の丙を逮捕しようとして,甲が丙の前に立ちふさがり乙が背後からとびついたとたんにパトロール中の警官がやってくるのが見えたので,すぐ手を離して甲乙は逃げた。甲は逮捕罪の責を負う。

(2) 甲は精神病者である息子乙が,夜半突然発作をおこし家族に危害を加えるおそれが生じたので乙を土蔵にとじこめて鍵をかけた。乙の発作はなおらないのでやむをえず約6時間そのままにして朝のあけるのを待った。甲は監禁罪の責を負う。

(3) 甲は乙が縄梯子をつたわって脱出することはできないだろうと思って,乙をホテルの10階の部屋にとじこめた。乙は窓の外にぶら下っている縄梯子を見たが怖くて降りることができなかった。しかし,その部屋は自宅より居心地が良かったので1夜を過した。甲は監禁罪となる。

(4) 甲は杖がなくては歩くことができない盲目の乙が町を歩いていたので,困らせてやろうと思って,乙から杖を奪った。乙はそこから動けなくなって,通行人が来るまで1時間も動くことができなかった。甲は監禁罪となる。

(5) 甲は乙が自宅の戸が開かないので窓から外へ出ようとしていたところ,泥棒だと直感してとりおさえた。甲は逮捕罪となる。

[41−46] 次のうち誤りはどれか。

(1) 弁護人が,被告人は真犯人の身代りであることを黙秘して弁論をおこない(真犯人の自首することを止めさせ),被告人に有罪判決がなされた場合,犯人隠避罪が成立する。

(2) 電気器具店主が,営業不振のためあるメーカー(または人)に振出した手形が不渡りとなり,確定的に支払の見込みがなくなった。その事実を告げずに他のメーカー(または人)から商品の仕入をするのは,詐欺罪になる。

(3) 公務員が法令による会議録に,知人の不利益となる事項を,ことさらに記載しなかった場合,虚偽公文書作成罪になる。

(4) 通行人が,自動車にひかれた人を国道で発見し,放置すれば死ぬかもしれないと思ったが,かかわりあいになりたくなかったので,死んでもかまわないと思い,そのまま立ち去ったところ,その人は手おくれで死亡した。この場合通行人は殺人罪となる。

(5) 工場の夜警が,巡回中倉庫の近くで窃盗犯人をみつけたが,知人であることを知ってそのまま盗品を持ち去ることをみのがしてやった。窃盗罪の従犯が成立する。

[41−49] 刑法第38条3項本文は「法律ヲ知ラサルヲ以テ罪ヲ犯ス意ナシト為スコトヲ得ス」と規定している。この規定の意味に関して次の記述中,正しいものはどれか。

(1) 故意の責任を問うためには違法性の認識が必要だとする見解に立てば,この規定は刑罰法規の認識について規定したものだと解釈せざるを得なくなる。

(2) 故意の責任を問うためには,違法性の認識の可能性で足りるとする見解に立てば,この規定は刑罰法視の認識について規定したものだと解釈せざるを得なくなる。

(3) 故意の責任を問うためには,違法性の認識について過失があれば足りるとする見解に立てば,この規定は刑罰法規の認識について規定したものだと解釈せざるを得なくなる。

(4) 故意の責任を問うためには,違法性の認識の可能性も必要でないとする見解に立てば,この規定は,刑罰法規の認識について規定したものだと解釈せざるを得なくなる。

[41−51] 医師甲は息子乙から丙女と婚約した旨を知らされたが,以前に丙女を勤務先病院で診察したことがあり,遺伝病者であることを知っていたので,丙女との結婚を思いとどまらせようとして,乙に丙女が遺伝病者であることを告げた。甲の行為につき,下記のうち正しいものはどれか。

(1) たった一人に告げたのであるから犯罪とならない。

(2) 正当業務行為であるから犯罪とならない。

(3) 緊急避難であるから犯罪とならない。

(4) 秘密漏泄罪の定型性を欠くから犯罪とならない。

(5) 推定的承諾があると認められるから犯罪とならない。

<参照条文>刑法第134条第1項 医師,薬剤師,薬種商,産婆,弁護士,弁護人,公証人又ハ此等ノ職ニ在リシ者故ナク其業務上取扱ヒタルコトニ付キ知得タル人ノ秘密ヲ漏泄シタルトキハ6月以下ノ懲役又ハ百円以下ノ罰金ニ処ス

[41−57] 次の文中の[ ]の中へ下記の(1)〜(5)までの語句を入れた場合,誤りはどれか。

甲は乙に殺されるものと誤信して乙を殺害してしまった。この様な場合を[1]という。これについては事実の錯誤と解するか[2]と解するか見解が分れている。甲が思い違いしたことについて過失がある場合,前説からは[3]となり,後者の立場によれば[4]という結論も出てくる。もっとも故意に違法の認識を[5]とする立場からは事実の錯誤と解する立場と同じ結論に達しうる。

(1) 誤想防衛

(2) 違法性の錯誤

(3) 過失致死

(4) 無 罪

(5) 必 要

[41−59] 次のうちで誤れるものはどれか。

(1) 村の収入役が自己の業務上横領の犯跡をかくすため,現金出納に関する公簿に虚偽の記載をしても,公簿に記入する権限がある以上,その権限を濫用したとしても公文書偽造にはならない。

(2) 拾得した他人の自動車運転免許証の写真を剥ぎ,自己が使用する目的で自分の写真を貼ったときは公文書偽造となる。

(3) 戸籍吏に虚偽の届出をなし,真実とちがった出生日の記載をさせても公文書の虚偽記載罪の間接正犯としては罰せられない。

(4) 証明願に市長が「右のとおり相違ない」と記入してある文書に勝手に虚偽事実を記入したときは公文書変造となる。

(5) 決裁権者の事務を事実上補佐する者が決裁権者の決裁を受けないで決裁権者名義の文書を作ることは,公文書の虚偽記載罪となる。

[41−60] 甲は深夜酒に酔って道路上にねていた。そこを通りかかった乙は,このまま放っておいては車にひかれるかも知れないと思ったが,そのまま立ち去った。そこへ自動車で通りかかった丙は,甲の手首をひいて軽いかすり傷を負わせたがたいしたことはないと思い,そのまま逃走した。甲が起き上りかけたとき丁の運転する自動車が不注意で甲をひき,瀕死の重傷を負わせたが,丁もそのまま逃走してしまった。そこへ自動車で通りかかった戊は甲を発見し,病院に運ぼうとして自分の自動車に運び入れたが,甲は到底助かる見込みがない状態なので,かかわり合いになるのを恐れて,甲を路上に放り出して立ち去った。そめ後間もなく甲は死亡した。甲の死亡について刑事責任を負う者は下記のうち誰か。

(1) 乙と丙

(2) 丙と丁

(3) 丁のみ

(4) 丁と戊

(5) 丙と丁と戊

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