[43−01] 共犯従属性説を前提として間接正犯の成否を論ずる立場にたって所謂極端従属性説によっても,また制限従属性説によっても甲について間接正犯の成立する余地のないものはどれか。

(1) 甲は乙の土地の上にある乙所有の建築用材を自己のもののように装って丙に売り渡し丙をしてそこから搬出させた。

(2) 甲は真正の株券として使う目的で印刷業者乙に教材用にするからと言って某会社の株券と同様の株券を教材用にするものと思っている乙をして作らしめた。

(3) 公務員甲は行使の目的で情を明さず補助者たる公務員乙に命じて内容虚偽の公文書を作成せしめた。

(4) 甲は乙の家のかたわらに布切れを積み重ねそれにガソリンをかけて火遊びの好きな14歳の精神簿弱の少年(心神耗弱者)に火をつけさせた。

(5) 甲は乙を負傷させるため丙が剣道の達人であることを知らない乙に向かって,丙は親の仇であるから殺して恨みをはらす様に勧め乙をして丙にきりかからせたところ,乙は丙の正当防衛によってその片腕を折られた。

[43−05] 次のうち誤りはどれか。

(1) 甲は乙と口論の末,相撲で結着をつけることにして相撲を始めたが,突然,乙が隠し持っていたあいくちでおそいかかってきたので,驚いた甲はそばにあった棒きれで乙を殴り,負傷させた。甲の行為は正当防衛である。

(2) 乙がくさりにつなぐのを怠っていた犬が,幼児にかみつこうとしているので,甲は石を投げつけて犬を殺してしまった。甲は正当防衛である。

(3) 乙がやにわに甲めがけて日本刀で切りかかってきたので,甲はとっさに石を投げてこれを防ごうとした。甲は乙の背後に通行人丙がいることを知っており,もし石を投げると通行人にあたってけがをさせるかもしれないと思ったが,それもやむを得ないことだと考えた。果して甲の投げた石は丙にあたり,丙に傷を負わせてしまった。甲の行為は正当防衛にならない。

(4) 甲は,乙が公園で昼間から,公然と猥褻の行為をしているので何度も注意したが,こがやめないので,棒をひろって乙を殴りつけ,軽傷を負わせた。甲の行為は正当防衛にならない。

(5) 乙が甲に対して棒で殴りかかってくるので,甲は日本刀を振りまわして避けようとしたところ,乙は逃げだした。憤激した甲は乙を200メートル程追いかけ,乙の背後からこれに切りつけ,重傷を負わせた。甲の行為は過剰防衛である。

[43−08] 次のうち,信書開披罪または秘密漏泄罪にあたるものはどれか。

(1) 夫が不和で別居中の妻宛に来た手紙を開封した。

(2) 母親が家出した15歳になる中学生の娘の居所を知るために娘の男友達から来た手紙を開封した。

(3) 医師がかって診察したことのある被告人について,法廷で証言拒否権を行使せず被告人が麻薬中毒患者である旨証言した。

(4) 弁護士が被告人の無罪を証明するために他に方法かないと判断して,職務上知り得た他の依頼者の秘密を公開の法廷で陳述した。

(5) 牧師が信者である男から近いうちに友人を殺すつもりであるとの告白を聞き,警告のためその旨警察に通報した。

<参照条文>

刑法第133条 故ナク封緘シタル信書ヲ開披シタル者ハ1年以下ノ懲役又ハ二百円以下ノ罰金ニ処ス

刑法第134条 @医師,薬剤師,薬種商,産婆,弁護士,弁護人,公証人又ハ此等ノ職ニ在リシ者故ナク其業務上取扱ヒタルコトニ付キ知得タル人ノ秘密ヲ漏泄シタルトキハ6月以下ノ懲役又ハ百円以下ノ罰金ニ処ス

A 宗教若シクハ祷祀ノ職ニ在ル者又ハ此等ノ職ニ在リシ者故ナク其業務上取扱ヒタルコトニ付キ知得タル人ノ秘密ヲ漏泄シタルトキ亦同シ

[43−10] 猟師甲と乙は,山の中で狩猟中,突然10メートル前方の草むらの中で動いている黒い物を発見し,お互いに意思の連絡なく,同時に猟銃を発砲した。ところが,その黒い物は,実は,熊の毛皮をかぶった猟師丙であった。丙は心臓を射たれて死んだが,弾丸が一発心臓を貫いていた。しかし,心臓を貫いた弾丸は,甲・乙いずれのものか不明であった。発砲の際,乙は,まったく熊であると誤信しており,甲は,ひょっとしたら日頃仲の悪い丙であるかもしれないが,丙であってもかまわないと思っていた。甲・乙の罪責は次のうちどれか。

(1) 甲は殺人既遂罪,乙は業務上過失致死罪

(2) 甲は殺人未遂罪,乙は業務上過失致死罪

(3) 甲は殺人未遂罪,乙は犯罪不成立

(4) 甲は傷害致死罪,乙は犯罪不成立

(5) 甲は傷害致死罪,乙は業務上過失致死罪

[43−12] 甲につき行使罪が成立するか否かにつき述べたものである。次のうち誤りはどれか。

(1) 甲は,盗品を質入する際,身分証明書を持っていなかったので,自動車免許証を偽造して,これを質屋の主人に示した。この場合,甲は偽造公文書行使罪である。

(2) 甲は,郵便貯金通帳に多額の預金があるように見せかけるため,虚偽の記入をなし,友人に見せて自慢した。この場合,甲は偽造公文書行使罪である。

(3) 甲は,1万札100枚を偽造し,情を知って手伝った乙に謝礼として10枚渡した。この場合,甲は偽造通貨行使罪ではない。

(4) 甲は,乙が振出した約束手形を取得したが,後日これが偽造であることを知った。しかし,甲は乙に手形を呈示して支払いを求めた。この場合,甲は偽造有価証券行使罪ではない。

(5) 甲は,乙から預っていた金を費消してしまったので,丙名義の借用書を偽造して丙に金を貸しているようにみせかけ,乙に示した。この場合,甲は偽造私文書行使罪である。

[43−14] 甲は乙株式会社に雇われ,同会社の製品に関する研究に従事していたが,同会社退職後,その製品について在職中知り得た機密事項を記載した書面を作り,同業の丙株式会社に売り込み,多額の謝礼を貰った。甲の行為につき,次のうち妥当なものはどれか。

(1) 背任罪

(2) 業務上横領罪

(3) 業務妨害罪

(4) 信用毀損罪

(5) 秘密漏泄罪

[43−16] 甲はある夜,酒を飲んでほろ酔気分で,電車を停止させたらおもしろいだろうと考えて鉄道線路の上に枕木を置いたが,酔がさめるにつれ,電車が転覆するのではないかと恐ろしくなり枕木を取り除いた。それは電車の通過する20分前であった。甲の罪は次のうちどれか。(但し特別法上の罪は問わない)

(1) 電車転覆罪

(2) 往来危険罪の既遂

(3) 往来危険罪の障害未遂

(4) 往来危険罪の中止未遂

(5) 犯罪不成立

[43−20] 次の記述のうち誤りはどれか。

(1) 他人の家から物を盗んだ者が,その発覚をおそれて,証拠湮滅のため,盗んだ物をこわした場合,窃盗罪のみで処罰される。

(2) 他人に対して暴行を加えていたが,金品が欲しくなり,更に強い暴行を加えて,金品を奪った場合は強盗罪のみで処罰される。

(3) 物を窃取する積りで他人の家に侵入して物色をはじめたところ,家人に見つけられたので,居直って家人に暴行を加え,物をとった場合,強盗罪一罪で処罰される。

(4) 殺人を教唆した者が後に現場におもむき,被教唆者と共同して殺人を行なった場合,殺人罪のみで処罰される。

(5) 公務所の印章を盗み出して虚偽の公文書をつくった場合,公文書偽造罪一罪で処罰される。

[43−22] 甲は乙宅に侵入して財物を窃取して門を数歩出たところで,帰宅してきた乙と出合った。乙は甲がどろぼうであることに気づいて,甲を逮捕しようとして腕をつかまえたところ,甲は乙をつきとぱし,乙に全治10日間の傷害を与えた。甲はそのとき窃取した財物をその場にとり残したまま逃走した。この場合甲について住居侵入罪のほか何罪が成立するか。

(1) 窃盗既遂罪と傷害罪

(2) (事後)強盗未遂罪と傷害罪

(3) 窃盗既遂罪と(事後)強盗傷人罪

(4) (事後)強盗傷人罪

(5) (事後)強盗既遂罪と傷害罪

[43−24] 甲女は,夫乙男を毒殺しようとして,ピン入りジュースの中に青酸カリを混入し,乙男がいつでも飲めるような状態で,食卓の上に置いた。ところがその日は乙男がそれを飲まなかったので,翌日また乙男に飲ませるつもりで,戸棚の奥に隠しておいた。ところが翌朝同家の幼児丙がそのジュースを発見し飲んだところ,青酸カリ中毒を起こし死亡した。甲女の罪責は次のうちどれか。

(1) 殺人予備罪と過失致死罪

(2) 殺人未遂罪と過失致死罪

(3) 殺人既遂罪

(4) 殺人予備罪と殺人既遂罪

(5) 殺人未遂罪と殺人既遂罪

[43−26] 甲は,乙から友人丙を殺すよう頼まれて承諾した。甲は,丙が乙と2人きりで住んでいる借家の中で,丙の首を締めたところ丙がぐったりしてしまったので,死んだものと思いこれを火事による事故死に見せかけようと考え,乙の同意を得て発火の時限装置を仕掛けて乙と共に逃走した。その後,発火装置によって火が畳に燃えつき,くすぶっているうちに丙が息を吹き返し,これ気がついて消火行為につとめたため,結局畳の一部とふすまを焼いたにとどまった。甲の放火行為は,次のうちどれに該るか。

(1) 現住建造物放火既遂罪

(2) 現住建造物放火未遂罪

(3) 非現住建造物放火既遂罪

(4) 非現住建造物放火未遂罪

(5) 建造物以外の物の放火既遂罪

[43−29] 次の記述は2つの犯罪について,法定刑の異なる理由を述べたものである。誤りはどれか。

(1) 内乱罪と外患罪は共に政治犯(国事犯)と呼ばれているが,内乱罪は死刑又は禁錮であるのに対し,外患罪は死刑又は懲役と規定されているのは外患罪は祖国を裏切るものとの考えにもとづくものである。

(2) 偽証罪においては,証言した事件の裁判確定前に自白すれば,その刑を減軽又は免除しうるのに,証憑湮滅罪にそのような規定がないのは偽証罪においては自白があればさらに正しい証拠が期待されるのに対し,証憑湮滅罪においてはもはや正しい証拠が得られなくなるからである。

(3) 公務員職権濫用罪は選択刑として禁錮刑を規定しているが,強要罪については,懲役刑のみを規定している。これは公務員職権濫用罪が職務に熱心のあまり犯されることがあるのを考慮しているからである。

(4) 強姦罪は,致死傷の結果を生じた場合の他単独犯は親告罪であるが,2人以上現場において共同して行なわれた輪姦の場合は非親告罪とされているのは,輪姦によってすでに被害者の名誉が害されているので,起訴することより被害者の名誉がさらに害されるおそれはないからである。

(5) 窃盗罪においては懲役刑だけを規定しているのに,賍物罪にあっては懲役刑に罰金刑が併科されるのは,賍物罪が不当な利得を目的として営業的に行なわれる場合が多いからである。

[43−32] 甲について賍物罪が成立するのは次のうちどれか。

(1) 甲は,乙質店に質入れしていた自己のカメラを丙が窃取したことを知り,丙から安く買受けて丁に売却した。

(2) 甲は乙が盗んだテレビ数台の運搬をたのまれ,これを承諾し運送費を受取り自動車で乙方へ行ったが,乙が逮捕されているのを見て引きかえした。

(3) 甲は乙から盗品であることを知らず置時計を買取り,数日後盗品であることを知ったが,そのまま自宅で使用していた。

(4) 甲は乙が賭博によって得た指輪をそれと知りながらもらった。

(5) 甲は乙が公金を横領して購入した絵画の保管を依頼されたが,これを知りながら自宅に保管した。

[43−33] 次にかかげる不作為者のうち,殺人罪の正犯(共同正犯を含む)となるものはどれか。なお不作為の主体は死の結果を認容しており,かつ結果の発生を防止し得たものとする。

(1) 刑務所に拘置中の者が自殺した。このことを予知しながらなんらの措置をしなかった看守。

(2) 賭博を開帳中,客の一人が他の客を短刀で刺し殺した。それを見ながらとめなかった賭博開帳者。

(3) タクシーの運転手が,通行人をはねとばし重傷を負わせたが,被害者は間もなく出血多量で死亡した。それを知りながらタクシーに救護させなかったタクシーの乗客。

(4) 母親が幼児を川へ投げ込んで死亡させた。それを見ながら助けなかった通行人。

(5) 母親が乳児を残して家出し,乳児は餓死した。これを知りながら何んら乳児の生存に必要な行為をしなかった家に残った父親。

[43−38] 限時法に関する次の記述のうち,肯定論,否定論いずれの論拠ともなりえないのはどれか。

(1) 限時法を認めると,日本国憲法第39条にいわゆる「既に無罪とされた行為」について刑事責任を問うことになる。

(2) 限時法を認めると刑法第6条が行為時法と裁判時法との比較をして軽い規定を適用する趣旨に反する。

(3) 限時法はその範囲があいまいなので,これを認めると刑罰法規の明確性の要求に反する。

(4) 限時法を認めないと効力持続中に裁判を受ける者は罰せられ,たまたま失効後に裁判を受ける者が処罰を免れることになって不公平である。

(5) 限時法を認めないと失効時期に接近すると犯罪を誘発することになる。

[43−40] 次の行為のうち詐欺罪が成立するものはどれか。

(1) 喫茶店でミュージック・ポックスに金属片を投入して音楽を聞く行為。

(2) レストランで食事をし,請求書を見て,金が足りないのに気付き,店員のすきをみて裏口から逃げ出す行為。

(3) 時計店で客を装い,陳列棚の時計をみせてくれと店員に頼み,店員のすきをみて,持ち逃げする行為。

(4) 磁石でもってパチンコ玉を当り穴に誘導し,当り玉を流出せしめて取る行為。

(5) 債権者が文盲であることに乗じ,減刑嘆願書であると偽って,自己に対する債権放棄書に署名捺印させる行為。

[43−46] 甲は乙を殺そうと思い,乙が全く泳げないことを知っていたので,乙をボートに乗せて沖に漕ぎ出し海中につき落した。乙はほとんど死にそうになったが,偶然救助され救急車で病院に運ばれる途中,救急車の運転手の過失で電車と衝突し,死亡した。甲の罪責に関する次の記述のうち,正しいのはどれか。

(1) 甲は殺人の故意があるのだから相当因果関係説によれば殺人既遂。

(2) いかなる因果関係説によっても殺人既遂。

(3) 因果関係の錯誤にすぎないから,いかなる説によっても殺人既遂。

(4) 因果関係中断論によってのみ殺人未遂。

(5) 乙は,甲が全く関係のない行為によって死亡したのであるから,条件説によっても,殺人既遂の責任は負わない。

[43−50] 甲は友人乙から乙名義の小切手を作成して100万円を取引銀行より払い戻してくるように依頼されたのを奇貨としてほしいままに150万円と小切手に記入して銀行から150万円の払戻をうけ乙には100万円を渡し,50万円を着服した。

 甲の罪責は次のうちどれにあたるか。

(1) 有価証券偽造・同行使と背任

(2) 有価証券虚偽記入・同行使と150万円の詐欺

(3) 有価証券偽造・同行使と150万円の詐欺

(4) 有価証券虚偽記人・同行使と50万円の横領

(5) 有価証券偽造・同行使と50万円の横領

[43−54] 犯人の所有に属する次のもののうち,没収できないのはどれか。

(1) 堕胎行為の報酬として受け取った現金

(2) 賄略として収受した生地で作ったワイシャツ

(3) 窃取した現金をしまっておいた金庫

(4) 賍物の運搬に使用したトラック

(5) 賭博によって得た金を両替した金銭

[43−58] 次の記述のうち,業務上の過失が通常の過失よりも重く罰せられる根拠として明らかに考慮する余地のないものはどれか。

(1) 業務上の過失は,被害が大きく違法性の強いのが一般であるから重く罰する必要がある。

(2) 業務者は,一般に正当業務行為として違法性が阻却される行為をなすものであるから,違法な行為をしたときは,重く罰する必要がある。

(3) 業務者は,通常の人よりも高度な知識を有しているのが一般であるから,それを発揮しなかった責任は重いからである。

(4) 業務者は,その扱う業務が一般に危険な行為であるから通常の場合よりも強い注意義務があり,これに違反した違法は大きい。

(5) 業務者は,一般に危険な行為を継続又は反復してなすものであるから,その過失を重く罰してこれを防ぐ必要がある。

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