[48−02] 毀棄罪についての次の記述のうち正しいものはどれか。

(1) 他人所有の家屋のふすまを,使用できない程度に壊した場合には,建造物損壊罪が成立する。

(2) 理髪店で,知事の発行した理容免許証を破り捨てた場合には,公文書毀棄罪が成立する。

(3) 恋敵の友人の持っているラブレターを破った場合には,私文書毀棄罪が成立する。

(4) 他人所有の,宅地として整地された土地に,大きな穴をあげた場合には,器物損壊罪が成立する。

(5) 他人所有のゴミ箱に放火して焼失させた場合には,建造物以外の物に対する放火罪が成立し,器物損壊罪は成立しない。

[48−06] 次の行為のうち,実行の着手が認められるのはどれか。

(1) 車内で強姦する目的で,通行中の女性に対し,自宅へ送ってやるとうそをいって誘い,車に乗せる行為。

(2) 身代金目的の誘拐をするつもりで,監禁のためにアパートを賃借したうえ,通行中の社長の息子を,ひそかに尾行する行為。

(3) 他人の家に放火する目的で,マッチとガソリンを携え,通行人が来ないかどうか気をつけながら,放火場所を探す行為。

(4) 友人を毒殺する目的で,一緒に飲み歩き,飲み物の中へ毒薬を入れる機会をうかがう行為。

(5) 窃盗の目的で,衣類を保管してある倉庫の扉を開ける行為。

[48−08] 次の行為のうち,刑法103条の,犯人を「隠避セシメタル」にあたるものはどれか。

(1) 犯人の依頼を受け,自分が犯人であると偽って,警察に申告する行為

(2) 犯行時に殺人犯人が着用していた,血こんの付着したシャツを洗濯してやる行為

(3) 犯人に,隠れ家として,自分の納屋を提供する行為

(4) 被告人の犯行を目撃したのに,公判延で,証言を拒否する行為

(5) 犯行の目撃者に旅費を与え,長期の海外旅行に出発させる行為

[48−11] 甲女は,12歳になる長男乙に,デパートへ行きカメラを万引してくるよう命じた。乙は,命じられたとおり,カメラを万引してきた。甲の罪責につき,次の記述のうち正しいものはどれか。

(1) 共犯従属性説のうち,極端従属形式によれば,甲は窃盗罪の教唆犯である。

(2) 共犯従属性説のうち,制限従属形式によれば,甲は,窃盗罪の教唆犯である。

(3) 共犯従属性説によれば,いかなる従属形式によっても,甲は,窃盗罪の間接正犯である。

(4) 共犯独立性説によれば,甲は,窃盗罪の共同正犯である。

(5) 共犯独立性説によれば,甲は,窃盗罪の間接正犯である。

[48−13] 正しいものはどれか。

(1) 強姦されそうになったので,これを避けるため,相手を突き飛ばしたところ,その男は転倒して死亡した。法益均衡の原則に反するので,正当防衛が成立する余地はない。

(2) 襲いかかられた者が,逃げようと思えば逃げられたのに,反撃に出た場合,補充性の原則に反するから,正当防衛が成立する余地はない。

(3) 素手でけんかをしていたが,相手が突如匕首で切りかかってきたので,傍にあった包丁をもって反撃した。けんか闘争であるから正当防衛が成立する余地はない。

(4) とろぼう防止のために,工場のまわりに電流を流した鉄条網を張りめぐらしておいたところ,どろぼうが,その鉄条網により負傷した。将来の法益侵害に対してであるから正当防衛が成立する余地はない。

(5) 飼主が猛犬をけしかけてきたので,たまたま持っていたバットで,その犬をなぐり殺した。犬の行為に対してであるから正当防衛が成立する余地はない。

[48−15] 甲は,窃盗の目的で乙宅に侵入し,居間で物色中,家人に騒がれ何も取らずに外へ飛び出したところ,たまたま,その近くを見廻中の制服警官丙に不審に思われ職務質問されたので,逮捕を免れるため,丙を突き飛ばして,同人に全治2週間の傷を負わせた。甲の罪責につき,次の記述のうち正しいものはどれか。

(1) 事後強盗既遂罪・公務執行妨害罪・傷害罪

(2) 事後強盗未遂罪・公務執行妨害罪・傷害罪

(3) 事後強盗致傷罪

(4) 窃盗未遂罪・公務執行妨害罪・傷害罪

(5) 事後強盗致傷罪・公務執行妨害罪

[48−19] 次のうち誤りはどれか。

(1) 幇助行為は,正犯の実行行為の着手前になされることを要するわけではない。

(2) 既に犯行を決意している者に対し実行をすすめ,決意を強固ならしめることは幇助行為である。

(3) 共謀共同正犯論によると,見張りは常に正犯である。

(4) 共犯従属性説においては,教唆犯・従犯が成立するためには,正犯の実行行為があったことが必要である。

(5) 拘留または科料のみに処すべき罪の教唆犯・従犯は,特別の規定がなければ罰せられない。

[48−21] 甲は,友人乙の依頼を受けて,乙の海外旅行中の留守宅を管理していたが,乙宅の書斎の机の引き出しから勝手に乙の運転免許証を,自己が運転する際に使用する目的で取り出し,氏名と生年月日を改ざんし,自己の写真を貼り付け,自己の所有物を入質する際に,自己の身分を証明するため,質屋の主人にその免許証を提示した。甲の罪責は次のうちどれか。

(1) 横領罪,公文書偽造罪,同行使罪

(2) 横領罪,公文書変造罪,同行使罪

(3) 窃盗罪,公文書偽造罪

(4) 窃盗罪,公文書偽造罪,同行使罪

(5) 窃盗罪,公文書変造罪,同行使罪

[48−22] 次のうち窃盗の意思でした甲の行為について,窃盗罪の既遂にならないのはどれか。

(1) 甲はデパートの靴下売場で,店員のすきをみて,靴下1足をポケットに人れて出口に向かって数歩あるきかけたか,悪い事をしたと思い,元のところへ戻しておいた。

(2) 甲は,混雑する電車の中で,乗客乙のポケットに手を入れ現金入りの財布をスリ取ったところを直ちに,甲の挙動を不信に思って尾行していた私服警察官に逮捕された。

(3) 甲は,道路わきに駐車してあった他人所有の自動車に合い鍵を使って乗り込み,エンジンをかけて道路の中央まで来たが,ガソリンがほとんどないことに気づき,そのまま放置して立ち去った。

(4) 甲は,外出中の乙の住宅にしのび込み,タンスから衣類三着を取り出し風呂敷に包んで持ち出そうとしたが,不意に乙が帰宅したのに驚き,風呂敷包みを玄関に置いたまま逃走した。

(5) 甲は,乙の苗畑からつつじの苗木三本を抜き取り,1束にまとめて持ち帰ろうとしたところを,見廻り中の乙に発見され,そのまま放置して逃走した。

[48−23] 甲は,その妻乙を殺すつもりで毒薬の入ったビンを用意し,子供部屋の押入れの中に隠しておき,殺害の機会をねらっていた。ところがある日,家人の外出中,甲の幼児丙がこのビンを見つけ,毒薬を飲んだため,丙は死亡した。甲の罪責は次のうちどれか。

(1) 丙に対する殺人罪

(2) 乙に対する殺人予備罪と丙に対する過失致死罪

(3) 乙に対する殺人未遂罪と丙に対する過失致死罪

(4) 丙に対する過失致死罪

(5) 乙に対する殺人予備罪と丙に対する殺人罪

[48−26] 次の記述のうち,誤っているものはどれか。

(1) 人の耳元で大鼓を連打して意識をもうろうとさせる行為は,暴行罪における暴行にあたる。

(2) 窃盗犯人が,追跡して来た被害者に組みつかれ,それをふりほどいて逃げ出す行為は,事後強盗罪における暴行にあたる。

(3) 警察官が証拠として押収した帳簿類を取りあげて,警察官の足もとに投げつける行為は,公務執行妨害罪における暴行にあたる。

(4) いやがらせの目的で,相手の顔にタバコの煙を吹きかける行為は,暴行罪における暴行にあたる。

(5) ベンチを倒し破壊する行為は,騒擾罪における暴行になり得る。

[48−27] 次のうち,カッコ内の犯罪が成立するのはどれか。

(1) 市立の結婚相談所に提出する照会書に賞罰・経歴を偽って書き,同所の相談員をして依頼人名簿に虚偽の記入をさせた。(公正証書原本不実記載罪)

(2) ハイキングコースの案内標識を抜き取り,その場所に「通行禁止」の立札をたてた。(往来妨害罪)

(3) 花札賭博で大金を失った妻が,夫に知れるのを恐れて,「強盗に入られ,あり金全部を盗まれた」と警察に届けた。(誣告罪)

(4) 盗みをしたことを密告された者が,密告者に対し,「おまえのガールフレンドの顔を傷つけてやる」と脅かした。(脅迫罪)

(5) 医師が,婚約者に見せるため診断書を書いて欲しいと依頼され,結核を患っているのに,健康であるとの虚偽の診断書を作成した。(虚偽私文書作成罪)

[48−42]次の記述のうち,併合罪にあたるものはどれか。

(1) 放火魔甲は,某夜A小学校に放火し,それから30分後,A小学校から200メートル離れたB中学校に放火した。

(2) 公務員甲は,その職務に関し業者乙に仕事の便宜を図ってやるからその謝礼として50万円提供しろと要求し,数日後乙が持参した現金50万円を受け取った。

(3) 甲は連れだって歩いているA,B,Cを呼び止め,ピストルで脅迫し,それぞれから順次金品を交付させた。

(4) 甲は現金を欺し取る目的で小切手を偽造し,それを行使して銀行員を欺して現金の交付をうけた。

(5) 甲は乙の両手足を麻縄でしばりあげ,物置き小屋に閉じ込め外から鍵をかけ放置した。

[48−45] 予備について,次の記述のうち正しいものはどれか。

(1) 内乱の目的で同志を募ったとしても,それだけでは内乱罪の予備にはならない。

(2) 日本国に対し武力を行使させるため,外国政府と通謀する前に連絡用の無線電信機を買入れたとしても,それだけでは外患誘致罪の予備にはならない。

(3) 他人の家を放火する目的で,自動発火装置の材料を買い集めたとしても,それだけでは放火罪の予備にはならない。

(4) 身代金を得る目的で人を略取することを計画し,被害者を連れ去るための自動車を用意したとしても,それだけでは身代金目的略取罪の予備にはならない。

(5) 強盗の目的で自分の着用するズボンのベルトでタクシーの運転手の首をしめ,その売上金を強奪するつもりで,タクシーに乗り込み走らせたとしても,それだけでは強盗罪の予備にはならない。

[48−47] 次のうち正しいものはどれか。

(1) 人にあてるつもりで発砲したところ,誤って連れの人にあたってしまった場合,法定的符合説では殺人未遂罪と過失致死罪が成立する。

(2) 人にあてるつもりで発砲したところ,誤って連れの人にあたってしまった場合,具体的符合説では殺人既遂罪が成立する。

(3) 人にあてるつもりで発砲したところ,誤って連れていた犬にあたった場合,法定的符合説では殺人未遂罪と器物損壊罪が成立する。

(4) 人にあてるつもりで発砲したところ,誤って連れていた犬にあたった場合,抽象的符合説では器物損壊罪のみが成立する。

(5) 犬にあてるつもりで発砲したところ,誤ってその犬を連れていた人にあたった場合,法定的符合説では器物損壊罪と過失致死罪が成立する。

[48−50] 刑法第6条に関し,次のうち誤りはどれか。

(1) この規定により,犯罪後刑が重く変更された場合,軽い行為時の規定を適用することは,罪刑法定主義の趣旨に合致する。

(2) この規定は,犯罪後刑が軽く変更された場合,重い行為時の規定を適用する旨の規定を設けることを許さない趣旨である。

(3) 犯罪後の法律により心神耗弱者の刑を減軽すべき旨の規定を,裁判官の裁量により減軽することができる旨変更した場合,旧法を適用すべきである。

(4) 犯罪後の法律により,数回刑の変更があった場合,その内最も軽い刑を適用すべきである。

(5) 1個の犯罪の実行行為の継続中に刑が変更された場合,新法を適用すべきである。

<参照条文>

刑法第6条 犯罪後ノ法律ニ因リ刑ノ変更アリタルトキハ其軽キモノヲ適用ス

[48−53] 甲は,野中の一軒家に1人で住んでいる乙から,同人所有の家屋を焼失させて火災保険金を手に入れたいので火をつけてくれと頼まれ,同家屋の横に積んであったわらに火をつけたところ,火は雨戸に燃えうつったが,たまたま通りかかった通行人に発見され消しとめられた。甲の罪責は次のうちどれにあたるか。

(1) 現住建造物放火未遂罪

(2) 他人所有の非現住建造物放火未遂罪

(3) 自己所有の非現住建造物放火未遂罪

(4) 建造物等以外放火罪

(5) 犯罪不成立

[48−54] 刑の執行猶予と保護観察に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。

(1) 刑の執行猶予を言い渡す際,一定の重い罪を犯した者には必ず保護観察に付さなければならない。

(2) 罰金刑の執行猶予の言い渡いついては保護観察に付することができない。

(3) 刑の執行猶予をうけ保護観察に付された者が,取り消されることなく猶予期間を経過したときは,刑の執行を受け終わったものとみなされる。

(4) 刑の執行を猶予され保護観察に付された者が,その期間内に更に罪を犯した場合は,再度の執行猶予を言い渡すことができない。

(5) 刑の執行猶予を言い渡し保護観察にする場合,保護観察の期間は刑の執行猶予の期間内で,裁判所が定める。

[48−57] 次の記述のうち,結果的加重犯となるものはどれか。

(1) 自己所有の物置小屋を燃やすつもりで火をつけたところ,思いもかけず強風のため近所の他人の住居を半焼した。

(2) 暴力団の親分が,掟にそむいた組員を監禁中,他の組員へのみせしめのため革バンドで殴り負傷させた。

(3) 他人の家の窓ガラスをこわすつもりで石を投げたところ,ガラス窓を破ってとびこんだ石が,思いがけずそこにいた家人にあたって負傷した。

(4) 単にひかれて死ねばよいと思い,自分の幼児を高速道路におきざりにしたところ,案の定車にひかれて死んだ。

(5) 強盗犯人が現場から数百メートル離れた街路上で,パトロール中の警察官に職務質問のため呼び止められ,懐中電灯で照らされたので逮捕を免れるため凶器できりつけ負傷させた。

[48−60] 次の場合において業務上過失致死傷罪に当たらないものはどれか。

(1) 大学生が夏休みのアルバイトとしてビルの建築工事現場の資材運搬に従事していたが,誤って資材を落とし下にいた人夫を死亡させた。

(2) 中学校の理科の教師が,理科の実験中,薬品の調合を誤り爆発させ,生徒を負傷させた。

(3) 自動車の免許をとりたての会社員が休日に同僚から引越の手伝いを頼まれて,初めて自動車を運転し,あやまって通行人をはねて負傷させた。

(4) 無免許で医業に従事する者が,治療を誤り患者を死亡させた。

(5) そば屋の店員が,白転車で出前の途中,前方注視を怠り横断歩道を横断中の児童にぶつかり負傷させた。

[48−65] 次のうち,甲について名誉毀損罪(刑法230条)の成立するものはどれか。

(1) 甲はかねてより恨みのある市会議員候補者乙が道路上で選挙演説中,「お前みたいな卑きょう者は落選してしまえ」とどなった。

(2) 甲は親族会議で集まった親族5名に対し,「実は内密の話だが,おいの乙は強姦罪で指名手配されて逃亡中のため,きょうの会議に出席できない」と話した。

(3) 甲は自動車事故で急死した乙が,生前会社の金を横領したといううわさを信じ,葬儀に集った会葬者にそのことを話した。

(4) 甲は会社の同僚である乙を失脚させるために,会社の食堂で大勢の人に向かって「乙は詐欺で逮捕されたことのあるような大うそつきだ」と言った。事実乙は以前詐欺罪で逮捕されたことがある。

(5) 甲は公判廷で証人として「被告人乙が被害者を刺すのを見た」と証言した。しかしそれは甲の見間違いで,真実は乙が犯人ではなかった。

[48−70] 人名とその主張した学説を結んだ次の組合せのうち誤っているものはどれか。

(1) リスト−−¥目的刑論

(2) ベーリング−−構成要件論

(3) フォイエルバッハ−−心理強制説

(4) カント−−死刑廃止論

(5) フェリー−−社会的責任論

[48−72] 次の記述のうちいわゆる新派(近代派)の理論に適合しないものはどれか。

(1) 懲役と禁錮の区別を廃止してすべて単一の拘禁刑に統一すること。

(2) 執行猶予の要件を緩和して,別に禁綱以上の刑に処せられた者にも執行を猶予する場合を認めること。

(3) 過失の注意義務について行為者の主観的注意能力を標準とすること。

(4) 心神耗弱者に対する必要的減軽の規定を削除すること。

(5) 従犯については,つねに正犯の刑に照らして減軽した刑を科するのではなく,裁判所の裁量にゆだねること。

[48−73] 次の記述のうち甲の行為について刑法38条2項の適用を受けないものはどれか。

(1) 甲は友人乙が丙と,とっくみあいの喧嘩をしているのを見て,乙に加勢するつもりで丙に暴行を加えた。実は丙は乙を逮捕しようとしていた私服警察官であった。

(2) 甲は乙所有の倉庫に火を放ったところ,たまたま倉庫の中に浮浪者が寝ていた。

(3) 甲は私人の作成した文書は,たとえ公務所が保管するものであっても私文書毀棄罪が成立するものと思って,公務所にしのびこんで自己の提出した転居届をつづりから抜き出して破棄した。

(4) 甲は病気の乙が冗談に「苦しいから殺してくれ」といったのをまに受けて乙を殺した。

<参照条文>

刑法第38条2項 「罪本重カル可クシテ犯ストキ知ラサル者ハ其重キニ従テ処断スルコトヲ得ス」

[48−77] 恐喝罪の成立につき,正しいものはどれか。

(1) 恐喝の手段として,平手で相手方の顔を数回殴打して金員の提供を要求し,被害者が要求を入れないとさらに暴行を受けるとい怖した結果金員を交付した場合,暴行罪と恐喝罪の牽連犯が成立する。

(2) 会社役員に対し,金を出さないと法律に違反して自社株の売買をしていることを業界紙に発表するといってぐ怖させて,金員を交付させても恐喝罪は成立しない。

(3) 通行人に突き当たり,相手が驚いているすきに財物を奪うのは恐喝罪が成立。

(4) 一般通常人ならばい怖する程度の脅迫が加えられたにもかかわらず,偶々相手方が豪胆でい怖を感ぜず,かえって犯人の境遇をあわれんで金員を交付した場合は,恐喝罪の既遂が成立する。

(5) 口止料をよこさないと脱税の事実を公にすると脅迫し,被害者がい怖して黙認している間に,かたわらにあった札束を奪う行為は,恐喝罪の既遂が成立する。

[48−79] 刑法第65条2項は「身分ニ因リ特ニ刑ノ軽重アルトキハ其身分ナキ者ニハ通常ノ刑ヲ科ス」と規定しているが,次の記述のうちこの規定の適用があるのはどれか。

(1) 旅館主甲は,博徒乙を教唆して,自分の旅館の一室で賭博を開帳させた。

(2) 甲は,友人乙を教唆して,乙の父の金を盗ませた。

(3) 甲は,友人乙を教唆して,半身不随で動けない乙の老父を山に運ばせて遺棄させた。

(4) 甲は,友人乙の妻丙を教唆して,乙の刑事被告事件の証拠をいん滅させた。

(5) 甲は,医師乙を教唆して,裁判所に提出する診断書に虚偽の記載をさせた。

[48−81] 次の記述のうち誤りはどれか。

(1) 通行人Aは,線路上に大きな石が置いてあるのを発見したが,電車が脱線すればおもしろいと思ってそのまま立去ったところ電車が脱線した。Aに往来危険罪が成立する。

(2) 新駅新設の情報をいち早く入手した不動産屋Aは,その事実を告げずに,附近の土地を何も知らない地主からその当時の価格で購入した。Aに詐欺罪は成立しない。

(3) 自分の家の池に男の死体があるのを発見した家人Aは,かかわりあいになるのをおそれて,警察に通報せずそのまま放置した。Aに死体遺棄罪は成立しない。

(4) 土建業者Aは,地主から土地を2ヶ月の約束で借り受け飯場を建てたが,期限がきても撤去しなかった。Aに不動産優奪罪は成立しない。

(5) 自宅を出た直後に電気アイロンのスイッチを入れたままであることに気がついた家人Aは,自宅にかけた火災保険金が欲しくなりそのまま出かけたところ,家屋は全焼した。Aに放火罪が成立する。

[48−83] 次のうち誤りはどれか。

(1) 13歳末満の女子に対し,13歳以上であると誤信し,その同意を得て性交した場合,強姦罪にならない。

(2) 2人以上の者が,現場で共同して強姦しようとした場合,姦淫が未遂に終わっても親告罪とはならない。

(3) 成年の女子に対し,結婚してやると甘言して,相手がそれを信じたのに乗じて姦淫した場合,準強姦罪になる。

(4) 強姦しようとして女子に組みついたが,ふり切って逃げたので100メートルほど追いかけたところ,同女が石につまづき転んで負傷した場合,強姦致傷罪が成立する。

(5) 強姦を遂げた後,殺意を生じて殺害した場合,強姦罪と殺人罪の併合罪になる。

[48−86] 次の記述のうち詐欺罪にあたるものはどれか。

(1) 駅員のすきをねらって,乗車券を持たずに改札口を通り抜け,電車に乗り込んだ。

(2) 偽造した登記申請書類を,真正に作成されたもののように装って登記官吏に提出し,他人の不動産を自己名義に所有権移転登記させた。

(3) 母親に子供が表通りで車にはねられたとうそを言い,母親があわてて外に飛びだしたすきに,屋内に入って財物を窃取した。

(4) 債権者が文盲であることをよいことに,債務を免れる目的で,公害企業移転促進のための署名と称して,債務免除の証書に署名押印させた。

(5) 電気検針器の針を逆回りさせ,電気を使用しなかったように見せかけて,電気料金の支払を免れた。

[48−90] 医師甲は,患者乙が待合室で読んでいた手紙が置き忘れられているのをみつけ,それを読んだところ,それは丙が乙にあてた親展の手紙で,その内容は,丙の事業が思わしくなく多額の債務を負っているというものであった。甲は友人丁が丙と取引していることを思い出し,その内容を丁に知らせた。その結果,丁は丙との取引を停止した。甲の罪責は次のうちどれか。

(1) 信書開披罪

(2) 秘密漏泄罪

(3) 信用毀損罪

(4) 業務妨害罪

(5) 犯罪不成立

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