[49−02] 次のうち,甲に誣告罪の成立するものはどれか。

(1) 競輪で給料を使いはたした甲は,交番で「今そこの暗がりで強盗におそわれ,給料を全部とられた」と狂言の届出をした。

(2) 甲は留置場の飯食にありつこうとして,最近話題になった殺人事件が迷宮入りしているのを利用し,自分が殺人犯であると警察に自首した。

(3) 公務員甲は,同僚乙が日頃から自分をいじめているのを心憎く思って,うちみをはらすためまさかそんなことはあるまいと思いながらも,「乙は業者丙から多額の金員をもらって仕事に手こころを加えている」と検察官に告発した。ところが,検察官が乙を逮捕して取調べた結果事実乙は収賄していたことがわかり,乙は起訴された。

(4) 甲は公務員乙をおとしいれようと思って,乙の上司であり懲戒権限を有する丙に「乙は多額の公金を使いこんでいるから懲戒免職にすべきだ」との内容虚偽の手紙を届けた。

(5) 甲は,銀行の頭取乙に「貴行のA支店長丙は建設工事の施工に関し不正の融資をしているから,くびにした方が良い」と,内容虚偽の電話をかけた。

[49−05] 暴力団A組組長甲は,子分乙,丙を連れて歩いていたところ,かねてから殺害の意図をいだいていた対立抗争中の暴力団B組幹部丁と出会ったので,乙,丙に「丁の腕の1本でもへし折ってやれ」と命じた。乙,丙が丁になぐりかかったところ,丁はうまく身をかわし,逆に丙をなぐりかえしたので,丙は憤激してとっさに殺意をおぼえ,所携のナイフで丁の胸をさして殺してしまった。判例の立場によると,甲,乙は次のうちどの刑で処罰されるか。

(1) 甲・乙ともに殺人罪

(2) 甲は殺人罪,乙は傷害致死罪

(3) 甲は傷害罪,乙は傷害致死罪

(4) 甲は傷害致死罪,乙は傷害罪

(5) 甲・乙ともに傷害致死罪

[49−07] 甲は恋人乙女が冗談に「一緒に死んで永遠に幸せになりたいから殺してちょうだい」と言ったのを本心から言ったものとうかつにも誤信し,二人で心中するつもりで毒薬をジュースに入れ,自分も死ぬつもりで毒の入っていることを知らない乙女と一緒に飲んだが,毒が致死量に達していなかったため,二人とも胃に炎症をおこしただけで死ななかった。甲は次のうちどの刑によって処罰されるか。

(1) 殺人未遂非

(2) 嘱託殺人未遂罪

(3) 傷害罪

(4) 過失傷害罪

(5) 不 処 罰

[49−11] 次に掲げる行為のうち,偽造通貨行使罪の「行使」にあたるものはどれか。

(1) 偽造紙幣の札束を,支払能力を示すために他人に見せた。

(2) 偽造紙幣の札束を,贈賄のため真正の紙幣ととりまぜて,公務員に供与した。

(3) 偽造通貨を,鑑定のため,収集家に寄託した。

(4) 偽造通貨を,情を知った者に名価以下で売却した。

(5) 偽造通貨を,標本として犯罪学研究所に寄付した。

[49−13] 次の記述のうち,業務妨害罪の成立しないものはどれか。

(1) 営業許可を受けないで営業しているキャバレーで,「火事だ」と大声でわめきたてて,多勢の客を混乱におとしいれた。

(2) 電気器具商の売上げをへらす目的で,団地の主婦数名に「あの電気器具店の取扱う商品は欠陥品や不良品ばかりだ」と虚偽の事実を告げ,そのうわさを団地内に広めさせた。

(3) タクシー会社を困らせてやろうとして,うその電話をかけて,その会社のタクシーを無人の空別荘の前に配車させた。

(4) シャンソン歌手の音楽会で,軍歌を吹き込んだテープレコーダーをかけて,シャンソン歌手の歌をききとりにくくした。

(5) 恋人を友人に奪われた腹いせに,友人が自宅で開いた結婚披露宴の最中に,悪臭の強い薬品をふりまいて,その披露宴を混乱させた。

[49−16] 過失犯に関する次の記述のうち,誤りはどれか。

(1) 過失犯にも期待可能性の理論は適用される。

(2) 現行法上,過失犯の未遂を処罰する規定はない。

(3) 過失犯の共同正犯を認める見解がある。

(4) 過失犯を処罰するのは責任主義の原則の例外とはいえない。

(5) 過失犯に対する自由刑は禁錮刑だけである。

[49−21] 弁護士甲は,離婚事件の依頼者である乙女から,その息子丁が丙会社に就職内定した旨を聞かされたが,自分が同会社の顧問弁護士をしていて,同会社が多額の負債を負い破産に瀕している事実を知っていたので,乙女が息子の就職を喜んでいるのをみて気の毒になりその就職を思いとどまらせようとして,乙女に他言を禁じてその旨を告げた。

 甲の行為につき秘密漏泄罪が成立しないとする立場をとる場合,その理由に関する次の記述のうち正しいのはどれか。

(1) 秘密漏泄罪における「人の秘密」には法人の秘密が含まれない。

(2) ただ1人乙女にだけ告げたのだから。

(3) 弁護土が依頼者に告げただけだから。

(4) 固く他言を禁じて告げたから。

(5) 資産状態の秘密にすぎないから。

[49−23] 執行猶予について次の記述のうち誤れるものはどれか。

(1) 懲役刑の執行猶予の期間中に罪を犯した場合,執行猶予ができない訳ではない。

(2) 罰金刑の執行を受けてから,5年内に罰金刑に処せられた場合に執行猶予にできる。

(3) 懲役については,前に禁錮に処せられ,その執行が終わって5年以内であっても,執行猶予にできる。

(4) 懲役と罰金が併科された場合,その一方のみの執行を猶予できる。

(5) 執行猶予に付され,保護観察期間中に懲役にあたる罪を犯し執行猶予を取り消された場合に後の罪につき執行猶予を付すことはできない。

[49−26] 甲は乙が住んでいる住宅に延焼させるつもりで,その住宅に隣接する乙所有の物置に火をつけた。火は物置を全焼して,さらに住宅を半焼した。甲の罪責はつぎのうちどれか。

(1) 非現住建造物放火罪と現住建造物放火罪

(2) 現住建造物放火罪

(3) 現住建造物放火未遂罪

(4) 延焼罪

(5) 非現住建造物放火罪と延焼罪

[49−28] 名誉毀損罪の成否に関して,次のうち誤りはどれか。

(1) 私人の名誉に関する事実については,摘示された事実が真実であっても犯罪は成立する。

(2) 公務員の職務に関する事実については,もっぱら私えんをはらすためであっても,摘示された事実が真実であれば犯罪は成立しない。

(3) 死者の名誉に関する事実については,摘示された事実が真実であれば犯罪は成立しない。

(4) 衆議院議員の候補者に関する事実については,公益をはかるためになされたならば,その事実の真否を問わず罰せられない。

(5) いまだ公訴の提起せられざる人の犯罪行為に関する事実については,公益をはかるためになされ,かつ摘示された事実が真実であれば,犯罪は成立しない。

[49−30] 甲は乙を殺そうと思い,乙が全く泳げないことを知っていたのでヨットに誘い,沖に出て乙を海中に突き落した。乙は水死直前に偶然付近を通りかかった漁船に助けられ衰弱した状態で病院に運ばれた。ところが,その晩病院が火災にあい,乙は衰弱していたので逃げることができず焼死した。甲の罪責につき以下の記述のうち正しいものはどれか。

(1) 甲は,乙が泳げないことを知っていたのだから,主観的相当因果関係説によれば殺人既遂の責を負う。

(2) 乙は,すでに死にそうな状態になっていたのであるから,因果関係に関するいかなる説によっても,甲の行為は殺人既遂となる。

(3) 乙は,病院の火災により死亡したのであり,結局因果関係の錯誤にすぎないから,客観的相当因果関係説では,甲は殺人既遂の責を負う。

(4) 乙は,甲の行為とは全く関係のない事故によって死亡したのであるから,条件説に立っても,甲は殺人既遂の責を負わない。

(5) 病院の火災は,誰もが予測できなかったのであるから,折衷的相当因果関係説に立てば,甲は殺人既遂の責を負わない。

[49−32] 次のうち,わが刑法が適用されない場合はどれか。

(1) 日本国外で,外国人が日本人を殺害した場合

(2) 日本国外で,日本人が外国人の住居に放火した場合

(3) 日本国外で,外国人が行使の目的で日本銀行券を偽造した場合

(4) 外国の港に寄港中の日本船舶内で,外国人船員が外国人船客を傷害した場合

(5) 日本国外で,日本の公務員が外国の商社からその職務に関して賄賂を収受した場合。

[49−37] 次のうち,甲の行為に正当防衛が成立するのはどれか。

(1) 甲は,暗やみで乙女が丙に強姦されようとしているのを強盗にあっていると誤信し,乙を助けようと持っていたステッキで丙を殴打し負傷させた。

(2) 甲は,乙にささいなことで殴打され,抵抗せずにいたが,乙が「警察に言うと殺すぞ」と言って立ち去りかけたので憤激し,背後から乙を突き飛ばして負傷させた。

(3) 甲は,乙と喧嘩をし素手で殴り合っていたが,乙がナイフをとり出して切りかかってきたので,それを奪いとり乙に切りつけ負傷させた。

(4) 甲は,乙と口論していたが,乙が上衣のポケットに手を入れたので,ピストルをとり出して自分を撃つものと勘違いし,乙に殴りかかって負傷させた。

(5) 甲は,深夜全く面識のない泥酔した乙が突然玄関のガラス戸をうち破って入りこみ,人声でわめきたてるので,台所から包丁を持ち出して乙を刺し重傷を負わせた。

[49−40] バーのマダム甲は,かねてから恨みに思っていた客乙を殺そうと孝え,ウイスキーに青酸カリを入れ,情を知らないホステス丙に命じて,乙のところに持って行かせた。乙は一口飲んだが,異様な苦味を感じ,直ちに吐き出したため,乙は一命をとりとめた。判例の立場によれば,甲に殺人罪の実行行為の着手のあったと認められるのは,次のうちどれか。

(1) 甲がウイスキーに青酸カリを入れたとき。

(2) 甲が丙にウイスキーを乙のところへ持って行くように命じた時。

(3) 丙がウイスキーを乙のところへ持っていこうとした時。

(4) 丙がウイスキーを乙のテーブルの上に置いた時。

(5) 乙がウイスキーを一口飲んだ時。

[49−43] 次のうち,( )内の犯罪が観念的競合とならないものはどれか。

(1) デパートの商品券を偽造し,それでデパートの支払をすませた。(有価証券偽造罪,詐欺罪)

(2) 他人名義を冒用した誣告状を捜査機関に提出した。(偽造私文書行使罪,誣告罪)

(3) 封印の施された酒類在中の酒だるを窃取した。(封印破棄罪,窃盗罪)

(4) 窃盗犯人が逮捕を免れるため,警察官に暴行を加え負傷させた。(公務執行妨害罪,事後強盗致傷罪)

(5) 公務員が賍物であることの情を知りながら,これを賄賂として収受した。(収賄罪,賍物収受罪)

[49−46] 甲は国鉄某駅に勤務する知人乙を訪ね,出改札事務室に入ったところ,出札係員が発売駅等の記入のしてある普通乗車券を机の下に落としたのに気付かず立ち去ったのを見つけ,誰も知らないのをさいわいに旅行に使用する目的で拾い,その後,着駅・日付・金額等の記入をした。甲の罪責は次のうちどれか。

(1) 占有離脱物横領罪,有価証券偽造罪

(2) 占有離脱物横領罪,公文書変造罪

(3) 窃盗罪,有価証券偽造罪

(4) 窃盗罪,有価証券変造罪

(5) 窃盗罪,公文書偽造罪

[49−48] 刀剣商甲は,無銘の古刀を持っているが,正宗の作でないことを知りながら刀の特微を表示した上,「右無銘の刀は,相模国正宗の作であることを証明する。刀剣鑑定家協会理事長乙」と記載し,その名前の下に,あらかじめ勝手に作っておいた「日本刀剣鑑定家協会証明之印」を押なつした。そして,顧客丙に電話で「正宗の掘り出しものがあり,ちゃんと鑑定書もついている。400万円で買わないか」と購入方を依頼した。その数日後,丙は,高価すぎることを理由に断わった。

 なお,日本鑑定家協会は実在し,乙は架空の人物である。甲の罪責は次のうちどれか。

(l) 私文書偽造罪,同行使罪,詐欺未遂罪

(2) 印章偽造罪,同不正使用罪,詐欺未遂罪

(3) 私文書偽造罪,印章偽造罪,詐欺未遂罪

(4) 私文書偽造罪,詐欺未遂罪

(5) 詐欺未遂罪

[49−51] 暴力団員甲は,マンションの1室で,不義理をした弟分乙の手足をなわで縛り,リンチを加えようとしたところ,乙は,とっさに隠し持っていたナイフでなわを切り,甲に捨てぜりふを残して部屋を逃げ出した。甲は,その態度に憤激して,後を追いかけていき,階段を降りようとしていた乙の背後から包丁を投げつけたところ,乙はそれを避けようとして,階段につまづいてころげ落ち,怪我をした。甲の罪責は次のうちどれか。

(1) 暴行罪,傷害罪

(2) 逮捕致傷罪

(3) 逮捕罪,傷害罪

(4) 傷害罪

(5) 逮捕罪,過失傷害罪

[49−54] 次の記述のうち正しいものはどれか。

(1) 甲は,乙が横領した金員で買ってくれると知りながら,デパートに行ってその金でゴルフセットを買ってもらった。甲には賍物収受罪が成立する。

(2) 甲は,乙が盗んできた自動車を盗品と知りながら,料金を払って借り受けしばらく使用し,乙に返還した。この場合甲には賍物寄蔵罪が成立しない。

(3) 甲は,乙から3日後に盗んでくるダイヤの売却を頼まれたので,丙にその買取方を依頼し,承諾してもらった。乙は三日後ダイヤを盗んだ。この場合,甲に賍物牙保罪が成立する。

(4) 電気販売店の店員甲は,同店の支配人乙が横領したカラーテレビを善意無過矢の丙に売却したのを知り,丙から買い受け使用した。この場合,甲には賍物故買罪は成立しない。

(5) 甲は,乙が他から盗んできた衣類を盗品と知りながら自分の衣類と交換した。この場合,甲には賍物故買罪が成立しない。

[49−57] 次のうち,( )内の罪について正犯または共犯の成立しないものはどれか。

(1) 人通りの少ない夜道を走っていた自動車の運転手が,誤って人をはね,即死させた。運転手はこれに気がついたが,そのまま走り去った。(死体遺棄罪)

(2) 食品製造業者が,不要になった大型冷蔵庫を裏の空地に放置しておいたところ,近所の子供が中に入って遊び,扉がしまって出られなくなってしまったため窒息死してしまった。(過失致死罪)

(3) トラックの荷台に材木を多量に積んで運搬していたところ,踏切でその材木が荷くずれして線路上に落ちた。運転手はこのことに気付いていたが,とがめられろのがこわくてそのまま去った。(往来危険罪)

(4) デパートのガードマンが商品のハンドバッグを手提袋に入れようとしている女をみつけたが,その女が自分の恋人であり,目くばせをしたので,同女がデパートの外に出るのを見逃した。(窃盗罪)

(5) 不良品の洗剤を大量に仕入れてしまっていたスーパーマーケットの支配人が,多数の客から洗剤を売ってくれと頼まれて,役に立たないのを知りながらこれを秘して販売した。(詐欺罪)

[49−62] 「責任なければ刑罰なし」といういわゆる責任主義に直接結ぴつかないものはどれか。

(1) 面罰規定によって使用者が処罰されるためには,被用者(行為者)の選任監督について過失がなければならない。

(2) 不真正不作為犯が成立するためには,結果の発生を防止する法律上の義務の存在することが必要である。

(3) 故意の成立には,違法性の意識(認識)が必要である。

(4) 建造物等以外の放火罪が成立するためには具体的な公共の危険の発生を認識する必要がある。

(5) めいていによる心神喪失中の行為に対して故意犯の責任を問いうるためには,心神喪失になる以前に犯罪事実の発生を認容していることが必要である。

[49−66] 以下の記述のうち,詐欺罪の成立するものはどれか。

(1) 甲は乙から乙丙間の売買契約の手附として,60万円を預り,丙に届けるように依頼されたが,丙には,預ったのは50万円だと偽って,50万円のみを手渡し,残余の10万円を着服した。

(2) 甲は,はじめて入るバーで遊興飲食したが,途中で所持金のないのに気付き,これを踏み倒そうと思って,経営者乙に「近くで働いている友人に金を借りて来るから」といって信用させ,そのまま逃げ去った。

(3) 甲は友人乙から腕時計を預っていたが,乙に無断でその時計を売却してしまった。その後甲は乙から時計の返還を求められたが,「紛失したので今捜しているところだ」と言ってその場をのがれた。

(4) 甲は貴金属店に通常の客を装って入り,指輪を買いたいと申し入れ,店員乙に陳列棚から数個の指輪を取り出させ,乙が他の客と応待しているすきに,その内の1個を持ち去った。

(5) 甲は雇主乙から給料袋のまま給料を受け取り,帰途洋品店に立ち寄り,そこで開封したところ本来の給料より2万円余計に入っていた。しかし甲はこれを乙に告げずそのまま消費してしまった。

[49−68] 正しいものはどれか。

(1) 甲にあてるつもりで石を投げたところ,甲に当たらず,甲の連れていた子供乙に当たり乙が負傷した。この場合に,乙に対して未必の故意がなかったとすれば,法定的符合説と抽象的符合説では結論が異なる。

(2) 甲に当てるつもりで石を投げたところ,甲のそでをかすめて,甲の連れていた子供乙に当たり乙が負優した。この場合に乙に対して未必の故意がなかったとすれば,法定的符合説と具体的符合説では結論は同じである。

(3) 甲に当てるつもりで石を投げたところ,甲に当たらず,甲の連れていた飼犬に当たり,犬が死んだ。この場合犬に対して未必の故意がなかったとしても,甲の背後の窓ガラスを壊すかもしれないという未必の故意があったとすれば,法定的符合説と具体的符合説では結論は異なる。

(4) 甲に当てるつもりで石を投げたところ,甲に当たらず,甲の連れていた飼犬に当たり,犬が死んだ。この場合,犬に当たることについても甲の背後の窓ガラスを壊わすことについても未必の故意がなかったとすれば,法定的符合説と抽象的符合説では結論は同じである。

(5) 甲の連れている飼犬に当てるつもりで石を投げたところ,犬に当たらず甲に当たり,甲が負傷した。この場合甲に対して未必の故意がなかったとすれば,法定的符合説と具体的符合説では結論は異なる。

[49−69] 次に記述する甲の行為について,賄賂罪として処罰されないものはどれか。

(1) 警察官甲は,めいてい運転の犯人乙に,その事件のもみけしを頼まれ,これを見逃してやり退職した後その謝礼として10万円を要求したが断わられた。

(2) 県会議員甲は,製造業者乙に公害防止条例の制定を阻止してほしいと依頼されて謝礼として50万円を提供されたが,自分では受けとらずに乙に指示して甲の後援会に寄付させた。

(3) A公立学校の受験生の父親甲は,同校の校長に息子の入学に便宜をはかってほしいと頼み,10万円を差し出したが断わられたので,そのまま持ち帰った。

(4) 土建業者甲は,A市の市長立候補者乙に,市長に当選したら市の工事を請け負わせてほしいと頼み,100万円を手渡したが,乙は落選した。

(5) 徴税事務を担当する税務署職員甲は,納税者乙から「10万円やるから税金をまけてくれ」と頼まれ,これを承諾したが,病気で休職したため査定に手心を加えられず,謝礼をうけられなかった。

[49−73] 公務執行妨害罪の成否に関する次の記述のうち正しいものはどれか。

(1) 暴行または脅迫により現実に公務員の職務の執行を妨害したときに,公務執行妨害罪は成立する。

(2) 警ら中の警察官が喫茶店で休息して,コーヒーをのんでいる際に,それに対して暴行を加えたときは,公務執行妨害罪が成立する。

(3) 強制執行中に,執行官の指図に従い,家財道具を搬出していた人夫に対して,その搬出を妨害したときは,公務執行妨害罪は成立しない。

(4) 検挙にむかった警察官に対し,スクラムを組み労働歌を高唱して気勢をあげれば,公務執行妨害罪は成立する。

(5) 消防署のガレージに忍び込んで消防自動車のタイヤにきりで穴をあけたときは,公務執行妨害罪は成立しない。

[49−75] 次に記述する行為で,甲の行為が窃盗罪に当たらないものはどれか。

(1) 劇場の掃除係甲は,開館前に劇場の洗面所で,前夜の観客が置き忘れたハンドバックを発見し,自分の娘に与えるため自宅に持ち帰った。

(2) 某石油会社のタンクローリー車の運転手甲は,ガソリンスタンドにガソリンを供給しにいく途中,自分の運転するタンクローリー車からガソリンを抜き取り知人乙に売却した。

(3) 甲は隣家の飼いねこが自分の家に遊びにきたのを捕え,これを殺し,皮を三味線屋に売却した。

(4) 甲は100円硬貨に似せた金属片を駅の自動販売機に投入し,100円区間の切符を手に入れた。

(5) 甲は,乙とアパートの1室に同居し,乙と共同で購入したタイプライターを一緒に使用していたが,乙にだまって勝手に持出し古物商に売却した。

[49−78] 次のうち( )内の犯罪につき,中止犯が成立するものはどれか。

(1) 甲は晋段から憎く思っている乙を,殺害する目的で,これに毒薬を飲ませたが,乙が苦しんでいるのをみて,かわいそうに思い,119番へ電話してその場を立ち去った。乙は救急車で病院に運ばれて,一命をとりとめた。(殺人罪)

(2) 甲は恋敵である乙を殺害しようとして,日本刀を持って乙宅へ行ったが,玄関に出てきた乙の母親が,思い止まるように泣いて懇願するので,同情してそのまま帰った。(殺人罪)

(3) 甲は,浴場の脱衣箱から浴客乙の財布を抜き取り,後日取りにくる目的で脱衣箱と壁との間に隠しておいたが,乙がそのために困っていることを聞いて気の毒になり,電話で隠し場所を教えてやった。(窃盗罪)

(4) 甲は,公園を散歩中の乙を強盗の目的で殴りつけ,乙のカバンに手をかけようとしたが,乙が「それには大事なものが入っている。持っていかないでくれ」と大声を出すので,誰かに聞かれたかもしれないと思い,何も取らずに逃走した。(強盗罪)

(5) 甲は乙と強姦を共謀し,丙女を山中に連れこんで押し倒したが,まだ年が若いのをみて甲は,かわいそうになり「おれはやめた」といって立ち去った。その後,乙は一人で丙女を強姦した。(強姦罪)

[49−80] 犯人の所有に属する次の物件のうち,没収することができないものはどれか。

(1) 殺人行為に使用したライフル銃の皮ケース

(2) 強盗犯人をかくまってやったことの謝礼として受け取った現金

(3) 窃盗犯人が窃取した宝石類を隠匿しておいたボストンバッグ

(4) 恐喝犯人が喝取して得た腕時計を質入れして得た現金

(5) 賍物運搬に使用したトラック

[49−83] 次の記述のうち,甲に( )丙の犯罪の従犯が成立しないものはどれか。

(1) 甲は,公務員乙から「建設業者丙から小切手をもらったのだが,一時,あなたの当座預金口座にふりこんでおいてくれないか」と頼まれ,それが賄賂であることを知りながら,自己の預金口座にふりこんでやった。(収賄罪)

(2) 甲は乙から「ワイセツ映画を上映したいので部屋を貸してほしい」と頼まれ,自宅の2階の1室を貸してやった。そこで乙は,その室に人を集めて,ワイセツ映画を上映した。(猥褻図画陳列罪)

(3) 甲は,暴力団員乙ら十数人が,丙のところへなぐりこみをかける目的で,丙宅近くの空屋に集まっているのを知っていたが,乙から「武器がたりないのでなんとかしてくれ」と頼まれ,日本刀2振をとどけた。(凶器準備集合罪)

(4) 甲は,乙から「丙を殺したが,死体をうめる場所を知らないか」と言われ,甲は,自己所有の山林を乙に教え,丙の死体をうめさせた。(死体遺棄罪)

(5) 甲は,乙から「丙のダイヤモンドをだまし取るつもりだが,どこか良い売先はないか」とたずねられ,「自分が買っても良い」と答えた為,丙は以前の計画通り,ダイヤモンドを騙取した。(詐欺罪)

[49−88] 金に窮した甲は,父の秘蔵する茶器を持出し,友人の古物商乙に対して「これは父のところから,こっそりもち出してきたものだ」と告げて売却した。甲および乙にはそれぞれいかなる判決が言い渡されるべきか。

(1) 甲には刑の免除,乙には懲役刑。

(2) 甲には無罪,乙には罰金刑。

(3) 甲には刑の免除,乙には罰金刑。

(4) 甲には無罪,乙には懲役刑。

(5) 甲には公訴棄却,乙には懲役刑。

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