[51−03] 有価証券偽造の罪に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。

(1) 設立準備中の甲会社の発起人代表乙の承諾を得て,行使の目的をもって甲会社の名を掲げ,代表人乙名義で約束手形を振り出しても,その会社が不成立の場合には有価証券偽造罪は成立しない。

(2) 小切手用紙を窃取し,その用紙を使用して行使の目的をもって被害者名義の小切手を作成した場合は,不可罰的事後行為であるから有価証券偽造罪は成立しない。

(3) 行使の目的で宝くじの番号を改ざんし,当りくじの外観を呈する宝くじ券を作成した場合には有価証券偽造罪は成立しない。

(4) 行使の目的で為替手形を偽造するとともに,その手形に虚偽の裏書をした場合には有価証券偽造罪と有価証券虚偽記入罪が成立する。

(5) 他人から,同人名義で額面100万円の約束手形の作成を依頼され,行使の目的をもって勝手に額面200万円の約束手形を作成した場合には有価証券虚偽記入罪が成立する。

[51−08] 甲が詐欺罪に該当する場合は次のうちどれか。

(1) 甲は乙に対して10万円借金していたが,乙が文字を読めないことを利用して,福祉施設建設推進の署名簿だと偽って,乙の甲に対する貸金債権を放棄する旨を記載した乙名義の文書に押印させた。

(2) 甲は乙より丙に渡すように100万円預ったが,丙には乙から50万円しか受け取っていないと偽って50万円渡した。

(3) 甲は乙運転のタクシーに乗り込み,目的地附近に来たとき,はじめて金がないのに気付き,乙が停車してタバコを買いに行ったすきに逃げ出した。

(4) 甲は乙商店で1000円の買物をし,5000円紙幣で支払ったが店員から9000円のおつりを渡されたことに気付きながら,そのまま受け取って立ち去った。

(5) 甲は友人乙からカメラを借りていたが返すのが惜しくなり,乙に泥棒に盗まれたと偽って返さなかった。

[51−11] いわゆる継続犯に関する記述のうち誤っているものはどれか。

(1) 継続犯については,継続した行為の途中から,これに加担した者も共犯となる。

(2) 継続犯に関し,行為の継続中に刑が軽く変更された場合には新法だけが適用される。

(3) 監禁罪の被害者は監禁の継続中はいつでも正当防衛ができる。

(4) 賍物寄蔵罪の既遂時期は財物の保管を開始したときであり,これを返還した時ではない。

(5) 猥褻文書販売目的所持罪においては,所持を開始した時だけでなく,その後も常に,その物を所持していることの認識が必要である。

[51−14] 責任能力に関する次の記述のうち正しいものはどれか。

(1) 心神喪失,心神耗弱という概念は,生物学的ないし心理学的基礎を有すべきものであるから,これに該るかどうかを判定するにあたっては,精神医学的又は心理学的立場からする判断に従ってなされなければならない。

(2) 心神耗弱とは精神機能の障害により,是非を弁別する能力及びその弁別に従って行動を制禦する能力の著しく低い状態をいう。

(3) 14歳未満の者が責任無能力者とされるのは,精神発達が未成熟であり,一般に是非を弁別する能力,及び是非の弁別に従って行動を制禦する能力を欠くからである。

(4) 心神喪失とは,例えば精神病のように継続的に異常な心理状態に起因するものであり,心神耗弱とは例えばめいていのように一時的に異常な心理状態に起因するものである。

(5) 自動車を運転したことがない者が,めいていによる心神耗弱状態により,いたずら半分に友人の自動車を運転してハンドル操作を誤り,通行人を負傷させた場合,重過失傷害罪が成立する。

[51−19] 次のうち,占有離脱物でないものはどれか。

(1) 郵便配達人が誤って配達した郵便物。

(2) 友人が遊びに来て忘れて帰ったので,預っておいてやろうと思って保管している腕時計。

(3) 風で隣家から自己の庭に落ちてきた洗濯物。

(4) 公園のベンチに置き忘れられたカバン。

(5) 窃盗犯人が乗り棄てていった他人の自転車。

[51−22] 次のうち没収できないものはどれか。

(1) 殺人の報酬としてもらった自動車

(2) 賍物を運搬するのに使用したトランク

(3) 賍物を故買した者が,その賍物を売って得た金銭

(4) 賭博によって得た金銭を貸して得た利子

(5) 窃取した金銭で買った指輪

[51−25] 次の記述のうち誤っているものはどれか。

(l) 日本国内の空港に着陸している外国航空機内で,外国人乗客が他の乗客の金品を窃取した場合に我が刑法が適用されるのは属地主義に基づく。

(2) 日本国外にいる日本船舶内で,外国人が日本国民を殺害した場合に我が刑法が適用されるのは保護主義に基づく。

(3) 日本国外で外国人が外国航空機をハイジャックした場合に,「航空機の強取等の処罰に関する法律」が適用されるのは世界主義に基づく。

(4) 日本国外で日本国民が強盗をした場合に我が刑法が適用されるのは属人主義に基づく。

(5) 日本国外で外国人が日本の公文書を偽造した場合に我が刑法が適用されるのは保護主義に基づく。

[51−28] 次の記述のうち判例の見解によれば,正しいものはどれか。

(1) 行使の目的をもって一万円札を偽造しようとしたが,技術が拙劣なため,とうてい真正の通貨と思われないものしかできなかったときでも,通貨偽造罪の実行の着手となる。

(2) 金員騙取の目的で虚偽の債権に基づいて裁判所に訴を提起した場合,詐欺罪の実行の着手はない。

(3) スリが電車内でスリをするつもりで,ねらいをつけた乗客の後ポケットの外側に手を触れ,金員のあるときはとるつもりで確かめるのは窃盗罪の実行の着手とはならない。

(4) 昏睡せしめて金員をとるつもりで,睡眠薬入りジュースを差し出したときは昏睡強盗罪の実行の着手はない。

(5) 自動車内で強姦するつもりで,12歳の少女に家まで送ってやると言葉をかけ,誘ったときは強姦非の実行の着手がある。

[51−31] 刑法207条(同時犯と共犯)の適用について,誤りはどれか。

(1) 甲・乙が意思の連絡なく,同時にAに暴行を加えて傷害を負わせたが,それが甲・乙,いずれの暴行によるものか不明の場合本条の適用がある。

(2) 甲・乙が共謀の上,木片でAを殴打し,数個の傷害を与えた場合,その傷がいずれの行為によるものか不明な場合,本条は適用されない。

(3) 甲・乙・丙が互いに意思の連絡なく,Aに暴行を加え傷害を負わせた場合,甲・乙どちらかの暴行による傷害であることは明らかであるが,甲・乙どちらによるか不明な場合,丙についても本条は適用がある。

(4) 甲・乙が互いに意思の連絡なく,順次にAを殴打し,傷害を与えたが,それが甲・乙いずれの行為によるものか,不明な場合,本条の適用がある。

(5) 甲・乙が互いに意思の連絡なく,Aを殺害する目的で,ピストルを発射し,弾丸がAの足に命中し,負傷した場合,それが甲・乙いずれの弾丸によるか不明の場合には,本条の適用はない。

[51−34] 次の記述のうち,誤っているものはどれか。

(1) 賍物を牙保するに当り,その情を知らない買主から代金を受け取ったとしても,賍物牙保罪のほかに,詐欺罪は成立しない。

(2) 窃盗の実行を決意した者の依頼を受けて,同人が将来窃取すべき物の売却を周旋した場合には,賍物牙保罪は成立しない。

(3) 窃盗犯人と,いっしょに賍物を運搬した場合には賍物運搬罪は成立しない。

(4) 路傍に,窃盗犯人が置き忘れた賍物を不法に領得した場合には,賍物収受罪は成立しない。

(5) 賍物を収受した者がこれを運搬した場合には,賍物収受罪のほかに賍物運搬罪は成立しない。

[51−40] 殺人事件の被告人甲は,監獄に拘置されていたが,公判のため裁判所に護送される途中,看守のすきをねらって,手錠をかけられたまま逃走し,追跡を免れた。数時間後甲は,たまたま自動車を運転していた友人乙に出会った。乙は・事情を察し,車中で手錠をはずしてやり,近くの駅まで送りとどけてやった。次の甲・乙の罪責につき正しいものはどれか。

(1) 甲は単純逃走罪,乙は逃走援助罪

(2) 甲は加重逃走罪,乙は単純逃走罪の幇助

(3) 甲は単純逃走罪,乙は犯人隠避罪

(4) 甲は単純逃走罪,乙は単純逃走罪の幇助

(5) 甲は加重逃走罪,乙は逃走援助罪・犯人隠避罪

[51−43] 正当防衛に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。

(1) 甲は乙が日本刀で切りかかってきたので,棒でこれを防いでいたが,乙が日本刀をすてて逃げ出したので,約100メートル追いかけ,背後から棒で頭部を殴打し,けがをさせた。甲の行為は正当防衛となる余地がある。

(2) 甲は乙から棒でなぐりかけられた。甲は逃げることもできたが,逃げずに棒で反撃したため乙は負傷した。甲に正当防衛が成立する余地はない。

(3) 甲は盗難の予防のため,家の窓の外側に電線を張り,電流を流していたところ,たまたま盗みに入ろうとした乙が,これに触れやけどをした。甲には正ご防衛の成立する余地がある。

(4) 甲は友人の乙に,自分のカメラを貸していたが,乙が金に窮して物を質入したりしているのを見て,カメラの入質を防ぐため,たまたま乙の部屋に遊びに行った折,乙に無断でカメラを持ち帰った。甲の行為には正当防衛の成立する余地がある。

(5) 乙の飼犬が鎖を切って,甲の飼っている鶏小屋に入って,その鶏に襲いかかったので,甲は,乙から借りていたステッキで犬を殴打したところステッキが折れた。甲には,犬とステッキの両方に正当防衛が成立する。

[51−46] 業務妨害罪について次のうち正しいものはどれか。

(1) 他人の田に無断で侵入して,これを掘り起こし,耕作を不能ならしめた。ーー偽計による業務妨害罪。

(2) タクシー会社の車庫にある20台の車のタイヤに全部穴をあけ,その運行を不能ならしめた。ーー偽計による業務妨害罪。

(3) ある店で買物をしている主婦達に向かって,「この店には欠陥商品が多い」と言った。そのため主婦達は買物をしないで立去った。ーー偽計による業務妨害罪。

(4) 免許を受けないで開業している医院の待合室にいる患者に向かって,「この先生では生命が危険である」と言った。そのため何人かがそのまま帰ってしまった。ーー偽計による業務妨害罪。

(5) ある公務員の労働組合の大会の会場に向かって発煙筒を投げて会場を混乱させた。ーー威力業務妨害罪。

[51−49] 次のうち業務上過失致死傷罪が成立しないものはどれか。

(1) 農家で,たまに耕運機を運転する者が人を乗せ,耕運機を運転中運転を誤り溝にはまり,同乗者をふり落してけがをさせた場合。

(2) 免許をとりたての者が,勤め先からの帰りの道のりが遠いので車で帰った時,前方不注意で通行人をはねて死亡させた場合。

(3) 玄関前の庭先で,前進,バックと車の運転練習をしていた者が,ちょっと門から近を出し運転中,不注意で通行人をはねた場合。

(4) 犬を訓練する者が,他人に犬の訓練を頼まれ道路を犬を連れて歩いている時,犬があばれて,側を通行中の人にかみつきけがをさせた場合。

(5) 狩猟免許を取り,毎年狩に行っている甲は白宅で猟銃を手入れ中,誤って弾丸を発射,附近にいた息子に命中させた場合。

[51−52] 括弧内の犯罪につき甲に従犯の成立しないものはどれか。

(1) 甲は,乙が丙を殺そうとしているのを知っていたが,ある日,こっそりと乙のあとをつけて行ったところ,丙の家に入っていった。甲が外で車に乗って待っていると,乙が丙の家から出て来たので,乙を車に乗せて逃がしてやった。(殺人罪)

(2) 甲は,乙が丙の家へ窃盗に入ろうとしているのを知って丙の家のことをよく知っていたので,家の見取図を手紙で送ってやった。乙は,その見取図をみて窃盗に入った。(窃盗罪)

(3) 暴力団員甲は,親分乙がかねてより殺意をいだいていた対立抗争中の親分丙を,ある日みつけたので,親分乙に「殺すなら,今がチャンスです」と注進したところ,乙は丙を殺した。(殺人罪)

(4) 甲は乙が丙貴金属店に窃盗に入ろうとしていたが,売却先について苦慮していたので,乙に「宝石額を盗んで来たら,買ってやる」と言ったところ,乙は宝石を盗んで来た。(窃盗罪)

(5) 寺の住職甲は,博徒乙に「賭博を開張したいので,部屋を貸してくれたら謝礼として10万円やる」と言われたので,寺の奥の座敷を貸してやったところ,乙はその座敷で賭博を開帳した。(賭博開帳図利罪)

[51−55] 次のうち封印破棄罪にあたらないものはどれか。

(1) 土地に執行官保管,立入禁止の標示札があるのに,土地の中に入ってその土地を掘り起こした場合。

(2) 執行官保管,劇場経営禁止の公示札の上から映画のポスターをかけて見えないようにし,その劇場で映画興行を行なった場合。

(3) 執行官保管,現状変更禁止の標示札のある建物の内部を改造して使用した場合。

(4) 仮処分を受けた後,現状不変更を条件に使用を許した建物において,債務者が留守番を置き,そこに寝とまりさせた場合。

(5) 山林に,執行官保管,現状変更禁止の標示札があるのに,勝手に立木を伐採した場合。

[51−58] 次の記述のうち甲についてカッコ内の犯罪が成立しないものはどれか。

(1) 甲は乙が食べていた弁当箱を取り上げて中味を床にばらまいた。(器物毀棄)

(2) 強姦犯人甲は警察署で取調べを受けているさい,被害者乙が提出した告訴状を破り捨てた。(公用文書毀棄)

(3) 甲は差押を受けている自己のタンスを裏から壊してセーターを取り出した。(器物毀棄)

(4) 甲は自分で設置した甲の土地と隣地である乙の土地との境界用の柵を引き抜き境界を不明にした。(境界毀損)

(5) 甲は乙に差し入れていた自己名義の借用証書を破り捨てた。(私用文書毀棄)

[51−61] 甲は丙を毒殺しようとして致死量の半分の毒物を丙に投与した。二時間後乙が甲の計画とは全く別に丙を毒殺しようとして同じく致死量の半分の毒物を丙に投与した。その結果丙は毒物が致死量に達したため死亡した。甲・乙の行為と丙の死亡との間の因果関係に関する次の記述のうち誤っているものはどれか。

(1) 甲が乙も丙に対して毒物を投与することを知っていたとしても一般人が予見しえなかったのであれば,折衷的相当因果関係説からは甲の行為と丙の死との間の因果関係は否定される。

(2) 甲は乙が丙に対して毒物を投与することを知っていたが一般人は予見し得なかった場合,主観的相当因果関係説からは甲の行為と丙の死との間の因果関係は肯定される。

(3) 甲は乙が丙に対して毒物を投与することを知らずかつ一般人も行為当時予見しえなかったとしても,条件説からは甲の行為と丙の死との因果関係は肯定される。

(4) 甲は乙が丙に対して毒物を投与することを知らずかつ一般人も行為当時予見しえなかったとしても,客観的相当因果関係説からは甲の行為と丙の死との因果関係は肯定される。

(5) 甲が行為当時乙が丙に対して毒物を投与することを知らなくても一般人が予見しえたならば,折衷的相当因果関係説からは甲の行為と丙の死との間の因果関係は肯定される。

[51−64] 次の組合せのうち誤っているものはどれか。

(1) 一般予防主義−−−−フォイエルバッハ

(2) 自由意思否定論−−−フェリー

(3) 構成要件理論−−−−M・E・マイヤー

(4) 応報刑論−−−−−−カント

(5) 死刑廃止論−−−−−ロンブローゾ

[51−67] 甲の罪責に関する次の記述のうち正しいものはどれか。

(1) 甲は自殺しようと思い家族の旅甲中自宅に放火したが消防隊の活躍により半焼するにとどまった。甲は非現住建造物放火既遂罪である。

(2) 甲は乙の住居に放火する目的で隣接する乙の物置に火をつけたが,折からの豪雨で物置を半焼しただけにとどまった。甲は非現住建造物放火既遂罪である。

(3) 甲は人通りの多い繁華街の路上に駐車してあった乙所有の自動車に放火して全焼させた。甲には器物毀棄罪のみが成立し放火罪は成立しない。

(4) 甲は乙所有の家屋を焼燬するつもりで畳に火をつけたが,家人に発見されて畳を焼いただけで火は消し止められた。甲は現住建造物放火既遂罪である。

(5) 甲は妻と二人で居住している自己所有の家屋に放火して保険金を詐取することを企て,二人で共謀して全焼せしめた。甲は非現住建造物放火既遂罪である。

[51−69] 次のうち正しいものはどれか。

(1) 甲は乙を殺すつもりで道端で待ち伏せしていたところ,通りかかった丙を乙と誤信してピストルを発射し即死させた。この場合具体的符合説と法定的符合説では結論は異なることになる。

(2) 甲は乙を殺すつもりで道端で待ち伏せしていたところ,乙と丙が連れだってやってきたので乙に向けて至近距離からピストルを発射したが,弾は甲の予測に反して丙に当たり,同人を即死させた。この場合法定的符合説と抽象的符合説では結論は異ならない。

(3) 甲は乙を殺すつもりで道端で待伏せていたところ,乙が通りかかったので乙に向けてピストルを発射したが,弾は乙の腹を貫通して,後方を歩いていた丙にも当たり,乙丙両名とも即死させた。この場合具体的符合説では乙に対する殺人罪と丙に対する殺人罪が成立する。

(4) 甲は乙を殺すつもりで乙に向けてピストルを発射したが,弾は乙に当らず近くにいた他人の飼犬に当たり,その犬を即死させた。この場合抽象的符合説では器物毀棄罪だけが成立する。

(5) 甲は乙の家の窓ガラスを壊すつもりで石を投げたが,石はその窓ガラスまで届かず,ちょうど下にいた丙に当たって丙を負傷させた。この場合法定的符合説と具体的符合説では結論は異なることになる。

[51−71] 刑法38条3項は「法律ヲ知ラサルヲ以テ罪ヲ犯ス意ナシト為スコトヲ得ス但情状ニ困リ其刑ヲ減軽スルコトヲ得」と規定しているが,この意味につき次のうち誤りはどれか。

(1) 故意の成立には違法性の意識は不要であるとする説では,本文の「法律」とは違法性の意味であって違法性の錯誤は故意を阻却しないことを明らかにした当然の規定であり,但書は宥恕すべき事由のあるときに刑を減軽することができることを規定したものであるとする。

(2) 自然犯・法定犯を区別し,故意の成立には,自然犯については違法性の意識が不要だが法定犯については必要であるとする説では,本文は自然犯について違法性の意識を欠いても故意は阻却されないことを規定したもので,但書は情状により刑を減軽する場合があることを規定したものであるとする。

(3) 故意の成立には違法性の意識が必要であるとする説では,本文の「法律」とは刑罰法規の意味であって,刑罰法規を知らなくとも違法性の意識があれば故意は阻却されないことを規定したもので,但書は,刑罰法規を知らないために違法性の判断が困難な場合について規定したものであるとする。

(4) 故意の成立には違法性の意識の可能性があれば足りるとする説では,本文の「法律」とは違法性の意味であって違法性の意識がなくともその可能性があれば故意は阻却されないことを明らかにしたもので,但書は違法性の意識の可能性はあってもそれが困難な場合について規定したものであるとする。

(5) 違法性の意識を故意とは区別された別個の責任要素であるとする説では,本文はあてはめの錯誤(禁止の錯誤)が故意の成立とは無関係であることを明らかにしたもので,但書は違法性の意識を欠く場合はそれがあるときよりも責任が軽いから刑を減軽しうることを規定したものであるとする。

[51−73] 次の記述のうち緊急避難の成立するものはどれか。

(1) かご抜け詐欺を犯して姿をくらましていた男が,数日後デパートで被害者と出会い,大声で難詰され「一緒に警察に行こう」と迫られたので,この場を免れようと思い,取り囲んでなりゆきを見ていた買物客の一人を突き倒して逃げ,これを負傷させた場合。

(2) ある会社の民事事件を受任したことにより,同会社がひそかに町の金融業者から高利の借入れをして営業を継続しており,遠からず倒産するおそれのあることを知った弁護士が,たまたま同会社社長の息子との間に縁談が起こっていた親友の娘の将来を慮って,同会社が秘密にしている経営状態を親友に知らせた場合。

(3) 恐喝事件の被害者が同事件の証人として出廷したが,傍聴席に多数の暴力団員がいるのを見て,被告人に有利な証言をしなければあとで危害を加えられると思い,畏怖のあまり虚偽の陳述をした場合。

(4) 隣家で飼っている価格数十万円の猟犬が,飼主の留守中に鎖を切って自分の庭に入り込み,食肉用鶏を追い回しているのを見て追い払おうとしたが,容易に立ち去らないため,猟銃で射殺した場合。

(5) 自動車を運転中,追越禁止の場所で先行車を追い越そうとしたため対向車と衝突しそうになり,これを避けようとして先行車の方にハンドルを切ったところ,先行車と衝突して運転者を負傷させた場合。

[51−76] 甲は所轄A税務署所得税課係員乙に対し,所得の調査について好意ある取扱いを受けたい旨依頼し,その謝礼として現金10万円を贈ることを申し出た。乙はいったんこれを承諾したが,発覚した場合のことが心配になり,数日後甲に「あのことはなかったことにしてくれ」と頼み,甲の了承を得た。その後一カ月ほどして乙がB税務署所得税課に転勤したので,甲は乙宅を訪れ,乙の妻に対し「所得税のことでお世話になりました」と言って現金5万円を渡し,乙の妻もその趣旨を了解してこれを受けとり費消したが,乙は旅行中でそのことを知らなかった。甲乙の罪責に関する次の記述のうち正しいものはどれか。

(1)甲は賄賂約束罪・賄賂供与罪,乙は賄賂約束(請託収賄)罪・賄賂収受(単純収賄)罪

(2) 甲は賄賂約束罪・賄賂申込罪,乙は賄賂約束(請託収賄)罪

(3) 甲は賄賂供与罪,乙は賄賂収受(請託収賄)罪

(4) 甲は賄賂申込罪,乙は賄賂約束(請託収賄)罪

(5) 甲は賄賂約束罪,乙は賄賂約束(請託収賄)罪

[51−78] 次のうち正しいものはどれか。

(1) 暴力団員甲は,かねてから対立していた暴力団員乙に果し状を送って決闘を申し込み,それに応じて短刀を持ってやってきた乙をピストルで射殺した。甲には承諾殺人罪が成立する。

(2) 甲男と乙女は心中しようと相談し,いっしょに睡眠薬を飲んだが,二人とも助かった。共謀共同正犯を認める説によれば甲乙は自殺幇助罪の共謀共同正犯である。

(3) 甲は,同棲中の愛人乙女が回復の見込みのない病気にかかったので煩しくなり,殺そうと思っていた。ところが,乙女に死にたいから毒薬をくれと頼まれたので,これ幸いと毒薬を乙女に渡し,乙女はこれを飲んで死亡した。甲には殺人罪が成立する。

(4) 甲は乙に自殺をするようにすすめたところ,乙はその気になり自分の腹に日本刀を突き立てた。ところが,乙は突然「死ぬなら甲を殺してから死ぬ」と叫んで日本刀で甲に切りかかってきたので,甲はやむなくそばにあったあいくちで防戦し,乙に傷を負わせて死にいたらしめた。甲は自殺教唆の未遂罪になる。

(5) 交通事故を起して自動車で逃走中の甲は,前方の横断歩道を横断中の乙を発見し,このまま進めば乙をひくことになるかもしれないがそれでもかまわないと思い,スピードをゆるめず進んだところ,案の定乙をひいて死亡させた。ところが乙はとびおり自殺をしようと近くのビルに向かう途中であった。甲には承諾殺人罪が成立する。

[51−82] 甲において( )内の罪が成立するものはどれか。

(1) ホテルのボーイ甲は,泊り客乙が出発する際,乙からトランクを玄関まで運ぶようにいわれて預かったが,玄関へ何かう途中,トランクを持ち逃げした。(業務上横領罪)

(2) 甲は乙所有の未登記の建物を自己の建物と偽り,勝手に自己名義に保存登記じをした上,一カ月後にこれを丙に売却し移転登記した。(横領罪)

(3) 甲は宝石商乙方において,代金支払いの意思がないのに,「指輪を見せてくれ」といって乙から指輪を受けとり,「外にいる恋人に見せてくる」といって承認を得て外に出てそのまま逃げた。(詐欺罪)

(4) 甲は国鉄の出札口で乗車券を買った。乙が窓口に出された釣り銭を受けとるのを忘れて立ち去ったのを見てその直後に釣り銭を取って逃げた。(占有離脱物横領罪)

(5) 甲は山中で数日前に行き倒れて死亡した乙を見つけ,背広のボケットから財布をとった。(窃盗罪)

[51−85] 下記の申立をして不動産登記簿にその旨の記載をされた場合,公正証書不実記載罪の成立しないものはどれか。

(1) 売買によって不動産の所有権が買主に移転したにもかかわらず,未だ自己に登記があるのを奇貨として売主が自己の債務の担保として抵当権を設定しその旨申し立てたとき。

(2) 他人を欺くため当事者双方が合意して仮装の債権債務に基づき虚偽の抵当権設定の登記を申し立てたとき。

(3) 所有権移転の不動産登記について,その原因が贈与によるのに売買による所有権の移転であると申し立てたとき。

(4) たまたま他人の印鑑を保管しているのを奇貨として,それを使用し,その承諾がないのに必要な書類を作成した上で,自己に所有権の移転を受けた旨申し立てたとき。

(5) 他人所有の未登記不動産を自己所有の建物である旨申し立てとき。

[51−87] 刑の適用について,次のうち誤っているのはどれか。

(1) 一個の行為で数個の罪名にふれるときには,その最も重い刑で処罰する。

(2) 併合罪の場合その一罪につき死刑に処せられるときは,他の刑を併科しない。ただし没収はこの限りでない。

(3) 犯罪の手段もしくは結果となる行為で,他の罪名に触れるときには牽連犯として,その最も重い刑の長期に半数を加えたものを長期として処断する。

(4) 二個以上の罰金は各罪について定めた罰金の合算額以下で処断する。

(5) 懲役に処せられた者,その執行を終わり又は執行の免除のあった日から5年以内に更に罪を犯し,有期懲役に処すべきときは,その長期の二倍以下とする。

[51−89] 過失犯の注意義務について誤りはどれか。

(1) 母親が添い寝をしながら授乳している場合には,眠り込む前に乳房を乳児の口から離すように注意すべき義務がある。

(2) 幼児のいる家庭で殺虫剤を使用する場合には,親はこれを飲食容器に入れないように注意すべき義務がある。

(3) 意識喪失によってもうろう状態となるてんかん症状を有することを知っている者は,道路上で自動車を運転しないように注意すべき義務がある。

(4) 雨でぬれた歩車道の区別のない道路上を運転する者は,乾いた道路の場合よりも歩行者との間に間隔をおいて走行するように,注意すべき義務がある。

(5) 警官が犯人を連行する途中で銃の安全装置をはずすときは,銃口を上空又は下万に向けるように注意すべき義務がある。

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