[54−03] 次のうち,公務執行妨害罪の成立しないものはどれか。

(1) 日頃の恨みを晴らそうと思い,街頭で交通整理中の警察官に投石して,その交通整理を不可能にした。

(2) 警察官に逮捕されそうになった窃盗犯人が,自分の首にナイフをあてて「近づくと自殺するぞ」と叫び,警察官がひるんだすきに逃走した。

(3) 旅館の二階で賭博行為をしている者を逮捕しようとして階段にさしかかった警察官を発見し,ピストルをかまえ「近よると撃つぞ」と言った。

(4) 窃盗犯人を逮捕しようとした警察官に対し,こぶし大の石を投げつけたが,頭をかすめただけであった。

[54−06] 刑法65条2項が適用されるのは次のうちどれか。

(1) 甲は友人乙を教唆して,交通事故を起した乙の妻の代りに,乙を身代り犯人として警察に出頭させた。

(2) 甲は乙を教唆して,乙がその父から預かり保管している株券を勝手に他に売却させた。

(3) 甲は警察官乙を教唆して,職権を濫用させ無実の者を逮捕させた。

(4) 甲は自分の刑事被告事件の証人である乙を教唆して偽証させた。

[54−09] 騒擾罪に関する次の記述のうち正しいものはどれか。

(1) 騒擾罪が成立するためには,一地方の平穏が現実に害されたことを要する。

(2) 騒擾罪の首魁とは,騒擾行為の主導者であるから,必ずしもみずから暴行・脅迫を行う必要はないが,現場において暴行・脅迫を指揮・統率したことを要する。

(3) 騒擾罪の他人を指揮した者とは,騒擾行為に際し多衆の一部または全部に対して指揮する者をいうから,現場において行動の具体的方法を指揮することを要する。

(4) 騒擾罪の率先助勢者とは,多衆に抜きんでて騒擾行為の勢を増大する者をいい,みずから暴行・脅迫をすることは要しない。

(5) 騒擾罪の附和随行者とは,必ずしも多衆が暴行・脅迫を行なうことを認識していることは要さず,またみずから暴行・脅迫をなすことも要しない。

[54−12] 次の記述のうち正しいものはどれか。

(1) 家族とともに居住している住宅内で留守番をしていた受験生が,石油ストーブの点火をはやめようとして,そのしんにガソリンをかけ火をつけたところ,突然火柱が立って畳やふすまに燃え移ったので火勢に驚いて飛び出したため,家屋が全焼した場合には,失火罪ではなく現住建造物放火罪が成立する。

(2) 何らの権限もないのに他人の土地を建材置場として使用していた建設業者が,土地所有者から「すぐ明渡せ」と要求されながら,その要求に応じなかった場合には,その時に,不動産の横領罪ではなく不動産侵奪罪が成立する。

(3) 登山者が,列車の線路付近の山道を歩いていた際,過失によって重さ約10キログラムの岩石を線路上に落下させたため,岩石を取り除こうとしていったんは線路のそばまで行ったが,列車が脱線すればおもしろいと思い,そのまま立ち去ったために列車が脱線した場合には,過失往来危険罪ではなく住来危険罪が成立する。

(4) 深夜人気のない国道を自動車で疾走していた者が,過失によって歩行者をはねたので,下車して同人を抱きあげたところ,重傷ではあったが,直ちに病防に運べば生命が助かる状況にあったので,いったんは車に乗せしばらく走行したが,事故の発覚をおそれ,あえて車外に出し路上に放置して逃走したため,歩行者が出血多量のため死亡した場合には,殺人罪ではなく業務上過失致死罪が成立する。

[54−15] 次の記述のうち横領罪の成立しないものはどれか。

(1) 甲は質屋を経営している友人乙方に自分のステレオを入質しようと乙方を訪れ,乙から3万円を貸してもらったが,乙から「倉庫を整理しているので明日,持って来てもらいたい。」と言われたのを奇貨として,そのステレオを別の質屋に入質した。

(2) 甲は自己所有の不動産を乙に売却し引渡を終えたがまだ所有権移転登記をしていなかったので,甲は更に丙に高価に売却しその旨の登記をした。

(3) 甲はアパートの1階に間借りしていたが,豪雨のためアパートが浸水した際,自分の所有物だけでなく,帰省中の隣室の友人乙の荷物も二階に運びあげた。その後甲は乙の所有物のうちからカメラをとり出して入質し,金銭を生活費にあてた。

(4) 甲は雇主乙の使いで丙方に商品を届け,代金として10万円受け取ったが,乙には「丙は5万円しか払わなかった。」とうそをいい5万円を自分の借金の支払いにあてた。

(5) 甲は農耕具を友人乙に譲渡担保として提供し金を借りた。約定には,所有権は乙に移転し,甲は使用料を支払って借り受けるとあったが,それに反し,甲は乙に無断で農耕具を丙に売却した。

[54−18] 毎夜,甲所有の倉庫に泥棒が入って保管中のウイスキーが盗まれるので,甲が見張りをしていたところ,乙が窓ガラスを開けて,倉庫の中へ入り,ウイスキーの入った箱をかつぎ上げたが,見張りをしていた甲に気がついてウイスキー入りの箱をその場に置いて逃げ出した。甲は追跡して50メートル先の道路上で乙を逮捕した。甲の行為は次のうちどれにあたるか。

(1) 正当防衛行為

(2) 過剰防衛行為

(3) 緊急避難行為

(4) 自救行為

(5) 法令による行為

[54−21] 甲は乙所有の金塊を盗むため,乙の長男で16歳になる知能の遅れた丙に盗みをそそのかし,丙が盗んできた金塊を受け取った。共犯従属性説の立場に従うと,甲の刑事責任について正しいものはどれか。

(1) 丙が責任無能力者であるとすれば,いかなる従属性説をとっても,甲は窃盗の間接正犯となる。

(2) 丙が責任能力者てあるとすれば,極端従属性説をとっても,甲は窃盗の間接正犯となることはない。

(3) 丙が責任無能力者であるとすれば,制限従属性説をとると,甲は窃盗の間接正犯となる。

(4) 丙が限定責任能力者であるとすれば,誇張従属性説をとると,甲は窃盗の教唆犯となる。

[54−24] 殺人犯人甲は,警察官に追い詰められ,窮余,人質をとって逃走用の車と資金を手に入れようと思い,とっさに近くにいた10歳の子供を人質にして公衆便所に立てこもった。そして心配してかけつけた甲の雇主と警察官に対し「逃走用の車と現金50万円を渡せ」と要求した。甲の罪責はつぎのうちどれか。

(1) 身代金目的拐取罪・監禁罪

(2) 身代金目的拐取罪・監禁罪・恐喝未遂罪

(3) 未成年者拐取罪・監禁罪・恐喝未遂罪

(4) 営利目的拐取罪・監禁罪・恐喝未遂罪

[54−27] 次の記述のうち,誤りはどれか。

(1) 私文書の偽造とは,作成権限を有しない者が他人名義の文書又は図画を作成することであるから,権限なしに他人名義の文書を作成した以上,その文書の内容が真実であるか虚偽であるにかかわらず私文書偽造罪が成立する。

(2) 他人に刑事処分を受けさせる目的で,行為者が申告の内容を虚偽の事実であると信じて捜査機関に申告した場合,たまたまその事実が客観的真実に合致していても,誣告罪が成立する。

(3) 宣誓した証人が,自己の記憶に従って証言した以上,たとえその内容が客観的事実に反していても,偽証罪は成立しない。

(4) 死者の生前の行為についてのうわさをうかつにも真実と付じこみ,それを公然といいふらした場合,その事実が真実に反していても,名誉毀損罪は成立しない。

[54−30] 甲の行為に関する次の記述のうち,犯罪が成立しないものはどれか。

(1) 甲は,乙を誘拐して,乙の父から,みのしろ金を取る目的で,レンタカーを借り,乙の通学路を調査した。

(2) 母は,乙から「通貨を偽造するための器械,原料を購入するために資金を貸してほしい」と頼まれ,100万円を貸与した。乙はこれによって器械類を購入した。

(3) 甲は,乙宅に強盗に入るため金物屋で包丁を購入した。

(4) 甲は,警察署長乙に弟の起した交通事故の捜査に手心を加えてもらうのを頼むために10万円を用意して乙宅に赴いた。

(5) 甲は乙を殺害するために毒薬を購入した。

[54−33] 謀県庁人事課長甲は,建設業者乙から甲の同僚である同県土木課長丙を紹介してくれるように依頼された。折から県では,県道新設工事のため建設業者の入札を行う予定であり,甲は乙が入札の責任者である丙に接触をはかろうとしているのを知りながら乙を丙に紹介した。その後,甲は乙からその謝礼として100万円を受けとった。甲の罪責は次のうちどれか。

(1) 単純収賄罪

(2) 枉法(加重)収賄罪

(3) 斡旋収賄罪

(4) 事後収賄罪

(5) 犯罪不成立

[54−36] 甲と乙は共謀して,丙を脅迫して一室に閉じ込めた。甲の外出中,乙は丙を見張っていたが,乙は丙の言に腹をたて,丙を欧打し傷害を負わせた。甲・乙の罪責として正しいものはどれか。

(1) 甲は監禁罪,乙は監禁罪,傷害罪

(2) 甲は監禁罪,乙は監禁致傷罪

(3) 甲乙とも脅迫罪,監禁致傷罪

(4) 甲乙とも監禁罪,傷害罪

(5) 甲は監禁致傷罪,乙は監禁罪,傷害罪

[54−39] 山案内人甲は登山者乙を殺すつもりで,山中で乙のすきをねらい,がけから乙を突き落したところ,乙はがけ下に転落して骨折をし動けなくなった上,山中に出没する熊に襲われて死亡した。甲の罪責に関する次の記述のうち誤りはどれか。

(1) その山中に能がしばしば出没することを甲が認識しえた場合,主観的相当因果関係説によれば,甲は殺人既遂罪となる。

(2) その山中に熊がしばしば出没することを通常人が認識しえなかった場合でも,客観的相当因果関係説によれば甲は殺人既遂罪となる。

(3) その山中に熊がしばしば出没することを甲は認識しえたが,通常人は認識しえなかった場合,折衷的相当因果関係説によれば,甲は殺人既遂罪となる。

(4) その山中に熊がしばしば出没することを甲は認識していたが,通常人は認識しえなかった場合,主観的相当因果関係説と折衷的相当因果関係説では結論は異ならない。

[54−42] 甲の行為につき( )内の犯罪が成立しないものはどれか。

(1) 甲は,同居している実姉乙が不治の病で寝たきりであり,他に看病する者がいないにもかかわらず,乙の承諾を得て,乙一人を置いたまま旅に出た。(保護責任者遺棄罪)

(2) 甲は,サラ金の借金の返済に窮し,自分の子乙(3歳)を道づれに心中しようと思い,乙に「いっしょに天国に行こう」と言って,その承諾を得て,乙に青酸カリ入りのジュースを飲ませ死亡させた。(殺人罪)

(3) 甲は,強盗の目的で,乙宅の玄関口で「今晩は」と言ったところ,乙が来客だと思い「どうぞおはいり下さい」と言ってカギをあけたすきに乙宅に入りこんだ。(住居侵入罪)

(4) 暴力団の親分甲は,不始末をした子分乙が「指をつめてほしい」と申し出たので,乙の小指を第一関節から切り落した。(傷害罪)

(5) 甲は,留守中の隣の乙の家の窓のすきまから煙が出ているのを見つけて,窓を壊して中に入り,火を消しとめた。(器物損壊罪)

[54−45] 次の物のうち,没収しえないものはどれか。

(1) 収賄犯人が賄賂として供与の申込を受けた宅地

(2) 贈物運搬犯人が運搬の謝礼として得た現金

(3) 窃盗犯人が窃取した有価証券を隠匿しておいたアタッシュ・ケース

(4) 賭博犯人が賭博によって得た現金で買った腕時計

(5) 傷害犯人が人をけるためにはいていたスパイクシューズ

[54−48] 甲と乙は丙女を強姦しようと企て,丙女の帰途を待ちぶせておそいかかり,乙が丙女を組み伏せた。丙女は必死に抵抗し逃げ出したが,転倒して加療二週間程度の負傷をし,その際ハンドバッグを落としてしまった。しかし甲と乙が追いかけてきたので,ハンドバッグはあとから取りに来ればよいと思ってすぐそばの家に飛び込んで難を免れた。甲は強姦できなかった腹いせもあり,そのハンドバッグをガールフレンドにやろうと考えて,乙には内緒で拾いあげて持ち帰った。甲,乙の行為は次のうちどれにあたるか。

(1) 甲:強姦未遂罪,窃盗罪      乙:強姦未遂罪

(2) 甲:強姦未遂罪,占有離脱物横領罪 乙:強姦致傷罪

(3) 甲乙とも強姦致傷罪,窃盗罪

(4) 甲:強姦致傷罪,占有離脱物横領罪 乙:強姦致傷罪

(5) 甲:強姦致傷罪,窃盗罪      乙:強姦致傷罪

[54−51] 甲と乙は,Aを殺すことを共謀し,共に実行に着手したが,甲は途中でAが哀れに思い自ら犯行をとりやめたばかりか乙にも犯行をやめるように説得した。乙は甲がいないと自分だけでAを殺すのは困難だと考え,後日,別の者と一緒にAを殺害することにし,甲の説得に従って犯行を中止した。一ケ月後,乙は丙と共謀してAを殺害した。甲に関する刑事責任として正しいのはどれか。

(1) 甲は犯行を中止したが,乙の犯行を中止させることができなかったから中止犯となることはない。

(2) 共謀共同正犯を認める立場からも,甲と乙との共謀関係が消滅したとみるべきであるから,甲は殺人既遂の責任を負うことはない。

(3) 乙,丙共謀によるAの殺害について甲は少くとも教唆犯か幇助犯の責任を免れることはできない。

(4) 共謀共同正犯を認める立場では,甲と乙,乙と丙の順次共謀が成立していることは否定できないから,甲は共謀共同正犯としての責任を免れることはできない。

[54−54] 次の記述のうち,横領罪の成立するものはどれか。

(1) 友人から一時的に留守番を頼まれた者がその友人宅から金品を持ち出した。

(2) 5人で共同で鯉を養殖していたか,1人が他の者に無断でほとんど全部の鯉を捕獲して売却してしまった。

(3) 株式会社の代表取締役が,自己の借金返済の目的で,会社を振出人とする手形を振出し,自己の債務の弁済にあてた。

(4) 牛乳屋の店員が自分の受け持つ配達先から集金した牛乳代金1万円について,主人には「7千円だけ集金してきました。」とうそを言って,残り3千円を自己のものとした。

(5) 八百屋の店員が,店頭で客から受け取った代金を設けつけの箱に入れず自分のズボンのポケットに入れた。

[54−57] 刑罰法規の適用に関する次の記述のうち誤りはどれか。

(1) 日本国内にある港に停泊中の外国商船内で外国人乗務員が日本人女性を強姦した場合,わが国の刑法が適用されるのは属地主義によるものであって,保護主義によるものではない。

(2) 日本国外を飛行中の日本の航空機内で,外国人乗客が日本人乗務員を殺害した場合,わが国の刑法が適用されるのは保護主義によるものであって属地主義によるものではない。

(3) 日本国外において日本人が日本人観光客から金品を強取した場合に,わが国の刑法が適用されるのは属人主義によるものであって,保護主義によるものではない。

(4) 外国人が日本人である被拐取者を日本から外国に移送した場合に,わが国の刑法が適用されるのは,属地主義によるものであって保護主義によるものではない。

[54−60] 次のうち,毀棄罪が成立しないのはどれか。

(1) 市役所より送られてきた自己宛の住民税納付督促状を破り捨てる行為。

(2) 市役所に届出てある婚姻届を破棄する行為。

(3) 債権者に差し入れてあった自己名義の借用証書を債権者の面前で破り捨てる行為。

(4) 他人が飼育している小鳥を逃がす行為。

(5) 人に貸してある自己所有の家屋を勝手に壊す行為。

[54−63] 甲の罪責に関する次の記述のうち誤っているものはどれか。

(1) 甲,乙が飼犬と散歩しているのを見て,その犬を殺そうと考え,ピストルを発射したところ弾丸がそれて乙に当り乙が死んだ。法定的符合説の立場をとると甲に過失があれば過失致死罪の責任を負う。

(2) 甲は,乙が飼犬と散歩しているのをみて,乙に向けて後から石を投げたところ石がそれて犬に当り犬が死んだ。抽象的符合説の立場をとると器物損壊罪の責任を負う。

(3) 甲は,乙が散歩しているのをみて乙を殺害しようと考えピストルを発射したところ,弾丸がそれて,そばを歩いていた丙に当り丙が死んだ。法定的符合説によるのと抽象的符合説によるのとで結論は異ならない。

(4) 甲は,乙を殺そうと思ってピストルを発射したところ,乙だと思っていたのは丙であり,弾丸が丙に当って丙が死亡した。法定的符合説によるのと,具体的符合説によるのとで結論が異なる。

[54−66] 正当防衛と緊急避難に関する次の記述のうち誤っているものはどれか。

(1) 正当防衛は「急迫不正ノ侵害」について許されるのに対し,緊急避難は「現在の危難」を避けるため認められ「急迫不正ノ侵害」について許されないのは,前者が「正対不正」の関係であるのに対し,後者は「正対正」の関係であるからである。

(2) 緊急避難の「已ムコトヲ得サルニ出テタル行為」が厳格に補充性の原則を要求するものとされ,正当防衛の「已ムコトヲ得サルニ出テタル行為」においてはそれが要求されないのは,前者が「正対正」の関係であるのに対し,後者は「正対不止」の関係であるからである。

(3) 緊急避難が「其避ケントンタル害ノ程度ヲ超エサル場合」に限り,正当防衛がその場合に限らないのは,前者が「正対正」の関係であるのに対し,後者は「正対不正」の関係であるからである。

(4) 緊急避難の場合には民事上の損害賠償の問題が生じるのに対し,正当防衛の場合にはそれが生じないのは,前者が「正対正」の関係であるのに対し,後者は「正対不正」の関係であるからである。

[54−69] 甲は乙経営の洋品店の店番をしていた乙の息子丙(16歳)に対し,「そのジャンパーを見せてくれ」と言ったところ丙はジャンパーを陳列ケースから出してきたので,その場で試着し「ちょっと便所に行ってくる。」とうそをいって裏口から逃走した。次の記述のうち正しいものはどれか。

(1) はじめから,だますつもりだったのなら欺罔行為によってジャンパーを交付させたのだから,詐欺罪が成立する。

(2) 甲が丙をだましたとしても,丙の意思に反して占有を奪ったのであるから,窃盗罪が成立する。

(3) 甲は一時的にせよ占有していた他人の物を持ち逃げしたのであるから横領罪が成立する。

(4) 甲が未成年者である丙にうそをつきジャンパーを取得したのであるから,いかなる場合にも準詐欺罪が成立する。

[54−72] 責任能力に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。

(1) 責任能力を,社会防衛の目的を達する為に刑罰を科し得る能力,すなわち受刑能力と解する立場をとると,責任能力は行為時はもとより刑の執行時にも存在することが必要となる。

(2) 責任能力を,行為者に対する道義的非難の前提としての犯罪能力と解する立場をとると,責任能力は刑の執行時はもとより犯行時にも存在することが必要となる。

(3) 責任能力とは,行為の是非を弁別し,かつこの弁別に従って自己の行動を制御する能力であって,後者のみ欠く場合には,限定責任能力者となる。

(4) 結果犯について,責任能力は結果発生時には必要でない。

[54−75] 甲・乙は強盗することを共謀し,おもちゃのピストルとなわを用意して丙宅に侵入した。甲がピストルで丙をおどしている間に乙が丙を縛りあげた。その後,甲が丙を見張り,乙が金品を物色していたが,丙が大声をあげて助けを求めたので甲はピストルで丙の頭を殴り,2週間の治療を要する傷を負わせた。結局甲・乙は何もとらずに逃走した。住居侵入の点は除いて,甲・乙の罪責は,次のうちどれか。

(1) 甲は強盗予備罪・傷害罪,乙は強盗予備罪

(2) 甲・乙とも強盗未遂罪,傷害罪

(3) 甲・乙とも強盗致傷罪

(4) 坪は強盗致傷罪,乙は強盗未遂罪

(5) 甲は強盗未遂罪,傷害罪,乙は強盗未遂罪

[54−78] 次の行為のうち,不可罰的事後行為を含んでいるものはどれか。

(1) 殺人事件の被疑者として勾留中の友人が逃げ出してきたのを,これを知りながら自宅にかくまい,その後旅費を与えて逃走させた。

(2) 公務員が,その職務に関し賄賂を要求し,その後これを収受した。

(3) 友人の参考書を盗んでこれを使用していたが,友人から返還を請求されたので,証拠湮滅のため,その参考書を焼却した。

(4) 収税官史に差押えを受けている家財道具の封印をはがし,さらにその家財道具を他人に売却した。

[54−81] 甲は乙の居宅に延焼させるつもりで,隣接する乙の物置に火をつけたが物置だけが全焼したにすぎず,乙宅には燃え移らなかった。甲の行為は次のどれに当るか。

(1) 非現住建造物放火既遂罪

(2) 建造物以外放火既遂罪

(3) 延焼罪

(4) 現住建造物放火既遂罪

(5) 現住建造物放火未遂罪

[54−84] 甲は乙から人前で「ろくでなし」とののしられたことを根に持ち,乙に対し日本刀を突きつけて「この野郎,あやまらなければ殺してやるぞ。」と脅して,乙に「先日の暴言を深くおわびします」旨の謝罪文一通を作成させ,これを交付させた。日本刀の不法所持の点を除いて甲の行為は,次のうちのどれに当るか。

(1) 暴行罪

(2) 脅迫罪

(3) 強要罪

(4) 恐喝罪

(5) 強盗罪

[54−87] 甲は他人所有のダイヤモンドの指輪を盗み出し,乙に電話で事情をうち明け「丙に指輪を持たせてやるから50万円で買ってくれ」と依頼して承諾させ,事情を知らない丙に「これを乙に渡せば50万円くれるから受け取ってきてくれ」と頼んだ。丙はその指輪を持って乙宅に行く途中で盗品であることに気付いたが,そのまま乙に届けて,50万円を受け取りそれを甲に渡した。甲は謝礼として50万円の中から2万円を丙に交付した。丙の罪責のうち正しいものはどれか。

(1) 賍物牙保罪

(2) 賍物運搬罪

(3) 賍物運搬罪・賍物牙保罪

(4) 賍物運搬罪・賍物収受罪

(5) 犯罪不成立

[54−90] 次の行為のうち窃盗罪で処罰できるものはどれか。

(1) 保管中の公金を自己の銀行預金口座に入金する行為。

(2) 無一文にもかかわらず,レストランで飲食する行為。

(3) 実父所有の現金をその家から盗み出す行為。

(4) 数日前に山中で死亡した遭難者のポケットから財布を抜き取る行為。

(5) 他人に賃貸していた自己所有の自動車を売却するために無断で持ち出す行為。

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