[57−03] 次の(A)欄の行為についてそれぞれ公務執行妨害罪(刑法第95条第1項)の成否を論じる上で,最も密接に関連する(B)欄の記述を一つずつ選ぶことにした場合,(A)欄のいずれとも結びつかないものはどれか。

(A)

ア. 執行官の指示に従って家財道具を搬出しようとした人夫を殴打する行為

イ. 警察官に現行犯人として逮捕されようとした際その手を振り離して逃走し逮捕を免れる行為

ウ. 捜索・差押をするため警察官が屋外で待機中,屋内で差押の目的物である書類を破り捨てる行為

エ. 公務員が職務のため閲読中の書類を奪い取る行為

(B)

1. 暴行は,物に対して加えられた有形力であっても,公務員の身体に物理的に感応し得るものであれば足りる。

2. 暴行は,公務員に向けられたものであることを要する。

3. 暴行は,その結果公務の執行を現実に妨害するに至ることを要しない。

4. 暴行は,積極的なものであることを要する。

5. 暴行は,直接には公務員でない者に対するものであってもよい場合がある。

[57−06] 覚せい剤取締法第41上の2第1項第3号(同法第19条違反)の罪に関する次の記述のうち,法律の錯誤(違法性の錯誤)となるものはどれか。

覚せい剤取締法第41条の2第1項 次の各号の一に該当する者は,10年以下の懲役に処する。

三  第19条(使用の禁止)の規定に違反した者

覚せい剤取締法第19条 左の各号に掲げる場合の外は,何人も,覚せい剤を使用してはならない。

一  覚せい剤製造業者が製造のため使用する場合

二  覚せい剤施用機関において診療に従事する医師又は覚せい剤研究者が施用する場合

三  覚せい剤研究者が研究のため使用する場合

四  覚せい剤施用機関において診療に従事する医師又は覚せい剤研究者から施用のため交付を受けた者が施用する場合

五  法令に基いてする行為につき使用する場合

(注)@覚せい剤取締法にいう覚せい剤には,フェニルアミノプロパン,フェニルメチルアミノプロパン及びその塩類が含まれる。

A 覚せい剤の使用とは,覚せい剤をその薬物としての用法に従って用いる一切の行為をいい,その施用とは,使用の一形態であって,自己又は他人の身体に対して直接用いることをいう。

1. 覚せい剤製造業者の指定を受けていない製造業者が,強壮剤を製造するため覚せい剤をブドウ糖と間違えて使用した。

2. 覚せい剤研究者が,麻薬取締法に処罰規定のあるヘロインを覚せい剤と間違えて研究のため使用した。

3. 覚せい剤施用機関において診療に従事する医師が,覚せい剤であるフェニルアミノプロパンをフェニルメチルアミノプロパンと間違えて患者に施用した。

4. 覚せい剤研究者が,覚せい剤を馬に注射することは,覚せい剤の使用に当たるのに,使用には当たらないと思い,馬主に頼まれるまま競馬用の馬に注射した。

5. 覚せい剤施用機関において診療に従事する医師が,覚せい剤を患者Aに施用するつもりで,誤って,用いてはならない患者Bに施用した。

[57−09] 次の記述のうち,正しいものはどれか。

1. 甲が,金品奪取の犯意で乙を鉄パイプで殴打したところ,意外にも乙が死亡してしまったため,驚いて逃げ出し,金品強奪の目的を遂げなかったときは,傷害致死罪と強盗未遂罪が成立する。

2. 甲が,金品奪取の犯意でピストルを突き付けて乙を脅迫し,乙から現金を強奪した後,乙が甲の立ち去るのを見定めて警察に通報するため走り出したところ,石につまずいて転倒し傷害を負ったときは,強盗致傷罪が成立する。

3. 甲が,乙の金品を窃取した直後,その場に居合わせた通行人丙に発見されたものと思い,逮捕を免れるため,未必の殺意をもって丙を短刀で刺したが,丙に傷害を負わせたにとどまったときは,窃盗罪と殺人未遂罪が成立する。

4. 甲が,金品奪取の犯意で,乙に睡眠薬入りジュースを飲ませ,一時的に意識障害を起こさせて昏酔状態に陥らせ,乙の金品を奪取したときは,強盗致傷罪が成立する。

5. 甲が,乙を手拳で殴打するうちに,金品奪取の犯意を生じ,更に乙を殴打して現金を強奪し,乙は傷害を負ったが,その傷害は強盗の犯意発生前の殴打行為によって生じたものであるときは,傷害罪と強盗罪が成立する。

[57−12] 過失犯に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。

1. 注意義務に違反して人を負傷させた場合は,相手方に重大な過失があったとしても,過失の責任を免れ得るものではない。

2. 相手方が法令に従って適切な行動をとることを期待し得ない者であることを認識していた場合には,信頼の原則を適用することができない。

3. わずかの注意を払えば重大な結果の発生を容易に予見しかつ,これを防止し得たとみられる場合に,行為者が怠慢でいてその予見を欠いたことが明らかであるときは,常に重大な過失があったということができる。

4. 認識のある過失は,結果の発生を認識した場合であるから,その認識を欠く場合である認識のない過失よりも,非難可能性の程度は常に重い。

5. 一般には予見し得ないような異常な事態に対しては,それについての予見能力を有する行為者がこれを予見しなかった場合でも,注意義務違反を認めることはできない。

[57−15] わいせつ及び姦淫の罪に関する次の記述の組合せのうち,AとBとが両立し得ない関係にあるものはどれか。

1. A 通行中の見知らぬ女性にいきなり抱きつき接ぷんする行為は,強制わいせつ罪にあたる。

B 恋人同士白昼人の多数いる公園内のベンチで接ぷんする行為は,公然わいせつ罪にあたらない。

2.A 強制わいせつ罪は,犯人の性欲を刺激・興奮させ,又は満足させるという性的意図の下に行われることを要する。

  B 婦女を脅迫して裸にし,その立っているところを写真撮影する行為は,多くの場合,強制わいせつ罪にあたる。

3. A わいせつの観念は,社会及び時代によって相対的・流動的である。

  B わいせつ文書であるためには,性的しゅう恥心を害すること,性欲の刺激・興奮を来すこと及び善良な性的道義観念に反することが要求される。

4. A 芸術性とわいせつ性とは別異の次元に属する概念である。

  B 作品のわいせつ性の有無は,その作品を全体としてみた上で判定されなければならない。

5. A 嫌がるならやめようという意思が当初からあっても,姦淫する意思で成人婦女の身体の上に乗りかかりそのスカートに手をかけた以上,強姦罪の着手がある。

  B 強姦罪における暴行は,姦淫のため相手の抵抗を困難ならしめる意思で,行われることを要する。

[57−18] 甲は,乙から手形割引の周旋を依頼されて同人振出,受取人白地,額面200万円の約束手形1通を受け取ったのを奇貨とし,乙の信頼を裏切って利得しようと考え,丙に対しそのまま前記手形を交付して割引名下に同人から150万円を受け取った上,乙に対しては,120万円で割引を受けた旨うそを言い,その旨誤信させて120万円だけを渡し,その差額30万円は手元に保留しておいた。

甲の罪責に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。

1. 詐欺罪と横領罪が成立する。

2. 詐欺罪と背任罪が成立する。

3. 詐欺罪のみが成立する。

4. 横領罪のみが成立する。

5. 背任罪のみが成立する。

[57−21] 刑法第104条の罪(証憑湮滅の罪)に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。

1. 無実の者を陥れる意図で,無実の証明に役立つ証憑を湮滅した場合には,本罪は成立しない。

2. 証拠能力のない証憑を他人が湮滅した場合には,本罪は成立しない。

3. 真犯人でない者が,真犯人であると警察に名のり出て,供述調書を作成させた場合には,本罪は成立しない。

4. 弁護人が,偽造の証憑であることを知りながら,その取調べを請求した場合には,本罪は成立しない。

5. 罰金以下の刑にあたる他人の刑事被告事件についての証憑を湮滅した場合には,本罪は成立しない。

[57−24] 次に掲げる両罰規定に関する後記1から5までの記述のうち,正しいものはどれか。

「法人の代表者又は法人若しくは人の代理人,使用人その他の従業者が,その法人又は人の業務に関し,○○条の違反行為をしたときは,行為者を罰するほか,その法人又は人に対しても同条の罰金刑を科する。」

1.法人の代表者が法人の業務に関し違反行為をした場合,その法人が処罰されるのは,法人の代表者の違反行為が法人の違反行為とみられることに基づくのであり,この規定に基づくのではない。

2.従業者が法人の業務に関し違反行為をした場合,その法人の代表者をこの規定により処罰することはできない。

3.従業者が人の業務に関し違反行為をした場合,自然人である業務主にも違反行為の故意があるときに限り,この規定によりその業務主を処罰することができる。

4.従業者が法人の業務に関し違反行為をした場合,行為者を罰するときは,この規定によりその法人をも罰しなければならない。

5.法人が処罰されるのは,従業者が法人の業務に関し違反行為をした場合に限られるから,法人の代表者がその従業者に違反を命じた場合でなければならない。

[57−27] 次の記述のうち,甲の行為について( )内の罪が既遂にならないものはどれか。

1. 甲は,乙に侮辱されたことに立腹し,乙に対し,「殺してやる」と怒号したが,乙は気が強かったため,全く畏怖しなかった。(脅迫罪)

2. 甲は,市議会議員乙が市議会の土木委員会で,ある土木工事に関する入札問題を取り上げようとしているのを知り,これをやめさせるため,乙に対し,「つまらんことで騒ぐなよ,妻子がどうなってもいいのか。」と申し向けたが,乙はこれを意に介さず,土木委員会で前記の入札問題を追及する質問をした。(職務強要罪)

3. 甲は,代金を支払う意思がないのに飲食店に入り,店員に酒や食事を注文して飲食した後,代金を支払わずに逃走しようとしたところ,店員らに取り押さえられた。(詐欺罪)

4. 甲は,深夜乗用車を運転中,わき見をしたため歩行者乙に自車を衝突させて重傷を負わせたので,乙を自車に乗せて病院に運ぶ途中,犯行の発覚をおそれ,意識不明の状態の乙を道路上に降ろしてその場から逃走したところ,通りかかった別の自動車の運転手が,乙を病院へ運んで治療を受けさせたため,乙は健康を回復した。(保護責任者遺棄罪)

5. 既決の囚人である甲は,刑務所の構外作業中に看守を突き飛ばして逃げ出し,作業現場から約500メートル離れた物陰に一時身を隠したが,数分後,追跡捜索していた看守に発見され逮捕された。(加重逃走罪)

[57−30] 次の文章は,刑罰法規の明確性について判示した判決からの抜すいである。後記1から5までの記述のうち,判旨に適合しないものはどれか。

「およそ刑罰法規の定める犯罪構成要件があいまい不明確なゆえに憲法第31条に違反して無効であるとされるのは,その規定が通常の判断能力を有する一般人に対して,禁止される行為とそうでない行為とを識別するための基準を示すところがなく,そのため,その適用をうける国民に対して刑罰の対象となる行為をあらかじめ告知する機能を果たさず,また,その運用がこれを適用する国又はは地方公共団体の機関の主観にゆだねられて恣意に流れる等,重大な弊害を生ずるからであろうと考えられる。しかし,一般に法規は,規定の文言の表現力に限界があるばかりでなく,その性質上多かれ少なかれ抽象性を有し,刑罰法規もその例外をなすものではないから,禁止される行為とそうでない行為との識別を可能ならしめる基準といっても,必ずしも常に絶対的なそれを要求することはできず,合理的な判断を必要とする場合があることを免れない。それゆえ刑罰法規があいまい不明確のゆえに憲法第31条に違反するものと認めるべきかどうかは,通常の判断能力を有する一般人の理解において,具体的な場合に当該行為がその適用を受けるものかどうかの判断を可能ならしめるような基準が読みとれるかどうかによってこれを決定すべきである。」

1.法規は一般に抽象的性質をもつから,解釈によらなければ,その意味が明らかにならないとしても,直ちに不明確とはいえない。

2.構成要件のいわゆる規範的要素は,その解釈が適用者の主観的判断に左右される場合もあるので,これを用いることはなるべく避けるのが望ましい。

3.立法にあたり明確性をあまり強く要求すると,いきおい法規の適用対象は限定されたものとなり,法規の目的から見て,必要な規制対象を補足することができなくなる場合もある。

4.特定の専門領域を対象とする法規においては,一般社会で日常使われていない特殊な専門用語を用いたとしても,明確性に反するとはいえない。

5.行為者がある刑罰法規に関し,自己の行為がその適用をうけるかどうかを識別し得なかった場合,当該行為者をこれによって処罰することは不当である。

[57−33] 次の文章は,名誉毀損罪における事実の証明に関する判決の要旨であるが,後記1から5までの記述のうち,判旨と矛盾するものはどれか。

「刑法第230条の2の規定は,人格権としての名誉の保護と,憲法第21条による正当な言論の保障との調和を図ったものと言うべきであり,これら両者間の調和と均衡を考慮するならば,たとえ刑法第230条の2第1項にいう,事実が真実であることの証明がない場合でも,行為者がその事実を真実であると誤信し,その誤信したことについて,確実な資料,根拠に照らし,相当の理由があるときは,犯罪の故意がなく,名誉毀損の罪は成立しないものと解するのが相当である。」

1. 刑法第230条は,摘示した事実の真否を問わず名誉毀損罪の成立を認めることにしており,第230条の2は,その例外として,事実の真実性に関する挙証責任を被告人に負わせることを条件として,真実の言論についての免責を認めたものである。

2. 摘示した事実の公共性と目的の公益性が認められる限り,その事実が証明可能な程度に真実であるときは,名誉毀損行為の違法性が阻却されるから,証明可能性についての錯誤は,事実の錯誤として故意を阻却する。

3. 真実に立脚した責任のある言論である限り,たとえ事後において真実の証明が不成功に終わったとしても,刑事責任からは解放されるものとするのが,社会にとって有益な言論を保障しようとする憲法の趣旨に合致する。

4. 摘示した事実が公共の利害に関する事実に係り,かつ,事実の摘示が専ら公益を図ることを目的とするという二つの要件が満たされる限り,事実の真実性が行為の違法性を阻却するから,行為者が事実を真実であると信じていたのであれば,故意を阻却する。

5. 真実の言論であっても,人の名誉を毀損する限り,その行為は犯罪を構成するが,真実の証明の成就という事実によって処罰を免れるとする説によると,事実の証明がなされない限り,行為者が事実の真実性について確信をもっていたとしても,処罰を免れ得ないことになり,相当ではない。

[57−36] 共犯従属性説及び法定的符合説の立場に立っとき,甲の罪責に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。

1. 甲は,乙女との緑を切るため,同女を亡き者にしようと考え,丙に対し乙女には自殺の意思がないのに,「乙女が死にたがっているから,楽に死なせてやってくれ。」と頼んだ。丙は,甲の言を信じて,乙女に青酸カリ入りコーヒーを飲ませて死亡させた。甲は,自殺幇助の教唆の範囲で責を負う。

2. 甲は,平素不仲の乙にいやがらせをするため,暴力団員丙に対し,「乙を脅してくれ。」と頼んだ。丙は,これに応じて,通行中の乙に向かって,「10万円出さなければ,痛い目にあわせるぞ。」と脅した。しかし,乙には金の持ち合わせがなかったため,丙は金を取ることができなかった。甲は脅迫の教唆の範囲で責を負う。

3. 甲は,道端に置いてある自転車をだれかが忘れて行ったものと思い,乙に対し「あの自転車を拾って来い。」と言った。乙は,その自転車を近くの草むらで昼寝をしていた丙の物であるかもしれないと思いながら,それを持ち去った。甲は,占有離脱物横領の教唆の範囲で責を負う。

4. 甲は,土建築者乙がかねて市の土木工事を請け負うため市役所土木係丙に金品を贈っても丙が受け取らないと言っているのを聞き,丙に対し,乙から金品をもらって工事予定価額を教えてやるように勧めた。丙は,その気になり,この依頼に応じて,工事予定価額を教えることを約束して乙から現金50万円を受け取ったが,工事予定価額は教えなかった。甲は受託収賄の教唆の範囲で責を負う。

5. 甲女は,離婚した夫の元でその親権に服している5歳の子供乙に会いたいと思い,丙に対し,幼稚園帰りの乙を誘拐してくれるよう頼んだ。丙は,これに応じ,通園路で乙を待ち受けていたが,乙と間違えて園児丁を略取した。丙は,人違いに気付いたので,丁の両親に身代金を要求した。甲女は,未成年者拐取の教唆の範囲で責を負う。

[57−39] 犯罪構成要件を実現する現実的危険性をもった行為を開始したときに実行の着手があるとする立場からみて次の記述のうち,正しいものはどれか。

1. 殺人の目的で,相手を呼び出した現場で,所携のピストルに弾丸を装てんすれば,それだけで殺人罪の実行の着手がある。

2. 他人の住宅を焼燬する目的で,灯油を浸した布切れを他人の住宅の床の下に押し込み,それに点火するためポケットからマッチを取り出せばそれだけで放火罪の実行の着手がある。

3. タクシー運転手が,客として乗車した女性を姦淫しようと企て,同女の土地不案内に乗じて,車を人里離れた山間部まで運転し,そこで強姦の目的で車を停止させれば,それだけで強姦罪の実行の着手がある。

4. 強盗の目的で他人の家に侵入し,就寝中の家人の枕元に置いてあった金時計をつかめばそれだけで強盗罪の実行の着手がある。

5. 未決の囚人が,逃走の目的で,監房の窓の鉄格子を身体が通る大きさまでヤスリで切り取れば,それだけで加重逃走罪の実行の着手がある。

[57−42] 次の記述のうち,誤っているものはどれか。

1. 商売敵の商品倉庫を焼燬するつもりで,たまたま商売敵がその倉庫に来ていることを知りながら,これに隣接する自己所有の空き家に放火して全焼させたが,火がその倉庫に燃え移らなかったときは,現住建造物放火未遂罪が成立する。

2. 保険金を騙取する目的で人里離れた山中にある火災保険をかけた自己所有の無人の別荘に放火してこれを焼燬したが,公共の危険を生じなかったときは,非現住建造物放火罪は成立しない。

3. 繁華街の路上に駐車していた自己所有の自動車を焼燬するつもりで放火したところ,飛び火して他人の居住する家屋を全焼させたときは,延焼罪が成立する。

4. 火災の発生を目撃した警察官から,消防署への通報を頼まれた通行人が,平素仲の悪い知人の家が燃えれば面白いと思い,あえて消防署への通報を怠ったため,消防車の出動が遅れてその家屋が全焼したとしても,鎮火妨害罪は成立しない。

5. 貸借中のアパートの台所において,プロパンガス・ボンベからガスが漏れているのに不注意で気付かないまま,その近くでマッチを擦ったため,引火してプロパンガス・ボンベが破裂して,そのアパートの板壁を損壊したときは,過失激発物破裂罪が成立する。

[57−45] 次の文章は,共犯の錯誤に関するある決定の要旨であるが,[ ]の部分に後記1から5までの語句のうちから適切なものを一個ずつ選んで入れていった場合(同一語句を繰り返して使用することができる),いずれの[ ]の中にも入らないものがある。それはどれか。

「[ ]と[ ]とは,殺意の有無という主観的な面に差異があるだけで,その余の[ ]はいずれも同一であるから,暴行を共謀した甲ら5名のうちの乙がAに対して未必の故意をもって[ ]を犯した場合には,[ ]の故意のなかった甲ら4名については,[ ]の[ ]と[ ]の[ ]の構成要件が重なり合う限度で軽い[ ]の[ ]が成立するものと解すべきである。」

1. 傷害罪

2. 傷害致死罪

3. 犯罪構成要件要素

4. 殺人罪

5. 共同正犯

[57−48] 「財物」に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。

1. 刑法上の財物は必ずしも財産罪の客体に限らず,賭博罪の賭金も財物にあたる。

2. 財物を有体物に限るとする立場によると,ガスは財物に当たるが,電気に関する刑法第245条の規定は制限的な特別規定と解されるから,水力は財物にあたらない。

3. 財産罪の保護法益を財物に対する他人の占有と解する立場によると,法律上私人による占有を禁止された物は,財物にあたらない。

4. 財産罪の客体であるためには,客観的な交換価値や経済的価値を有することを要しないから,駅の保管する使用済みの列車乗車券も財物にあたる。

5. 財物を物理的方法により管理の可能な物をいうとする立場によっても,電波は財物にあたらない。

[57−51] 次の記述のうち,誤っているものはどれか。

1. 行使の目的をもって,郵便貯金通帳の貯金預入年月日を改変する行為は,公文書の偽造であって,変造ではない。

2. 行使の目的をもって,不動産登記済証の抵当権欄の登記順位の番号を改変する行為は,公文書の変造であって,偽造ではない。

3. 行使の目的をもって,自動車運転免許証の免許の種類を普通免許から大型免許に改変する行為は,公文書の偽造であって,変造ではない。

4. 行使の目的をもって,外国人登録証明書にはってある顔写真をはぎ取り,そのあとに別人の顔写真をはりつける行為は,公文書の偽造であって,変造ではない。

5. 行使の目的をもって,日本国政府発行の旅券の有効期間経過後,その有効期間を延長するため発行年月日を改変する行為は,公文書の偽造であって,変造ではない。

[57−54] 次の文章は,不作為による放火罪の罪責を認めた判決の要旨であるが,その要件に関する1から5までの記述のうち,判旨に最も適合しないものはどれか。

「自己の過失により建物内の炭火が木机等に引火して燃焼しはじめるのを発見した甲が,そのまま放置すれば既発の火力によりその建物が焼燬するに至ることを認識しながら,自己の失策の発覚をおそれるなどのため,その結果の発生を認容する意思をもってあえて甲の義務である必要かつ容易な消火の措置を採ることなく,その場から逃げ去ったときは,不作為により建物についての放火行為をなし,よってこれを焼燬したものということができる。」

1. 結果の発生を防止すべき法律上の義務は,行為者の先行行為に基づいても認められる。

2. 行為者には,既発の火力により建物が焼燬することを認識しながら,その火力を利用するという積極的な意思が必要である。

3. 消火の措置を採らなかったという行為者の不作為は,作為によって火を放つ行為と同視することができる。

4. 行為者が,容易になし得る消火の措置を採って,結果の発生を防止することができた場合であることが必要である。

5. 行為者が,消火の措置を採ったなら,結果が発生しなかったと認められる場合であることが必要である。

[57−57] 乙に対する賍物罪の成否に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。

1. 甲が路上で拾得した新幹線乗車券を,たまたまそれを必要としていた友人にその情を明かして売却して得た金銭を,その数日後情を知って乙が贈与を受けても,賍物収受罪は成立しない。

2. 甲が他人のキャッシュカードを窃取し,これを利用して銀行の自動支払機から引き出した金銭を,情を知って乙が甲から贈与を受けても,賍物収受罪は成立しない。

3. 甲が窃取した時計を,その数日後甲から平穏・公然・善意・無過失に譲り受けた者から,更にその数日後に乙が盗品であることの情を知りながら購入しても,賍物故買罪は成立しない。

4. 日本国に駐在する某国外交官甲が窃取した指輪を,その数日後情を知って日本人乙が売買の周旋をしても,賍物牙保罪は成立しない。

5. 甲が魚市場から盗み出したまぐろ一匹の頭部と尾部を切断し,残りの胴部を,情を知って乙が料理屋まで運搬しても,賍物運搬罪は成立しない。

[57−60] 次の文中の[ ]に当てはまる語句の組合せとして,正しいものはどれか。

「原判決は,『被告人は昭和42年6月16日甲地方裁判所において窃盗により懲役1年に処せられ当時その刑の執行を終ったものである』と判示し,昭和43年3月9日ころ行った本件犯行について[ア]加重の処遇をしているのである。ところで,この前科の懲役刑は,昭和42年6月18日確定し,その後大赦も減刑も[イ]もなく,従って,[ウ]に至りその刑期の満了したものであることを推認することができるのである。もっとも被告人は,原審公判廷で昭和42年12月25日[エ]した旨供述しているけれども,[エ]自体は減刑でもなく,また[イ]でもないことは論をまたないところであり,また[エ]は,刑の執行を終ったのでないことも明らかである。しからば原審が判示前刑の[エ]の期間中に行った本件犯行について,[ア]加重の処遇をしたことは,正に法令の適用を誤ったものである。」

   ア      イ         ウ         エ

1. 併合罪  刑 の 変 更  昭和43年 3月 8日  仮出場

2. 累 犯  刑の執行の免除  昭和43年 6月17日  仮出獄

3. 累 犯  刑 の 変 更  昭和43年 6月17日  仮出獄

4. 併合罪  刑の執行の免除  昭和42年12月26日  仮出獄

5. 累 犯  刑の執行の免除  昭和43年 3月 8日  仮出場

[57−63] 次のうち,緊急避難が成立するものはどれか。

1. 警察官が窃盗犯人をつかまえようとしたところ,窃盗犯人は近くにあった他人の自動車に乗って逃げようとした。そこで,警察官は自動車のタイヤをピストルで撃って,パンクさせた。

2. 飼主がその飼犬を,自分の犬にかみつくようけしかけたので,それと同額の自分の犬を守るため,その犬を棒でなぐり殺した。

3. 弟が,熟睡している兄の首にナイフをつきたてて殺そうとしているところを目撃した父が,他人から借りている花びんを弟の頭をめがけて投げつけたところ,花びんは壁にあたってこわれた。

4. 木造のアパートの隣室で,ガスもれがあり,隣室の者がガスを放出して自殺を図っていることを察知したので,爆発してアパートがこわれ白室に被害が及ぶのをおそれ,ガス栓を止めるため隣室の窓ガラスをこわして部屋に入った。

5. 殺人現場を目撃した者が,証人として喚問を受けたが,「本当のことを証言すると殺すぞ。」と脅かしていた犯人の友人を法廷の傍聴席に見つけ,やむなく偽証した。

[57−66] 刑法第130条に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。

1. 甲は,Aデパートで宝石を盗もうと考え,某日,同店閉店時刻が午後6時であることを知りながらその間際に,買物客を装って同店に入り,宝石売場のある同店4階の便所で窃取のチャンスをうかがいつつ,同日夜半まで同所に潜んでいたところを警備員に発見された。この場合,甲について不退去罪が成立する。

2. AとBは,強く反目し,それぞれの家族に対し,相手方の家族を自宅に入れることを禁止していた。ところがA家の長男甲(23歳)とB家の長女乙(21歳)は深く愛し合う間柄となり,某夜,甲は,乙とあらかじめ示し合わせた上,公道に面した同女専用の部屋の窓からその中にBに知られないように立ち入った。この場合,甲について住居侵入罪が成立する。

3. 乙はA宗教の熱烈な信徒であり,自宅の玄関外側に「A教以外の布教目的での立ち入りを厳禁する。」と墨書した木札を掲げておいた。ところが,某日,B宗教の宣教師甲は,布教活動中乙方に至り,この掲示を読んだが,「ごめんください。」と声をかけたところ,乙が玄関の戸を開けてくれたので中に入り,布教用のパンフレットを差し出したところ,乙から即座に「うるさい,帰れ。」と一喝されたため直ちに退散した。この場合,甲について住居侵入罪が成立する。

4. 甲は,自ら所有し管理するマンションの各室を,乙女を含む多数の者に賃貸し,これら貸借人との間に「火災等の非常事態の場合は,マスターキィを使用して甲は室内に立ち入ることができる。」との約款を結んでいた。ところが某日,甲は,私立探偵丙から,乙の素行調査のため是非その部屋を見せてほしいと頼まれこれを承諾し,乙の外出中マスターキィを使用して,丙と共に同女の部屋に立ち入った。この場合,甲について住居侵入罪が成立する。

5. Aホテルの一室に長期滞在中の客乙が,自室を施錠の上,フロントにそのキィを預けて外出したが,外出先からフロント係甲に対し,電話で「僕の部屋に角封筒入りの書類があるので,すぐそれをB社まで届けてくれ。」と依頼した。甲は依頼を受けた書類を持ち出すとともに乙の金品を盗んでやろうと考え,キィを使って同室内に立ち入った。この場合,甲について住居侵入罪が成立する。

[57−69] 「傷害ノ罪」に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。

1. 相手方がノイローゼにでもなれば面白いと思い,相手方が受話器を取れば一言もしゃべらずに電話を切り,逆に取らなければ呼出音を鳴らし続けるといった方法を繰り返して,相手方をノイローゼにさせた場合,傷害罪が成立する。

2. 親が未成年の子に対し懲罰として通常許される程度の体罰を加えたところ,子に予期しない傷害が生じた場合,傷害罪は成立しない。

3. 甲,乙,丙が,互いに意思の連絡なく,それぞれAに暴行を加えたが,Aの受けた傷害が甲・乙いずれかの暴行によることが明らかな場合,刑法207条の規定は丙に適用されない。

4. スリの現行犯人として逮捕されそうになった際,逮捕を免れるため,前を歩いていた通行人を突きのけて逃げた場合,暴行罪が成立する。

5. 二人以上の者が,相手方が日本刀を持って襲撃して来る場合に,これを迎え撃ち,打ちのめすつもりで木刀を準備して集合しているとき,兇器準備集合罪は成立しない。

[57−72] 器物損壊罪(刑法第261条)に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。

1. 市営の野球場に大きな石を運び込んで,野球ができないようにすれば,器物損壊罪が成立する。

2. 他人に賃貸した自己の家の壁一面に商品の宣伝ポスターをベタベタはり付けても,器物損壊罪は成立しない。

3. 他人から預っていた観賞用熱帯魚を,返しに行く途中で川に捨てれば,器物損壊罪が成立する。

4. 国立大学が発行した他人の成績証明書を破り棄てても,器物損壊罪は成立しない。

5. 名あて人において閲読済みの同窓会開催通知のはがきを,開催期日後隠匿すれば,器物損壊罪が成立する。

[57−75] 次の記述は,談合行為の処罰規定である刑法第96条の3第2項に関する一つの意見であるが,これに対する反論として最も妥当なものは,後記1から5までの記述のうちどれか。

「談合は,我が国では広く行われている商慣習である上,完全な白由競争に基づく競売,入札が実施されるときは,競費人,入札者は,いずれも自己に競落,落札しようとしてできるだけ高く競落し,又は安く入札しようと争う結果共倒れになるおそれがあり,社会的に問題があるばかりでなく,入札実施者の側にとっても,不当に低廉な価格で落札した入札者により手抜き工事が実施されるなどの結果,かえって損害を受ける事態もあり得る。このような弊害を避けるため,競買人,入札者が事前に適正な最高価格又は最低価格を協定することは,当然に許されるべきであるから,談合行為を禁ずる我刑法第96条の3第2項の規定は不当である。」

1. 談合は悪しき慣行であるから,これを禁止することに伴うある程度の弊害を避けられないとしても,あらゆる談合行為を禁止する必要があり,これを規定した刑法第96条の3第2項は不当ではない。

2. 刑法第96条の3第2項は,公の競売・入札における談合行為を対象としているのであるから,そのような場合における談合のすべてを厳格に処罰しても不当ではない。

3. 刑法第96条の3第2項は,いわゆる談合行為のすべてを違法とするのではなく,公正な価格を害するなどの意図に出たものではない限り,処罰の対象から除外しているので不当ではない。

4. 刑法第96条の3第2項は,いわゆる談合金の授受の約束を伴う談合行為のみを処罰の対象としているのであるから,不当ではない。

5. 刑法第96条の3第2項は,談合した結果,公正な価格を害したり,不正な利益を得た者だけを処罰する規定であるから,談合の行為を禁止することに伴う弊害は最小限に抑えられ,不当ではない。

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