[59−03] 強盗犯人が,暴行・脅迫を用い,被害者の反抗を抑圧して金品を強取した直後,被害者が,その場から逃れようとして転倒し,負傷した場合に,強盗致傷罪が成立するとする見解があるが,次の記述のうち,この見解の論拠となり得ないものはどれか。

1. 強盗には致死傷の如き残虐な結果を伴うことが多いので,厳罰をもって臨む必要がある。

2. 強盗致死傷罪とは別に,強盗強姦致死罪が規定されている。

3. 強盗がその現場で財物の取還を拒ぎ,逮捕を免れ又は罪跡を湮滅するため,暴行を加えて人を死傷に致した場合,事後強盗による致死傷罪との権衛を考慮する必要がある。

4. 致死傷の結果は,強盗に付随して生ずることが通常予想されるような,言い換えれば強盗と一定の牽連性を持つ範囲のものであれば足りる。

5. 刑法第240条は「因テ」という表現をとっていない。

[59−06] 次の記述のうち,刑法上のある特定の原則と関連のないものはどれか。

1.毛皮は通常鳥獣とはいえないが,旧狩猟法第20条が同法に違反して捕獲した鳥獣の授受を禁ずる趣旨は本来,鳥獣の保護繁殖のため捕獲を禁ずる法意の延長であるから鳥獣を解体した毛皮も同条にいう鳥獣に含まれるものと解釈することができる。

2.世界人権宣言は,「何人も,実行の時に国内法又は国際法により犯罪を構成しなかった作為又は不作為のために有罪ときれることはない。」と規定している。

3.憲法第73条第6号但書は,「政令には,特にその法律の委任がある場合を除いては,罰則を設けることができない。」と規定している。

4.既に無罪の確定判決を受けた行為は,後にその行為の有罪を裏付けるような新しい証拠が発見された場合でも,これを処罰することはできない。

5.刑罰法規が不明確のゆえに憲法第31条に違反するかどうかは,通常の判断能力を有する一般人の理解において,具体的場合に当該行為がその適用を受けるものかどうかの判断を可能ならしめるような基準が,読みとれるかどうかによってこれを決定すべきである。

[59−09] 次の記述のうち,正しいものはどれか。

1. 行為後,その行為に適用される刑罰法令が廃止されたときは,どのような場合でも,その行為を処罰することはできない。

2. 正犯の処罰後の法改正により,刑罰が軽くなった後に,教唆犯を処罰するときは,この教唆犯には,正犯の場合とは異なって新法が適用される。

3. 行為後の法改正により,その行為に適用される刑罰を軽くするに当たり,重い行為時の刑を適用する旨の規定を設けることは,刑法第6条により許されない。

4. 一個の行為が継続中に,その行為に適用される刑罰法令が数次にわたって改正された場合において,刑に変更がないときは,行為開始時の法令が適用される。

5. 行為後の法改正により,懲役刑が定められている罪に対し,新たに禁錮刑が選択できるようになった場合でも,懲役刑に変更がなければ,刑法第6条は適用されない。

[59−12] 次の記述のうち,誤っているものはどれか。

1. 行使の目的で銀行名義を冒用して無記名定期預金証書を作成した場合には,有価証券偽造罪が成立する。

2. 通貨偽造用の印刷機を購入する目的でその資金を調達した場合には,通貨偽造準備罪は成立しない。

3. 販売の目的で人気テレビタレント名の色紙を勝手に作成した場合には,私文書偽造罪は成立しない。

4. 不動産の所有権移転登記にあたり,その原因が贈与であるのに売買である旨申し立てて,不動産登記簿にその旨記載させた場合には,公正証書原本不実記載罪が成立する。

5. 行使の目的で病院の勤務医が勝手に病院長である医師名義の診断書を作成した場合には,虚偽診断書作成罪は成立しない。

[59−15] 以下の記述のうち,正しいものはどれか。なお,文中のAは共犯独立性説,Bは共犯従属性説(B@は誇張ないし最極端従属形式,BAは極端従属形式,BBは制限従属形式,BCは最小限従属形式)をさす。

1. 犯人の妻を教唆して犯人を蔵匿させた場合,Aによれば犯人蔵匿教唆が成立し,B@によれば犯人蔵匿教唆は成立しない。

2. 強盗を教唆したところ,被教唆者が予備の段階で逮捕された場合,BCによれば強盗予備教唆が成立し,BBによれば強盗予備教唆は成立しない。

3. 刑事未成年者を教唆して窃盗を行わせた場合,BAによれば窃盗教唆が成立し,BBによれば窃盗教唆は成立しない。

4. 他人の住居に侵入することを教唆したところ,被教唆者が住居者の承諾を得て正当に住居に立ち入った場合,Aによれば住居侵入教唆未遂が成立し,BCによれば住居侵入教唆未遂は成立しない。

5. 行使の目的のない他人を教唆して私文書を偽造させた場合,BAによれば,私文書偽造教唆が成立し,B@によれば私文書偽造教唆は成立しない。

[59−18] 罪数に関する判例の立場によると,次の1から5までの記述には,それぞれの(イ)と(ロ)との間に共通した一定の関係が認められないものがある。それはどれか。

1. (イ)他人の住居に侵入して金品を物色中,家人に発見されたので,逮捕を免れるため,その家人に暴行を加えて傷害を負わせた。

(ロ)通用期限の経過した自己の定期乗車券の日付を変更し,引き続き通勤に使用した。

2. (イ)パトロール中の警察官を襲って警察手帳を強奪した。

(ロ)宣誓した証人が,公判廷で,他人の名誉を毀損する内容の虚偽の証言をした。

3. (イ)わいせつな行為をする目的で,未成年者を誘拐した。

(ロ)行使の目的で,他人の印章を偽造したうえ,これを使用して同人名義の委任状を偽造した。

4. (イ)公園のベンチの上にあった他人のハンドバッグの中から現金を抜き取った。

(ロ)訪問販売員が,10万円の商品を雇主に無断で訪問先の友人に1万円で売却した。

5. (イ)窃盗犯人宅で盗品を買い受け,自宅まで運搬した。

(ロ)たまたま訪ねて来た他人を縛り上げ,その後数日間自宅に閉じ込めておいた。

[59−21] 次の文章は,大審院の判決文の一部であるが,[ ]に後記1から5までの語句から適切なものを選んで入れた場合,いずれの[ ]にも入らないものはどれか。

「人ノ住居ニ使用スル建物ヲ焼燬スルノ目的ヲ以テ之ニ接近セル人ノ住居ニ使用セス又ハ人ノ現在セサル建物ニ放火シ其ノ火勢猶未タ[ ]ヲ構成スルニ過サルトキト雖其ノ燃焼作用ニ依リ住宅焼燬ニ至ルヘキ状態ヲ惹起シタルモノナルヲ以テ[ ]ノ程度ヲ超エ[ ]ヲ構成シ[ ]ヲ構成スルモノニ非ス又其ノ火勢既ニ右[ ]ノ程度ニ達シタルトキト雖右建物ハ住宅焼燬ノ媒介タルニ過サルヲ以テ住宅ニ延焼シ且之カ焼燬ノ程度ニ至ラサル限リハ猶[ ]ヲ構成スルニ過スシテ[ ]ヲ構成スルモノニ非ス」

1. 人ノ現住セサル建物焼燬罪ノ既遂犯

2. 人ノ現住セサル建物焼燬罪ノ未遂犯

3. 住宅焼燬罪ノ既遂犯

4. 住宅焼燬罪ノ未遂犯

5. 住宅焼燬罪ノ予備

[59−24] 無免許で自動車を運転してぃた甲は,警ら中のオートバイに乗った警察官に停止を求められたが,検挙を免れたい一心で速度を上げ逃げようとはじめたところ,警察官に追跡されたので,横断歩道を信号に従って歩行中の学童の群れの中に突っ込み,学童を数名負傷させながら逃走した。その際,警察官は学童の群れを避けようとしてその場に転倒した。この設例において甲の犯罪の成否を検討する場合,とりあげる必要のない罪は次のうちどれか。

1. 傷害

2. 公務執行妨害

3. 殺人未遂

4. 保護責任者遺棄

5. 業務上過失傷害

[59−27] 次の文章は大審院の判決文の一部であるが,[ ]に,正犯,従犯の語をそれぞれ入れた場合,従犯の語が使われる回数は,後記1から5までのうちどれか。

「刑法第62条ハ[ ]ヲ教唆シタル者ハ[ ]ニ準シテ之ヲ処断スヘキ旨ヲ規定セルモ[ ]ヲ間接ニ幇助シタル者ハ[ ]ニ準シテ之ヲ論スヘキ旨ヲ規定セスト雖之ヲ以テ直ニ刑法ハ所謂間接[ ]ヲ以テ罪ト為ササル趣旨ナリト解スヘカラス惟フニ[ ]ヲ処罰スル所以ハ[ ]ノ実行ヲ容易ナラシムル点ニ於テ存スルヲ以テ其ノ幇助行為カ[ ]ノ実行行為ニ対シテ直接ナルト間接ナルトヲ問フヘキニ非トス苟モ[ ]カ犯行ヲ為スノ情ヲ知ツテ其ノ実行ヲ容易ナラシムルニ於テハ均シク因果関係ヲ有シ幇助ノ効ヲ致スモノト認メヘク其ノ間ニ区別ヲ設クヘキニ非ス従テ[ ]ヲ間接ニ幇助スル行為モ亦[ ]トシテ処断スルヲ相当ト謂ハサルへカラス」

1. 7回

2. 6回

3. 5回

4. 4回

5. 3回

[59−30] 次の文章中の[ ]に,2個の語を入れる場合(一つの[ ]には一つの語を入れる。),それらの語の組合せとして正しいものはどれか。

「[ ]とは,エンギッシュによれば,『前提条件の相違から法的効果の相違をみちびく推論』である。また,ラートブルフは次のように説明している。ある待合室に『犬の入室を禁ず』という掲示がしてあった。ところが,ある日のこと,熊使いが熊をつれてあらわれた。この場合,[ ]を用いれば,熊も犬と同じく動物だから当然入室できないことになるが,[ ]をとれば,熊は熊であって犬ではないから,犬に対する禁止はこのぱあいあてはまらない,ということになる。このラートブルフの設例からもわかるように,[ ]と[ ]とはしばしば同一の法文について競合して問題となる。」

1. 拡張解釈  文理解釈

2. 文理解釈  類推

3. 類推    拡張解釈

4. 反対解釈  文理解釈

5. 類推    反対解釈

[59−33] Aは,甲銀行に普通預金の口座を開設し,10万円の預金をしたところ,甲銀行の係員が,Bの預金した50万円を誤ってAの預金口座に併せて入金し,Aの預金通帳に60万円の入金を記帳した。これを知ったAは,その後,上記通帳を使用して甲銀行から60万円の払戻を受けた。この場合に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。

1. 誤って入金された50万円は,Bの意思に基づかないでその占有を失われたものであり,甲銀行が誤りに気付くまでは占有離脱の状態にあるから,占有離脱物横領罪が成立する。

2. Aは,誤って入金された50万円について事実上の支配がないが,登記簿上不動産の所有名義を有する者と同様に法律上の支配をもっているから,横領罪が成立する。

3. 預金は,消費寄託の性質を有しているので,50万円が誤って自己の預金口座に入金されたことを知ったAとしては,預金額が訂正されるまで,事務管理者としてBの預金を誠実に保管する任務を負うものであるから,背任罪が成立する。

4. Aが払い戻した60万円のうち,少なくとも50万円について,Aには払戻請求権がないから詐欺罪が成立する。

5. Aの預金口座に入金された60万円は,甲銀行の過誤に基づくもので,Aは甲銀行に50万円の返還債務を負うだけであるから,犯罪は成立しない。

[59−36] 次の記述のうち,甲につき背任罪が成立するものはどれか。

1. 10万ドル以下のドル売買権限を持つA銀行員甲は,ドルの高騰が見込まれたので,ドル売買による利益をA銀行にもたらすため,勝手に100万ドルを買いつけたところ,予想外の国際経済情勢の変化により,A銀行に約3000万円の損害を与えた。

2. 甲は乙から,期日までに返済できないときは甲所有の土地を担保に提供するとの約定の下に,500万円の融資を受けたが,返済期日前に,その土地を勝手に丙に売却した。

3. 甲は,乙から割引あっせんを依頼されていた支払期日3カ月先の約束手形を自己の借金の担保として勝手に丙に差し入れ,丙から返済期限1カ月の約定で金を借りた。

4. A銀行の預金係である甲は,乙の定期預金を解約したことにして,これに見合う額のA銀行の現金を使い込んだが,後日乙からその預金の払戻し請求があったので,そのまま元利金の支払手続をして,乙に預金を払い戻した。

5. 甲は乙から,乙所有の土地を担保とする銀行融資あっせん方を依頼されたが,銀行融資が困難であったところから,謝礼金欲しさに勝手に高利貸から乙名義でその土地を担保に高利の融資を受け,その融資金を乙に届けた。

[59−39] Xの所為の罪数に関する次の記述のうち,他と異なる見解によるものはどれか。

1. Xは,暴力団の親分が胴元となり,商店主ら数名が賭客となって開かれた賭場で花札賭博が行われた際,その賭場に自宅を提供して幇助した。この場合は,賭博場開張幇助と賭博幇助との観念的競合である。

2. Xは,甲と乙に対し,それぞれAを監禁することを別の機会に教唆し,甲と乙は共謀の上,Aを監禁した。この場合は,監禁教唆の一罪である。

3. Xは,甲がA及びBを殺害しようとしているのを知り,甲に匕首を貸与したところ,甲がXの貸与した匕首でA及びBを殺害した。この場合は,殺人幇助の併合罪である。

4. Xは,甲及び乙に対して同一の事件の証人について偽証することを教唆したところ,甲及び乙がそれぞれ虚偽の証言をした。この場合は,偽証教唆の併合罪である。

5. Xは,甲がAをA宅内で殺害した際,これを容易にするため,あらかじめ,A宅の窓の鍵を外し,甲が窓をあけて侵入するのを容易にした。この場合は,住居侵人幇助と殺人幇助との牽連犯である。

[59−42] 売春防止法第12条は,「人を自己の占有し,若しくは管理する場所又は自己の指定する場所に居住させ,これに売春をさせることを業とした者は,10年以下の懲役及び30万円以下の罰金に処する。」と定め,同法第14条は,「法人の代表者又は法人若しくは人の代理人,使用人その他の従業者が,その法人又は人の業務に関し,第9条から前条までの罪を犯したときは,その行為者を罰するほか,その法人又は人に対しても,各本条の罰金刑を科する。」と定めている。甲会社(代表者乙)経営の旅館の番頭丙が,自己の指定する同旅館の一室に売春婦を居住させ,宿泊客を相手に売春をさせることを業とした事案について,甲会社,乙,丙の刑責に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。

1. 丙が乙と共謀した場合は,乙を処罰しなければ甲会社を処罰することはできない。

2. 丙が乙と共謀した場合は,第12条のほか,第14条を適用しなければ,丙を処罰することはできない。

3. 丙が乙の監督不行届きに乗じた場合は,丙と共に乙を処罰することができる。

4. 丙が乙に無断で旅館のサービスとしてした場合は,甲会社を処罰することはできない。

5. 丙が単独でした場合は,丙を処罰しなくても甲会社を処罰することができる。

[59−45] 次の文章は,最高裁判所の決定文の一部であるが,文中の[ ]に後記(ア)から(オ)までの語句のうちから適切なものを選んで入れた場合,[A]と[B]に入れるべき語句の組合せとして正しいものはどれか。

「刑法36条が正当防衛について,[ ]を要件としているのは,[ ]を避けるべき義務を課する趣旨ではないから,当然又はほとんど確実に侵害が予期されたとしても,そのことからただちに[ ]が失われるわけではないと解する…。しかし,同条が[ ]を要件としている趣旨から考えて,単に[A]を避けなかったというにとどまらず,その機会を利用し積極的に相手に対して加害行為をする意思で侵害に臨んだときは,もはや[ ]の要件を充たさないものと解するのが相当である。そうして,原判決によると,被告人甲は,相手の攻撃を当然に予想しながら,単なる[ ]ではなく,積極的攻撃,逃走,加害の意図をもって臨んだというのであるから,これを前提とする限り,[B]の要件を充たさないものというべきであって……。」

(ア) 防衛の意図 (イ)予期された侵害  (ウ)不正の侵害  (エ)侵害の急迫性

(イ) 行為の相当性

1. A−(エ) B−(オ)

2. A−(イ) B−(オ)

3. A−(ウ) B−(ア)

4. A−(ウ) B−(エ)

5. A−(イ) B−(エ)

[59−48] 被告人両名は,A村収入役甲と共謀の上,甲が業務上保管していた金員の一部をほしいままに酒食等の代金支払いに充てて費消した。次の文章は,上記の事件に関する最高裁判所の判決文の一部であるが,[ ]の中に,その[ ]の中に示された数字に対応する番号の後記の語句を入れた場合,記述に誤りが生ずるのはどれか。

「甲のみが……A村の収入役として同村のため右中学校建設資金の寄附金の受領,保管その他の会計事務に従事していたものであって,被告人両名はかかる業務に従事していたことは認められないから,刑法65条1項により同法253条に該当する業務上様領罪の[1]。しかし,同法253条は横領罪の犯人が[2]場合において,とくに[3]ことを規定したものであるから,[4]被告人両名に対しては同法65条2項により同法252条1項の通常の横領罪の[5]。」

1. 共同正犯として論ずべきでない

2. 業務上物を占有する

3. 重い刑を科する

4. 業務上物の占有者たる身分のない

5. 刑を科すべきものである

[59−51] 次の文中の[ ]部分に,後記1から5までのうちから適切なものを一つずつ選んで入れた場合,[C]に入るものはどれか。

「具体的事実の錯誤における客体の錯誤と因果関係の錯誤とは,錯誤論の固有の領域における問題ではなしに,まさに故意論じたいの領域における問題として把握することができるという点に根拠を求めることができよう。まず.[A]。しかし,[B]。従って,[C]。あえて[D]。ことさらに[E]。」

1. ビンディングの述べるように,行為者の犯意の点においてまったく錯誤は存在しないし,また,犯意の実現の点でもまったく変更は存在しない

2. 客体の錯誤についていえば,たしかに行為者自身の動機と現実の行動との間に食い違いは存在する

3. 錯誤論として展開するまでもなく,故意の一要素としての結果の予見の幅の問題として考察することは可能であろう

4. 錯誤論を展開するまでもなく故意論の枠内において解決することができる。因果関係の錯誤の場合についても同様である

5. 法は現実の行動じたいを評価するにとどまる。現実の行動は,行為者が対象とした眼前の人間を殺そうとして殺したということに外ならない

[59−54] 次の記述のうち,甲につき中止未遂が成立するものはどれか。

1. 甲は,乙にAを殺すよう依頼した後,Aに恩義を受けたことを思い出して翻意し,乙にA殺害をやめるように連絡しようとしたが,その連絡がつかなかったので,やむなくAに乙が狙っている旨を通報した。その結果,Aが身辺の警護を強めたため,乙はAに切りかかったが,ガードマンに取り押さえられて失敗に終わった。

2. 甲は,口論の末Aを路上に押し倒したところ,頭を打ったAが動かなくなったので,悪いことをしたと思い,Aを病院に担ぎ込んだ。Aの負傷は放置すれば死に至るほど重大なものであったが,手当てが早かったので一命を取り留めた。

3. 甲は,強姦の目的でA女宅に忍び込んだが,良心の呵責を感じ,A女に気づかれる前に,A女宅から退去した。

4. 甲は,Aから金品を強奪しようと企て,まずAに暴行を加えて反抗を抑圧したが,Aが手を合わせて哀願するので哀れみを覚え,金品を奪うのをやめた。

5. 甲は,乙にAを殺害するように依頼し,これを承諾した乙がA宅に侵入し,Aの首を締めようとして首にひもを回したが,Aの寝顔をみて気の毒になり,殺害せずに帰宅した。

[59−57] 次の各欄の記述は,暴行の意義をその性質に応じて区分したものであるが,各欄に掲げる罪のうち,その欄に示す意義の暴行を含まない罪は,全体で何個か。

(ア) 人に向けられると物に向けられるとを問わず,すべての有形力の行使であり,多衆により一地方における公共の平穏を害する程度であることを要する。――騒擾罪,鎮火妨害罪

(イ) 必ずしも直接に人の身体に対して加えられることを要せず,物に対する有形力の行使が間接的に人の身体に対して作用する場合を含む。――恐喝罪,加重逃走罪

(ウ) 直接人の身体に対して加えられる有形力であることを要する。――強要罪,逮捕罪

(エ) 人の身体に向けられることを要し,かつ,人の反抗を抑圧し又は困難にする程度の有形力の行使である。――事後強盗罪,未成年者略取罪

1. 1個

2. 2個

3. 3個

4. 4個

5. 5個

[59−60] 略取誘拐罪に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。

1. 甲が見知らぬ小学生乙の保護者の不知の間に,乙を一泊旅行に連れて行った後,乙の自宅付近まで送り帰した場合,乙に意思能力があり真意から承諾して同行していたとしても未成年誘拐罪が成立する。

2. 身代金目的誘拐の予備をした者が実行の前に自首したときは,その刑を減軽又は免除する旨の規定(刑法228条の3但書)は,同法42条の場合と同様,官に発覚する前に自首したときだけ適用される。

3. 甲が未成年者乙を誘拐した後,身代金を要求する意図を生じ,この安否を気遣う内容の報道をしている新聞社の社長に対し電話で身代金を要求したとしても,拐取者身代金要求罪は成立しない。

4. 身代金目的で乙を誘拐し,まんまと身代金を入手した後,逮捕前に乙を安全な場所に解放すれば,解放減軽規定(刑法228条の2)が適用される。

5. 甲がわいせつ目的で乙を誘拐した後,身代金を要求する意図を生じ,乙の夫丙に対し,身代金を要求する手紙を郵送した場合,この手紙が丙宅に到達した後,丙が読む前に紛失したとしても,わいせつ目的誘拐罪と拐取者身代金要求罪が成立する。

[59−63] 道路交通法第68条違反の罪の解釈に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。

道路交通法第68条 2人以上の自動車又は原動機付自転車の運転者は,道路において2台以上の自動車又は原動機付自転車を連ねて通行させ,又は並進させる場合において,共同して,著しく道路における交通の危険を生じさせ,又は著しく他人に迷惑を及ぼす行為をしてはならない。(罰則第118条第1項第3号の2)

1. 本罪の主体は,自動車の台数の合計が2台以上である場合,又は原動機付自転車の台数の合計が2台以上である場合のそれぞれの運転者である。

2. 本罪は,「連ね」又は「並進」が2人の運転者による2台の自動車によってなされ,一方が著しく道路における交通の危険を生じさせる行為をし,他方が著しく他人に迷惑を及ぼす行為をした場合を含む。

3. 本罪が成立するためには,運転者間において,「連ね」又は「並進」の状況を現出せしめることについての意思の連絡があれば,「著しく道路における交通の危険を生じさせ,又は著しく他人に迷惑を及ぼす行為」についてまでの意思の連絡は必要でない。

4. 前段の罪は,「交通の危険を生じさせ」るものであるので危険犯であり,後段の罪は,「他人に迷惑を及ぼす」ものであるので侵害犯である。

5. 本条は,危険な集団暴走行為に対処するための規定であるから,「他人」とは,道路上の歩行者に限られる。

[59−66] 結果的加重犯について,責任主義を重視する立場から,「基本犯についての故意のほか,重い結果について過失を要する。この場合の過失は,重い結果の予見可能性に要約される。過失の他の要素はすべて基本犯の行為の中に含まれているからである。」とする見解がある。この見解を最も的確に説明しているものは,次のうちどれか。

1. 因果関係について条件説をとると,重い結果についての行為者の責任が容易に認められるとして,これを批判したものである。

2. 基本犯に重い結果発生の危険があり,行為者が基本犯を実行するときこれを知り得た場合のみ,過失を認めるものである。

3. 故意犯と過失犯との複合形態を認めることを避けるために,過失としては予見可能性で足りるとしたものである。

4. 基本犯を実行した者は,それによって発生するおそれのある重い結果を回避する義務があるのに,不注意によりその義務を怠った点に過失を認めるものである。

5. 重い結果を構成要件要素と解すると,行為者はこれを認識していることが必要となるが,このような内心の状態は立証困難であるから予見可能性をもって十分とするものである。

[59−69] 日本人の日本国外における行為に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。

1. 行使の目的をもって,外国の公務員名義の文書を偽造した者には,刑法の適用はない。

2. 職務執行中の外国の公務員に暴行を加えた者には,刑法の適用はない。

3. 日本国の公務員に対し,その職務に関して金品を贈った者には,刑法の適用はない。

4. 行使の目的をもって,日本国の公務員名義の文書を偽造した者には,刑法の適用がある。

5. 職務執行中の日本国の公務員に暴行を加えてけがをさせた者には,刑法の適用がある。

[59−72] 次の文章中の[ ]に,後記1から5までの語句のうちから適切なものを選んで入れた場合,いずれの[ ]にも入らないものがある。それはどれか。

「安楽死は不治の病いの患者の苦痛の除去をこそ動機とし主眼とする。これに比べ,植物人間の場合にはもはや苦痛の感覚もないことが多いのではなかろうか。だとすれば,植物人間に対して[ ]ということになろう。また,今日の安楽死は患者本人の意思に基づく任意的なものであることを看板としている。ところが,植物人間の場合にはまったく[ ]状態にある。更に,安楽死は積極的に[ ]ものであるが,植物人間の場合は,生命維持装置を取りはずすことにより,受動的に[ ]点で異なっている。もう一つ付け加えるなら,安楽死は,ある行為によって死をひきおこすものであるが,植物人間の場合には,ある行為によって[ ]ものである点でちがうとされている。この議論の背後には,[ ]考えがあり,安楽死にあってはそれに先立って死を招致し,植物人間にあってはそれを通りすぎて人工的に生きていることを止めることである,と考えられる。」

1. 死を招致する

2. 死を許容する

3. 脳死を否定する

4. 安楽死の必要はない

5. 意思表明ができない

[59−75] 次の記述のうち,甲について( )内の罪(共犯を含む。)が成立するものはどれか。

1. 県議会議員の妻甲は,夫が製造業者から条例制定を阻止してほしい旨請託を受けて受領した現金200万円について,夫からその隠匿を指示され,それが賄賂であることを知りながら,仮名預金口座を設けて入金した。(受託収賄)

2. 市役所の保健衛生課長から道路課長に就任した甲は,同課長に任命される1か月前,市道の補修工事を請け負っている建設業者から,同工事の監督検査について好意ある取り計らいを受けたいとの趣旨の下に,高級料亭で酒食のもてなしを受けた。(事前収賄)

3. 町長の後援会会長である商店主甲は,土建業者に対し,同町長が同業者を町立体育館新築工事の指名入札業者に選定した謝礼として,現金100万円を同後援会に寄附するよう要求した。(第三者供賄)

4. 税務署の法人税課係員甲は,所轄管内の販売会社の確定申告が過少申告であることに気付いたが,かねてより,同社社長との間に,同社の課税に手心を加える見返りとして甲の退職後甲を同社の役貝に迎え入れる旨の約束があったので,同社の過少申告を黙認し,退職後,同社の役員に就任した。(枉法収賄)

5. 県警本部運転免許課に所属し,自動車運転免許技能試験を担当する警察官甲は,友人から免許証の不正入手を懇請され,同人が試験に合格していないのに,合格した旨を同課の免許証交付事務担当の係貝に通知したところ,同係員が友人名義の運転免許証を同人に交付したので,後日,友人からその謝礼として現金50万円を受け取った。(斡旋収賄)

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