[60−03] 次の文章は,最高裁判所の判決文の一部である。[ ]の部分に後記1から5までの語句のうちから適切なものを一個ずつ選んで入れていった場合(同一語句を繰り返して使用することができる。),一個だけいずれの[ ]にも入らないものがある。それはどれか。

「死刑制度を存置する現行法制の下では,犯行の[ ],動機,態様ことに殺害の手段方法の執拗性,残虐性,結果の重大性ことに殺害された被害者の数,遺族の被害感情,[ ],犯人の年齢,前科,犯行後の[ ]等各般の[ ]を併せ考察したとき,その罪責が誠に重大であって,[ ]の見地からも一般予防の見地からも極刑がやむを得ないと認められる場合には,死刑の選択も許されるものといわなければならない。」

1. 特別予防

2. 情 状

3. 社会的影響

4. 罪 質

5. 罪刑の均衡

[60−06] 偽造罪に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。

1. 行使の目的をもって,甲が無権限で,税務署長印のある納税証明書を作成したとき,使用した印章が真正なものであれば公文書偽造罪が成立し,その印章が偽造にかかるものであれば公印偽造罪及び公文書偽造罪が成立する。

2. 登記官甲と私人乙が,共謀の上,土地登記簿の原本に,ある土地の所有権がAから乙に移転した旨の虚偽の記載をしたとき,甲及び乙に公正証書原本不実記載罪が成立する。

3. 郵便局係員甲が行使の目的をもって,Aの郵便貯金通帳の貯金受入年月日を虚偽の日付に改ざんしたとき,甲に貯金通帳の作成権限がなければ公文書変造罪が成立し,甲に貯金通帳の作成権限があれば虚偽公文書作成罪が成立する。

4. 甲がAから金を借りる際,自らAに返済する意思がないのに,Bに対し必ず自分で返済するから保証人として名前だけ貸してくれとうそをつき,その旨Bを誤信させ,Bをして甲A間の消費貸借契約書の保証人欄に署名押印させたとき,甲に私文書偽造罪の間接正犯が成立する。

5. 市長甲が建設業者Aの依頼を受けて,その脱税の便宜を図るため,権限を濫用して請負金額を過少に記載した市庁舎建設請負契約書を作成したとき,甲に公文書偽造罪が成立する。

[60−09] 次の文中の[ ]部分に,後に1から5までのうちから適切なものを一つずつ選んで入れていった場合,[D]に入るものはどれか。

「刑法における因果関係の問題とは,いかなることを意味するか。それは[A]。従って[B]。これが問題となるのは,[C]。しかも[D]。何となれば,[E].」

1. 殺人罪における死亡という結果,放火罪における焼燬という結果というように,ある一定の結果の発生を構成要件として必要とするところのいわゆる結果犯についてである

2. 結果的加重犯において,重い結果に対して故意も過失も必要でないとする立場を採れば,因果関係の有無がその重い結果に対する責任を問う唯一の根拠とならねばならぬからである

3. 最もこれが重要性をもつのは,いわゆる結果的加重犯の場合である

4. ある一定の行為とある一定の構成要件に該当する結果が存する場合,いかなる基準の下に刑法上前者をもって後者の原因となし得るかということである

5. 因果関係の問題は,最初から構成要件として狭義の結果の発生を必要としないいわゆる挙動犯については,重要性を有しない

[60−12] 次の記述のうち,(  )内の罪が成立するものはどれか。

1. 現金をとる目的で,かぜ薬だとうそをつき睡眠薬を飲ませて熟睡させ,その間に現金入りの財布を抜きとった場合。(詐欺既遂)

2. 駐車違反をして検挙された際,反則金の納付を免れようと思い他人の氏名を詐称したが,後日発覚して反則金の納付を命ぜられた場合。(詐欺未遂)

3. 支払いのあてもないのにレストランで飲食した後,「トイレに行ってくる。」と店員にうそをついて逃げようとしたが,見破られて捕まった場合。(詐欺未遂)

4. 抵当権者を欺罔して自己の不動産の抵当権登記を抹消させた場合。(詐欺既遂)

5. 拾った財布の中に銀行のキャッシュカードと暗証番号のメモが入っていたのを奇貨とし,キャッシュカードを使用して現金自動支払機から現金を引き出した場合。(詐欺既遂)

[60−15] 間接正犯に関する次の記述のうち,正しいものはいくつあるか。

(ア) 「指を詰めなければ殺すぞ。」と言って甲が乙に対し,けん銃を突き付けたため,やむを得ず乙が包丁で自ら小指を切り落とした場合,甲は傷害の間接正犯とならない。

(イ) 間接正犯における実行の着手時期は被利用者を犯罪へ誘致する行為をした時であると解すれば,間接正犯における既遂時期は,その誘致行為が終わった時であると解することとなる。

(ウ) 私人甲が自動車検査証(いわゆる車検証)を作成する権限のある公務員乙に対して虚偽の内容の申請をし,その情を知らない乙をして同内容の自動車検査証を作成させた場合,判例によれば,甲は虚偽公文書作成の間接正犯となる。

(エ) 幼い子供に放火させた場合,制限従属性説を採る立場であっても,放火の間接正犯を認め得る。

(オ) 甲が乙を留置場に拘禁させる目的で自ら腕に傷をつけたうえ,警察官丙に対し,乙に傷害を負わされたとの告訴をし,その情を知らない丙に乙を逮捕拘禁させた場合,甲は逮捕監禁の間接正犯とならない。

1. 1個

2. 2個

3. 3個

4. 4個

5. 5個

[60−18] 甲は,国鉄職員乙の身分証明書を拾ったため,これを利用して金策しようと考え,その身分証明書の写真を自分のものとはり替えて金融業者丙の事務所に赴き,乙名義の借用証を作りこれに乙の姓を刻んだ印鑑を押して前記身分証明書とともに提出し,50万円を借りた。ところが,その後不正が発覚して丙から強く返済を求められるに至ったため,丙を殺せば借金の返済が免れることができると考え,丙が在室している時をねらいその事務所に放火して全焼させ,丙を焼死させた。甲の罪責は,次のうちどれか。

1. 遺失物横領,公文書偽造,同行使,私文書偽造,同行使,詐欺,現住建造物放火,強盗殺人

2. 遺失物横領,私文書偽造,同行使,詐欺,現住建造物放火,強盗殺人

3. 遺失物横領,公文書変造,同行使,私文書偽造,同行使,詐欺,現住建造物放火,強盗殺人

4. 遺失物横領,公文書偽造,同行使,私文書偽造,私印不正使用,偽造私文書行使,詐欺,現住建造物放火,殺人

5. 遺失物横領,公文書偽造,同行使,私文書偽造,同行使,詐欺,現住建造物放火,殺人

[60−21] 次の記述のうち,正しいものはどれか。

1. 12歳程度の知能しか有しない成年者は,刑事未成年者に準じて責任無能力者として扱われる。

2. 心神喪失と心神耗弱とは,いずれも精神障害の態様に属するものであり,その程度を異にするに過ぎない。

3. 心神耗弱者の行為は必ずしも故意が阻却されないが,心神喪失者の行為は故意が阻却される。

4. 是非善悪を弁別する能力はあるが,その弁別に従って行動する能力のない者は,心神耗弱者である。

5. 先天的に言語機能及び聴覚機能を欠く者でも,是非善悪を弁別しその弁別に従って行動する能力を有する場合は,その者の行為については刑の減軽はされない。

[60−24] 次の文中の[ ]の部分に,後記1から5までの語句のうちから適切なものを一個ずつ選んで入れていった場合,最も多く使用される語句はどれか。

「過失は,[ ]と[ ]を構成要件上区別する機能をもつ構成要件要素であるから,[ ]の構成要件的行為は,過失のある行為である。過失のある行為であるというためには,不注意により,構成要件に該当する犯罪事実を認識又は認容しなかったことが必要であって,この注意義務違反こそが過失の[ ]を根拠づけるのである。従って,[ ]の構成要件的行為は[ ]の行為にほかならない。注意義務がないか,注意義務を守ったことによって[ ]がないときは,初めから,違法行為としての定型性がなく,構成要件に該当するが[ ]を阻却するというようには考えられない。[ ]の構成要件該当性は,注意義務に違反する行為により,[ ]を発生させることによって認められる。[ ]がなくて[ ]が生じても,それは,[ ]の構成要件的結果でない偶然の事故に過ぎないし,また,[ ]があっても,これと因果関係がなく[ ]が発生した場合も同じである。このように,[ ]の構成要件を考えていくと,これは,当然過失行為の[ ]を推定させる働きをもつものであるから,[ ]と[ ]の発生によって構成要件該当性が確かめられた行為は,[ ]の場合と同じように,違法性阻却事由がない限り,違法であるとされることになる。」

1. 注意義務違反

2. 過失犯

3. 違法性

4. 結果

5. 故意犯

[60−27] 道路交通法119条1項7号の2に規定する酒気帯び運転の罪が成立するためには,行為者において,アルコールを自己の身体に保有しながら車両等の運転をすることの認識があれば足り,同法施行令44条の3所定のアルコール保有量の数値まで認識している必要はない,と判例は判断している。次の記述のうち,この考え方と明らかに矛盾するものはどれか。

1. 政令で定める程度以上にアルコールを身体に保有する状態にあるということは,一種の客観的処罰条件である。

2. 政令で定める程度以上にアルコールを身体に保有していたのに,その程度に満たないアルコールしか保有していないと思っても故意の成立には影響がない。

3. 現に身体に保有しているアルコールの数値まで認識している必要はないが,政令で定める程度以上にアルコールを身体に保有した状態にあることの認識は必要である。

4. 犯罪事実の認識としては犯罪を構成する行為の意味・性質を認識していれば足りる。

5. 政令で定める程度以上にアルコールを身体に保有する状態にあったということは,あたかも結果的加重犯における重い結果と同視できる。

(参照条文)

道路交通法119条1項7号の2  第65条(酒気帯び運転等の禁止)第1項の規定に違反して車両等(軽車両を除く。)を運転した者で,その運転をした場合において身体に政令で定める程度以上にアルコールを保有する状態にあったもの

同法65条1項 何人も,酒気を帯びて車両等を運転してはならない。

同法施行令44条の3 法第119条第1項第7号の2の政令で定める身体に保有するアルコールの程度は,血液1ミリリットルにつき0.5ミリグラム又は呼気1リットルにつき0.25ミリグラムとする。

[60−30] 緊急避難と正当防衛に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。

1. 緊急避難の「已ムコトヲ得サルニ出テタル行為」とは,正当防衛のそれとは異なり,避難行為がその危難を避けるための唯一の手段であり他にとるべき方法がなかったことを意味するが,これは前者が「正対正」の関係であり,後者が「正対不正」の関係であるからである。

2. 「正対正」の関係である緊急避難の場合には,生じた結果につき損害賠償義務を負うことがあるのに対し,「正対不正」の関係である正当防衛の場合には,侵害者に対し損害賠償義務を負うことはない。

3. 緊急避難は「正対正」の関係であるが,「正対不正」の関係である正当防衛と同じく.急迫不正の侵害から身を守る場合にも許される。

4. 緊急避難は「正対正」の関係であり,正当防衛は「正対不正」の関係であるから,緊急避難の危難の「現在」性は正当防衛の侵害の「急迫」性より厳格に解さなければならない。

5. 緊急避難の「其行為ヨリ生シタル害其避ケントシタル害ノ程度ヲ超エサル場合ニ限リ」との要件は、正当防衛にないものであるが,これは「正対不正」の関係である正当防衛と異なり緊急避難が「正対正」の関係であるからである。

[60−33] 甲は,A又はAの知人が不特定の多数人に見せるであろうことを知りながら,わいせつフィルムをAに貸したところ,AはさらにAの知人Bに貸し,Bがこれを映写して十数名の者に観覧させた。この場合,甲に猥せつ物陳列罪の正犯Bの従犯としての罪責を認める見解の論拠となり得ないものは,次のうちいくつあるか。

(ア) 正犯との意思連絡は必要でない。

(イ) 正犯の犯行に対する因果関係は間接的でもよい。

(ウ) 刑法61条2項(「教唆者ヲ教唆シタル者亦同シ」)のような規定がない。

(エ) 刑法62条1項は「正犯ヲ幇助シタル者ハ従犯トス」と定めている。

(オ) 正犯を特定するに足りる氏名までは確知する必要がない。

1. 1個

2. 2個

3. 3個

4. 4個

5. 5個

[60−36] 中止未遂と障害未遂との区別について,「やってやれなくはないが,やり遂げることを欲しない」場合が中止未遂,「やりたくてもやり遂げることができない」場合が障害未遂であるとする見解がある。この見解を前提とした場合,次のうち障害未遂となるものはいくつあるか。

(ア) 甲は乙を刺殺しようとして短刀で突きかかったところ,実際には警官がいないのに,乙が「警官が来た。」と叫んだため,逮捕をおそれ殺害を断念した。

(イ) 甲は現金だけを窃取しようとして乙の留守宅を物色したところ,キャッシュカードしか発見できなかったため,足がつくのをおそれ窃盗を断念した。

(ウ) 甲は金員を強取しようとして乙にオモチャのけん銃を突きつけたところ,乙が精神薄弱者であまりにも平然としていたため,オモチャのけん銃であることを見破られたものと思い込み,不気味に思って強盗を断念した。

(エ) 甲は乙を強姦しようとして押し倒したところ,乙の幼児丙が目を覚まして泣き出したため,かわいそうに思い強姦を断念した。

(オ) 甲は服役中の刑務所から逃走しようとして独房から脱出し外塀に飛びついたところ,突然心服発作を起こしたため,逃走を断念した。

1. 1個

2. 2個

3. 3個

4. 4個

5. 5個

[60−39] 偽証罪に関しては種々の見確がある。次の記述のうち,それぞれの見解に対する批判として最も不適切なものはどれか。

1. 宣誓のうえ証人が虚偽の陳述をしたとしても,証人が証言拒絶権を有する場合は期待可能性を欠くとして偽証罪とならないとする見解は,証言拒絶権は積極的に虚偽の陳述をなすことまで認めるものではないから不当である。

2. 宣誓のうえ証人が自ら経験した事実に基づいて虚偽の意見を述べた場合,それが意見であるかぎり偽証罪とならないとする見解は,そのような意見でも裁判を誤らせる抽象的危険を有しているから不当である。

3. 宣誓無能力者に誤って宣誓をさせた場合でも,その者が証人として虚偽の陳述をしたときは偽証罪が成立するとする見解は,宣誓の何たるかを理解しない者に宣誓させても無意味であるから不当である。

4. 宣誓のうえ証人が自己の記憶に反する陳述をしたとしても,陳述内容が客観的真実に合致していれば偽証罪とならないとする見解は,宣誓違背だけでも非難すべきであるから不当である。

5. 宣誓のうえ証人が証言拒絶権の告知を受けないまま証言拒絶権を有する事項について虚偽の陳述をした場合でも,偽証罪が成立するとする見解は,証言拒絶権を有することを知っていれば偽証をしないですんだかもしれないから不当である。

[60−42] 次の文章は,強盗致傷罪に関するある決定の要旨である。この決定の趣旨が妥当する範囲に関する後記1から5までの記述のうち,誤っているものはどれか。

「夜間人通りの少ない場所で,通行中の女性の所持しているハンドバックを窃取する目的をもって,自動車を運転して同女に近づき,車の窓からハンドバックのさげ紐をつかんで引っばったが,同女がこれを奪われまいとして離さなかったため,さらに奪取の目的を達成しようとして,右さげ紐をつかんだまま自動車を進行させ,同女を引きずって路上に転倒させたり,車体に接触させたり,あるいは道路脇の電柱に衝突させたりして,傷害を負わせたときは,強盗致傷罪が成立する。」

1. 強盗の犯意が生じたのでなければ,この決定は妥当しない。

2. 被害者が女性でなくても,この決定は妥当する。

3. 夜間人通りの少ない場所における犯行に限って,この決定は妥当する。

4. ひったくりに際して暴行・脅迫を加えただけでは,この決定は妥当しない。

5. 被害者が傷害を負わなくても,強盗罪の成立する場合として,この決定は妥当する。

[60−45] 甲は自宅に来た乙を殺そうと思って毒入りの菓子を出したが,乙は手をつけないまま帰ってしまった。甲はその菓子を紙袋に入れて室内にあったくず入れに捨てたが,甲の子供丙がその菓子を見つけて食べたため死亡してしまった。この場合,甲に認められる罪責の論拠とならないものはどれか。

1. 乙を殺そうとして丙を死亡させたのであるから,方法の錯誤である。

2. 毒入りの菓子をそのようなところに捨てれば,他の者が口にする可能性がある。

3. 毒入りの菓子を乙に出す打為には,それだけで結果発生の現実的危険性がある。

4. 被害者の行為を利用する場合も正犯である。

5. 乙殺害の実行行為は終了している。

[60−48] 放火罪に関する次の記述のうち,正しいものはいくつあるか。

(ア) 独立燃焼説によれば,木造家屋の天井板を焼燬した場合,建造物放火罪の既遂になるが,鉄筋コンクリート造マンションの天井板を焼燬しただけでは,同罪の未遂にとどまる。

(イ) 繁華街の店舗に一人で住んでいる者が,閉店後その店舗を焼燬した場合,非現住建造物放火罪が成立する。

(ウ) 山中の一軒家である他人の居宅を焼燬した場合,公共の危険が発生していないから,現住建造物放火罪は成立しない。

(エ) 留守中であると思って他人の居宅に放火した場合,たまたま家人が在宅していても,非現住建造物放火罪が成立するにとどまる。

(オ) 他人の居宅を焼燬しようとして,これに隣接する空き家に放火したが,その居宅には燃え移らなかった場合,現住建造物放火未遂罪が成立する。

1. 1個

2. 2個

3. 3個

4. 4個

5. 5個

[60−51] 次の文章は,強制わいせつ罪における主観的要素に関する判決文の一部であるが,これに対する反論となり得ないものは,後記1から5までの記述のうちどれか。

「強制わいせつ罪が成立するためには,その行為が犯人の性欲を刺戟興奮させまたは満足させるという性的意図のもとに行われることを要し,婦女を脅迫し裸にして撮影する行為であっても,これが専らその婦女に報復し,又は,これを侮辱し,虐待する目的に出たときは,強要罪その他の罪を構成するのは格別,強制わいせつの罪は成立しない。」

1. 強制わいせつ罪は被害者の性的自由を保護するものであるから,被害者の性的自由を侵害するような行為がなされたかどうかだけが問題で,故意としてもこのことを認識していれば足りる。

2. 性的意図という主観的要素の有無によって強制わいせつ罪の成否を決するとすれば,単に婦女の肩に手をかける行為など客観的にはわいせつ行為といえないようなものでも,性的意図をもってした場合には同罪が成立するという不当な結論になる。

3. 強制わいせつ罪に性的意図が必要であるならば強姦罪にも性的意図が必要となり,性的意図のある者とない者とが共同して強姦行為をした場合,刑法65条2項の適用に関する判例の考え方によると,性的意図のない共犯者は強要罪等の軽い刑で処断するほかないという不当な結論になる。

4. 財産罪における不法領得の意思のように,犯罪の成否を決めるうえで特に必要がある場合を除いては,刑法の明文にない行為者の目的や意図を犯罪の成立要件とすべきではない。

5. 強要罪が成立するに過ぎないと解すると,刑法が性的自由の保護を特に重くみている趣旨が失われ,また,強制わいせつ罪を親告罪としている趣旨にも反する。

[60−54] 違法性の意識の問題をめぐり今日見解が分かれるが,次の記述のうち,これらの見解に対する批判として明らかに当たらないものはどれか。

1. 故意の成立に違法性の意識を必要としないとする見解は,法律は他律的規範であるから,その適用を受ける者がその規範の意味を知る必要がないことを理由としているが,これは法規範の意思決定規範としての性質を看過したものである。

2. 自然犯・刑事犯には故意の内容として違法性の意識は必要ではないが,法定犯・行政犯にはそれが必要であるとする見解は,自然犯・刑事犯について,事実の認識を有しながら,違法性の意識をもち得ないことが絶無でないことを忘却し,その場合にも故意犯をもって処罰しようとするもので,責任主義の本旨に反する。

3. 故意の成立に違法性の意識を必要とする見解は,行為者に違法性の意識がなければ,行為動機を阻却する反対動機が形成されなかったはずであり,故意の責任非難を加えることができないとするのであるから,これによると確信犯に対する処罰は疑問である。

4. 故意の成立には違法性の意識を必要とするが,違法性の意識のない場合でもそのことにつき過失があったときは故意と同一に取り扱うとする見解は,なぜ過失を故意と同一に取り扱うのか,その理論的根拠が明らかでない。

5. 故意の成立には違法性の意識そのものは必ずしも必要でなく,違法性の意識の可能性があれば足りるとする見解は,人格形成の責任について,法律の過失と事実の過失を同視している点に問題がある。

[60−57] 次のAからDの見解のうち,非権力的公務について,暴行・脅迫を加えて妨害すれば公務執行妨害罪が成立し,暴行・脅迫に至らない威力を用いて妨害すれば威力業務妨害罪が成立するとの主張と矛盾しないものが二つある。その組合せとして正しいものは,後記1から5までのうちどれか。

A すべての公務が威力業務妨害罪の対象となる。

B 公務は一切威力業務妨害罪の対象とならない。

C 権力的公務は公務執行妨害罪の対象となり,非権力的公務は威力業務妨害罪の対象となる。

D 非権力的公務は,公務執行妨害罪の対象にも,威力業務妨害罪の対象にもなる。

1.AとC

2.AとD

3.BとC

4.BとD

5. CとD

[60−60] 次の1から5までは,犯罪を継続犯,目的犯,結果的加重犯,身分犯,危険犯に分類して列挙したものである。このうち,その分類に属さないものを含むものはどれか。

1. 特別公務員暴行陵虐致傷罪,延焼罪,強姦致死罪

2. 営利誘拐罪,談合罪,背任罪

3. 往来妨害罪,誣告罪,遺棄罪

4. 贈賄罪,偽証罪,秘密漏泄罪

5. 逮捕罪,凶器準備集合罪,わいせつ文書等所持罪

[60−63] 次の物のうち,遺失物横領罪の客体となり得ないものはどれか。

1. 乗客が電車の中に置き忘れたかばん

2. 浴客が銭湯の脱衣場に置き忘れた現金

3. 郵便配達員が誤配した封書に同封されていたビール券

4. 窃盗犯人が盗んで乗り捨てた自動車

5. 古墳内に納められていた宝石

[60−66] 次の記述は応報刑論に関する文章であるが,[ア]から[オ]までに適切な語句を入れて文章を完成した場合,[B]に入る人名は後記1から5までのうちどれか。

「応報刑論は犯罪を害悪と解し,これに対する[ア]は,なされた[イ]に対して,これに相当するところの[イ]・苦痛を加えて返すことを意味するものとする。その場合の『相当』とは平等を意味し,相当性の要素によって[ア]は,単純な[ウ]と区別せられ,等分的正義という意味での[エ]理念に妥当し,刑罰は正当な[オ]と解せられるとするのである。そして,その場合の『相当性』を事実的意味に解し,[ア]をもって,なされた[イ]と事実的に同じ[イ]を加えるものと解する説と,価値的意味に解し,[ア]をもって,なされた[イ]と価値的に同じ[イ]を加えるものと解する説とに区別せられ,前者の代表者が[A]であり,後の思想を展開したのが[B]だと解されていることは周知のとおりである。」

1.M.E.マイヤ−

2.カント

3.ビンディング

4.フォイエルバッハ

5.へーゲル

[60−69] 賍物罪に関する追求権説の立場に立った場合,次の記述のうち,誤っているものはどれか。

1. 14歳に満たない者が窃取した財物は贈物である。

2. 賍物罪が成立するには,財産犯たる本犯の行為が既遂に達していることを必要とする。

3. 本犯が横領した財物につき,第三者が民法192条の規定により所有権を取得したときは,その後その情を知っていた者がこれを買い受けても,賍物故買罪は成立しない。

4. 賍物の対価として得たものは賍物にあたらない。

5. 本犯がで詐取した財物を買い受けた故買者が後日これを他に転売するに当たり,本犯が故買者のため転売の周旋をしても,賍物牙保罪は成立しない。

[60−72] 次のアからオまでの記述のうち,犯罪構成要件を実現する現実的危険性をもった行為を開始した場合に実行の着手があるとする立場からみて,甲の行為について( )内の罪の実行の着手がも認められないものは,いくつあるか。

ア  A方応接間でAと雑談中,甲は,Aが部屋を出たすきに飾り棚の置時計を窃取しようと思い立ち,Aに対し,「お茶が欲しい。」とうそをついてAを台所に行かせた。(窃盗罪)

イ  Aを殺害する目的で,甲は,弾丸を装てんしたピストルを隠し持って同人方に行き,その姿を求めて屋内を捜し回り,たまたまAの隠れていた押入れの戸を開けた。(殺人罪)

ウ  10歳の少女にわいせつ行為をする目的で,甲は,同女を物陰に誘い込んだ。(強制わいせつ罪)

エ  同房内で服役中の甲と乙は,通謀して逃走しようと企て,監房の合鍵を入手して逃走することを相談した。(加重逃走罪)

オ  自動車内で強姦するつもりで,甲は,通行中の女性に対し「自宅まで送ってやる。」とうそをついて誘い乗車させた。(強姦罪)

1. 1個

2. 2個

3. 3個

4. 4個

5. 5個

[60−75] 次の記述のうち,正しいものはどれか。

1. 甲が多年重病で寝込んでいる妻乙の承諾を得て,乙を独り病床に残して旅行をしたところ,そのため間もなく乙が死亡した場合,保護責任者遺棄致死罪は成立しない。

2. 甲が12歳の少女乙の承諾を得てこれと性交した場合,強姦罪は成立しない。

3. 甲が乙の承諾を得て乙所有の空き家を焼燬した場合,非現住建造物放火罪は成立しない。

4. 甲が追死の意思がないのに,乙に心中をもちかけ,甲が追死するものと誤信した乙が自殺した場合,何らの犯罪も成立しない。

5. 公証人甲が,公正証書による遺言状作成の際知った遺言者乙の秘密をその承諾を得て丙,丁に話した場合,秘密漏泄罪は成立しない。

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