[62−41] 罪刑法定主義に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。

1.罪刑法定主義とは,どういう行為が犯罪となり,それに対してどのような刑罰が科せられるかが,予め成文の法規によって定められていない限り,どんな行為も犯罪として処罰されることはないという原則である。これを歴史的にみると,その淵源は古くローマ法に遡るが,その後ヨーロッパの各国を経てアメリカに渡り,発展を遂げて近代刑法の大原則になったものである。

2.刑罰法規の解釈は,できる限り条文に使われている用語から自然に導き出されるよう厳格にすべきであって,みだりに法の予定しない他の事項にひろげてはならない。しかし,このことは,法の文言に形式的に忠実であれということではなく,その文言に照らして予想し得る限度までひろげることや目的論的解釈を否定するものではない。

3.罪刑法定という以上,何が犯罪となるかということについて構成要件を明確にしなければならないと同時に,それに対する刑罰も確然と示されなければならない。しかし.それを極端にすると法定刑も絶対不動であることを要するということになるが,それでは具体的事案に応じた刑という量刑の個別化の道を閉ざしてしまうことになるから,一般には絶対的不定期刑を規定することの禁止をもって満足している。

4.成文に全く根拠をもたない慣習法による処罰を許すものでないことは,罪刑法定の建前からいって当然である。しかし,成文によりどころがある限りは,構成要件の意味内容が慣習によって決定されることを妨げるものではない。

5.刑罰法規遡及適用の禁止は,罪刑法定主義の重要な内容の一つである。しかし,我が刑法が行為者に有利な遡及適用を認めていることは,罪刑法定主義に反するものではない。

[62−42] 次のような罰則が我が国で制定された場合において,同罰則の解釈に関する後記の記述のうち,最も妥当でないものはどれか。

「刑法第220条の罪を犯した者が,逮捕又は監禁されている者を人質にして,第三者に対し,義務のない行為をすること又は権利を行わないことを要求する行為をしたときは,6月以上10年以下の懲役に処する。」

(参照条文)

刑法第220条第1項 不法ニ人ヲ逮捕又ハ監禁シタル者ハ3月以上5年以下ノ懲役ニ処ス

1. 逮捕,監禁に着手すれば,本罪の実行の着手となる。

2. 本条に未遂罪の処罰規定があっても,逮捕,監禁にとどまった者には,本罪の未遂罪は成立しない。

3. 逮捕,監禁の当初から人質にする目的を有している必要はない。

4. 要求が第三者に到達しなくとも,本罪は既遂である。

5. 被要求者に要求に応じる考えがないときも,本罪は成立し得る。

[62−43] 甲,乙,丙及び丁が,それぞれ別個の2個の犯罪を犯したとする。これらの罪名は,公務執行妨害罪,現住建造物等放火罪,住居侵入罪,偽証罪,傷害罪,暴行罪,強盗致傷罪及び詐欺罪である。次の記述から判断して,甲の犯した犯罪について正しいものは,後記1から5までのうちどれか。

A 乙,丙の各犯罪のうち,1個はいわゆる不法領得罪の構成要件である点では共通するが,丙のそれは相手方の処分行為を要しないものであると一般に解されている。

B 乙,丁,の各犯罪のうち,1個はいずれも国家的法益に対するものである。

C 丁の犯罪中には,一般に自手犯とされているものが含まれている。

D 丙の2個の犯罪は,判例上牽連犯とされている。

E 丁の犯罪のうち1個は,財産犯罪としての性質も有する。

1. 甲の2個の犯罪は,法益も全く異にする。

2. 甲の2個の犯罪のうち1個は,丁の犯罪のうちの1個の構成要件要素となっている。

3. 甲の2個の犯罪は,通常,観念的競合の関係にある。

4. 甲の2個の犯罪は,一方が他方の結果的加重犯である場合があるとするのが一般である。

5. 甲の2個の犯罪は,一方が法定刑として罰金刑を含むが,他方は含まない。

[62−44] 判例は,行使の目的をもって,虚偽の供託事実を記入した供託書用紙の下方に真正な供託金受領証から切り取った供託官の記名印及び公印押捺部分を接続させ,これを電子複写機で複写する方法により,あたかも公務員である供託官が職務上作成した真正な供託金受領証を原本として,これを原形どおり正確に複写したかのような形式外観を有する写真コピーを作成すれば,有印公文書偽造罪に当たるとしているが,次の記述中,この考え方と矛盾するものは,後記1から5までのうちどれか。

A 写しは.原本作成者の意識内容を直接表示するものではなく,原本と写しの間に,写し作成者の意識が介入,混入する虞があるものであって,原本である公文書と同様の証明文書としての社会的機能と信用性を有しない。

B 真正な公文書から切り取った公務員の記名印及び公印押捺部分を他の文書に接続させて複写機で複写したときは,当該公務員の作成名義を偽ったものである。

C 複写機を使用し機械的方法により原本を複写した文書は,複写した者の意識が介在する余地がなく,原本作成者の意識内容が直接保有されている文書である。

D 公文書偽造罪は,公文書に対する公共的信用を保護法益とし,社会生活の安定を図ろうとするものであるから,たとえ写しであっても,原本と同一の意識内容を保有しこれと同様の社会的機能と信用性を有するものはその客体となる。

E 複写機を使用して機械的方法によって複写したものであっても,写しは原本と異なる存在といわなければならないから,原本作成者が作成名義人となるわけではない。

1. A B

2. B C

3. C D

4. D B

5. E 

ーー[62−45]から[62−46]までーー

次の文章を読んで,後記の[62−45]及び[62−46]の各問に答えよ。

刑法上の[ア]は,人の[イ]に基づく[ウ]である。したがって,[エ]に基づかない[オ],例えば,[カ]などは[キ]ではない。また,身体的活動を伴わない単なる[ク],例えば,殺人の決意だけでは[ケ]とはいえず,刑法の処罰の対象外である。[コ]は,作為と不作為,故意の[サ]と過失の[シ]に分けられる。[ス]とは,積極的にある動作をすることをいい,[セ]とは,ある動作をしないことをいう。また,故意の[ソ]は,構成要件的結果を目指した[タ]であるのに対し,過失の[チ]は,これ以外の[ツ]である。

[62−45] 上記の[ア]から[ツ]までにそれぞれ適切な語を入れた場合,[ク]に入る語と同一のものが入るのは,次のうちどれか。

1. [ア]

2. [イ]

3. [ウ]

4. [コ]

5. [セ]

[62−46] 上記の[カ]に入るべき語の具体的事例として適切でないものは,次のうちどれか。

1. 甲が路上を歩行中,転倒しそうになったはずみに思わず傍らのAの顔面に手を当て,Aに顔面打撲の傷害を負わせた場合における甲の手を当てた動作

2. 夢遊病者甲が夢遊状態で歩行中,燃焼している石油ストーブに突き当たりこれを転倒させ,畳に燃え移るなどして家屋が焼失した場合における甲の突き当たった動作

3. 甲が岩壁で海を見ているAの真後ろに立っていたところ,Bに強く押し飛ばされてAに突き当たり,その勢いで人が転落して水死した場合における甲の突き当たった動作

4. 甲がA宅の階段を下りる際,突然失神して階段を踏み外し,踊り場の鏡にぶつかってこれを破損した場合における甲のぶつかった動作

5. 精神分裂病を患っている甲が,被害妄想のため包丁でAを刺して死亡させた場合における甲の刺した動作

[62−47] 次の記述のうち,刑法第37条第1項の緊急避難は違法性阻却事由であると解する説が,その根拠として挙げているものは何個あるか。

A 刑法第37条第1項本文は,法益の均衡を緊急避難の要件としている。

B 衝突する法益を衡量することが困難な場合がある。

C 刑法第37条第1項本文は,保全法益として,生命,身体,自由及び財産を規定している。

D 侵害されようとした者の利益を守るために犠牲にされようとする第三者が,その犠牲を甘受すべき義務はない。

E 刑法第37条第1項本文は,他人のための緊急避難を認めている。

1. 1個

2. 2個

3. 3個

4. 4個

5. 5個

[62−48] 次の記述のうち,法人の犯罪能力を肯定する説の論拠とされているものは何個あるか。

A 犯罪の行為主体と刑罰の受刑主体は一致すべきであるが,我が現行刑罰体系は自由刑を中心として構成されている。

B 法人の加害行為として評価される社会的実体が存在する。

C 従業者が事業主の業務に関して行った違反行為につき,その行為者のほか事業主に罰金を科する規定(以下「両罰規定」という。)は,行政法規の目的を達成するため,政策的に金銭支払義務を事業主に課したものにすぎない。

D 両罰規定は事業主の過失を推定したものであるが,その事業主には自然人のほか法人も含まれる。

E 法人は機関を通じて意思決定が可能であるから,その意思決定に瑕疵があった場合,これに対して法的非難を加えることができる。

1.  1個

2.  2個

3.  3個

4.  4個

5.  5個

[62−49] 次の記述のうち,誤っているものは何個あるか。

A 以前,医師の資格を有していた者が,資格を有していた時に診断した患者から頼まれ,資格を有していた時の日付で,警察署に提出する診断書に虚偽の記載をした場合,虚偽診断書作成罪が成立する。

B 国立病院に勤務する医師が,公務員たる資格において,裁判所に提出する死体検案書に虚偽の記載をした場合,虚偽診断書作成罪は成立しない。

C 医師でない者が,私人たる医師の名義を冒用して,町役場に提出する死亡証書に虚偽の記載をした場合,虚偽診断書作成罪が成立する。

D 医師の資格がないのに,医療行為を長期間にわたり続けていた者が患者から警察署に提出するための診断書の作成を頼まれ,医師が作成したかの如き虚偽の診断書を作成した場合,虚偽診断書作成罪は成立しない。

E 開業医が,患者から頼まれ,保険金を騙取するために保険会社に提出する診断書に,2ヵ月の加療を要する傷害であるのに6ヵ月の加療を要する旨の虚偽の記載をした場合,虚偽診断書作成罪が成立する。

1. 1個

2. 2個

3. 3個

4. 4個

5. 5個

−[62−50]から[62−52]まで−

次の文章は,ある判決文の要旨である。これを読んで,後記の[62−50]から[62−52]までの各問に答えよ。

刑法総則の従犯に関する規定は,予備罪が独立に処罰される場合のその予備罪についても適用されるのであろうか。思うに,犯罪の予備行為は,一般に基本的構成要件的結果を発生せしめる蓋然性は極めて少なく,したがって法益侵害の危険性も少ないわけであるから,通常可罰性はなく,特に,法益が国家的,社会的にすぐれて高いものと評価される特殊の犯罪に限って,その準備行為を法益侵害の危険性が看過できないものとして,刑法は,例外的に処罰の対象としているのである。しかし,[ア]。したがって,[イ]。そこで,[ウ]。ところで,[エ]。したがって,予備罪の従犯を処罰するかどうかについては特に厳正な解釈態度が要求されるのである。

[62−50] 次のAからDまでの文章は,上記文章の[ア]から[エ]に入るものである。その順序として適当なものはどれか。

A [ ]の行為も無定型,無限定である。したがって,もし,[ ]をも処罰するものとすれば,前の[ ]の場合にもまして,その[ ]として処罰される場合が著しく拡張される危険のあることは極めて明らかである。助言による[ ]の場合の如きを考えれば,言論活動の多くの場合までが,直ちに[ ]として処罰される危険性が高度である

B 刑法はこのように処罰の範囲がいたずらに拡張されることを警戒して,広範な[ ]の範囲を限定して,[ ]を構成すべき行為を限定的に列挙する場合もあり,更に又[ ]については,情状によりその刑を免除することにもしているわけである

C [ ]の実行行為は,無定型,無限定な行為であり,その態様も複雑,雑多であるから,たとえ,国家的,社会的にその危険性が極めて高い犯罪であっても,その準備行為を処罰することになれば,その処罰の範囲が著しく拡張され,社会的にはほとんど無視しても差し支えない行為の多くのものまでが[ ]として処罰されるおそれもないわけではない

D 犯罪の[ ]というものは,実行行為に着手する以前の犯罪への発展段階にあるすべての行為を指称するものであり,基本的犯罪構成要件の場合の如く,特に,それが定型的行為として限定されていないところに特色がある

1.C D A B

2.D C A B

3.B C A D

4.C A B D

5.D C B A

[62−51] 上記文章の[ ]に「予備罪」,「予備行為」,「予備罪の正犯」,「予備罪の従犯」,「予備罪の共同正犯」,「教唆犯」,「従犯」,の中から適切な語を選択して,これを完成したとき最も多く使用されるものと,次に多く使用されるものとの使用回数の差はどれか。

1.0回

2.1回

3.2回

4.3回

5.4回

[62−52] 次の記述のうち,上記判決の考え方から最もかけ離れた内容を含むものはどれか。

1. 拘留又は科料のみに処すべき犯罪については,原則として,教唆犯,従犯は処罰されない。

2. 従犯の刑は,正犯の刑に照らして減軽されている。

3. 予備罪の刑は,既遂,未遂のそれに比してきわめて軽い。

4. 内乱の予備罪については,その幇助行為を処罰する旨成文上明定されている。

5. 予備罪の背後行為を処罰する特別の規定は,いわゆる政治犯罪に限って設けられている。

[62−53] 公務執行妨害罪と業務妨害罪の関係については,公務は業務妨害罪における業務に含まれないとする説(甲説),公務も業務妨害罪における業務の一種であるが,公務執行妨害罪が成立する場合には,業務妨害罪は成立しないとする説(乙説),権力的・支配的公務は業務妨害罪の対象にはならないが,非権力的・非支配的公務はその対象となるとする説(丙説)などがあるが,次の記述のうち正しいものは何個あるか。

A 甲説によると,暴行・脅迫に至らない程度の威力を用いて公務員の職務の執行を妨害した場合,それがいかなる公務であっても,威力業務妨害罪は成立しない。

B 乙説によると,偽計を用いて警察官の逮捕行為を妨害した場合,偽計業務妨害罪が成立する。

C 乙説によると,国立大学の教授に暴行を加えてその講義を妨害した場合,威力業務妨害罪が成立する。

D 丙説によると,営林局の技官に偽計を用いて国有林の植栽調査を妨害した場合,偽計業務妨害罪は成立しない。

E 乙説,丙説のいずれによっても,衆議院本会議の傍聴席で大声をはりあげ審議を妨害した場合,威力業務妨害罪が成立する。

1. 1個

2. 2個

3. 3個

4. 4個

5. 5個

−[62−54]から[62−55]まで−

次の文章(ただし,各段落は順不同である。)を読んで,後記の[62−54]及び[62−55]の各問に答えよ。

A 事後に犯行に加担した者が,他の共犯者の過去の行為のうち一定時点以後の行為のみを自己の犯行の内容に取り入れようとする場合は,[ ]は事後に成立しているが,価値的にはその過去の一定時点において[ ]が成立し,それ以後の行為は共同して行われたといえるのである。

B [ ]において,事後に犯行に加担した者が,他の共犯者のそれ以前の行為についてまで[ ]を負担するのは,加担する以前の他の共犯者の行為を自己の犯行の手段として自己の犯行の内容に取り入れるからであり,結局[ ]が事後に成立しても価値的に見れば事前共謀に基づく[ ]と何ら差がない点に存するのである。

C 価値的には[ ]が成立しているとみとめられる過去の一定時点以後の他の共犯者の行為については,[ ]の範囲内,即ち共同して一定の犯行を遂行するという概括的認識の範囲内にある限り,具体的には認識しなかったとしても,それから生じた結果につき[ ]を免れないが,前記の一定時点以前の他の共犯者の行為は,[ ]の内容に入らずそれについてまで[ ]を負うべきいわれはない。

[62−54]文中の[ ]に「故意」,「共謀」,「共謀共同正犯」,「共同正犯」,「承継的共同正犯」,「責任」の語のうち,適切なものを選んで入れた場合,最も多く使用される語とその次に多く使用される語との使用回数の差はどれか。

1.1回

2.2回

3.3回

4.4回

5.5回

[62−55] 次の文中の[ ]の部分に,前記A,B,Cの文章のうち適切なものを入れた場合,ア,イ,ウに入る文章の順序について正しいものはどれか。

1. A B C

2. A C B

3. B C A

4. B A C

5. C A B

[62−56] 次の文章は,いわゆるキセル乗車の行為について詐欺利得罪の成立を認めたある下級裁判所の判決文の一部である。下記AからEまでの記述のうち,この判決の理解として適切でないものは何個あるか。

「刑法246条2項の詐欺利得罪は,他人に対して虚偽の事実を告知し,もしくは真実の事実を隠ぺいするなどして欺罔することによりその他人を錯誤させ,その結果,特定の処分または意思表示(以下「処分行為」という。)をさせて,財産上の利益を得,または第三者をして得せしめた場合に成立するものであって,その利得は処分行為から直接に生ずるものでなくてはならないことはいうまでもないが,被欺圏者以外の者が右の処分行為をする場合であっても,被欺罔者が日本国有鉄道のような組織体の一職員であって,被欺罔者のとった処置により当然にその組織体の他の職員から有償的役務の提供を受け,これによって欺罔行為をした者が財産上の利益を得,または第三者をして得させる場合にも成立するものと解すべきであり,また.乗車区間の一部について乗車券を所持していても,その乗車券を行使することが不正乗車による利益を取得するための手段としてなされるときには,権利の行使に仮託したものに過ぎず,とうてい正当な権利の行使とはいえないから,その乗車券を有する区間を包括し,乗車した全区間について詐欺罪が成立するといわなければならない。」

A キセル乗車を詐欺利得罪とする説は,乗車駅において改札係員を欺罔し輸送の利益を得たものと解する見解と乗車駅における詐欺罪の成立を否定し下車駅において改札係員を欺罔して運賃債務を免れたものと解する見解とに分かれるが,本判決は後者の見解をとったものである。

B 本判決は,取得した財物,財産上の利得が不可分の場合には全体について詐欺罪が成立するという考え方に立脚している。

C 本判決の見解によれば,キセル乗車の意図を秘して乗車したが,列車が乗車券の有効区間を通過した後,翻意し,下車駅で運賃の清算をした場合には,詐欺利得罪の未遂となる。

D 本判決は,鉄道企業体それ自体を被欺罔者であり処分行為者でもあるとみている。

E 本判決の見解は,被欺罔者を乗車駅の改札係員,処分行為者を目的駅まで輸送した乗務職員であるとするものである。

1. 1個

2. 2個

3. 3個

4. 4個

5. 5個

[62−57] 改正刑法仮案及び改正刑法草案の法律の錯誤に関する規定は次のとおりである。下記1から5までのうち,誤っているものはどれか。

(改正刑法仮案)

第11条第1項 法律ヲ知ラサルヲ以テ故意ナシト為スコトヲ得ス但シ情状ニ凶リ其ノ刑ヲ減軽又ハ免除スルコトヲ得

    第2項 法律ヲ知ラサル場合ニ於テ自己ノ行為カ法律上許サレタルモノト信シタルコトニ付相当ノ理由アルトキハ其ノ刑ヲ免除ス

(改正刑法草案)

第21条第1項 法律を知らなかったとしても,そのことによって故意がなかったとはいえない。但し,情状によって,その刑を軽減することができる。

    第2項 自己の行為が法律上許されないものであることを知らないで犯した者は,そのことについて相当の理由があるときは,これを罰しない。

1. 仮案は,違法性の意識は故意の要件ではないとする説に立脚している。

2. 仮案では,法律の錯誤に相当の理由があった場合でも犯罪の成立を認めることになる。

3. 草案では,法律の錯誤に相当の理由があった場合には故意犯の成立を認めないことになる。

4. 草案は,現行刑法第38条3項よりも規定の上では責任主義を一歩前進させたものである。

5. 草案は,違法性の意識は故意の要件であるとする立場を採用したものである。

[62−58] 次の記述のうち,甲に( )内の罪が成立しないものは何個あるか。

A 甲は,自己所有の指輪をAに賃貸していたが,賃料の支払いが滞りがちなので,A宅に遊びに行った時,Aのすきをみて宝石箱からその指輪を抜き取った。(窃盗罪)

B 甲は,自己所有の宅地に抵当権を設定しその登記を終えた後,抵当権者に無断でその宅地に家を建てた。(不動産侵奪罪)

C 甲は,自己所有のカメラをAに質入れした後,返還する意思がないのに,「一寸だけ貸して下さい。」と噂をついて,Aからそのカメラを取り戻した。(詐欺罪)

D 甲は,自己所有の建物に抵当権を設定しその登記を終えた後,抵当権者に無断でその建物をAに売却した。(横領罪)

E 甲は,自己所有の建物に抵当権を設定しその登記を終えた後,抵当権者に無断で,その建物を壊した。(建造物損壊罪)

1. 1個

2. 2個

3. 3個

4. 4個

5. 5個

[62−59] 次の記述のうち,誤っているものは何個あるか。

A 不真正不作為犯は,不作為が作為の形で規定されている構成要件に含まれるかどうかという点で,罪刑法定主義上問題があるとする見解がある。

B 不真正不作為犯は,構成要件が作為犯の形で規定されているため,その作為義務の範囲が必ずしも明確とはいえないという批判がある。

C 不真正不作為犯の作為義務は,通説,判例によれば,事務管理に基づいて認められる場合もある。

D 不真正不作為犯は,作為義務にしたがった行為をしても,構成要件的結果が発生した以上,成立することがある。

E 不真正不作為犯の作為義務は,行為者と被害者との間に一定の身分関係がある場合には,当然,発生する。

1. 1個

2. 2個

3. 3個

4. 4個

5. 5個

[62−60] 次の記述について後記1から5までのうち,正しいものはどれか。

A 白墨で書かれた市役所の広報用告知板の掲示を抹消した場合,業務妨害罪が成立することはあり得るとしても,公用文書毀棄罪が成立する余地はない。

B 司法警察員が現に作成中の弁解録取書を被疑者が取り上げて破り捨てた場合,公務執行妨害罪が成すすることはあり得るとしても,公用文書毀棄罪が成立する余地はない。

C 他人の養魚池の水門を開き,鯉2,000余尾を流出させた場合,業務妨害罪が成立することはあり得るとしても,器物損壊罪が成立する余地はない。

D 校庭にくいを打ち込み授業や課外活動に支障を生じさせた場合,業務妨害罪が成立することはあり得るとしても,器物損壊罪が成立する余地はない。

E 料亭の客室の畳に墨汁をまいてこれを汚損させた場合,業務妨害罪が成立することはあり得るとしても,建造物損壊罪が成立する余地はない。

1. Eのみが正しく,他は誤りである。

2. D及びEが正しく,他は誤りである。

3. C,D及びEが正しく,他は誤りである。

4. すべてが正しい。

5. すべてが誤である。

ホームページに戻る。   年度別一覧<刑法>に戻る。