[H02−41] 甲の刑事責任に関する次の記述のうち,明らかに誤っているものは何個あるか。

ア  甲は,業務として自動車を運転走行中,泥酔して道路上に寝ているAを見落とし,Aを轢過して即死させた場合には,甲運転の自動車のすぐ後ろに乙運転の自動車が続いていて,甲が轢過しなくても乙が燦遇してAを即死させることが明らかだったとしても,甲は業務上過失致死罪の責任を負う。

イ  甲は,バーで飲食し,その代金を踏み倒すつもりで店主のAに暴力団員であることを示して脅迫し,結局Aから代金支払の免除を受けて店を立ち去ったが,実はAは甲と同じ系列の暴力団の組長であって,甲の態度が気に入ったので代金の支払を免除したという場合には,甲は恐喝既遂罪の責任を負う。

ウ  甲は,Aを殺害しようとしてAの腹部を日本刀で突き刺して重傷を負わせ,Aを病院に入院するに至らせた。ところが.Aは病院で更に甲とは共犯関係のない乙からも腹部をナイフで突き刺され,結局甲の行為の一週間後に死亡したが,死因は,日本刀による傷害に基づく可能性があるものの,ナイフによる傷害に基づく可能性も否定できないという場合には,甲は傷害致死罪の責任を負う。

エ  甲は,裁判所を騙そうとして宣誓の上ことさらに虚偽の証言をしたが,裁判所がこれを見抜き甲の証言を証拠から排除して正しい判決をした場合には,甲は偽証罪の責任を負わない。

オ  甲は,深夜酒に酔って道路上に寝ていたAをたまたま見つけ,それを放置しておくと自動車に轢かれて死ぬかもしれないと思ったが,そのまま立ち去った。その直後Aが走行中の自動車に跳ねられて死亡した場合には,甲は殺人既遂罪の責任を負う。

1.1個   2.2個   3.3個   4.4個   5.5個

[H02−42] 偽造通貨(以下「偽貨」という。)を行使して財物を騙取した場合に偽貨行使罪のほか詐欺罪も成立するかについては,積極・消極の両説がある。以下の文章は,積極説をとる学生Aと消極説をとる学生Bとの対話であるが,それぞれの主張の論拠として最も適切でないものはどれか。

1. B「偽貨の行使は,通常,財物の騙取を伴うものであり,偽貨行使罪の規定は構成要件の定型として,これを予想しているはずだ。」

2. A「しかし,偽貨を贈与した場合を考えると,偽貨行使罪が常に欺罔行為を伴うとはいえず,これを伴う場合には,更に詐欺罪が成立すると考えられる。」

3. B「君の考えだと,偽貨収得後知情行使罪(罰金又は科料)についても,ほとんどの場合に詐欺罪の成立を認めることになり,せっかく期待可能性が低いなどの理由から軽い刑で臨んでいる趣旨が没却されることになる。」

4. A「その場合,詐欺の結果が発生していることが明白であるのに,極めて軽い偽貨収得後知情行使罪で処断されるのは,かえって公平に反することになると思う。」

5. B「しかしその場合,同罪のほかに詐欺罪の成立を認めることになると,詐欺の刑が重いから,国家的・社会的法益を侵害する行為がありながら,個人的法益を侵害する罪の刑で処断されることとなり,相当でないと思う。」

[H02−43] 次の文章は,偽造した国民健康保険被保険者資格取得届を区役所の職員に提出して国民健康保険被保険者証の交付を受けた事案につき,詐欺罪の成立を認めた下級審判決の一部である。下記AからEを(   )内に入れた場合,( ウ )と( オ )に入る文章の組合せとして最も適切なものは,後記1から5までのうちどれか。

「国民健康保険被保険者証は,国民健康保険により療養の給付を受け得る資格を有するものであることを証明する文書であって,被保険者が療養の給付を受けようとするときは,原則としてこれを療養取扱機関に提出しなければならないものである。また,同被保険者証は社会生活上個人の同一性を識別するために広く事実上の機能を果しているという面をも有する。したがって,( ア )。かりに,( イ )。もっとも,( ウ )。なお,( エ )。( オ )。」

A 欺罔手段を用いて国民健康保険被保険者証の交付を受ける行為が国民健康保険行為の秩序を害するものとして,国家的,社会的法益の侵害に向けられた側面を有することはもちろんであるが,その故をもって当然に詐欺罪の成立が排除されるものではない

B 同被保険者証は,その文書自体として,一般的,客観的に見て,重要な経済的社会的価値効用を有するものであるから,刑法のいわゆる財産罪の保護に値し,同法246条1項の「財物」に当たると解される

C 誰かが正規に交付を受けて所持していた国民健康保険被保険者証を騙取したという場合,財物性を否定するわけにはいかないであろう

D 本件の国民健康保険被保険者証は,他人名義を冒用して不正に取得したものであるが,権限のある機関が発行し,正規のものと外見上何らの差異もないものである以上,事実上右と同様の経済的,社会的価値効用を有することは否定し難いのであって,不正取得したものであるが故に財物性を失うことにはならない

E 右のような行為につき,詐欺罪の適用を排除する趣旨の規定が特別に設けられていない以上,詐欺罪の成立が否定される理由はないというべきである

1.ウーE,オーB   2.ウーD,オーE   3.ウーC,オーA

4.ウーB,オーE   5.ウーA,オーB

[H02−44] 刑法第8条は,「本法ノ総則ハ他ノ法令ニ於テ刑ヲ定メタルモノニ亦之ヲ通用ス但其法令ニ特別ノ規定アルトキハ此限二在ラス」と規定するが,次のうち「特別ノ規定」に当たるものは何個あるか。

A 刑事訴訟法第150条第1項

  「召喚を受けた証人が正当な理由がなく出頭しないときは,決定で,五千円以下の過料に処し,且つ,出頭しないために生じた費用の賠償を命ずることができる。」

B 売春防止法第14条

  「法人の代表者又は法人若しくは人の代理人,使用人その他の従業者が,その法人又は人の業務に関し,第九条から前条までの罪を犯したときは,その行為者を罰するほか,その法人又は人に対しても,各本条の罰金刑を科する。」

C 軽犯罪法第3条

  「第一条の罪を教唆し,又は幇助した者は,正犯に準ずる。」

D 法人ノ役員処罰ニ関スル法律

  「法人ノ業務ヲ執行スル社員,取締役,理事,監査役又ハ監事ニシテ刑事訴追又ハ刑ノ執行ヲ免レシムル為合併其ノ他ノ方法ニ依リ法人ヲ消滅セシメタル者ハ五年以下ノ懲役ニ処ス」

E 爆発物取締罰則第11条

  「第一条ニ記載シタル犯罪ノ予備陰謀ヲ為シタル者ト雖モ未タ其事ヲ行ハサル前ニ於テ官ニ自首シ因テ危害ヲ為スニ至ラサル時ハ其刑ヲ免除ス第五条ニ記載シタル犯罪者モ亦同シ」

1. 1個  2.2個  3.3個  4.4個  5.5個

[H02−45] 業務上横領罪の身分犯としての性格と刑法第65条の解釈について,次のa,b,cと@,A,Bの説があるものとし,刑の均衡等他の要素は考えないことを前提とすると,非占有者が業務上占有者の横領行為を幇助した場合の罪責に関するアからオまでの文章のうち明らかに誤っているものは何個あるか。

a 業務上横領罪は,非占有者との関係では,「業務上」・「占有者」という二つの点での二重の真正身分犯である。

b 業務上横領罪は,占有離脱物横領罪に対して「業務上」・「占有者」という二つの身分によって刑を加重される不真正身分犯である。

c 業務上横領罪は,非占有者との関係では,「占有者」という点は真正身分,「業務上」という点は不真正身分であり,「通常ノ刑」は単純横領罪の刑である。

@  第65条第1項は真正身分犯,第2項は不真正身分犯に適用される。

A  第65条第1項は,真正身分犯,不真正身分犯を通じて共犯成立の問題を規定し,第2項は不真正身分犯についての科刑を規定したものである。

B  第65条第1項は違法身分に関する規定であり,第2項は責任身分に関する規定である。

ア  aと@を併せて考えるとすると,非占有者は,業務上横領罪の幇助犯として処断される。

イ  aとAを併せて考えるとすると,非占有者は,単純横領罪の幇助犯として処断される。

ウ  bと@を併せて考えるとすると,非占有者は,占有離脱物横領罪の幇助犯として処断される。

エ  cとAを併せて考えるとすると,非占有者は,単純横領罪の幇助犯として処断される。

オ  Bの考え方により,「業務上」が責任身分,「占有」が違法身分だとすると,非占有者は,単純横領罪の幇助犯として処断される。

1. 1個   2.2個   3.3個   4.4個   5.5個

(参照条文)

第65条第1項 犯人ノ身分ニ因リ構成ス可へキ犯罪行為二加功シタルトキハ其身分ナキ者ト雖モ仍ホ共犯トス

第2項  身分ニ因リ特ニ刑ノ軽重アルトキハ其身分ナキ者ニハ通常ノ刑ヲ科ス

―[H02−46]から[H02−47]までー

次のAからEまでの文章を正しい順序に並べると「一般に,( ア )。そうでなければ( イ )。( ウ )。しかしながら,( エ )。( オ )。」という違法性の意識に関する下級審判決の要旨となる。これを読み[H02−46]と[H02−47]の各問に答えよ。

A 各行為者の主観的な考え方,信念,知識等の違いにより,ある者については犯罪が成立し,他の者については犯罪が成立しないというはなはだ不規則で不均衡な事態が生じ,法的秩序は個人の主観的な偏差基準などによって左右されてしまうからである

B どのような特別の事情が存在した場合に,この例外的な判断を下すべきかが問題であるが,本件についていうならば,本件の刑罰法規に関連していると考えられる確定した判例や所管官庁の公式の見解又は刑罰法規の職責を有する公務員の公の言明などに従って行動した場合,ないしこれに準ずる場合に限られると解するのが相当である

C 多くの判例上も,たまたまその行為者がある刑罰法規について詳しい知識がないか,又は誤った知識をもちあるいは軽率な判断をしたため若しくは他人の意見を安易に信用したりした結果,自己の行為がその刑罰法規に触れないと考え,又はそのように信じたからといって処罰を免れるものではないとしており当裁判所も基本的にはこのような解釈が正当であると考える

D ある行為者の行為が,客観的に一定の刑罰法規の構成要件に該当するとともに,行為者がその行為の全ぼうについて認識していた場合には,たとえ行為者において,自己の行為が特定の刑罰法規に触れるものであることについて法的認識がないだけでなく,特別な事情により,自己の行為が法的に許されたもので処罰などされることはないと信じていたとしても,そのことから直ちに犯罪の成立が否定されるものではないと解すべきである

E 特別な事情が存在し,その行為者において,その行為が許されたものであると信じ,かつ,そのように信じるについて全く無理もないと考えられるような場合には,刑法の責任主義の原則に従い,もはや法的非難の可能性はないとして,例外的に犯罪の成立が否定されると解すべきである

[H02−46] AからEまでの文章のうち適当なものを一つずつ( ア )から( オ )に選んで入れた場合,( ア )と( ウ )に入る組合せとして最も適切なものはどれか。

1. C E   2.D C   3.D E   4.B E   5.D A

[H02−47]この判決の要旨に関する次のイからホまでの記述のうち,明らかに妥当でないものは何個あるか。

イ  この判決は,違法性の意識ないしその可能性を独立の責任要素とする見解と矛盾する。

ロ この判決は,故意の成立について,違法性の意識の存在が必要であるという見解に立脚している。

ハ  この判決は,故意の成立について,違法性の意識の可能性があればよいとする見解と矛盾する。

ニ この判決によると,過失によって違法性の意識を欠いた場合において,過失犯の処罰規定があるときには,直ちに過失犯として処罰される。

ホ  この判決は,「法の不知は害する」という原則を徹底させるものではない。

1.1個   2.2個   3.3個   4.4個   5.5個

[H02−48] 次の文章はある判決の要旨である。( )内に「原因設定行為」「実行」「罪となるべき事実」「責任無能力」「限定責任能力」「認識・予見」のうちから,適切なものを入れた場合,5回使用される語はいくつあるか。

「原因において自由な行為について,当裁判所は,行為者が責任能力ある状態のもとで@自らを精神障害にもとづく( )ないし( )の状態にして犯罪を( )する意思で,まず,( )に出た上,( )を生ぜしめること,A若しくは,右各状態において犯罪の( )をするかもしれないことを( )しながらあえて( )に出,( )を生ぜしめること,B又は,右各状態において( )を惹起させるであろうことの( )が可能であるのに不注意によってこれを( )しないで( )に出,( )を惹起させることをいうと解する。右の( )又は( )の状態は,行為者が積極的に右各状態に置こうとしてその状態になった場合に限らず,( )状態に至るべきことを予見しながら,( )状態に止まった場合や,( )状態に至るべきことを予見したが,( )の状態まで至った場合も含むことは勿論である。この際,( )又は( )の状態において犯罪の( )又はその可能性の( )があるときは故意行為であり,かつ,不注意があれば過失行為となるのであるから,右の故意過失なしに,たまたま飲酒,薬物により右各状態に陥り,右各状態で( )を生ぜしめた場合は,これに該当しないのは当然である。」

1. 0個  2.1個  3.2個  4.3個  5.4個

[H02−49] 人の身体に対する投石が暴行に当たるとして,次の記述における甲,乙,丙の罪責を論じた場合,下記アからオまでのうち成立する可能性のあるものは何個あるか。

甲は,犬を連れて散歩中のAに対し,同人に軽度の傷害を負わせる意思で投石したが,甲の投石と同時に,乙と丙も,Aに軽度の傷害を負わせる意思で同人に向かって投石した。その結果,一個の石が命中してAが傷つき,別の一個の石が犬に命中して犬が死んだが,残りの一個が偶然通りかかったBに命中して同人が死亡するという予期せぬ事態が生じた。甲,乙,丙とも,石が犬に当たっても構わないと思っていたが,Bに対する暴行及び傷害の意思はなく,またいずれも相互に相手が投石していることを知らなかった。

ア  甲,乙,丙ともに傷害罪

イ  甲,乙,丙ともに傷害罪及び過失致死罪

ウ  甲,乙,丙ともに傷害罪,過失致死罪及び器物損壊罪

エ  甲,乙,丙ともに傷害罪,傷害致死罪及び器物損壊罪

オ  甲,乙,丙ともに傷害罪及び傷害致死罪

1.0個 2.1個 3.2個 4.3個 5.4個

[H02−50] 公務が威力業務妨害罪の「業務」に含まれるかどうかについて次のアからエまでの考え方があるとして,これらの考え方に関する下記AからEまでの文章のうち,誤っているものは何個あるか。

ア  すべての公務は,威力業務妨害罪の対象になる。

イ  非公務員による「公務」は,威力業務妨害罪の対象になるが,公務員による「公務」はその対象にならない。

ウ  強制力行使を伴う「権力的な公務」は,威力業務妨害罪の対象にならないが,「権力的でない公務」は,威力業務妨害罪の対象になる。

エ  いわゆる「現業性のある公務」は,威力業務妨害罪の対象になるが,「現業性のない公務」は威力業務妨害罪の対象にならない。

A 権力的な公務が,現業性のない公務に含まれるとすると,エの考え方では権力的な公務に対して,威力業務妨害罪が成立する可能性もある。

B アからエまでのどの考え方によっても,非公務員に対する公務に対して,威力業務妨害罪が成立する可能性もある。

C ア及びウの考え方では,公務員による公務でも,権力的でない公務に対しては,威力業務妨害罪が成立する可能性もある。

D 現業性のない公務が権力的な公務に含まれるとすると,ウの考え方では,現業性のない公務に対し,威力業務妨害罪が成立する可能性もある。

E 現業性のない公務は,必ずしも権力的な公務には含まれないとすると,ウの考え方では,非公務員の現業性のない公務に対し,威力業務妨害罪が成立する可能性もある。

1. 1個   2.2個   3.3個   4.4個   5.5個

[H02−51] 次のAとBの会話から予想される事例として最も適切なものは,後記1から5までのうちどれか。

A 本件では,まず事後強盗の成否が問題となるね。事後強盗の要件のうち,「窃盗犯人」という身分,「窃盗と暴行との時間的,場所的接着性」「逮捕を免れるため」という要件は満たしているが,暴行の程度はどうだろう。

B 暴行の程度については,反抗を抑圧するに足りるものであることを要するが,本件では問題なく肯定できる。

A 公務執行妨害はどうだろう。

B 公務員の職務の執行であることは間違いない。職務の執行の適法性についても,主観説,客観説,折衷説,いずれの立場に立とうと肯定できる。

A しかし公務員の職務の執行であることを甲は認識できただろうか。

B その点が問題だね。

1. 甲は,乙方において財物を窃取したが,帰宅した乙に発見されて逃走し,その後,警ら中の制服警察官丙に態度を怪しまれ職務質問を受けたため,丙を手拳で殴打した。

2. 甲は,乙方において財物を窃取したが,たまたま非番で家にいた警察官乙から,「警官だ。逮捕する。」と言われ,現行犯逮捕されそうになったため,乙を手拳で殴打した。

3. 甲は,乙方において財物を窃取し,数日後盗品を身につけているのを乙に発見され,これを取り戻そうとした乙ともみ合いになったが,「泥棒」と叫ぶ乙の声を聞いて駆けつけた警ら中の制服警察官丙から窃盗犯人として現行犯逮捕されそうになったため,丙にナイフで切りつけた。

4. 甲は,乙方において財物を窃取し,帰宅した乙に発見されて逃走中,乙に追われている甲を見て窃盗犯人と考えた警ら中の制服警察官丙に現行犯逮捕されそうになったため,丙を手挙で殴打した。

5. 甲は,乙方において財物を窃取したが,帰宅した乙に発見され逃走中,乙に追われている甲を見て窃盗犯人と考えたスリ事犯取締り中の私服警察官丙に現行犯逮捕されそうになったため,丙にナイフで切りつけた。

[H02−52] 次のTからXはいわゆる「具体的事実の錯誤」が問題となる事例であり,下記@ないしDは,これらにつきいかなる犯罪が成立するかを示した見解であるが,右事例と見解を組み合わせた場合,正しいものはどれか。

(事例)

T 甲は,Aを殺害しようとして待ち伏せしていたが,偶々その場を通りかかったBをAと誤信して射殺した。

U 甲は,Aを殺害しようとして拳銃を発射したが,弾丸はAの側にいたBに命中してBが死亡した。

V 甲は,Aを殺害しようとして拳銃を発射したが,弾丸はAの腕を貫通した上で,側にいたBに命中してBが死亡した。

W 甲は,Aを殺害しようとして拳銃を発射したが,弾丸は側にいたBの腕を貫通した上でAに命中してAが死亡した。

X 甲は,Aを殺害しようとして拳銃を発射したが,弾丸は側にいたBの胸部を貫通した上でAにも命中し,A,Bが共に死亡した。

(見解)

@  法定的符合説の立場では,Bに対する殺人罪とAに対する殺人未遂罪を認めるなりいくつかの考え方があるが,具体的符合説の立場では,Aに対する殺人未遂罪とBに対する過失致死罪を認めると解している。

A  法定的符合説の立場では,Bに対する殺人罪を認めるが,具体的符合説の立場では,Aに対する殺人未遂罪とBに対する過失致死罪を認めると解している。

B  法定的符合説の立場では,AにもBにも殺人罪を認めるが,具体的符合説の立場では,Aに対する殺人罪とBに対する過失致死罪を認めると解している。

C  法定的符合説の立場では,Aに対する殺人罪とBに対する殺人未遂罪とを認めるなどいくつかの考え方があるが,具体的符合説の立場では,Aに対する殺人罪とBに対する過失傷害罪を認めると解している。

D  法定的符合説の立場では,Bに対する殺人罪を認めるが,具体的符合説の立場でも,結論的には,Bに対する殺人罪を認めると解している。

1. T−D U−A V−@ W−C X−B

2. T−D U−@ V−A W−B X−C

3. T−@ U−C V−A W−B X−D

4. T−C U−D V−@ W−A X−B

5. T−D U−A V−C W−@ X−B

−[H02−53]から[H02−54]まで−

次の文章は道路交通法に違反して検挙された違反者が,交通事件原票の供述書末尾に他人の事前の承諾のもとにその氏名を署名した行為について,有印私文書偽造罪の成立を認めた下級審判決の一部である。これを読み[H02−53]と[H02−54]の各問に答えよ。

本件のように道路交通法に違反した者が交通切符を切られる際,あらかじめ他人の承諾を得ておいたうえ,交通事件原票中の供述書欄の末尾に当該他人の名義の署名をして右供述書を作成した場合に,刑法159条1項の私文書偽造罪が成立するか否かは,さらに慎重な検討を要する問題であり,当裁判所は,右のような場合には他人の事前の承諾を得ていても私文書偽造罪が成立するものと考える。すなわち,( ア )。( イ )。しかし,本件における供述書の場合,交通事件原票下欄に道路交通法違反現認・認知報告書の欄があり,その下部に,司法巡査の「違反者は,上記違反事実について,昭和53年10月18日次のとおり供述書を作成した。」との記載があり,その下方に供述書甲と題し「私が上記違反をしたことは相違ありません。事情は次のとおりであります。」との不動文字が印刷されていて,その最下部に署名すべきものとなっている。従って,( ウ )。( エ )。従って,( オ )。

[H02−53] 次の1から5は上記判決文の(  )に入る文章を順不同に並べたものである。( エ )に入る文章は1から5までのうちどれか。

1. 一般に名義人以外の者が私文書を作成しても,内容が名義人において自由に処分できる事項に関するかぎり,事前に名義人の承諾を得てあれば,右の作成は偽造罪に該当しないものと解されている

2. 本件のように,他人名義で作成された供述書は,たとえ当該名義人の承諾を得ていたとしても,権限に基づかないで作成されたものであり,当該名義人の意思又は観念を表示しているものとはなり得ないものであって,供述書の作成名義の真正に対する公共の信用が害されることは明らかである

3. 通常の私文書の場合には,名義人の承諾を得れば,その名義で文書を作成する権限が作成者に与えられ,このような権限により作成された文書は,名義人の意思を表示するものであって,当該文書の作成名義の真正に対する公共の信用が害されることもなく,私文書偽造罪の成立を認めるべき理由はないからである

4. その文書としての形式,内容からすれば,事実証明に関する私文書というべきものであるが,その内容は自己の違反事実の有無等当該違反者個人に専属する事実に関するものであって,名義人が自由に処分できる性質のものではなく,専ら当該違反者本人に対する道路交通法違反事件の処理という公の手続のために用いられるものである

5. そのような性質からすると,名義人自身によって作成されることだけが予定されているものであり,他人の名義で作成することは許されないものといわなければならないから,当該違反者は,名義人の承諾があってもその名義で供述書を作成する権限はないものというべきである

[H02−54] 次のうち,この判決の理解として最も妥当なものはどれか。

1. 本判決は,名義人が違反事実を認識した上で承諾を与えた場合は,私文書偽造罪が成立しない余地があることを認めているものである。

2. 本判決は,違反者が偽名で署名した場合であっても,当該偽名が違反者の一般的な通称であるときは,私文書偽造罪が成立しないことを認めているものである。

3. 本判決は,名義人の承諾は適法なものであることを要し,違法な目的をもって承諾が得られた場合,私文書偽造罪が成立する立場を前提とするものである。

4. 本判決は,名義人が実在しており,その個人的信用毀損が考えられることから,これを保護法益とする私文書偽造罪が成立するとしたものである。

5. 本判決は,供述書による本件交通違反の効果が,違反者でない名義人に及んでいく危険性があることを私文書偽造罪が成立するとする直接の理由にはしていない。

[H02−55] 次の表は,刑法第108条,第109条第1項,第110条第1項,同条第2項の各罪について,客体,行為・結果,法定刑を「0」,「1」で記号化したものである。同法第109条第2項の罪の欄に入るべき数字は,次のうちどれか。ただし数字は客体,行為・結果,法定刑の順で並んでいるものとする。

            客 体   行為・結果  法定刑

刑法第108条     1100  110   1110

刑法第109条第1項  1000  110   0010

刑法第109条第2項

刑法第110条第1項  0010  111   0010

刑法第110条第2項  0011  111   0011

(参照条文)

刑法第108条 火ヲ放テ現ニ人ノ住居ニ使用シ又ハ人ノ現在スル建造物,汽車,電車,艦船若クハ鉱坑ヲ焼燬シタル者ハ死刑又ハ無期若クハ五年以上ノ懲役ニ処ス

刑法第109条第1項 火ヲ放テ現ニ人ノ住居ニ使用セス又ハ人ノ現在サセル建造物,艦船若クハ鉱坑ヲ焼燬シタル者ハ二年以上ノ有期懲役ニ処ス

刑法第109条第2項 前頃ノ物自己ノ所有に係ルトキハ六月以上七年以下ノ懲役ニ処ス但公共ノ危険ヲ生セサルトキハ之ヲ罰セス

刑法第110条第1項 火ヲ放テ前二条ニ記載シタル以外ノ物ヲ焼燬シ因テ公共ノ危険ヲ生セシメタル者ハ一年以上十年以下ノ懲役ニ処ス

刑法第110条第2項 前項ノ物自己ノ所有ニ係ルトキハ一年以下ノ懲役又ハ百円以下ノ罰金ニ処ス

1. 1011−111−0010

2. 1001−111−0010

3. 1001−110−0010

4. 1101−011−0011

5. 1001−110−0011

[H02−56] 次のAからEまでの各事例につき成立する罪として,Aが正しものは何個あるか。

事例A 非現住建造物を現住建造物と誤信して放火し,これを焼燬した。

@  非現住建造物放火罪

A  現住建造物放火罪

事例B 現住建造物を焼燬する意思で,隣接する非現住建造物に放火したが,降雨のため,非現住建造物を焼燬するにとどまった。

@  非現住建造物放火罪

A  現住建造物放火未遂罪

事例C 現住建造物を焼燬する意思で,隣接する非現住建造物に放火し,現住建造物に燃え移らせて焼燬した。

@  非現住建造物放火罪と現住建造物放火罪の観念的競合

A  現住建造物放火罪

事例D 家族と共に居住する自己所有の家屋に,家族の旅行中に放火し,これを焼燬した。

@  現住建造物放火罪

A  非現住建造物放火罪

事例E 由緒ある文化財の非現住建造物を焼燬する意思で,その手段として隣接する現住建造物に放火し非現住建造物に燃え移らせていずれも焼燬した。

@  現住建造物放火罪と非現住建造物放火罪の牽連犯

A  現住建造物放火罪

1. 1個  2.2個  3.3個  4.4個  5.5個

[H02−57] 賄賂罪に関する次の記述のうち,誤っているものは何個あるか。

A 贈賄者が賄賂として金品を供与し,公務員がこれを収受したとしても,公務員に賄賂の認識がなければ,賄賂収受罪が成立しないのはもちろん,いわゆる必要的共犯であることから,賄賂供与罪も成立せず,同申込罪も成立しない。

B 賄賂罪にあたる「賄賂」とは必ずしも金銭等の有形的な利益に限定されず,売春婦との情交等も広く含まれると解されているが,これは,贈賄者が右情交等の代金の支払をし,反面,収賄者が代金の支払を免れるという経済的側面を有しているからである。したがって,一般の女子が公務員との情交に応じることが賄賂になることはない。

C 刑法第197条の2(第三者供賄)にいう「第三者」には,公務員と直接生活上の関係のない者をも含むと解される。しかし賄賂というためには,その供与自体が違法と評価されるようなものでなければならず,いかに公務員の職務に関連性があろうとも,公益的な慈善団体に金銭を寄付させるような行為は,同罪を成立させる余地はない。

D 刑法第197条第1項前段(単純収賄)の罪が成立するためには,公務員等が贈賄者のため,何らかの職務上の不正な行為等を行う必要はない。しかし.同罪を犯した後,それに起因して贈賄者ため職務上不正な行為を行ったときには,刑法第197条の3第1項(枉法収賄)の罪のみが成立する。

E 公務員甲が,他の公務員乙の職務につき,金銭等を収受したときは,刑法第197条の4(あっせん収賄)の罪の成立が考えられる。しかし,乙が甲と同じ部署に属する者であって,甲がその職務を担当しないのは内部の事務分配によるにすぎないような場合には,同条以外の収賄の罪が成立する余地がある。

1. 1個 2.2個 3.3個 4.4個 5.5個

[H02−58] 次の文章はある最高裁判所決定の要旨である。この決定に関する次の各記述のうち適切でないものの組合せはどれか。

「被告人所有の建物につき根抵当権の設定を受けた甲が抵当権実行の結果自らこれを競落して,同人に対する所有権移転登記が経由された後,執行官が右建物につき不動産引渡命令の執行をしようとした際,被告人が同建物の損壊に及んだ等の判示の事実関係の下では,たとえ被告人が右根抵当権設定の意思表示は甲の側の詐欺によるものとしてこれを取り消したから同建物は依然として自己所有の物であると主張し,将来民事訴訟等において右詐欺の主張が認められる可能性を否定し去ることができないとしても,同建物は刑法260条の『他人の』建造物に当たるというべきである。」

(参照条文)

刑法第260条 他人ノ建造物又ハ艦船ヲ損壊シタル者ハ五年以下ノ懲役ニ処ス

刑法第262条 自己ノ物ト雖モ差押ヲ受ケ,物権ヲ負担シ又ハ賃貸シタルモノヲ損壊又ハ傷害シタルトキハ前三条ノ例ニ依ル

A 本決定は,民事裁判において詐欺による根抵当権設定契約の取消の主張が認められるか否かにかかわらず,本件の事実関係の下では,建造物損壊罪が成立するとしたものである。

B 本決定は,財産犯の保護法益に関する本権説に立ち,他人が占有する建物を損壊しても,その占有が本権その他の法律的原因に基づくものでなければ,建造物損壊罪は成立しないとしたものである。

C 本決定は,損壊行為の後に取消の意思表示が行われた場合には,既に成立した建造物損壊罪を遡って不成立とすることはできないという理由で同罪の成立を認めたものである。

D 本決定によれば,賃貸人が正当事由に基づき,賃貸借契約の解約を行ったにもかかわらず,賃借人が正当事由の存在を争って建物の占有を継続している場合において,賃貸人がその建物を取り壊したときは,建造物損壊罪が成立する余地がある。

E 刑事法と民事法の各分野における概念の相対性を示すものとして理解することが可能である。

1. A B  2.B E  3.C E  4.B C  5.A D

[H02−59] 次の記述は,ある最高裁判所判決の一部である。( ア )から( オ )までにそれぞれ適切な記述を入れた場合,正しい組合せは下記1から5までのうちどれか。

「刑法130条前段にいう『侵入シ』とは,他人の看守する建造物等に( ア )をいうと解すべきであるから,管理権者が( イ ),( ウ )などからみて,現に行われた立入り行為を( エ ),( オ )というべきである。」

ア:@管理権者の意思に反して立ち入ること

  A平穏を害する態様で立ち入ること

イ:@予め立入り拒否の意思を積極的に明示していない場合であっても

  A予め立入り拒否の意思を積極的に明示している場合であっても

  B予め立入り拒否の意思を積極的に明示していない以上

ウ:@該建造物の性質,使用目的,管理状況,立入りの態様

  A該建造物の性質,使用目的,管理状況,管理権者の態度,立入りの目的

エ:@管理権者が容認していないと合理的に判断されるときは

  A管理権者が容認していないと推測できたとしても

  B建造物等の平穏を害するものであると認め得るときは

  C建造物等の平穏を害するものであると認め得ないときは

オ:@他に犯罪の成立を阻却すべき事情が認められない以上,同条の罪の成立を免れない

  A同条の罪は成立しない

1.A−A−@−B−A     2.A−B−A−A−A

3.A−@−@−@−@     4.@−@−A−@−@

5.@−B−A−C−A

[H02−60] 次の文章の〔 〕の中に下記のAからJの中から適切な語句を選んで入れた場合,最も多く使われる語句の回数は何回か。

〔 〕と〔 〕とは〔 〕の有無に差異があるだけで,その余の犯罪構成要件は同一であるから〔 〕の〔 〕をした甲,乙のうち,甲が丙に対し〔 〕を犯した場合〔 〕のなかった乙については〔 〕と〔 〕の構成要件が重なり合う限度において,軽い〔 〕の〔 〕が成立するものと解すべきである。すなわち.甲が〔 〕を犯したということは,乙にとっても〔 〕の〔 〕に起因して客観的には〔 〕の〔 〕にあたる事実が実現されたことになるが,そうであるからといって,乙には〔 〕を犯す意思はなかったのであるから,乙に〔 〕の〔 〕が成立するいわれはない。犯罪としては〔 〕の〔 〕が成立し,〔 〕の結果的加重犯である〔 〕の〔 〕の刑で処断することにとどめるという考え方は誤っている。

A 共謀  B 間接正犯  C 過失致死  D 不注意  E 殺意

F 暴行又は傷害  G 共同正犯 H 傷害致死  I 強盗殺人  J 殺人

1. 6回   2.7回   3.8回   4.9回   5.10回

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