[H04−41] 次のAからEまでの事例において,乙が甲の行為を承諾した場合,その承諾の法的な意味が同質であるものの組合せで最も適切なものはどれか。

A 甲は,隣に住む満12歳の女児乙にわいせつ行為をした。

B 甲は,重病で回復の見込みのない母親乙の首を絞めて殺した。

C 甲は,深夜,離婚した相手の乙女宅に入り込んだ。

D 甲は,かねて交際していた女子大生乙に薬物を飲ませて堕胎させた。

E 甲は,校則に違反した女子高生乙の頭髪をバリカンで丸刈りにした。

1.A・B  2.A・C  3.B・D  4.B・E  5.D・E

[H04−42] 次の教授Aと学生Bとの会話は,下記の1から5までのどの事例に関するものか。

A:甲には,殺人の故意があると言えるかね。

B:はい。確かに,甲は,犯罪結果を確定的に表象し,認容しているとは思えませんが,結果発生の可能性を表象し,それを認容しているのですから,殺人の故意に欠けるところはないと思います。

A:乙を殺害する故意はあると思うかね。

B:はい。甲には,殺人の結果が,一定の範囲内のいずれかの客体に発生するとの認容がありますので,乙に対する殺人の故意が認められます。

A:ところで,甲が考えていたのとは異なる過程で,死の結果が発生しているのだが,それでも乙に対する殺人罪の既遂が成立するかね。

B:はい。私は,相当因果関係税に立った上,法定的符合説を採りますから,発生した結果についての故意は阻却しないと考え,乙に対する殺人罪の既遂が成立すると思います。

1. 甲は2人連れで歩いている乙と丙に向っていずれかを射殺しようと思い拳銃を一発発射したところ,弾丸が乙の足に命中し,乙は入院先の病院が地震により倒壊したため,頭蓋骨骨折により即死した。

2. 甲は2人連れで階段を上っていた乙と丙のうち丙を射殺しようと思い拳銃を一発発射したところ,弾丸が丙の隣にいた乙の足元で跳ね返り,これに驚いた乙が足を滑らせて転落したため,頭蓋骨骨折により即死した。

3. 甲は脅かすつもりであっても,事務所に向けて拳銃を発射すれば,誰かを射殺することになるかもしれないが,それも已むを得ないと思い,拳銃を数発発射したところ,うち一発がシャンデリアの鎖に命中し,乙が落下したシャンデリアの下敷きになったため,頭蓋骨骨折により即死した。

4. 甲は橋の上を歩いていた2人連れの右側の男を乙かもしれないと判断し,拳銃を一発発射したところ,弾丸が左側の男の右肩に命中し,その男は橋から転落して岩に頭部を強打したため,頭蓋骨骨折により即死したが,実はそれが乙であった。

5. 甲は脅かすつもりであっても,事務所に向けて散弾銃を発射すれば,誰かを射殺することになるかもしれないが,それも已むを得ないと思い,散弾銃を数発発射したところ,弾丸が乙のほか2人に命中し,2人は即死し,乙は右腕負傷のため入院したが,入院中他の患者と喧嘩になり,バットで頭部を殴打されたため,頭蓋骨骨折により即死した。

[H04−43] 甲が乙に自殺を教唆し,乙はいったん自殺を決意したが,意を翻して自殺行為にでなかった場合において,甲に自殺教唆罪の未遂が成立するかどうかについては,これを認める肯定説と認めない否定説とが対立している。@からFまでは肯定説に立つ学生Aと否定説に立つ学生Bとの会話であるが,これをA→B→A→B→A→B→Aの順序で並べた場合,最も適切なものは後記1から5までのうちどれか。

@  自殺教唆罪においては「教唆」という言葉を用いているが,それは刑法総則にいう共犯の一形態としての「教唆犯」ではなく,各別に規定された独立罪であることを無視すべきでないと思う。

A  同意殺人罪の場合は被殺者の嘱託や承諾の後に行為者自身による殺害行為が予定されているから,嘱託や承諾があっただけでは実行の着手を認めることはできないが,自殺教唆罪の場合,行為者自身の行為としては自殺を教唆することに尽きているから教唆行為が開始されれば,そこに実行の着手を認めてもよいのではないか。

B  「人による違法の相対性」を認めるというわけか。まあ,その点は譲歩するとしても,君のような考えは同一の条文により規定され,しかも同一の法定刑の下におかれている同意殺人罪と自殺教唆罪との統一的理解を妨げることになると思う。

C  しかし,より重大な犯罪である殺人罪の教唆でさえ,共犯従属性説に立つ限り,被教唆者の殺人の実行行為がない場合は不可罰であるのに,それより軽い罪である自殺教唆の場合に,教唆行為があっただけで犯罪が成立すると解するのはバランスを欠くことになるのではないか。

D  それは「生命は本人だけが左右し得るのであり,他人の死に干渉し,原因を与えることは違法だ」ということで説明がつくのではないか。

E  君は,自殺者の存在が行為者にとって,規範的障害にならないということから,自殺教唆罪が被害者自身の行為を利用した間接正犯と同様の構造をもっと考えているようだけれど,そうだとすると,端的に行為者に殺人罪の成立を認めるべきだと思うし,また,自殺が適法だとすると,それに関与する行為が,なぜ,処罰されるのか,という点で問題が生じてくるが……。

F  確かに,殺人教唆の未遂は不可罰だけれども,それは殺人が違法であるため,教唆者にとり正犯の存在が規範的障害となるからであって,適法行為である自殺を教唆する場合とは同様には論じえないと思う。むしろ.自殺を教唆する行為が,既に,被教唆者を自殺へ駆り立て,追いやる危険な行為であると解すべきではなかろうか。

1.@→E→D→B→A→C→F  2.A→C→F→B→D→E→@

3.@→C→F→E→D→B→A  4.A→B→@→C→F→E→D

5.@→B→A→C→F→E→D

[H04−44] 次の文章は,ある傷害事件の犯人の供述であるが,下記語群の中から,AからEまでの供述内容により認められるものを選ぶ場合,明らかに適切ではない組合せは何個あるか。

A 私は,X中学2年に在学中で,成額も良く,サッカー部に所属しており,先月の25日で満14歳になりました。先月28日の事件のことについてお話しします。

B 喧嘩の相手は,Y中学の不良連中の甲で,事件の3日くらい前,友人のA君が甲に殴られて1週間くらいの怪我をさせられました。そこで仕返しをするため,28日午後5時ころ,A君と一緒に甲をY中学の前で待ち伏せしていました。A君と相談の上,甲に謝らせ,もし謝らなければ2人で相手を殴り付け,場合によっては怪我をさせるかも知れないが,仕返しをしようと思っていました。

C 午後5時10分ころ,甲が校門から出てきましたので,私とA君が甲に近付いて行ったところ,甲は,私たち2人が待ち伏せをしていたことで危険を感じたようで,いきなりナイフをだして,大声で「何だ。」と言いながら切りかかってきたので,私たちは甲に仕返しをするどころではなくなり,逃げ出しました。

D しばらく走って逃げていると道が行き止まりになり,甲に追い付かれてしまい,ナイフで切り付けられるのを防ぐため,已むを得ず,数メートルに接近して来た甲に,小石を1個投げ付けました。私が知らないうちに,A君も小石1個を甲に,投げ付けていました。私とA君の投げた小石のどちらかが甲の顔に当たり,甲に怪我をさせました。

E その際,もう1個の小石が付近の通行人乙の目に当たり,乙を失明させましたが,私とA君のどちらの投げた小石が当たったかは,わかりません。

〔語群〕

@ 行為能力   A 責任能力    B 条件付故意    C 概括的故意

D 防衛行為   E 緊急避難行為  F 急迫不正の侵害  G 方法の錯誤

H 客体の錯誤  I 同時傷害    J 未必の故意    K 共謀

L 暴行     M 傷害

(1)  A−@    B−B    C−L    D−L    E−H

(2)  A−A    B−J    C−L    D−M    E−C

(3)  A−A    B−K    C−F    D−D    E−I

(4)  A−A    B−B    C−F    D−E    E−G

(5)  A−A    B−F    C−B    D−E    E−I

1.0個   2.1個   3.2個   4.3個   5.4個

[H04−45] 次の文章の( )に下記のAからJまでの語句のうちから適当なものを入れた場合,3回用いられるものの組合せとして正しいものは,後記1から5までのうちどれか。

「かつての通説的見解は,( )を含めて責任無能力者を利用する場合を広く( )と称していた。右見解は共犯の( )について,いわゆる( )を採る見解の下において( )を共犯として処罰することができなくなる不都合を( )という概念を用いることによって埋めようとするものだといわれているが,共犯の( )についての支配的見解が( )から()に変わるにつれて,前記の見解は通説的地位を失った。そこで,次のような見解が主張されるに至った。すなわち,『( )を利用して犯罪を実行した場合,その被利用者が( )を欠いているときは,その者の行為は( )とはいい難いから,その者が( )となることはなく,これを利用する行為が( )であって,その利用者が正犯となるが,その被利用者が( )であっても,( )を備えているときは,その者の( )ということができるから,その者が( )となるのであって,これを利用する行為は( )となる。』とするのである。」

A 教唆犯  B 正犯  C 間接正犯  D 従属性  E 制限従属形式

F 極端従属形式  G 実行行為  H 利用者  I 刑事未成年者  J 行為能力

1.B・C  2.D・G  3.G・I  4.I・J  5.B・J

[H04−46] 次の文章は文書偽造罪に関するものであるが,[ ]内に下記の語群の中から最も適切な語句を選び文章を完成させた場合,一度も使用しなかった語句の組合せとして正しいものは,後記1から5までのうちどれか。

「文書偽造罪の保護法益は,文書に対する[ ]であるが,その具体的な保護の対象が何かという点については,見解が分かれている。

その一は,[ ]であり,文書の[ ]の真正すなわち[ ]を保護するものと見る立場である。この見解は,文書の[ ]の真正が保たれる限り,仮に文書の[ ]が真実に反する場合であっても,文書の[ ]は害されないという考え方に立脚している。その二は,[ ]であり,文書の[ ]の真実すなわち[ ]を保護するものと見る立場である。この見解は,文書の[ ]を維持するためには文書の[ ]の真実を保障することが肝要であり,それが保障される限り,仮に[ ]を冒用する場合があったとしても,別段実害を生じるおそれはないという考え方に立脚している。

わが刑法は,[ ]を基本とし,原則として[ ]の真正を害した文書の作成すなわち[ ]を行った場合のみを処罰することとし,ただ一定範囲の重要な文書については,[ ]の真実を害した文書の作成すなわち[ ]を行った場合を可罰的としており,その限りにおいて,[ ]が併用されている。」

〔語群〕

ア 形式主義   イ 形式的真実  ウ 個人的信用  エ 作成名義

オ 内容     カ 公共的信用  キ 作成権限   ク 有形偽造

ケ 無形偽造   コ 偽造     サ 変造     シ 不実記載

ス 実質的真実  セ 実質主義

1.イオキサシ  2.ウオキシス  3.ウキコサシ

4.エクコスセ  5.オカキクケ

[H04−47] 次の文章は,強姦の故意をもち,かつ傷害の故意をもって,暴行を加えて姦淫し負傷させた場合にどういう罪が成立するのかという問題に関するAとBとの会話の一部であるが,文章中の(1)から(19)までに「強姦致傷罪」「障害罪」「強姦罪」「結果的加重犯」「故意犯」の語句のうちから最も適切なものを選んで入れた場合,使用回数の最も多い語句と次に多い語句の使用回数の差は何回か。

A 「この場合には,(1)だけが成立するという甲説,(2)と(3)が成立し観念的競合になるとする乙説,(4)と(5)が成立し観念的競合になるとする丙説の3つの考え方があり得るね。」

B 「丙説では(6)は(7)だから傷害の故意がある場合を含まないと考え,両罪は観念的競合になるという結論になり,(8)の罪で処罰されるので,その刑は2年以上15年以下の有期懲役となる。」

A 「それに対し,甲説と乙説では,(9)の罪で処罰されるので,その刑は無期又は3年以上の有期懲役ということになるよ。ところで傷害の故意なく暴行を加えて姦淫したところ,意外にも負傷させた場合には(10)が成立し,その犯人には無期又は3年以上の有期懲役の刑が科せられることになる。したがって丙説では,当初から被害者を負傷させてやろうと考えていた犯人の方が,負傷させる気までなかった犯人より刑が軽くなることになってしまうね。」

B 「甲説では(11)は,傷書の故意がある場合も含むということになり,その限りで,本来の(12)ではないことになる。いわば,(13)が(14)と暴行の(15)の両方の形態を持っているのと同じように考えることになるんだね。」

A 「そのとおり。乙説では科刑上の均衡を考慮して(16)の成立を認める一方で,(17)が(18)であるという考えを一貫させるため,(19)の成立をも認めるのであるが,形式的には同じ傷害を二度評価することになるね。」

1.5回 2.4回 3.3回 4.2回 5.1回

[H04−48] 他人の刑事被告事件に関する証拠を隠滅した場合は証憑湮滅罪が成立するが,A他人の意義に関する@からBまでの考え方と,B刑事被告事件に関するアからウまでの考え方につき,後記1から5までのうち,誤っているものはどれか。

A 他人の意義

@  自己の刑事被告事件と他人の刑事被告事件に共通の証拠は,常に他人の刑事被告事件に関する証拠である。

A  自己の刑事被告事件と他人の刑事被告事件に共通の証拠は,常に他人の刑事被告事件に関する証拠だが,例外として,専ら自己の利益のための隠滅の場合は,他人の刑事被告事件に関する証拠ではない。

B  自己の刑事被告事件と他人の刑事被告事件に共通の証拠は,常に他人の刑事被告事件に関する証拠ではない。

B 刑事被告事件の意義

ア  公訴提起後の刑事事件のみをいう。

イ  公訴提起後の刑事事件のほか現に捜査中の刑事事件も含む。

ウ  捜査の前後を問わず,将釆捜査の対象となり得るものも含む。

1. 甲が自己の刑事事件の公訴提起後に,自己の刑事事件と乙の公訴提起前の刑事事件に共通の証拠を隠滅した場合,Aの中のどの考え方を採っても,Bのアの考え方を採れば,甲には証憑湮滅罪は成立しない。

2. 甲が自己の刑事事件の公訴提起後に,自己の刑事事件と乙の捜査開始前の刑事事件に共通の証拠を専ら自己の利益のために隠滅した場合,Aの@の考え方を採り,かつBのウの考え方を採れば,甲に証憑湮滅罪が成立する。

3. 甲が自己の刑事事件の捜査中に,自己の刑事事件と乙の公訴提起後の刑事事件に共通の証拠を専ら乙の利益のために隠滅した場合,AのAの考え方を採れば,Bの中のどの考え方を採っても,甲に証憑湮滅罪が成立する。

4. 甲が自己の刑事事件の捜査中に,自己の刑事事件と乙の捜査中の刑事事件に共通の証拠を専ら自己の利益のために隠滅した場合,AのBの考え方を探り,かつBのイ又はウの考え方を採れば,証憑湮滅罪が成立する。

5. 甲が自己の刑事事件の公訴提起後に,自己の刑事事件と乙の公訴提起後の刑事事件に共通の証拠を専ら自己の利益のために隠滅した場合,AのBの考え方を採れば,Bの中のどの考え方を採っても甲には証憑湮滅罪は成立しない。

[H04−49] 「正当防衛の成立の要件である『巳ムコトヲ得サルニ出テタル行為』とは,急迫不正の侵害に対する反撃行為が,自己又は他人の権利を防衛する手段として必要最小限のものであること,すなわち反撃行為が侵害に対する手段として相当性を有するものであることを意味する。」と解する立場を採った場合において,次の各行為のうち相当性を欠くことが最も明らかなものはどれか。

1. 突然背後から男がナイフで背中を刺してきて,さらに切り付けてきたので,相手の胸を数ヶ所刺して即死させた行為。

2. 自己が経営する飲食店内で,酩酊した男の客が大声を出して怒鳴っていたので,それをやめさせようとして,同人の顔面を手拳で1回殴打し,全治1週間の打撲傷を負わせた行為。

3. 深夜自宅に押しかけて来た近所の男から借金を求められて断ったのに対して,同人が無理に玄関内に入った上,さらに殴りかかってきたので,外に突き出したところ,同人が植木鉢に足をとられて転倒し,その結果,死亡するに至らせた行為。

4. 路上で年齢も若く体力も優れた男と口論し,同人から手拳で殴られたが,自分が老齢で体力がなく素手では対抗できないので,手にしていた杖で同人を突き,全治1ヶ月の肋骨骨折の優害を負わせた行為。

5. 貸金の返済に関して押し問答をしていた際,相手の男に腕をねじ上げられたので,それを振りほどこうとして,同人の胸の辺りを1回突き飛ばし,柱に頭を打ち付けさせて全治50日間の頭部外傷を負わせた行為。

[H04−50] 幇助の因果関係については次のT・U・Vの見解があるが,これらを前提とした場合の幇助犯の成否に関する下記の1から5までの記述のうち妥当でないものはどれか。

T 幇助行為は,正犯の結果惹起の危険を増加させれば足り,正犯の結果との間の因果関係は,必要でないとする見解

U 幇助行為は,正犯の犯罪遂行を促進し,容易ならしめるものであれば,正犯の惹起した結果にとって必要不可欠なものでなくても,正犯の結果との間に因果関係を認める見解

V 幇助行為は,それにより正犯が単独で犯罪を実行した場合に比較して結果が具体的に変更されたことが肯定されるときに限り,正犯の結果との間に因果関係を認める見解

1. 甲は,乙がAを殺害しようとしているのを知り,ピストルを提供した。乙は,日本刀でAを殺害しようと思っていたが,場合によってはピストルが役に立つかもしれないと考えて,日本刀とピストルを持ってA方に出向いた。乙は,ピストルは使わず,Aを日本刀で殺害した。この場合Uの見解によれば,甲に殺人の幇助犯が成立する。

2. 甲は,乙がA方に侵入してA所有の骨董品を窃取しようとしているのを知りA方の合鍵を渡した。乙は,合鍵を携帯してA方に出向いたがA方の窓が開いていたため,そこから侵入し,骨董品を窃取した。この場合Tの見解によれば,甲に窃盗の幇助犯が成立する。

3. 甲は,乙がAを殺害しようとしているのを知り,ピストルを提供した。乙は,このピストルでAを殺害しようと決意したが自分の短刀も持ってA方に出向いた。しかし乙は,ピストルを使わず,Aを短刀で殺害した。この場合Vの見解によれば,甲には殺人の幇助犯は成立しない。

4. 甲は,乙がA方に侵入して現金を強取しようとしてA方に出向いたのを知り,乙に気付かれないように後を付け,A方の外で見張りをした。乙は,A方に侵入して,現金を強取したが,現実には甲の見張りが役立つ状況にはなかった。この場合Uの見解によれば,甲に強盗の幇助犯が成立する。

5. 甲は,乙がA方に侵入して現金を強取しようとしているのを知り,見張り役を申し出た。乙は,甲の見張りの下A方に侵入して,Aから現金を強取したが,現実には甲の見張りが役立つ状況にはなかった。この場合Vの見解によれば,甲には強盗の幇助犯は成立しない。

−[H04−51]から[H04−52]まで−

次の1から5までの文章は,金融機関の貸付事務につき決裁権のない者に対する背任罪の成否に関する見解を述べたものである。これを正しい順序に並べると「そもそも(ア)ものであり,もし(イ)のであって,(ウ)。たとい(エ)ものというべきである。なぜならば.(オ)からである。」となるが,(ウ)に入るものはどれか。

1. この義務に違背し,自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える意思をもってその任務に背く行為をし,よって本人に財産上の損害を加えた場合には,背任罪の責任を免れない

2. 同罪の成立には,行為者が自己単独の意思をもってその事務を左右し得る権限すなわち決裁権のある事務に関して,背任の行為をすることを要さない

3. 他人のためにその事務を処理する者は,その事務の性質に従い,忠実にこれを遂行し,その財産上の利益を保護する義務を負う

4. 右決裁権をもつ者とその下で事務を処理する者とは,その権限が同等でないとはいえ,両者相まってその事務を遂行するものであるから,その任務の範囲を区別して背任の罪責の存否を決すべきものではない

5. 行為者のほかに,その事務の遂行について指揮監督その他決裁権を有する者が存在する場合であっても,いやしくもその行為者の担当する事務の範囲内である以上,これに関し背任の行為があったときには,同罪が成立する

[H04−52] 上記見解に関する次のAからEまでの記述のうち誤っているものは何個あるか。

A この見解は,他人のための事務処理につき決裁権のある者がほかにいる場合には,決裁権のない者は他人のために事務を処理する者には当たらないとしたものである。

B この見解は,他人のための事務処理につき決裁権のある者の指示により決裁権のない者がその担当する事務に関し背任の行為をした場合には,その決裁権のない者だけが背任罪に問われるとしたものである。

C この見解は,他人のための事務処理につき決裁権のある者の指示により決裁権のない者が背任の行為をした場合には,その決裁権のない者は決裁権のある者の事務に関し共犯の責任を負うとしたものである。

D この見解は,他人のための事務処理につき決裁権のある者と決裁権のない者がいる場合には,決裁権のある者が背任の行為をしたときにのみ決裁権のない者に背任罪が成立するとしたものである。

E この見解は,他人のための事務処理につき決裁権のある者の指示により決裁権のない者が背任の行為をした場合には,その決裁権のある者は自己の事務に関し,背任の行為をしたとはいえないとしたものである。

1.1個 2.2個 3.3個 4.4個 5.5個

[H04−53] 次の文章中の〔A〕から〔E〕までにあてはまる供述を1から5までの中から選び,[ ]にあてはまる錘句をaからiまでの語群から選んで文章を完成させた場合に,〔C〕,〔D〕にあてはまる供述の組合せとして正しいものはどれか。

 「典型的な無銭飲食詐欺は,支払う[ ]も[ ]も無いのにあると見せかけて,酒食を注文し,後に支払うものと[ ]するものである。行為者は〔A〕又は〔B〕といいのがれる。前者は,[ ]の供述をしているだけで,後者は,無銭飲食すなわち,支払う金銭を持っていないというだけで,必ずしも犯罪を構成するとはいえない。顔見知りなら,ツケで済ますことも出来るし,初めて入った店でも社会的地位のある人なら名刺を戴ければ,『勘定は後でいいです』となるが,〔C〕という供述をした場合には[ ]がない旨を自ら認めたことになるが,引き続き〔D〕という供述をした場合には,支払う[ ]がなかったことも明確になるが,その場合にも無銭飲食詐欺が既遂に達するというためには別の要素も考慮しなくてはならない。すなわち[ ]とは,被害者の[ ]に基づく[ ]行為によって財物を行為者又は第三者に交付させてその占有を取得することをいうのである。〔E〕の供述があればこの点も認められる。」

1  私は,最初から踏み倒す意思で注文した。

2  私は,腹が空いて仕方がなかった。

3  私は,代金は最後に全て支払うものと店員が信じて酒食を持ってきたと思った。

4  私は,悪いと思いつつ無銭飲食をしてしまった。

5  私は,金を持っておらず金を借りるあてもなかった。

a 動機  b 意思  c 誤信  d 錯誤  e 騙取  f 因果関係

g 処分  h 能力  i 欺罔

1.C−1 D−4  2.C−1 D−2  3.C−5 D−3

4.C−2 D−5  5.C−5 D−1

[H04−54] 公務執行妨害罪における公務員の職務の適法性についての次のイからニまでの判断基準とそれに関連する(1)から(8)までの記述を組み合わせた場合に最も妥当なものは,後記1から5までのうちどれか。

イ  職務を行った公務員の判断を基準とする。

ロ 行為当時における一般人の判断を基準とする。

ハ  裁判官が,行為当時の状況から合理的,客観的に判断する。

ニ 裁判官が,裁判時の証拠等から事後的,客観的に判断する。

(1) この見解は,とりあえず適法な外観を備えた職務行為を保護しようとするものである。

(2) この見解は,真に適法な職務行為のみを保護しようとするものである。

(3) この見解は,主観的に適法な職務行為を保護しようとするものである。

(4) この見解は,行為時における適法な職務行為を保護しようとするものである。

(5) この見解によると事実上ほとんどの場合に公務執行妨害罪における職務の適法性を肯定する結果となる。

(6) この見解によると逮捕行為時には刑事訴訟法上の要件を具備していたが,裁判時に犯人でないことが判明した場合には,その逮捕行為について職務の適法性を否定することになる。

(7) この見解によると,結果的に判断が恣意に流れ易くなるとの批判がある。

(8) この見解によると,逮捕行為時に真に現行犯と認められるような客観的状況があった場合には,裁判時に犯人でないことが判明したときでも,その逮捕行為について職務の適法性を肯定する。

1. イ−(3) ロ−(1) ハ−(4) ニ−(6)

2. イ−(7) ロ−(8) ハ−(5) ニ−(2)

3. イ−(5) ロ−(1) ハ−(7) ニ−(2)

4. イ−(7) ロ−(8) ハ−(5) ニ−(4)

5. イ−(3) ロ−(7) ハ−(8) ニ−(2)

[H04−55] 次の記述は,予備罪に関するものである。正しいものの組合せはどれか。

ア  予備行為とは,犯罪の実現に実質的に役立つ準備行為をいい,単なる犯意の表示では足りない。

@  この考え方は,実行行為に進もうと思えば進むことができる程度の準備をしておく行為だけに処罰の範囲を限定しようとするものである。

A  この考え方は,予備と陰謀を区別するためのものである。

イ  幇助行為をしたが,幇助された者が実行に着手しないで予備行為をしただげにとどまった場合,

@  共犯独立性説はもとより,共犯従属性説のいずれの立場にたっても幇助者を予備罪の従犯として処罰できる。

A  共犯独立性説の立場にたてば,幇助者は幇助の未遂として処罰できる。

ウ  予備罪の共同正犯を認めるか否かについては争いがあるところであるが,

@  これを認める立場は,予備罪にも「実行行為」を観念することができることを理由とするが,この立場は共犯独立性説のみを基礎としている。

A  これを認めない立場は,基本的構成要件の修正形式である予備罪については「実行行為」という観念は認められないことを理由とするが,この理由は予備行為が無定型・無限定な行為であることと関係がある。

エ  通貨偽造準備罪の「偽造又ハ変造ノ用ニ供スル目的」とは,犯人自身の偽造・変造の用に供する目的に限らず,他人の偽造・変造の用に供する目的をも含むと解することは,

@  他人のためにする準備行為をも予備行為として認める立場でないと認められない結論である。

A  他人のためにする準備行為を予備行為として認めない立場であっても,本罪が「準備」という語を用いているのに着目し,単なる予備を超えた意味を持つことから説明可能である。

1.アAイ@ウAエA   2.ア@イAウ@エA   3.ア@イ@ウ@エA

4.アAイAウ@エ@   5.ア@イAウAエA

[H04−56] 次のAからEまでの事例について,その実行行為がなかったらこの結果は発生しなかったという条件関係の公式を適用した場合,条件関係が認められ,甲に殺人既遂の罪貴を肯定できるものは何個あるか。ただし.仮定的条件の付加は許されないものとする。

A 甲・乙は,意思の連絡なくしてAを殺害しようと企て,それぞれピストルでAを撃ち,2発の弾丸が心臓に命中しAは死亡した。2発の弾丸が命中したことにより,1発しか命中しなかった場合に比べ,死期が早まったが,どちらの弾丸が致命傷となったかは判明しなかった。

B 甲・乙は,意思の連絡なくしてAを殺害しようと企て,それぞれ順に乗用者で轢過し,Aは死亡した。司法解剖の結果,頭蓋骨と足首を骨折していた。死因は頭蓋骨骨折であったが,甲・乙どちらが轢過したのか判断できなかった。

C 甲は,Aを殺害しようと企て,致死量分の毒を飲ませておいたが,薬が効き出す前に,まえからつけ狙っていた乙がAを射殺し死亡させた。

D 甲は,死刑囚Aを殺害しようと企て,死刑執行のとき執行官乙が,死刑執行ボタンを押そうとしたとき,乙を突き飛ばしてボタンを押した。Aは死亡したが,甲がボタンを押さなくとも執行官乙が押したと同一時刻に死亡したといえる。

E 甲は,Aを殺害しようと企て,寝ていたAをピストルで撃ち,弾丸は心臓に命中しAは死亡した。しかし,その直前にAは,まえから殺意を抱いていた乙によって致死量分の毒を飲まされていたためAはすでに瀕死の状態であり,数分後には確実に死ぬ運命にあった。

1.1個  2.2個  3.3個  4.4個  5.5個

[H04−57] 違法性の錯誤に関するAからEまでの見解と,刑法第38条第3項の規定に関する@からDまでの理解の仕方とを対応させた場合,適当なものを組み合わせたものは後記1から5までのうちどれか。

T 違法性の錯誤に関する見解

A 違法性の意識は故意の要件ではないとする説

B 遵法性の意識は故意の要件であるとする説

C 故意の成立には違法性の意識を必要としつつ,違法性の意識を欠いたことについて過失があった場合には故意と同様に扱うとする説

D 故意の成立には違法性の意識の可能性があれば足りるとし,違法性の錯誤が避けられた場合には故意を阻却しないとする説

E 違法性の意識ないしその可能性を故意とは別個独立の貴任要素と解し,違法性の錯誤は故意の成立とは関係なく,ただその錯誤が避けられなかった場合には責任を阻却するが,避けられた場合には責任を軽減するに過ぎないとする説

U 刑法第38条第3項の規定の理解の仕方

@  この説によれば刑法第38条第3項の規定は,故意の成立には個々の法規を知っている必要はないことを明らかにしたものであり,ただし書は,違法性の意識の可能性があっても違法性を意識することが困難であるために違法性の意識を欠くときに適用されるとする。

A  この説によれば,刑法第38条第3項の規定は,故意の成立には個々の法規を知っている必要はないことを明らかにしたものであり,ただし書は,法規の規定を知らないことによって違法性についての判断が困難とされる場合があり得るために設けられたものであるとする。

B  この説によれば,刑法第38条第3項の規定は,違法性の錯誤は故意の成立とは関係ない旨を明らかにしたもので,ただし書は,違法性の意識はなかったがその認識が可能であった場合に刑を減軽し得ることを規定したものであるとする。

C  この税によれば,刑法第38条第3項の規定は,故意の成立には個々の法規を知っている必要はなく,違法性を知らなかったことに過失があった場合には故意犯と刑法上の処遇を同じくする旨を定めたものであり,ただし書は,実際の適用における不当な結果を避けるために設けられたものであるとする。

D  この説によれば,刑法第38条第3項の規定は,違法性の錯誤は故意を阻却しないことを明らかにしたもので,ただし書は,違法性の意識を欠いたことについて宥恕すべき事由があるときは刑を減軽し得る旨を定めたものであるとする。

1.A−C B−A E−@   2.A−D B−C D−B

3.A−D C−@ E−B   4.B−A C−C D−@

5.C−B D−A E−D

−[H04−58]から[H04−59]まで−

次の( )内に適当な語句を入れ,正しい順序に並べると,ある犯罪についての記述となる。これを読んで後記[H04−58]及び[H04−59]の問に答えよ。

A ( )犯人の行為でなければ( )罪は成立しない。その意味では,( )罪は( )犯である。

B 次に,( )は( )の機会に加えられたものでなければならないが,この( )は必ずしも( )の( )に加えられる必要はない。

C そして,( )の結果,( )を負わせたときは,( )罪が成立する。

D また,( )を加える際,特定の( )がなければ( )罪は成立しない。その意味では,( )罪は( )犯といえよう。

E この( )の程度については,( )罪のそれよりも重いものであることを要するとの見解もあるが,同程度で足りるとするのが判例の主流である。

F また,( )の程度は,( )罪におけると同様に,( )に足りるものでなければならないと解される。

[H04−58] ( )内に下記のaからjまでの語句の中から適当なものを入れた場合,使用回数の最も多い語句と次に多い語句の使用回数の合計はいくつか。

a 暴行  b 傷害 c 強盗致傷 d 事後強盗 e 強盗

f 窃盗  g 被害者  h 身分  i 目的  j 反抗抑圧

1.6回  2.7回  3.8回  4.9回  5.10回

[H04−59] 正しい順序はどれか。

1.ABFCDE   2.ACBFED   3.ADBFCE

4.ADBECF   5.AFBDCE

[H04−60] 下記の1から4における乙の行為は,いずれも緊急避難に当たるものとして,緊急避難の法的性格に関するAからDの説を前提とした場合,丙の行為につき,A説によれば緊急避難として不可前となるものの数,B説によれば緊急避難として不可罰となるものの数,C説によれば緊急避難として不可罰となるものの数,D説によれば緊急避難として不可罰となるものの数の合計は何個か。

A:違法性が阻却される。

B:責任が阻却される。

C:原則として違法性が阻却されるが,法益が同等の場合は責任が阻却される。

D:原則として違法性が阻却されるが,生命対生命,身体対身体の場合は貴任が阻却される。

1  甲が乙に対し突然棒で殴りかかってきた。乙はこれを避けようとしてとっさに丙を突き飛ばそうとしたところ,丙は自己の身を守るため已むを得ず逆に乙を突き飛ばして転倒させた。

2  甲が乙に対し突然拳銃を発射して殺害しようとしてきた。乙はこれを避けようとしてとっさに丙を突き飛ばそうとしたところ,丙は自己の身を守るため已むを得ず逆に乙を突き飛ばして転倒させた。

3  甲が乙に対し突然捧で殴りかかってきた。乙はこれを避けようとしてとっさに所持していたテニスのラケット(時価3万円相当)で丙宅のガラス戸(時価3万円相当)を壊して逃げ込もうとしたところ,丙はこれを阻止するため已むを得ず乙のラケットをたたき壊した。

4  甲が突然自己の飼犬を乙の飼犬(時価5万円相当)にかみつかせようとしてきた。乙がこれを避けようとしてとっさにその飼犬を丙宅の庭に駆け込ませ丙の盆栽(時価5万円相当)を踏みつけさせて壊そうとしたところ,丙はこれを阻止するため已むを得ず乙の飼犬に石を投げて傷害を負わせた。

1.7個  2.8個  3.9個  4.10個  5.11個

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