[H09−41] 次のTないしVは,中止犯の「自己の意思により」の要件の意義に関する学生AないしCの見解を列挙したものである,これらの学生が自己の見解を事例アないしウに当てはめたところ,行為者甲に上記要件が存するか否かに関し,AとBはア及びウにつき,AとCはイ及びウにつき,BとCはウにつき,それぞれ結論が一致した。各学生と見解の組合せとして正しいものはどれか。

T 一般の経験上,犯罪の遂行を中断させる強制的影響がある事情がないのにやめることをいう。

U 行為者が,犯罪の遂行を可能であると思いながらもやめることをいう。

V 行為者が,犯罪の遂行を可能であると思いながらも,悔悟,同情,憐憫などの広義の後悔に基づきやめることをいう。

ア 甲は,窃盗の目的で,深夜,デパートの売場で金品を物色中,物音に不審を抱いた警備員が足早に近づいて来るのを認めたが,自分ならやり過ごして商品を盗めると思ったものの,悪いことは止めようと思い直し,その場を立ち去った。

イ 甲は,宝石店のショーケース内に陳列されている指輪が100万円程度の物だと思い,これを窃取しようとケースの扉を開け中に手を差し入れたが,付いていた値札の価格が10万円だったので,その場を立ち去った。

ウ 甲は,殺意を持って刃物で恋敵を一撃し,更に刺そうとしたが,相手が助命を嘆願するので,かわいそうになって立ち去ったところ,相手は一命を取りとめた。

1. A−T,B−V,C−U

2. A−U,B−T,C−V

3. A−U,B−V,C−T

4. A−V,B−T,C−U

5. A−V,B−U,C−U

――[H09−42]から[H09−43]まで――

 未遂犯と不能犯の区別に関して下記@ないしBの見解があるものとし,学生AないしCは,そのいずれかの異なる見解を採った上で,下記TないしWの事例をめぐって発言している。

@ 行為時に一般人ならば認識しえた事情を基礎に,一般人が結果発生の危険を感じるか否かで判断する。

A 行為時に行為者が認識していた事情を基礎に,一般人が結果発生の危険を感じるか否かで判断する。

B 行為時に存在したすべての客観的事情を基礎に,一般人が結果発生の危険を感じるか否かで判断する。

T 甲は,自己を追って来た乙を殺害しようとして,警邏中の警察官から拳銃を奪い,乙の身体に向けて拳銃の引き金を引いたが,たまたま弾倉に弾丸が装填されていなかった。

U 甲は,乙を殺害しようと決意し,のろいで人を殺害できると考えて,丑の刻参りをした。

V 甲は,乙を毒殺しようと決意し,某大学研究室の毒薬保管庫から毒薬の瓶を持ち出そうとしたが,栄養剤の入った瓶に毒薬のラベルが貼付されていたことから,これを毒薬の瓶と誤信して持ち出し,ひそかに乙の飲食物に混入させて飲ませた。

W 甲は,乙を毒殺しようと決意し,自宅の戸棚に瓶入りの毒薬を隠していたが,貼付されたラベルを確認しないまま,毒薬の瓶の隣にあった栄養剤の瓶を毒薬の瓶と誤信して持ち出し,ひそかに乙の飲食物に混入させて飲ませた。

C: B君の見解では,客観的に結果発生の危険性がない行為を処罰することになる点で不当だ。

B: しかし,C君の見解では,逆に,誰が見ても危険な行為を処罰できなくなるのではないか。

A: ( a )と( b )の事例の場合,僕とB君の見解では,殺人未遂罪が成立し得るが,C君の見解では,不能犯となり,まさに今B君が指摘したとおりの不当な結果となってしまう。

B: A君,君と僕を一緒にしないでほしい。別の( c )の事例の場合,僕の考えでは,君と違って不能犯となる。そもそも,A君の見解では,一般人から見ても結果発生の危険性がない行為を殺人未遂罪で処罰することになる点で不当だ。

C: それぞれの見解に対する批判も出たようなので,TないしWの事例についての結論をまとめてみると,僕の見解では,殺人未遂罪が成立しうる事例の数は( ア )個,B君の見解では( イ )個,A君の見解では( ウ )個ということになる。

[H09−42] 上記aないしcに適切な事例を入れて考えた場合,学生と見解との組合せとして正しいものはどれか。

1. A B C

  | | |

  @ A B

2. A B C

  | | |

  A @ B

3. A B C

  | | |

  A B @

4. A B C

  | | |

  B @ A

5. A B C

  | | |

  B A @

[H09−43] 上記学生Cの最後の発言中にあるアないしウに入る数の組合せとして正しいものはどれか。

1. ア イ ウ

  | | |

  0 1 2

2. ア イ ウ

  | | |

  0 2 3

3. ア イ ウ

  | | |

  1 2 3

4. ア イ ウ

  | | |

  2 1 0

5. ア イ ウ

  | | |

  3 1 2

[H09−44] 下記のTないしWの( )に下記語群から適切な語を入れるとともに,これらを下記【 @ 】ないし【 C 】に正しく入れると,送金銀行が送金先を誤って甲名義の普通預金口座(残高はない。)に入金した場合に,甲が現金自動支払機から現金を引き出した事案について,甲の罪責を論じた文章となる。【 B 】及び【 C 】に入る文章の()に入る語を順に並べた場合の組合せとして最も適切なものはどれか。

「【 @ 】。もっとも,【 A 】。しかし,【 B 】。したがって,【 C 】」

T 横領罪との関係においては,預金口座の名義人に正当な払戻し権限が(  )場合に,預金債権に対する管理,占有,ひいては銀行が事実上占有する金銭に対する預金額の限度での(  )という観念を入れる余地がある

U 預金口座の名義人と銀行との関係は,前者に正当な払戻し権限が(  )場合であっても,(  )が成立しているだけであって,銀行の現金自動支払機内の現金は,銀行の管理ないし占有に属すると解するのが相当である

V 本件については,(  )の成立する余地はなく,(  )が成立する

W 本件は,送金銀行の手違いにより,甲の預金口座に入金があったにすぎず,甲には正当な払戻し権限が(  )と解すべきであるから,現金自動支払機内の現金について,甲が(  )を取得することもない

〔語群〕A ある  B ない  C 事実上の占有  D 法律上の占有

    E 占有離脱物横領罪  F 背任罪  G 窃盗罪  H 横領罪

    I 電子計算機使用詐欺罪  J 債権債務関係

1. A−C−E−I

2. A−J−H−E

3. B−C−E−G

4. B−D−F−H

5. B−D−H−G

[H09−45] 下記アないしカの文章から最も適切なものを選んで「( A )。しかし,( B )。これに加えて,( C )。これに対して,( D )。( E )。」の(  )内に入れると,法人の犯罪能力を論じた記述となる。AないしEに入る文章を順に並べた組合せとして正しいものはどれか。

ア 法人の犯罪能力を肯定した上で,両罰規定は,事業主として従業者の違反行為を防止するために必要な注意を尽くさなかった選任監督上の過失を推定した規定,すなわち,事業主の過失犯を処罰したものと解し,事業主はこの点について注意を尽くしたことを証明すれば免責されると解することで責任主義との調和を図ることができる

イ 法人の犯罪能力については,これを否定する見解がある

ウ 過失推定説に対しては,無過失の立証責任を事業主に負わせるのは,「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の原則に反するとの批判がある

エ 否定する見解は,法人の処罰は刑事犯では認められないが,行政犯という特殊な法領域では認められると反論している。しかし,この反論に対しては,そもそも刑事犯と行政犯の区別自体が相対的・流動的なものであるという批判が可能である

オ 否定する見解は,現代社会において法人の果たす役割の重要性や企業の事業遂行あるいは企業戦略の一環として法人が主体となった犯罪現象が存在するのを看過するものといわなければならないであろう

カ 否定する見解は,両罰規定に基づいて事業主である法人が処罰される根拠をどのように説明するのであろうか。法人は犯罪主体とはなり得ないが,受刑主体にはなり得るとするのであれば,行為を処罰するという近代刑法の基本原則に反するものといわなければならないであろう

[H09−46] 下記の記述の(  )内には下記語句群から,【 ア 】ないし【 ウ 】内には下記AないしDの結論の中から,それぞれ適切なものが入る。【  】内に入るべき結論の組合せとして正しいものはどれか。

事例T 甲は,自動車を脇見運転したため,路上の乙に気付かず,乙をはねて傷害を負わせたが,実は乙は甲に対して拳銃を発射する直前であった。

事例U 警察官甲は,刀を振り上げて襲い掛かって来た乙を牽制するため拳銃を乙に向けたが,誤って引き金を引いてしまし,弾丸を乙の右腕に命中させた。

 「各事例においては,いずれも過失行為による正当防衛が問題となるが,正当防衛の要件として防衛の意思を(  )立場からは【 ア 】。これに対し,正当防衛の要件として防衛の意思を(  )立場では,防衛の意思の内容をどう考えるかにより結論が異なる。防衛の意思の内容を(  )であると解する立場からは【 イ 】が,(  )は必要でなく,(  )で足りると解する立場からは【 ウ 】。」

〔語句群〕必要とする  必要としない  急迫不正の侵害に対応する意識  防衛の意図・動機

A 事例T及び事例Uのいずれも正当防衛は成立しえない

B 事例Tでは正当防衛は成立しえないが,事例Uでは成立しうる

C 事例Tでは正当防衛が成立し得るが,事例Uでは成立しえない

D 事例T及び事例Uのいずれも正当防衛が成立しうる

1. ア−A,イ−D,ウ−B

2. ア−A,イ−D,ウ−C

3. ア−D,イ−A,ウ−B

4. ア−D,イ−A,ウ−C

5. ア−D,イ−B,ウ−A

[H09−47] 次の文章の(  )内に,下記語群から最も適切な語を補充して文章を完成させた場合,使用回数が3回となる語の組合せとして正しいものはどれか。

「(  )時の法定刑が(  )時の法定刑より重い場合に,(  )時の罰則を適用する旨の規定を設けることは,(  )に反するのに対し,(  )時の法定刑が(  )時の法定刑より重い場合に,規定を設けて(  )時の罰則を適用することは,(  )に反しない。しかし,後者の場合に,上記の趣旨の規定がないときは,法を(  )規範と考えるとしても,刑法第6条により,刑の(  )があった場合として軽い(  )時の罰則が適用される。(  )時に罰則が存したが,(  )時に罰則がなくなった刑の(  )の場合は,法を(  )規範と考えれば当然(  )であるし,法を(  )規範と考えても,刑の(  )の場合との均衡や刑法第6条の趣旨からして(  )と考えるが妥当であろう。もっとも,この場合も,規定を設けて処罰することとしても(  )には反しない。

 平成7年の刑法改正において尊属傷害致死罪の規定が削除され,改正前の(  )についても適用されないこととされたが,同罪と単純傷害致死罪は実質的に(  )の構成要件であり,(  )時に尊属傷害致死罪に該当したものが(  )時に単純傷害致死罪に該当することとなったと考えると,これは刑の(  )であると理解される。しかし,改正前の両罪の客体や法定刑が異なることから,両罪は(  )の構成要件であると考えると,これは刑の(  )であると理解されよう。」

〔語群〕

a 行為  b 裁判  c 廃止  d 変更  e 罪刑法定主義  f 不可罰

g 別個  h 同一

1. cd   2. ce   3. cf   4. de   5. df

[H09−48] 暴行罪における暴行の意義及び傷害罪の性質に関するAないしCの各説があるとして,事例TないしVの乙に対する暴行罪及び傷害罪の成否に関する下記@ないしEの記述のうち,誤っているものは何個あるか。

A 暴行罪の暴行は身体に向けた有形力の行使をいい,傷害罪は傷害の故意がある場合に限り成立する犯罪である。

B 暴行罪の暴行は身体に向けた有形力の行使をいい,傷害罪は傷害の故意がある場合のほか暴行罪の結果的加重犯を含む。

C 暴行罪の暴行は,身体に向けた有形力の行使のほか,無形力の行使も含み,傷害罪の傷害の故意がある場合のほか暴行罪の結果的加重犯を含む。

T 甲は,木造アパートの隣室の乙にいやがらせをするため,毎夜ステレオの音量をいっぱいに上げて乙をノイローゼにしたが,甲には乙を傷害する故意はなかった。

U 甲は,乙をノイローゼにしてやろうと考えて毎夜無言電話を繰り返し,乙をノイローゼにした。

V 甲は,路上で乙の顔面を平手で強くたたいたところ,乙はよろめいた拍子に石につまずいて転倒し,右腕を骨折したが,甲には傷害の故意はなかった。

@ A説によれば,事例Tでは傷害罪が成立する。

A A説によれば,事例Vでは暴行罪,傷害罪のいずれも成立しない。

B B説によれば,事例Uでは暴行罪,傷害罪のいずれも成立しない。

C B説によれば,事例Vでは傷害罪が成立する。

D C説によれば,事例Tでは暴行罪,傷害罪のいずれも成立しない。

E C説によれば,事例Vでは傷害罪が成立する。

1. 1個   2. 2個   3. 3個   4. 4個   5. 5個

――[H09−49]から[H09−50]まで――

[H09−49] 次の文章中の(  )内に,適切な語を補充して正しい文章を完成させる場合,下記語群の語をできるだけ多く用いるものとすれば,それ以外の語を用いなければならない(  )の数は何個か。

「刑法第36条第2項の過剰防衛における刑の(  )的減免の根拠については,(  )が減少するからだとする立場,(  )が減少するからだとする立場及び(  )と(  )の双方が減少するからだという立場がある。第1の立場は,過剰防衛においては犯罪は成立するが,緊急事態における行為であるから驚愕等のため冷静な判断をすることができなかったとしても(  )の度合は弱く,(  )が減少しているから刑の減免が認められるとする。第2の立場は,過剰防衛においても防衛行為者の(  )が維持されたという効果が生じた点において(  )の減少が認められるので,刑の減免が認められるとする。第3の立場は,第2の立場が指摘するように,過剰防衛も(  )を維持したという側面において(  )の減少が認められることは(  )できないが,他方,(  )により刑の減免が認められていることからすれば,行為者が驚愕等の心理状態に陥っていることが減免の根拠となっていることは(  )できず,(  )の減少も根拠となるとする。いわゆる誤想過剰防衛の取扱いにつき,第1の立場を徹底すれば,行為者が驚愕等の心理状態にある以上,(  )の減少があるから,過剰防衛としての刑の減免を(  )する余地があることになろう。第2の立場では,そもそも「急迫不正の侵害」がないから(  )の減少の前提を欠き,過剰防衛としての刑の減免を(  )することになろう。第3の立場では,(  )の減少の側面からは過剰防衛による刑の減免を(  )する余地はないようにも思われるが,(  )の減少の側面で実質的に通常の過剰防衛と差異がない場合には,刑の均衡上,刑の減免を(  )する余地があると解することも可能であろう。」

〔語群〕 肯定  否定  違法  責任  非難

1. 1個   2. 2個   3. 3個   4. 4個   5. 5個

[H09−50] 次のアないしカは,上記第1ないし第3の立場と,下記A又はBの考え方の組合せであるが,「共同正犯における過剰防衛の成否は各人ごとに個別的に考えるべきである。」との結論を導く理由となり得ない組合せは何個あるか。

A 共同正犯者間では,違法及び責任の程度は個別的に考えるべきである。

B 共同正犯者間では,違法の程度は連帯的に,責任の程度は個別的に考えるべきである。

ア 第1の立場−A  イ 第2の立場−A

ウ 第3の立場−A  エ 第1の立場−B

オ 第2の立場−B  カ 第3の立場−B

1. 0個   2. 1個   3. 2個   4. 3個   5.4個

[H09−51] 共犯の処罰根拠に関するA及びBの考え方があるとする。次の記述は,事例TないしVにおける甲の処罰に関するものである。( ア )ないし( ウ )に入れるべき語の下記@ないしDの組合せのうち,正しいものは何個あるか。

「甲が教唆犯として処罰されるか否かは,共犯の従属性,構成要件の解釈,違法性阻却の問題等についての理解いかんによって結論が左右され,共犯の処罰根拠論だけで結論が導かれるものではないが,その点は一応度外視し,共犯の処罰根拠という観点だけからすると,( ア )の甲については,( イ )は共犯として処罰する方向を志向するが,( ウ )は処罰しない方向を志向するといえよう。」

A 正犯を介し,自ら法益を侵害して結果不法を惹起している点に処罰根拠があり,その違法性は共犯固有のものである。

B 正犯の法益侵害に関与し,正犯の結果不法をともに惹起している点に処罰根拠があり,その違法性は固有のものではなく,正犯の不法により根拠付けられる。

T 公務員甲は,妻の乙をそそのかして,業者丙から賄賂を収受させた。

U 甲は,乙を依頼して,甲自身を車ではねさせ,瀕死の重傷を負った。

V 甲は,乙をそそのかして,乙の右手小指を切断させた。

@ ア=事例T,イ=A説,ウ=B説

A ア=事例U,イ=A説,ウ=B説

B ア=事例U,イ=B説,ウ=A説

C ア=事例V,イ=A説,ウ=B説

D ア=事例V,イ=B説,ウ=A説

1. 0個   2. 1個   3. 2個   4. 3個   5. 4個

[H09−52] 共犯の罪数に関する次の見解を前提とした場合,以下の@ないしDのうち,明らかに誤っているものの組合せはどれか。

 「幇助罪の個数は,正犯の罪のそれに従って決定される。幇助罪が数個成立する場合において,それらが刑法第54条第1項にいう1個の行為によるものであるか否かは,幇助行為それ自体についてみるべきである。」

@ 幇助行為が1回しか行われなかった場合でも,これにより正犯が数罪を犯したときは,幇助罪が数罪成立する。

A 幇助行為が数回行われた場合には,正犯の実行行為が単純な一罪を構成するにすぎないときでも,幇助罪が数罪成立する。

B 牽連犯の関係にある正犯行為を各別の行為によって幇助した場合には,幇助罪が数罪成立する。

C 正犯の罪が科刑上一罪の関係あり,それを1個の行為によって幇助した場合,数個の幇助罪が成立し,これらは観念的競合の関係に立つ。

D 正犯が複数いる場合に,それぞれの罪を1個の行為によって幇助したときは,幇助罪が数罪成立し,これらは併合罪の関係に立つ。

1. @C   2. @D   3. AB   4. AD   5. BC

(参照条文)

刑法第54条第1項 一個の行為が二個以上の罪名に触れ,又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは,その最も重い刑により処断する。

[H09−53] 死者の占有に関し,TないしVの見解があるとして,これらに基づいて@ないしBの事例を検討した下記の文章の(  )に適切な罪名を入れた場合,その種類は何個あるか。

T 死者には占有がなく,生前の占有の継続もないとする見解

U 死亡直後においては死者にも占有があるとする見解

V 死者には占有はないが,行為者の被害者に対する侵害行為を全体的に観察し,死亡直後であれば生前の占有が継続するとする見解

@ はじめから財物奪取の意思で被害者を殺害して財物を奪う場合

A 被害者を殺害した後に財物奪取の意思を生じ,その直後に死者から財物を奪う場合

B 被害者を殺害した者以外の第三者が,死亡直後に死者から財物を奪う場合

「Tの見解によると,事例@では,(  )が成立し,事例Aでは(  )と(  )が成立する。Uの見解によると,事例@では(  )が成立するが,事例Aでは(  )と(  )が成立するとの考え方のほか,(  )と(  )が成立するとの考え方もあり得る。Vの見解によると,事例@では(  )が成立するが,事例Bでは(  )が成立する。」

1. 3個   2. 4個   3. 5個   4. 6個   5. 7個

[H09−54] 以下のアないしオのうち,「公務員が,配置換えにより抽象的職務権限を異にする役職に転じた後に前職当時の職務に関し金銭を収受した場合にも単純収賄罪が成立するとする立場」と明らかに矛盾するものは何個あるか。

ア 具体的職務権限がなくなっても抽象的職務権限が同一である場合に単純収賄罪が成立するのは,公務の不可買収性,公務の公正が害されるからである。

イ 買収された職務は,前職当時,行為者の抽象的職務権限の範囲内になければならない。

ウ 事後収賄罪の主体に現在公務員の身分を有している者を含めることは文理上不可能である。

エ 単純収賄罪の構成要件の「その職務」とは,「自己の職務」という意味であり,「現在の職務」という意味に限らない。

オ 単純収賄罪においては,金銭授受と現在の職務との対価関係が必要である。

1. 0個   2. 1個   3. 2個   4. 3個   5. 4個

[H09−55] 以下に掲げるのは,未成年者拐取罪(以下,「本罪」という。)の保護法益につき,保護監督者の監護権のみであるか,未成年者の自由のみであるか,その両方であるかに関し,それぞれ異なる見解に立つ学生AないしCの会話の一部である。これを前提にした場合,下記アないしオのうち,明らかに誤っているものは何個あるか。

A:しかし,君たちの見解では,保護監督者は本罪の主体となりえないことになるのではないか。

B:いや,僕の見解では,未成年者の利益を害する場合には,保護監督者も本罪の主体になりうる。

C:A君の見解では,承諾能力のある未成年者が承諾すれば本罪が成立しないことになりそうだが,保護監督者の承諾がない場合には,本罪の成立を認めるべきではないか。

ア Aの見解では,保護監督者のいない未成年者は本罪の客体たり得ないことになる。

イ Bの見解では,保護監督者のいない未成年者は本罪の客体たり得ないことになる。

ウ Cの見解では,保護監督者のいない未成年者は本罪の客体たり得ないことになる。

エ Bの見解では,保護監督者のいる未成年者は本罪の客体たり得ないことになる。

オ Cの見解では,保護監督者のいる未成年者は本罪の客体たり得ないことになる。

1. 0個   2. 1個   3. 2個   4. 3個   5. 4個

――[H09−56]から[H09−57]まで――

 下記事例について,[H09−56]及び[H09−57]の問いに答えよ。

〔事例〕 印鑑登録証明書発行の補助事務を担当する某市役所市民課係員甲は,内容虚偽の同証明書を発行しようと企て,証明書用紙に虚偽の事項を書き込み,これを決裁権限が付与されて市長印を保管している同課係長Aに提出した。事情を知らないAは,提出された証明書用紙に市長印を押印するなどして,印鑑登録証明書を発行した。

[H09−56] 次のアないしオの文章は,甲の罪責に関する記述を順不同に並べたものである。各文章の(  )内に,下記語群から適切な語を選んで入れた場合,最も多く使用される語の使用回数は何回か。

ア 甲は印鑑登録証明書の発行権限がないという点では(  )であるが,甲が公務員であり,補助者とはいえ発行事務に関与しているという点に着目して,甲に(  )の(  )が成立すると解することも可能である

イ 係長Aに付与された権限に照らすと,Aが発行した印鑑登録証明書は(  )であるが,Aにはその旨の認識がないから(  )は成立しない

ウ (  )も(  )を利用することによって保護法益を侵害することが可能であるとして(  )を肯定する立場では,さらに(  )との関係で検討が必要となる

エ 共犯の実行従属性を要求する立場からは,甲には(  )の(  )は成立しないので(  )の成否が問題となる。しかし,(  )は(  )であることから,()はその実行行為を行い得ないとして成立を否定する立場によれば,甲には(  )の(  )も成立しない

オ (  )は重要な公文書についてのみ,その虚偽記載行為の(  )的形態での犯行態様を(  )に比して著しく軽い法定刑で処罰しているから,それより重要性の低い公文書に関する同様の犯行については処罰しない趣旨であると解すると,甲には(  )の(  )は成立しないことになりそうである

〔語群〕

a 偽造公文書  b 虚偽公文書  c 公文書偽造罪  d 虚偽公文書作成罪

e 公正証書原本等不実記載罪  f 教唆犯  g 共同正犯  h 間接正犯

i 真正身分犯  j 不真正身分犯  k 自手犯  l 身分者  m 非身分者

1. 4回   2. 5回   3. 6回   4. 7回   5. 8回

[H09−57] 上記アないしオの文章を,下記( A )ないし( E )に正しく入れると,甲の罪責に関する記述になる。( B )及び( D )に入れるべき文章の組合せとして正しいものはどれか。

「( A )。したがって,( B )。これに対し,( C )。( D )。もっとも,( E )。」

1. B:ア,D:ウ

2. B:ア,D:オ

3. B:ウ,D:イ

4. B:エ,D:ウ

5. B:エ,D:オ

[H09−58] 次のTないしVの事例に関するアないしオの記述のうち,誤っているものは何個あるか。

T 参考人が捜査官に対して内容虚偽の事実を供述したに過ぎない場合

U 参考人が内容虚偽の事実を記載した書面を自ら作成し,捜査官に提出した場合

V 参考人が捜査官に対して内容虚偽の事実を供述し,その供述内容を記載した供述録取書(供述調書)を捜査官に作成させた場合

ア 刑法第104条の「偽造」は証拠自体の偽造を指し,虚偽の供述だけではこれに当たらないと解すると,TないしVのいずれの場合も証拠偽造罪は成立しない。

イ Uの場合に証拠偽造罪の成立を認め,Vの場合にその成立を認めない見解に対しては,刑事司法手続に与える影響の点では両者に差はないとの批判が可能である。

ウ Tの場合に,証拠偽造罪が成立しないとの見解に立っても,参考人が被疑者の所在について故意に虚偽の供述を行った場合には犯人隠避罪が成立し得る。

エ 参考人が刑法第104条の「他人の刑事事件に関する証拠」に当たるとすると,Tの場合には,証拠偽造罪が必ず成立する。

オ 証拠偽造罪と偽証罪とが一般法と特別法の関係にあるとの見解に立てば,Tの場合には証拠偽造罪は成立し得ない。

1. 1個   2. 2個   3. 3個   4. 4個   5. 5個

(参照条文)

刑法第103条 罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者を蔵匿し,又は隠避させた者は,(以下略)

刑法第104条 他人の刑事事件に関する証拠を隠滅し,偽造し,若しくは変造し,又は偽造若しくは変造の証拠を使用した者は,(以下略)

刑法第169条 法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは,(以下略)

[H09−59] 下記アないしオの文のうち適切なものを以下の@及びAの文章の(  )の中に入れると,被害者を強姦した後に金品奪取の犯意を生じ,被害者が失神しているものと誤認しながら奪取行為に及んだ甲について,強盗罪の成立を肯定する文章と否定する文章が完成する。(  )に入る文を順に並べた組合せとして最も適切なものはどれか。

@ 「強盗罪における暴行又は脅迫は,財物奪取の目的をもってなされる必要がある。しかしながら,(  )。もっとも,このような立場によっても,(  )。したがって,本件では甲に強盗罪は成立しない。」

A 「強姦罪と強盗罪とは,目的・法益の点においては違いがある。しかしながら,(  )。このような立場によれば,(  )。したがって,本件では甲に強盗罪が成立する。」

ア 既に加えられた暴行・脅迫により,被害者が抵抗困難な状況に陥っている場合には,犯人のささいな言動も被害者の反抗を抑圧するに足りる脅迫になり得る

イ 暴行・脅迫を受けた被害者が,個々の奪取行為を認識している必要はない

ウ 暴行・脅迫を手段として,被害者の意思を制圧し,その法益を侵害するという点においては共通しており,犯罪構成要件の重要な部分である暴行・脅迫の点で重なり合いがある

エ 被害者が失神状態にあると犯人が認識している事案においては,そのような暴行・脅迫の犯意を認定することはできないことになる

オ 強姦の犯意で暴行・脅迫に及んで抗拒不能とした後,現場離脱の前に金品奪取の犯意を生じ,積極的にこの状態を利用するときは,先の暴行・脅迫をそのまま強盗の手段としての暴行・脅迫と評価することができる

1. ア−エ−ウ−オ

2. ア−オ−エ−ウ

3. イ−エ−ウ−オ

4. ウ−エ−ア−イ

5. ウ−オ−ア−エ

[H09−60] 「電車内で乗客乙の財布を盗んだ甲が,財布を盗まれたことに気付いた乙から腕をつかまれたので,まず,相手方の反抗を抑圧するには至らない程度の暴行(第一暴行)を加えて逃走し,さらに追って来た乙に対してその反抗を抑圧する程度の暴行(第二暴行)を加えたため,乙に傷害を負わせたが,その傷害はどちらの暴行から生じたか分からない。」という事案における甲の罪責について,学生AないしEが以下のような結論を述べたのに対し,教授がそれぞれについてアないしオの論評をした。アないしオの(  )内に入る学生を順に並べた場合の組合せとして正しいものはどれか。

A:事後強盗致傷  B:暴行と事後強盗の併合罪  C:傷害と事後強盗の併合罪

D:傷害と事後強盗の包括一罪  E:傷害と事後強盗致傷の併合罪

ア (  )君は,第一暴行と第二暴行は別罪と評価しているが,傷害については「疑わしきは被告人の利益に」の原則を徹底したようですね。

イ (  )君は,第一暴行と第二暴行は別罪として評価しているが,傷害の結果については過重な責任を認めることになる場合が出てくるのではないですか。

ウ (  )君は,第一暴行と第二暴行を一体のものと判断したようですね。

エ (  )君の考え方に対しては,身体犯と財産犯の罪質の違いを軽視しているのではないかとの批判が考えられますね。

オ (  )君は第一暴行と第二暴行は別罪と考えた上で,第一暴行から致傷結果が生じたと擬制したことになりますね。

1. B−C−A−D−E

2. B−E−A−D−C

3. B−E−C−A−D

4. C−A−E−B−D

5. C−D−B−E−A

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