点滴のおはなし

患者A「風邪で熱があるんですけど・・・。」
医者「はい,点滴しときましょう。次の方はどうされましたか?」
患者B「胃の手術をしたので食べられません。」
医者「点滴をしましょう。次の方?」
患者C「アキレス腱を切ってしまって・・・。」
医者「わかりました。とりあえず点滴しときましょう。次の方・・・。」
患者D「少し頭が・・・」
医者「う〜ん,点滴しようか。次は?」
患者E「先生,こんにちは。あの〜・・・」
医者「点滴かな?次・・・」
患者F「あの〜・・・」
医者「点滴!」

 最後のほうはかなり極端ですが,このように点滴は本当によく使われるようになりました。私は,数年前まで輸液(点滴)のメーカーで研究をしていたこともあって,点滴についてよく質問されます。そこで,その質問にそって点滴について少しばかり説明したいと思います。

質問1.「輸液にはどんな種類があるのですか?」
 輸液には,大きく分けて「末梢静脈輸液」と「中心静脈輸液」の2種類があります。みなさんがよく見るのは,「末梢静脈輸液」でして腕の静脈へ針を刺して点滴するものです。主に,水分やミネラルの補給が中心です。もう一つの「中心静脈栄養」は,外科手術などで全く食事がとれないか,あるいは不十分な患者に水,ミネラル,糖質,アミノ酸,脂肪,ビタミンのすべてを投与するもので,極端にいえば食事をしなくてもこれだけで十分生きてゆけるという優れものです。

質問2.「輸液の中にはどんな成分が入っているのですか?」
 今述べましたように,点滴にはいろいろ種類がありまして,それぞれ成分も違うのですが,主な成分は水,電解質で,これに糖質やビタミン,アミノ酸を配合して色々な点滴製剤を作っています。

質問3.「点滴を飲んでも効きますか?」
 質問2で述べましたように,成分が水,電解質,糖質,ビタミン,アミノ酸ですので飲んでも同じ効果がでますが,点滴は本来口から投与できない場合に使うものですから,あまりおすすめできません。味は悪いし,値段は高いし・・・。飲める場合は,経腸栄養剤がありますので,こちらのほうが味もいいですしおすすめです。


腸のおはなし

 食品は、私たちが毎日健康的な生活をおくる上で必要な栄養素を含んでいます。食品は口の中で噛み砕かれ、胃や腸を通って肛門に出てきますが、この間に食品に含まれる栄養素は消化され、体内に吸収されます。これら口、胃、腸などは消化管とよばれ、私たちの生活のエネルギー源となる栄養素を食品から得るために日夜休みなく働いているのです。これらの消化管は体内にあり、あまり目立たないためその重要性はつい忘れられがちです。たまに思い出してもらえたとしたら、胃炎であったり、胃潰瘍であったり、下痢であったり、便秘であったりと身体の調子が悪いときばかりで、こんなことから胃や腸はあまりいいイメージをもってもらえていないのでしょう。むしろ胃や腸がなかったらもっと快適に過ごせるのにと思う人も少なくないようです。もっとも、最近の医学の進歩はめざましく、胃や腸のかなりの部分を切り取っても何年も生きてゆくことができます。すなわち、胃や腸がなくても点滴(輸液)によって必要な栄養素のすべてを補給することができるのです。私も3年前まで某製薬メーカーで輸液などの栄養剤の研究に携わっていたため、輸液の素晴らしさは十分に存じております。胃や腸を切除したために食事ができなくなっても、輸液を使えば何カ月も何年も生活を続けることができるのです。こういってしまうと胃や腸がますます軽視されてしまうのですが、確かに栄養素の補給は点滴で十分行えますが、点滴にはいくらかの苦痛とストレスが伴いますし、食事ほど楽しいものではありません。胃や腸がなければビールやステーキも楽しめません。やはり消化管は栄養補給のためにも、食事を楽しむためにも重要な臓器なのです。

 現在、私は「腸」に関する研究を行っています。小腸は食物を消化して、栄養素を吸収するだけの単純な臓器と考えられがちですが、なかなかどうしてそんな単純なものではありません。たとえば、でんぷんなどの糖質が腸に入ってくれば、糖質を分解する消化酵素を多く含む膵液を分泌させるように膵臓に指令を出し、蛋白質が腸に入ってくれば塩酸を多く含む胃液を分泌させるように指令を出すといった具合に、腸は食物の成分を認識して、それに応じて適切な消化液を分泌するという複雑な働きもしているのです。また、腸の中には腸内細菌やアレルギーを起こす抗原などが存在しますが、腸にはこれらの異物が体内への侵入するのを防ぐ働きもしています。これらの防御機構には腸の粘液中に存在する分泌型IgAという物質が関与していて、この分泌型IgAが細菌やウイルスが体内に侵入するのを防ぎ、細菌が産生した毒素を中和します。また、食物アレルギーに対しても重要な防御機構として働いていると考えられています。
 このように腸は、ただ単に食物が通過する「ちくわ」のような臓器というのではなく、食物を効率よく消化吸収し、しかも細菌、ウイルス、食餌性の抗原といった異物の侵入を防いで、我々の健康的で楽しい生活を守る重要な臓器なのです。
 みなさん、くれぐれも「腸」を大切に!



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