<春>

     1 屋根の雪絣もよふに解けにけり

     2 牡丹雪見えては消える夜の海

     3 畝の雪まだらに解けて人の顔

     4 早春の海に影なす観覧車

     5 早春のバス待つ人のまるき肩

     6 露天湯に磯の香よぎる春の宵

     7 露天湯の対岸の灯の冴返る

     8 和歌浦に漁船灯りて春寒し

     9 湯出て小さな店に梅四五本
    
    10 背中向け浴衣に替える余寒かな

    11 春寒や階段下の道後の湯

    12 壕端の小ぶりの梅を過ぎる足

    13 魚崎の震災跡に梅の影

    14 線路土手梅一本の景色かな

    15 畦道にぽつんとありし薄き梅

    16 春雨に湖岸の家並細くなり

    17 ふらここを揺すり路地ゆく風の筋

    18 足許に風のからまる春の宵

    19 道ばたのつつじに風の隠れをり

    20 雨粒の底にまるまる春の雲

    21 春雷や窓を貫き屋根向こう

    22 白れんの散りし夜道の薄明り

    23 花の土手寄りて距離おく傘のあり

    24 満開の花にかかりし昼の月

    25 いちめんの花のかげなる高台寺

    26 雨あがりゆるりとゆくや花筏

    27 花散りて再びみたび舞ひあがる

    28 人々のあわくなりゆく八重桜

    29 小鳥来て花からのぞく青き空

    30 横たわる石に添ひゆく芹の水

    31 木の下に花散りあわき枳殻邸

    32 廃屋の軒にとどくや山桜

    33 吊橋の下から桜吹きあがる

    34 雲のうえ雲雀もどりてゆきどまり

    35 うららかに底ゆく波や鯉の鰭

    36 処理場の水流れをり春の川


    37 宇和の海筏はのたり山笑ふ

    38 山なかの桜に向かふひとつ道

    39 のどかさや浜這ふ波の縞明り

    40 畦をゆく妻が朧になりにけり

    41 菜の花を分けて川面をよぎる風

    42 蝶二匹川の中州にゐたりけり

    43 国道をもつれてゆくや蝶二匹

    44 春寒やとまつたままの観覧車

    45 砂場向くベンチの堅き日永かな

    46 軒下に蜂のしかばね重なりて

    47 濠端の花にころがる子供靴

    48 通ひ路ののびたる枝に花二三

    49 夕闇の灯のたまる桜鯛

    50 人なかに別れた眼あり春の雷

    51 川を掃く花のかげなる芭蕉像

    52 ゆるやかに桜ゆれたる川灯台

    53 石垣に足ぶらさげる花見客

    54 箱抱え花見筵へいそぐ肩

    55 箸を手に浅瀬を渡る花見客

    56 満開の桜にのぞく天守閣

    57 雑踏の花見の客にまぎれけり

    58 花のもと見世物小屋の声のして

    59 ホームレス小屋のなかにて花見かな

    60 遠足の菓子が異なる輪をなして

    61 靴音のひそかな余韻猫柳


   
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