<秋>
    1 吊り橋を渡りきっても天の川

    2 秋めくや目医者の椅子のへこみ皺

    3 かすむ眼にやわき妻の手水の秋

    4 野分雲ゆるりと湖にかぶさりて

    5 露天湯の波一枚の月明り

    6 露天湯に足投げ出すや秋没日

    7 露天湯に波の寄せくる十三夜

    8 秋立つや川の露天湯手にひたし

    9 露天湯の夕日ふくらむ秋の海

    10 かげろひて山並大き秋の暮

    11 飛行機の行方なくなる秋の空

    12 秋風やグラスに伸びる顔のあり

    13 鰯雲やつと眼鏡を買替えて

    14 生きて死に泣ゐて笑ふて鰯雲

    15 身綺麗な豚積む荷台鰯雲

    16 海碧く補陀落渡海鰯雲


    17 離されし列車のうえの鰯雲

    18 草中の朝顔の紺立ちにけり
  
    19 朝顔ののぼりし軒の低さかな

    20 朝顔のからまる窓に竹の籠

    21 女郎花水辺に色をこぼしけり

    22 ゆれ交わす秋桜の影もつれゐて

    23 鬼灯や命錆の袋かな

    24 浅き水踏みて水牛曼珠沙華

    25 土手の網ぬけて芙蓉のそよぎをり

    26 木犀の匂ひにゆるむ足の裏

    27 花消えて背筋ののびる木槿かな

    28 しずまりてピエロの顔や吾亦紅

    29 粗壁に鎧のような柿のあり

    30 妻の紅残るグラスや秋螢

    31 秋の蚊に頸掻く妻のまるまりて

    32 吹かれ来て湖の沖ゆく秋の蝶

    33 子規堂の墓石うつろふ秋の蝶

    34 駅前の路上にとまる秋の蝶

    35 川音にまじり声くる鵯の宿

    36 九階の通路這ひゆく秋の蝉

    37 ちちろ鳴く室津の宿の軒瓦

    38 船揺れて鰯のごとき眼となりて

    39 紅葉が仏足石に五六枚

    40 一面に紅葉ひろがる茶屋の窓
    
   
   <
紅葉七句>
      

       道ばたの紅葉を過る人の波

       大木にまじる紅葉の南禅寺

       門前の紅葉にかがむ人力車

       裏木戸を染める紅葉や京の寺

       雑踏の紅葉の庭の茶店かな

       古池の紅葉に寄りし鴨の足

       池端のみたらし団子照紅葉

     
                 
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