<夏>
 
     1 夕焼けの水面に立ちし大鳥居

     2 夕焼けや水面に鹿の寄り添ふて

     3 夕焼けて沼の真中に夜来たり

     4 夕焼けになにやら跳ねし街の川

     5 水ひそむ木道端の座禅草

     6 ぬかるみを均して白き水芭蕉

     7 源流の一滴うける水芭蕉

     8 滝の水風まきこみて波二寸

     9 滝落ちて雲わきたつや峰の上

    10 滝の水龍の顔して落ちにけり
    

    11 一筋の水の向うに二つ滝

    12 虫のごと耳にまつわる隠し滝

    13 ふくらみて水ふくらみて滝落つる

    14 布のごと綾なし落つる滝の水

    15 滝落ちて鳥居をつつむ水けむり

    16 柳川の石橋ぬけて額の花

    17 昼暗き川辺の古道額の花

    18 竿をさす川の深さや額の花

    19 紫陽花に足ぶらさげる寺の縁

    20 紫陽花を起せし人の腕まろく

    21 藻の花に水息づきて流れゆく

    22 葉桜や小雨にけむる淀の橋

    23 身のうちに余韻のありし寺清水

    24 水すまし鯉の頭を跳ねゆけり

    25 かまきりの骸にたかる水すまし

    26 水をゆく水すましの手妻の足

    27 五つ六つ水輪ひろがる水すまし        
   
    28 水すましあとさきとなる舟の端

    29 石橋をかがみてゆくや梅雨の舟

    30 頼りなき湖岸の軒に梅雨の蝶

    31 五月雨や中州の家に迫りけり

    32 五月雨に家も草木の淡くなり


    33 駅頭の赤き傘打つ氷雨かな
      
    34 五月雨の翼に水の走りけり        
     
    35 五月雨にあふれし水のよりどころ

    36 柳川をくだる舳や夏の雲

    37 喉ごしに日ざしの匂ふ夏の水

    38 ひつそりと水に流れる夏の虫

    39 廃屋にありし団扇の水の痕

    40 人なかをひらりひらりとゆく団扇

    41 夕立ちや竿につらなる水の玉

    42 炎天に釣堀の鮒浮きにけり

    43 炎昼に犬と川中あるく人

    44 雲間より七月の海ひろがりて

    45 夏の川処理水まとひ海に入る


    46 水底の岩にたゆたふ夏日影

    47 炎昼をはじきしダムの水ひびき

    48 噴水に小さき裸足ゆきもどり

    49 端居して水に片寄る刻のあり
       
    50 水走りくねるホースに夏の雲

    51 裸木や水貫きて雲の峰
   
    52 遠雷に水辺の影のはなれたる

    53 いさかひて水に流して心太

    54 撒水車過ぎて日向の匂ひかな

    55 踏み入つてしじまたわみし夏木立

    56 夏の夜の虫をつぶせし指の腹

    57 炎天の池にぽつかり鯉の口

    58 炎昼の川にぽつんと洗濯場

    59 くつきりと連山涼し越中路

    60 浴衣着て下着忘れる女ゐたり

    61 冲を見る浴衣の女のすれた下駄

    62 湖に足を投げ出す浴衣づれ

    63 子らを追ふ大淀川の白日傘

    64 白日傘水路の鯉の影ゆるく

    65 かがみこむ眉のゆるむや花菖蒲

    66 かきつばた水に影して立ちにけり
      

    67 水郷の舟の通ふやかきつばた

    68 風消えてあやめに残る風のあり

    69 追われ来て水にもつれる青大将

    70 風舞ふや水面を均す蓮浮葉
    
    71 水痩せて岩陰の鮎まどひけり

    72 鮎の宿生簀の水の重き夜

    73 囮鮎水に隠れて戻りこず

    74 釣竿のさきに鮎の瀬ありにけり

    75 早き瀬の崖にせり出す鮎の宿

    76 睡蓮に亀の目ぽかり近づきて

    77 城跡の壕にくつきり蓮の花

    78 泥水の路肩にありし立葵

    79 雲厚き空に向きたる水葵

    80 古手紙まきつく茎や水葵

    81 河骨に水よれ風のすりぬけて

    82 土煙消えて色ます仏桑花

    83 白牡丹和舟めぐりの水の町

    84 薔薇の花ひとひら落ちてゆるみけり

    85 浮草のほのかにうごく水輪かな
     

    86 螢火の離れてゆきし手のたわみ

    87 デパートの椅子にへたるや螢籠

    88 ゆるやかに螢飛び交ふ山の里

    89 葉の裏に螢火うすく息づきて

    90 ふわつと来て水面をそよぐ夏の蝶

    91 水打ってころがる蝉を流しけり

    92 蝉鳴きて裏の水路の細りけり

    93 ぷかりぷか湯の花桶に蝉しぐれ

    94 街なかの水わきたつや蝉しぐれ

    95 昼下り踏みつぶされし蝉ゐたり

    96 道ばたの蝉の骸にへこむ風

    97 ゴム靴とからみ流るる蝉ありて

    98 仰向けにころがる蝉の翅透きて

    99 蟻一匹とどまり動く靴の中

    100 雨あがりホームに弧描く蟻のゐて

    101 蟻塚の轍を這ふや蟻五六

    102 蟻の這ふ畳に妻の汗ありて

    103 水一重緋鯉の頭迫りけり

    104 駅前の水路に彩寄る錦鯉

    105 陸の鵜の肩ふり歩くゆるき足

    106 花火果て水にうつろな街灯り

    107 眉に降る窓の花火に肘立てて

    108 湯の花火水絵のごとくひろがりて

    109 花火の夜沖より音の流れ来し

    110 ビル建ちて半ば欠けたる遠花火

    111 ひろがりて花火落ちゆくビルの上

    
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