<冬>

   
 1 日当たりて眉のごときの屋根の雪

     2 窓の雪がぶりと食ひし夜のあり

     3 立ち迷ふ雪のなかなる雪景色

     4 雪舞ふて売家のぼり傾けり

     5 まろやかな川となりたる雪景色

     6 雪に立つそば道場の広告板


     7 しんとして家みなおなじ雪の村


     8 荷車の把手ののぞく雪の里

     9 雪解けて酒屋の屋号見えにけり

      10  雪のなか細くなりたる水明り

      11  暮れなずむ雪一色に家灯り
     
      12 寒雀雪の野原にひろがりて

    13 頭上ゆく鷹の下なる雪の町

    14 架線より太刀魚のごと雪落ちて

    15 枝さきに降りつむ雪のむつみ合ひ   

    16 あとさきに雪の畦ゆくうすき影 
 
    
    17 雪の野に湖へ水路のくねりゆく

    18 飛行機の海に近づく冬の午後


    19 北風に物音やまぬ島の宿

    20 樽の湯の崖下あらふ冬の波

    21 ちぢまりて枯葉ゆらゆら残りをり

    22 迷ひ来てじつとしてゐる冬の蠅

    23 おほらかに山茶花咲くや露地の奥

    24 水仙と海を隔てる道一つ

    25 絶壁にまばらに揺れる水仙花

    26 水仙の倒れし茎に靴の跡

    27 潮風の吹きのぼりけり水仙郷

    28 渦潮の渦とはならぬ冬の昼

    29 葉牡丹にもつれし虫のありにけり

    30 寒紅や偽りまじる午後の影

    31 店先の椅子に飛びのる寒雀

    32 海をゆく下水処理水初明り

    33 敷石にぽとり霰の消えゆけり

    34 足裏に落葉カサつと日の匂ひ

    35 居酒屋の卓で冷めゆく煮大根

    36 湯豆腐のくずれて煮える眼のありて

    37 いさかひて俄に笑ふ師走かな

    38 瀬戸内の小島のびきる冬日影

    39 寒雀路にぺたりとゐたりけり
      
    40 寒雷にうまくふるえる肩のあり

    41 カラオケのマイクころがる寒の雨

    42 峡の湯に吹きのぼりくる枯落葉
    
    43 山襞に雲影かがむ冬はじめ

    44 山茶花に足の遅速の滝の道

    45 欄干にぬのつとゐたる冬の月

    46 節分やだらりと眠る女ゐたり


   
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