未練

「もう死にたい」と何度も思う
いくらお世話になった人のため自分のためと
頑張って生きようと思っても病気の進行がそれを許さない
これからも今以上に苦しくなるだろうと思うと
どうしても弱音をはいてしまうのだ
本当は死にたくないくせにどうにもならない自分を
罵ることで病気から逃げようとしていた
そして自分にはまだ楽しめる事が一杯ある事は分かっていても
自分の情けなさにすべてを悲観した
僕が死んだら母をはじめ家族に迷惑をかけなくて済むし
自分もこの苦しみから解放されると真剣に考えた
そして死ぬにしても舌を噛む事しか出来ない体に嫌気がさした
それで実際 自殺しようと舌を噛もうとしたが出来ず
ただくやし涙が出るだけだった
舌を噛む事の痛みへの恐怖とまだ死にたくないという思いが
瞬時によみがえってきてのなさけ涙でもあった
まだ自分は本当の苦しみを味わっていないのであり
自分の人生に未練があるのだろう
こんな思いを何度も繰り返しながら時間は過ぎていった

健康な人でも生きていれば必ず死にたいと思う時があると思う
でもそれは僕のような者から見ればちっぽけな悩みだ
なのに平気で自殺ができる人とは物事への忍耐力が足りないのと
その時がその人の寿命だからなのだと思う
僕の言う本当の苦しみを味わっていないとは
まだ病気に負けないだけの忍耐力がある事を意味し
自分の人生に未練があるとは
まだ死ぬべき時ではないという事を言いたいのだ
だから今までさんざん我慢して忍耐力を付けたり
自分より重い障害で苦しんでいる人が
必死に病気と闘っているのを見てきた僕には
自殺は出来ないのだろう
勿論 死ぬ亊を考えてる時はこんな事を考える余裕はないけれど
きっと心のどこかにはこんな思いがあるのだと思う

どんなに苦しく短い人生でも最後まで命を使い切る事で
何の未練も残らなくなると思う
自分や病気に負けて途中で命を捨てるのはやっぱり自分の為にも
残された者にとっても未練が残る
しかし そうは言っても自分勝手に思い込むのも人生だと思う
病気に負けて自分で命を捨てる人もいれば
最後まで病気と闘い抜いた人もいる
人にはそれぞれいろんな生き方がある 
だからこそ生きることの尊さを感じるのだろう
僕は最後まで命を使い切るつもりだ
決して未練は残したくない