生死

何も出来ずにただ静かに横になって体を休めていた
細い力のない手をふっと胸の所に動かした時
高らかに鳴り響く心臓の音が手に伝わってきた
手も足も肺さえも静かに休んでいるのに心臓だけが
決まった速度で力強く波打っている
体中の筋力が衰退していく中で心臓の高鳴りは一層激しく
生きていくためのエネルギーを感じさせる
起きていても寝ていても力強く活動し
決して休む事のない底知れない力を持っている事を・・・
その鼓動の速さは死を恐れさせる様にも聞こえる
病魔が心臓に迫っていくのを必死で防いでいるのか
それとも自分自身に命の大切さを教えているのか分らないが
ぐったりした体から心臓だけが命の尊さを教えてくれる
まるで死を急いでいるかのような速さで波打つ心臓に
思わず「もっとゆっくり動いて」と問いかけてしまう
あんなに「死んだほうがいい」といつも思っていた自分なのに
生きる事の力強さを知って死への恐怖心が増したらしい
こんなに必死に心臓は生きようと頑張っている事が
自分に対しても生きる事の大切さを感じられた
こんなふうに考えられるのも生きているからこそと感じる

その心臓もいつかは止まってしまう時がくる
我々障害者は真剣に生死を考えてしまうけれど
結局は死が来るまでの無駄な悩みになるに違いない
しかしそういった悩みを持つ事自体生きている証拠である
たとえ無駄な事であったとしても生死を真剣に考えてこそ
必死に生きなければと思うのかもしれない