繊細な光の揺らぎが視界の中で反響する
『Voice』 田村尚子著 \3,500(税別) 青幻舎刊





例えば暗い画面の中に浮かび上がる、ブルーの微光を発する不確かな曲面。それは風に揺れるカーテンのようにも見え、あるいは陽光を跳ね返す水面のようにも映る。しかしそれが何であるのかは、実は問題ではないのかもしれない……。ピーター・ブルックやフィリップ・ドゥクフレなど、舞台芸術家の肖像を撮り続けてきた気鋭の女性写真家・田村尚子の初の写真集だが、ここでは写された風景も静物も、その輪郭を失って光と色に還元され、静かにたゆたっている。そう、その繊細で脆弱な美しさを丹念に掬い上げるように見詰める以外のことを、これらの写真はおそらく求めてはいない。仄かな光と淡い色はささやくだろう。この世界そのものが不確かなものなのだと。そして、だからこそ美しいのだ、と。

text;東京カレンダー編集部









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