5. 証券化の流れのなかの「不動産証券」について

. 不動産証券とは不動産を裏付けとして、特定の会社が証券を発行し、この証券を投資家に販売するものです。証券の利回りは賃料収入等の不動産の運用益(インカムゲイン)、元本は不動産の価格(キャピタルゲイン)です。

 不動産証券は、@不動産特定共同事業法とASPC法とB証券投資信託法とに基づいています。Bの不動産投資信託には会社型、指図型、信託銀行型の三つがあります。
 尚、@の不動産特定共同事業法は、従来からの不動産小口化商品のうちの任意組合型を発展させたもので、不動産証券とはやや異なる新しい小口化商品です。

6.不動産証券の事業形態

@ 不動産特定共同事業法

 国土交通省の認可。
 国土交通省の宅建免許を有する法人で、資本金一億円以上、その他事業法の定める基   準をクリアした者が特定共同事業者の認可を得て、特定共同事業商品をつくり 販売する。
 販売するだけの事業認可者は資本金二千万円以上です。
民法上の任意組合型と商法上の匿名組合型と賃貸型との三つがあります。

A SPC法(資産流動化法)

金融再生委員会に届け出。
 法人でも個人でも、取締役一名以上、最低資本金10万円で特定目的会社をつくることが出来ます。

B 証券投資信託法、投資法人法

 金融再生委員会の認可。
 投資法人の設立は資本金一億円以上、常時保有純資産額五千万円以上です。

東京証券取引所の上場基準は、総資産額五十億円以上、純資産額十億円以上、一口あたり資産額5万円以上、受益証券の総口数4000口以上、ファンドの運用資産のうち不動産等の比率が75%以上、運用資産等のうち賃貸事業収入等が現に生じており1年以内に売却見込みがない不動産等の比率が50%以上、投資証券及び不動産等以外の資産が現金および現金同等物に限られる等です。

会社型(上場申請者は投資法人と投資信託委託業者)と指図型(上場申請者は投資信託委託業者と信託銀行)と信託銀行型(上場申請者は信託銀行)とがあります。
 投資信託委託業者とは、「金融庁の認可を受けた投資委託業者と投資法人資産運用業者」と「投資一任の認可を受けた投資顧問業者」です。 
    
<投資顧問業について>

 一般投資顧問業者(個人・法人)と総合不動産投資顧問業者(宅建業免許を有する資本金一億円以上の法人のみ)とがあり、投資一任業務を行なうには「総合」の登録が必要となります。

7.不動産証券を発行する方法

 資産流動化型と資産運用型があり、流動化型は先ず資産ありきで、SPC法により、特定目的会社が保有不動産を裏付けとして証券を発行します。運用型は先ず資金ありきで、投信法により、会社型不動産投信(不動産投資を専門とする会社が証券を発行)と信託銀行が行なう不動産投信ファンドとがあります。
 尚、不動産特定共同事業法による小口化商品は資産流動化型になります。

8.不動産証券の仕組み

 前にも述べました通り不動産証券は、SPC法と証券投資信託法、不動産特定共同事業法に基づいています。
@SPC法は、不動産の差し替えが困難な仕組みです。
A不動産特定共同事業法は証券市場の流通性にやや欠けます。
@ 証券投資信託法は、三つのタイプ(会社型・指図型・信託銀行型の三つ)がありますが、  
個人投資家にとって、会社型すなわち証券投資法人による日本版REIT(不動産投資信託)が不動産ファンドの主役です。今、上場されている不動産投資信託は一口50万円前後で、証券会社等の窓口で、いつでも一口から購入でき、いつでも売却できます。

これまでの投資信託は「契約型」と呼ばれ、投資委託会社が信託銀行に資産を信託し運用方針を指図し、その信託受益権を小口に分割し一般投資家に販売します。

現在は、「契約型」の他に「会社型」が認められるようになり、『主として有価証券に対する投資を目的として設立される「会社」』が投資資産を所有し、この「会社」自体の株式価値イコールその投資資産の価値になり、「会社(株式)」そのものが投資商品として販売されることになりました。これが「会社型」、「証券投資法人」と呼ばれるものです。
 この証券投資法人が、投資対象を不動産として証券市場に上場すれば、所有不動産の差し替え自由なアメリカ版に近い日本版「REIT」になります。

 従来は、投資対象として「主として有価証券」という制約があり(一部は不動産でもよいが)、主として有価証券としなければなりませんでした。SPC法を使って個別不動産を有価証券である出資証券に変換することも可能ですが、不便です。現在は、この「主として有価証券」と規定されている部分に不動産が加わりました。これで「証券投資法人」による不動産投資ファンド「日本版REIT」が可能となりました。大きな市場に成長するでしょう。

9. 不動産の証券化の意義と効果

 不動産の証券化とは、不動産を裏付けとする有価証券を発行することによって資金調達を行うことでありますが、その意義と効果は次の通りです。

@ 金融機関からの間接金融から、資金調達の手段として資本市場からの直接金融へ。
A保有不動産を分離することにより、企業にとって資産圧縮ができることです。
B本格的なリストラに利用できることです。(本社ビルを売却する企業も出てきました)
C1400兆円と言われる個人金融資産に、不動産投資市場という新たな運用の道が開かれた。D個人投資家にとって、ロ−リスク・ロ−リタ−ンからハイリスク・ハイリタ−ンまで選 
択の幅が広がることです。ロ−リタ−ンと言っても普通の金融商品より利回りは高くなると思います。ハイリスクと言っても不動産の裏付けがありますので株式の様に紙屑になりません。
E株式投信がハイリスク・ハイリタ−ン型、公社債投信がロ−リスク・ロ−リタ−ン型としますと、不動産投信はミドルリスク・ミドルリタ−ン型です。
F単独型の優良不動産に投資するのか、複数組替型にするのか、この場合でも商業施設・店舗型かオフィスビル型か、ホテル型か、賃貸マンション型か、分譲型か、開発型か等、
償還時期やリスクとリタ―ンを考えてのバリュエ−ションが多く、この面でも選択の幅が広がります。
G今までの不動産投資(ワンルームマンション等)に比べ、リスク評価や情報の収集は欠かせませんが、不動産売買に伴う諸手続や、所有することによる管理がなくなり、煩雑さがなくなります。
H不動産証券の小口化、流通性の上昇。
I不動産投資市場への資金が流入することにより、不動産市場の活性化が図れることとな ります。
J不動産業の新たな事業展開が期待できること。不動産市場の透明性が向上する効果が期待できることです。
K従来から不動産の小口化証券はありましたが、これは殆どが機関投資家向けであり、流通性も少なかったが、東京証券取引所の不動産投資信託流通市場の創設により、更に小
口化、流通化が進み、個人投資家も参戦し易くなりました。

<ビ−クル(導管とも呼ばれます)>について

 簡単に言えば、第一に、二重課税を避けるため匿名組合等を使うことです。
株式会社では法人税が課税された上に、配当にも課税されますが、SPC法による特定目的会社・特定目的信託、投信法の投資法人・投資信託、信託、民法上の任意組合、商
法上の匿名組合は一定の条件を満たせば二重課税されません。
第二に、倒産隔離がはかられることです。

10.抵当証券との相違

抵当証券は昭和6年に制定された抵当証券法に基づいて、法務局が抵当権を小口化したモ−ゲ−ジ証書を発行していますが、所有権を証券化した不動産証券とは根本的に異なります。諸々のトラブルが発生したため昭和62年に抵当証券業の規制等に関する法律が制定されました。

11.従来の小口化証券との相違

従来の不動産小口化証券は、信託型と任意組合型とがあり、投資家が不動産販売会社と契約(不動産の共有持分を買う)を結び、不動産販売会社にオフィスビル等の賃貸事業及び管理・運営を委託して、その賃貸収入から投資家が配当を受けるもので、流通性も高くありません。
従来の不動産小口化証券についてのトラブルが生じてきたため、平成7年4月に、従来の不動産小口化証券のうちの任意組合型を発展させ不動産特定共同事業法が施行されました。この新しい不動産特定共同事業法は任意組合型(民法667条以下)と匿名組合型(商法535条以下)と共有持分賃貸型等がありますが、一般的に匿名組合型が最も証券化に近い形態で、多く利用されています。
 不動産特定共同事業法によるファンドは不動産の小口化を意図したもので、不動産の証券化を想定したものでありませんので、流通性に乏しいものと考えられます。
 以前にあった抵当証券や不動産を小口化して販売したケ−スと異なり、今の不動産証券は、法改正後の@不動産特定共同事業法による不動産小口化商品ASPC(特定目的会社)の発行する不動産証券B不動産投資信託の三つに基づくものです。そして不動産投資信託に三つのケ−ス(会社型・指図型・信託銀行型の三つ)があることは先程述べた通りです。
12..一般投資家が購入した不動産証券を売る場合
 
@SPC法

 この証券は、証券取引上の有価証券として扱われますので原則として譲渡は自由にできます。しかし、現在、取引市場が整備されていないため、流通性にやや欠けます。

A不動産特定共同事業法の場合

  購入した出資持分は事業者と投資家の間でかわされた契約に基づいていますので、第三者に売却できると定めてある場合は自由に譲渡できますが、購入した第三者と事業 
 者間で再度契約を締結することが必要です。今のところ流通市場がないため事業者が買い取り保証をしている例が多いようです。

B証券投資信託法

  @.会社型とA.指図型とB.信託銀行型とがあり、@の会社型の投資口(投資証券)の売買は不動産投資信託市場(東京証券取引所)で自由に毎日売買されます。

13.不動産証券のリスクについて

不動産証券には、期間中の賃料収入等による運用利回りの変動リスクと償還時の元本変動リスクとがあります。

14.不動産業や不動産管理業への影響

REITの公開により売買当事者は不動産の管理に着目し、不動産管理業が注目されるようになります。
 不動産業者にとってもビッグチャンス到来であると同時に変革していく必要があります。
 不動産証券市場の発展は、発行される証券の情報が投資家に公平・詳細に開示されるかどうか、開示された情報が信頼性の高いものかどうかにかかっています。

15.定期借家制度との関連

 定期借家制度に関しては、良質な居住用賃貸物件の供給のほか、安定的な収益確保の観点があり、不動産証券にとってはプラスです。
 従来の借家法は、賃借人が6カ月前の予告で退居でき、その後、賃料が入らないということがあり、合意家賃でもその後の経済事情の変化により減額されることもあります。従来の借家法での賃貸物件を不動産証券化した場合、投資利回りが約束できないことになります。そして賃貸借契約終了時に、空家にして売却し投資資金を回収しようとしても、立退料を要求されるか、賃借人が居座り更新となります。これは、不動産証券化にとってはマイナス点です。これらは、定期借家制度ではクリアできます。賃貸借期間保証で賃料固定の定期借家契約なら、賃借人が倒産等しない限り、約束された期間と賃料になります。中途解約も家賃増減も更新もありません。
 但し、200u未満の居住用貸家では借家人から中途解約が可能となります。  以上     戻る