借地権

建物使用を目的とする賃借権及び地上権を「借地権」と言います。地上権は物権で譲渡性があり、登記もできます。賃借権は債権です。借地権は賃借権の場合が多いです。賃借人に登記請求権がなく、登記は地主の協力が必要ですから、ほとんどの場合登記はなされていません。借地権は賃借権の場合が多いので、以下、賃借権の場合について述べます。借地権は借地権の登記または建物の登記で第三者に対抗できます。また、建物の占有でも第三者に対抗できます。 

 一般的に借地権は慣行的に取引の対象になっており借地権価格が発生しています。
更地価格に対する借地権割合は相続税財産評価基準では一般の住宅地で60%、商業地で70%〜80%程度です。
通常の標準的な取引では50%程度が多い様です。
地主が借地権を購入する場合(完全所有権に復帰するため経済的増分価値が発生する)、第三者が購入する場合(名義書替料、建替承諾料の支払、改定地代の上昇等がある)等その取引態様により取引割合は異なってきます。取引態様、借地契約内容により異なりますが、40%〜60%が多い様です。

 阪神大震災の場合、地主が借地権を買い取る割合は20%〜35%程度が多かった様です。なかには、5%程度のものや、0%(つまり、借地権の無償返還)の事例もありました。建物が崩壊した借地人は地主と相談して建て替えるるか、借地権を買い取ってもらうか、いずれにしても早急に解決が計らなければならない(解決が長引く場合、更地状態のまま地代だけ支払続ける等、その経済的損失は大きい)が、地主にとって、何ら急ぐ事情はなく、平時に比し借地人の立場が弱くなるため(勿論、震災法で様々な保護規定が定められているが・・・)借地権割合は低く取引された様です。また、倒壊しても前の建物より同じ大きさ以下であれば、無断で再建築してもよいと言う風評が流れその通りに建て替えた借地人もありました。

 

<借地権に係るいろいろな価格>

@名義書換料は、借地権価格の10

A譲渡承諾料は、更地価格の
5%あるいは借地権価格の
10%。
 
B建替承諾料は、更地価格の
3%が目安。
その他の例として、更地価格×13%(期間延長を伴うもの 56%)、更地価格の10%の例もあります。



C更新料は、借地権価格の5%〜10%相当額、その他の例として、実勢更地価格の3.5%前後、地代(更新直前の月額地代)×36か月〜120ヶ月分、等

D借地条件変更承諾料(非堅固から堅固建物へ等):更地価格×10%名義変更承諾料:借地権価格×10%等

<借地権以外の権利価格>

@使用借権(更地価格の10%〜20%程度)

A一時使用の賃借権(資材置場の明け渡し対価10%〜20%、駐車場など)

B不法占拠でも5%〜10%の事例があります。


<借地権の「譲渡」には地主の承諾が要ります>

借地権の「譲渡」・「転貸」・「建替」等には通常地主の承諾を要します。地主の承諾が得られない場合、裁判所の許可で、借地権が譲渡できます。この場合、必要であれば裁判所が、新しい賃料(地代)や譲渡承諾料などを決めます。

借地権は建物の朽廃で終了>

借地権は建物の朽廃で終了します。ただし朽廃判定の判例は少ないです。災害で倒壊しても、火災で燃え建物がなくなっても借地権は消滅しません。地主さんの一方的な都合で解約できませんが、解約に正当理由があれば解約できます。正当理由での解約事例も少ないです。20年または30年の借地契約でも期間が来てもそのままにしておけば法定更新されます。


借家権

借家権は慣行的に取引の対象になっていません。従って、一般的に、借家権価格は発生しません。しかし、借地・借家人の存在する土地建物を第三者が購入した場合、地主に40%、借地人に40%、借家人に20%等と配分して購入する場合や買収の補償等、土地建物の売買に付随して借家権価格が発生する場合がありますが、単独で借家権取引の慣行はありません。
しかし、家主の都合で立ち退きとなった場合は立退料が発生することが多い。

<借家立退料>
 家主に正当事由がない場合、立ち退きは殆ど認められていませんが、正当事由に代わる「立退料」を支払うこ とによって立ち退きが実現することがあります。

 

(補償方式の例)  

差額家賃×24ヵ月分+差額敷金+移転費用

(現在の家賃(10万円)と同様な借家の家賃が13万円としますと、その差額家賃は3万円
で、その24ヵ月分で72万円。敷金返還金が80万円、新しい 敷金が120万円で、その差額40万円。引越料相当額、仲介手数料等移転雑費が30万円。合計して立退料は142万円です。これは一般の住居の場合で、商売屋さん等の場合は、外に営業補償が発生します。)
 

(割合方式の場合のケース別事例)

@  借家人と家主がいる場合の不動産を売却(または補償)した場合、割合方式で配分する場合が多い
   借家人18%〜30%(20%程度が標準)
   家主70%〜82%(80%程度が標準)

A  借家人、地主、借地人がいる場合の不動産を売却(または補償)した場合、土地価格を割合方式で配  分する場合が多い。
   借家人18%〜30%(20%程度が標準)
   借地人30%〜40%(40%〜50%程度が標準)
   地主 30%〜50%(30%〜40%程度が標準)

B  借家人居付きで第三者が購入した場合
   買主は家賃徴収権しかないので(購入後、借家人に退去を求める場
合は特殊であるので)、家賃収   入にもとずく収益還元法による収益価格で購入する場合が多い。

C  借家人または家主が買い取る場合(完全所有権に復帰するので、割合方式で清算する場合が多い)
    家主70%〜82%、借家人18%〜30%(20%程度が標準)で清算

D  家主の都合で借家人に退去を求める場合、
   上記「補償方式の例」参照
  
 


(差額賃料方式)

標準的な賃料と実際支払賃料との差額の一定期間分の合計額

 

※判例は正当事由の強弱で、割合方式、補償方式、賃料差額方式を併用しています。



<定期借地権・定期借家制度>

1.定期借地権

◎新借地・借家法で「定期借地権(平成3年)・定期借家権(平成11年)」の制度ができました。

◎平成191221日、借地借家法の一部が改正されました。(施行2011日)
「事業用定期借地権」を設定する場合の存続期間の上限が,「20年以下」から「50年未満」に引き上げられました。

<定期借地権の概要>

契約期限が来た時に契約の更新がなく、建物を取り壊して更地にして返還する必要がある借地権のことで、次の三つの要件があり、立退料の請求もできません。この三つの要件を契約書に記入しなければ、一般定期借地権の効果はないことになり、普通借地権になります。

<3つの要件>通常の借地権に関する規定以外に、
1.
契約の更新による存続期間の延長がないこと
2.
建物の築造による存続期間の延長がないこと
3.
建物の買い取り請求をしないこと、とする旨を定めることが重要です。

3つの種類>
1.契約期間が50年以上の一般定期借地権
2.契約期間が10年以上50年未満の事業用借地権
3.契約期間が30年以上で、建物付で土地を返還できる条件の付いた建物譲渡特約付借地権。

一般定期借地権

建物譲渡特約付
借  地  権

事業用借地権
(更地返還強制型)

事業用定期借地権
契約更新排除特約 任意契約型

存続期間

50年以上

30年以上

10年以上30年未満

30年以上50年未満

制限なし

制限なし

事業用のみ

事業用のみ

契約方式

公正証書等

定めなし

公正証書

公正証書

契約の更新

排除特約 可

拘束されない

規定の適用なし

排除特約 可

建物の築造による存続期間の延長を排除 可

建物買取請求権の排除 可

30年経過後建物を売却する旨を定める

左のいずれも適用なし

建物の築造による存続期間の延長を排除 可

建物買取請求権の排除 可

更地で返還が原則

建物を地主に譲渡

更地で返還

更地で返還が原則

考えられる用途

住宅地・堅固な建物の商業施設

商業地
住宅地

いわゆるロードサイド店舗等

パワーセンター・地主複合型ロードサイド店舗大型ショッピングセンター等

新借地法でも「普通借地権」の場合(定期借地権と区別するために「普通借地権」と言う。)は契約期間は最低30年以上です。借地人が更新を求めた場合、同一の条件で契約を更新しなければならず、更新後の契約期間は1度目が20年以上、2度目の更新以降は10年以上です。地主が契約更新を拒絶できるのは正当事由がある場合のみで旧借地法に近い性格です。

<買い取り請求権なし>普通借地権の存続期間が満了した場合に、契約の更新がないときは、借地人は地主に対し、建物を時価で買い取るべきことを請求することができます。ところが一般定期借地権は、この買い取り請求が出来ないものです。したがって、存続期間満了時点でいくら立派な建物が残っていても、借地人は解体し、土地を更地にして返さなくてはなりません。ただし、地主が同意すれば再契約は可能です。また、同じく同意があれば底地の買い取りも行われています。

Q1 事業用定期借地権とは,どのような権利ですか。

 事業用定期借地権とは,専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除きます。)を所有する目的で設定される借地権で,契約の更新がなく,契約上の存続期間が経過すれば確定的に終了するものです(その設定を目的とする契約は,公正証書によらなければならないとされています。)。

Q2 事業用定期借地権の存続期間が拡張されたのは,なぜですか。

 改正前は,事業用定期借地権は存続期間10年以上20年以下の範囲でしか設定できませんでした。しかし,建物の税法上の減価償却期間は20年を超えるものが多く,これに見合った条件で定期借地権を設定できるようにしてほしいという要望が多く寄せられていました。こうした要望に応え,今回の改正により,存続期間10年以上50年未満の範囲で事業用定期借地権を設定できるようにされました。

Q3 事業用定期借地権の存続期間の上限が「50年未満」であるのは,なぜですか。

 存続期間が50年以上の借地権を設定する場合には,その建物所有の目的が事業用であるか居住用であるかを問わず,一般定期借地権(借地借家法第22条)によることができるからです。改正後は,事業用の建物の所有を目的とする借地権については,一般定期借地権と事業用定期借地権を適宜選択することにより,存続期間10年以上の範囲で自由に設定することが可能になりました。


2.定期借家制度


定期借家契約とは

″正当事由″は不要  ″法定更新″も無し

 定期借家契約というのは、「契約で定めた期限が来ると契約が必ず終了する借家契約」のことをいいます。

 従来の借家契約は、期限が来た時点で賃貸人側から契約の解除を申し入れても、賃貸人側に″正当事由″がなければ、賃貸借契約は″法定更新″によって法律で更新されてしまいます。

 借家契約に期間の定めがあっても、借家人に立ち退きを求めることは困難で、建物の老朽化による建て替えなど、やむを得ない事情でも、それが立ち退き請求に必要な″正当事由″と認められるには厳しい制限がありますし、どうしても立ち退いてほしければ、今まで受け取った賃料から考えるととても引き合わないような高い立退料を支払わざるを得なかったのです。

 このような賃貸人の不安を解消するため、″正当事由″も立退き料の支払いもなしに契約期間が満了したら必ず解約できる定期借家契約の制度が導入されたのです。

 定期借家契約は、家賃も期間も借家人との合意で自由に決められますし、″法定更新″もありません。期間が満了すると、何の負担もなく建物を返してもらえることになりますから、家主にとっては『定期借家契約万才』といえるでしょう。

 また、従来の借地借家法では1年未満の契約は、期間の定めのないものとされ、最長期間は民法の規定で20年を超えられませんでしたが、定期借家契約の契約期間は、1年未満でも20年超でもかまわないこととされました。

既存の借家契約は

 平成12年3月1日以後は、既存の借家契約もすべて定期借家契約になるかというと、そうではありません。新しい法律は、新規の契約に限って適用されますから、すでに発効している契約については、すべて従来型契約のまま継続し、期間終了後も、従来型の契約で更新することになります。

 たとえば既存の借家契約の期間が満了した場合、同じ借家人と新現に定期借家契約が結べるかといいますと、新法の付則には、施行前に契約された賃貸借契約の更新に関しては『なお従前の例による』とされていますので、契約期間が満了したとしても、原則として、すべて従来型の契約で更新されるということなのです。

 では、新規に結ぶ借家契約は、すべて定期借家契約にしなければならないかというと、従来の借家契約の方法と定期借家契約は、併存していくことになります。つまり、新規に借家契約を結ぶ場合は、従来型か定期借家契約のいずれかを選べるわけです。

 現在結んでいる借家契約を、定期借家契約に切り替えることが可能かどうかは、定期借家契約の導入決定に際して、住宅に関しては『法律施行前の契約はすべて対象外』との条件がつけられていますので、既存契約は、従来型のまま続行しなければなりません。ただし、事業用の賃貸物件については、合意のうえ解約し、新規に定期借家契約を結ぶことは可能です。

定期借家契約の留意点

〔必須要件〕

 定期借家契約は、家主にとって、きわめて有利な法改正となったわけですが、定期借家契約を締結する際の必須要件として、次の3点に、とくに留意すべきです。

@必ず書面による契約を結ぶ必要があること。

A定期借家契約である旨の説明を書面でしなければならないこと。

B説明をしたことを証明する書類を作成しておくこと。

(賃借人から説明を受けた旨の確認書に署名押印してもらい保管しておくことは不可欠です。)

〔解約通知〕

 定期借家契約を結んだ場合、期間がきたら黙っていても契約が終了する、というわけにはいきません。解約するためには、家主は借家人に対し、期間満了時の1年前から6ケ月前までに、契約終了の通知を行う義務があるのです。

 通知が遅れた場合には、その通知をした日から6か月後が解約時となります。なお、契約期間が1年に満たない場合は、通知の必要はありません。

〔中途解約〕

 定期借家契約の場合、居住用の建物で床面積が200平方メートル未満のものについては、次の要件をすべて満たす場合、借家人からの1か月前の申入れによる中途解約が法律で認められていることも心得ておくべきでしょう。

◎転勤、療養、親族の介護などのやむを得ない事情があること。

◎前記の事情により、その建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったこと。

      定期借家権と従来の借家権との比較

 

定期借家権

従来の借家権

契約締結の方法

公正証書等の書面で行う

口頭でも成立可

契約期間の満了

契約は終了する

契約は終了せず更新が原則

正当事由制度

適用なし

適用あり

契約更新制度

なし

更新あり

法定更新制度

なし

法定更新あり

賃料増減額請求

排除が可能

増減請求権あり

期間内解約権

一部居住用では強行規定

すべて任意規定

立退料の要否

不要

原則として必要


定期借家制度の要点>
@既存契約にさかのぼっての適用はない(全て更新の適用はない。現在の契  約を合意終了しても定期借家契約は適用されません)
A契約期間が満了すれば契約は終了(悪い店子であれば期間満了で終了、良い店子であれば再契約)
B期間の設定及び使用目的は原則として自由(期間に一切の制約はなく、事業用、居住用等の使用目的も制限ありません)
C一定の条件のもとに賃借人の中途解約権あり(居住用で一定の大きさ以下、やむを得ない事情がある時、賃借人は中途解約可能
D家賃増減請求権がないこととすることも可能(契約約期間中の家賃改定は無しとすることも可能)
E建物譲渡特約付借地権に定期借家制度を組み合わせることも可能(土地所有者が買い戻した時の適用。詳しくはメールで質問
F1年以上の契約の場合の通知義務あり(1年以上の契約は、期間満了前の1年前から6か月前までの間に期間満了の通知必要)

 

戻る