電脳戦機バーチャロンForセガネット
標準機体包囲網

・逃げるが勝ち

格闘ゲーム全盛期の真っ只中に、セガの当時の技術の集大成してアーケードゲーム「電脳戦機バーチャロン」が発表されたことは、いまではすっかり昔話となりつつあります。今更私ごときが語るまでもないほどマニア筋には超有名なゲームなのですが、セガネット版への前知識として軽くゲームシステムやアーケード版の方を説明させていただきましょう。このゲームは二本のレバーを使ってロボットを操るという、まるで鉄人28号を動かすかのような斬新な操作系をしています。当時出ていた他の格闘ゲームと大きく異なる点は「舞台が広大なフィールドでの戦い」という点でしょう。また、他の格闘ゲームと違い、基本的に飛び道具がメインのゲーム性な上、敵弾を受け止めるなんてことは出来ないため、ただやみくもに攻めるのではなく、いかに相手の攻撃をかわす、あるいは回避出来ない状況に追いこむかが重要というゲーム性になっています。普通の格闘ゲームでは舞台がストリートファイトなので「相手を倒した方が勝者」ですが、このゲームの舞台は戦場です。「生き残った者が勝者」なのです。だから自分の体力を8割方残して負けるなんてことも上級者同士なら十分にありえます。そういったストイックなゲーム性のせいか好き嫌いも激しく、他の格闘ゲームのつもりでプレイしはじめた人の中には「待つな!」「逃げるな!」しまいには「かわすな!」などと無茶をおっしゃられる方もいたようです。

こういうゲーム性から、いかに的確にかつ確実にダメージを与えるかが重要なゲームであることが見えてきたかと思いますが、そうなると「当たりやすく且つ美味しいダメージを与える攻撃」を見つけることがゲームの必勝法になります。また、それらの攻撃ばかりサルみたくやってると、ゲームを通り越して人間的に嫌われるのも他の格闘ゲームと同じです。具体的にはテムジンのしゃがみボム、ライデンのしゃがみバズーカなどといったところなのですが、もちろんこれらの攻撃にもある程度の対処策があるのでやりこんでいった人たちなら苦しくとも何とかなるものです。さて、そんなこんなでファン待望の家庭用版が発売されました。ところが、何か期するところがあったのかわかりませんが、製作陣はなんと、ゲームバランスを根本から覆して発売するという大冒険ぶりに出たのです!

・脅威の誘導性能

最大の変更点は「弾の誘導性能の向上」。他の格闘ゲームの移植にあるような特定攻撃だけなのではありません。わずかでも敵に向かう性質を持つ武器は全て誘導性能が向上しているのです。これによってアーケード版で重要だった「いかにして当てる」という意味合いが皆無になります。何も考えなくても走る相手に弾が向かって行ってくれるのですから。この変更によって軽量級機体は、移動速度が速いというメリットを大幅になくしました。普通に考えるなら、誘導が向上したなら速い機体の方が有利な気がしますが、それだけ軽量級がかわせる攻撃が少なくなったのです。言葉で説明してもわからないかもしれませんが、離れた相手に対して真横に撃ったミサイルが相手に直撃するぐらいなのです。全体で誘導が向上したということで元々誘導が高かった武器を持つキャラが有利になりそうな気もしますが、実際にその恩恵に授かったのは主人公機体のテムジンだったのです!

その武器は「前ダッシュからのライフル」、命中精度、お手軽さ、ダメージ、どれを取っても申し分なく、何も考えなくても大抵の相手にはこれだけで勝ち進めるという、ゲームとしては問題あるけど、武器としては実に理想的な代物のです。これ一つさえあれば、アーケード版で恐れられていたしゃがみボムはおろか、俗にいう陽炎、大玉4発、マシンガンなどといった超高難度な技さえ使うまでも無いほどに強力。先刻ドリームキャストで発売されたバーチャロン最新作で例えるなら、「前ダッシュのたびに撃てるエンジェランのターボ氷柱並の追尾能力とスペシネフの鎌並のスピードと破壊力をあわせもった攻撃」といえば少しはおわかりいただけるでしょうか。他の機体を使う人たちはアーケードの常識が一切通じないこの攻撃の前に、そのあまりの性能に恐れ、やむなく別の対策を立てざるを得ませんでした。

・猿テムジン対策:ベルグドル編

私がメインに使っていたベルグドルという機体は、それはもう哀れなくらい地味でぱっとしない奴でした。同じ使用割合の少ないバルバスバウという機体は操作にクセがあるために使用割合が少なかったのですが、このベルグドルという機体は純粋に地味なのです。相手がどの機体を使ってこられても辛いのは仕方の無いことなのですが、それでもテムジン相手は格段に辛かったことを覚えています。しかもやっかいなことに、この攻撃を食らうと確実に転ばされるのです。コケる→おきる→コケる……で、あっという間に勝負がついてしまいます。漕ぎといわれる最速を誇る移動法をもってしても、何事も無かったかのようにこちらに向かって飛んでくるテムジンショットをかわすには唯一、ジャンプしかありません。ベルグドルは重量級ですので空中は苦手と思われがちですがそんなこと言ってられません。相手がその攻撃をしてくるたびにピョンピョン飛んでかわし、こちらも誘導性能向上の恩恵をうけんがため、空中からミサイルを射出して反撃。なんとこれが対テムジンのもっとも効果的な対処法なのだから、驚きです。別物とわりきってるとはいえ、飛ぶと不利に立たされたゲーセン版とはまったく正反対な仕様に調整されてるのです。空を華麗に舞う重量級。このけなげに空を舞う姿には、かつて平成の牛若丸と呼ばれた舞の海秀平氏を思い出さずにいられないことでしょう。

ともかく、見た目は結構忠実な移植っぽくても、中身は全然別物というゲームバランスの前に、私の考えてる何かまでもが根本から覆してくれた、素敵な逸作です。当時、インターネットなんてものがまだ世間に普及してなかった為、直接相手宅に市外電話をかけるシステムを取っていたこのゲームで、電話代を月6万の大台に乗せた私が言うのだから間違いありません。もっとも、モデムは内蔵でない為、本体間で抜き差しを頻繁せざるをえず、それがためにモデムがいかれるわ別ゲームのセーブデータが吹っ飛ぶわと、散々なことも多かったですが

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