そのゲームが有名作品であればあるほど、ユーザ間で様々な噂が流れるのは今に始まったことではありません。筆者が知る限りだけでも「ゼビウスには46本目のソルがある。また、バキュラにはザッパーを256発当てると倒せるし、ある条件下ではギャラクシアンの敵が出現することがある」「ドラゴンクエストIIIには『しのオルゴール』というアイテムが存在する、IVでは8回逃げると攻撃が全て改心の一撃になるし、Vではエスタークを一定ターン以内で倒せば仲間に出来る」「ストリートファイターIIのガイルには『真空投げ』という隠し技が存在し、また、隠しコマンドで四天王が使える」「スパルタンXを24周するとシルビアがラスボスとして襲ってくる」「水晶の龍でシンシアと野球拳が出来る」などなど…真偽のほどはともあれ、それが本当か否かを自らの目で確かめるのもまた遊び方の一つです。さて、その中でもユーザ同士の間でもっとも論議された謎のひとつが御存知スーパーマリオブラザーズにて「ワールド9-1が存在する」というものでした。そしてその真偽に対し、正面から向かい合った攻略本、それが「バグボーイスペシャル」なのです。
この本の袋とじに、ワールド9-1をはじめとした256ワールドをプレイする方法が書かれているのですが、そのやり方とは
1 スーパーマリオを挿して電源を入れる
2 電源を入れたままスーパーマリオを抜く
3 テニスを挿す
4 リセットを押す
5 スタートボタンを押す
6 ゲームを少しする
7 電源を入れたままテニスを抜く
8 再びスーパーマリオを挿す
9 リセットを押す
10 Aボタンを押しながらスタート(コンティニュー)
これで思いのままに256ワールドの世界へ!しかし、テニスで歩いた歩数がプレイしたいワールドになってるので遊びたいステージをなかなか選べない…そうお嘆きの方のためにファミリーベーシックを使った別方法も紹介されてたりします。ファミリーベーシックを使った場合、下記のプログラムを実行させてからスーパーマリオを挿せば良いそうです。
10 FOR I=&H7D3 TO &H7DC:POKE:I,0:NEXT
20 POKE &H7FF,&HA5
30 INPUT "WORLD=";A
40 POKE &H7FD,A+255AND255
詳しい説明はスーパーマリオ解析の専門サイトにお任せ…と投げ出してしまうのもなんなので、老婆心ながらに簡単な説明をするならば、上記プログラムは「一度ファミコン内部の全メモリの値を0にし、ワールドのアドレスに行きたいワールドの数値を入力できる」という代物。PARなどが存在しない時代、内部の数値を書き換えるにはこのように強引な手を使わなければいけなかったわけです。そしてマリオでワールドをカウントするアドレスが、テニスでは偶然にも歩数をカウントしてる場所になってた事を利用したのです。すると、一度全メモリ値を0にする必要があるのか、とか、自分しか使わないプログラムでわざわざ”WORLD=”と聞き返したりする必要が果たしてあるのかという疑問も生じてきますが、それ以前に電源を入れたままカセットを抜き差ししても大丈夫かという根本の疑問がここまでのページで一切説明されていません。しかし、その点はご安心を。袋とじ最後に以下のような説明でフォローされています。
グチャグチャ画面が出るのは正常に動いている証拠
変な画面は正常なしょーこ!!
なんと、電源を入れたままの抜き差しは基本的に問題ないとの事。これは初耳です!これで安心してプレイできるというものです!!しかしちょっと待て。先日買った「Beep 復刻版」にて、YAS氏がこのような記述がされてたことを思い出しました。
当時は画面写真を撮影するのに、ポーズで止めた画面をカメラで撮影していくのですが、たまにポーズをすると画面の一部が消えたり、「PAUSE」という文字が表示されたりするものがありました。私の担当ゲームにもそういうものがあったのですが、編集さんが「んじゃこうしようか」と、マークIIIの本体に電源を入れたままROMをズバッと抜いたんですね。私は「ポカーン」とそれを見つめていたわけですが、画面は見事にストップ、撮影もばっちりできました。その後は当然1枚撮るたびに、最初からそこまで行って撮ることになります。恐ろしく効率の悪いやり方でしたが、当時はそれが普通でした。しかしこの方法は、ROMを壊してしまう危険性が常にあって、セガから借りたサンプルROMを何本か壊してしまいました・セガには「何か動かないみたいなんですが」と、さも最初から壊れていたようなことを言って、交換してもらっていました。 |
どうやらセガマークIIIで同様のことをすると壊れたらしいです。全ての記述が正しいと考えると結論はただ一つ!ファミコンって頑丈だったんですね、と。それにしても、左下にあるイラスト。見るからに不安を煽りまくりで、説得力非常になさげです。
さて、ディスクシステムで出た続編「スーパーマリオブラザーズ2」では9-1ワールドの実装をはじめとして、256ワールド内に存在していた空中ゲッソー、スーパージャンプ台などなどを本当に正規仕様として取り込んでしまう大胆さ。かつて裏技ブームを引き起こし、その代表格を担ったスーパーマリオ、その楽しみの真髄はバグや暴走であることを自ら肯定しています。ある意味、テレビゲームがよき時代だった象徴ともいえましょう。ファミコンは既に生産中止、一応ファミコン互換機などが出てはいますが、生産されていない以上純正品は減る一方でしかありません。お願いですから現在ファミコンを所持なさってる方は壊さないように抜き差しして遊んで下さいね。
おまけの再現例