ファミコン風雲児
コンボイスピリッツ

ゲームセンターあらしがコロコロで連載終了してからも、世にファミコンが出現してからはそれに勢いを増して様々なゲーム関連のマンガが世に出たものです。ファミコンロッキー、ファミ拳リュウ、ファミ魂ウルフ…
今となってはその流れを汲むマンガはアーケードゲーマーふぶきぐらいなものでしょうが(自分の中では勝負師伝説哲也やヒカルの碁なんかも類似系列の延長上にあるマンガとして読んでいるが)子供たちのポケモン等のやりこみ具合などをみていると「ゲームにかける熱い情熱」は今も昔も変わらないものだと信じています。

さて、当のファミコン風雲児ですが当時の自分は経済的事情からコロコロ、ボンボンの2択に迫られた結果の末コロコロ側を購入していたため、それに関する記憶は友人宅で読んでた「アトランチスの謎のキーワード『ももこ』」とか「キングスナイトで洗脳」とかいった断片的なものぐらいでした。
ところが今年古本屋で単行本1〜2巻を見つけたので(2004/5/17追記 おかげさまで全7巻揃えました)当時のそのおぼろげな記憶を思い出しながら買ってみたら、それはもう私の想像を超える衝撃の内容だったのです。

ファミコン風雲児 コンボイの3人

天竜研:3人の中ではプログラムをはじめとするソフトウェア関連担当であり主人公。とにかく他者の追随を許さない発想の持ち主。そしてこのマンガの黒幕

五代一馬:ゲームセンターあらしで言うところの大文字さとる役。データ収集や指先テクなどで正統派な攻略を得意とするが、基本的に財力担当

加藤卓也:ハードウェア担当だが影が薄く、真っ先にやられるヤムチャ役。名前も他の2人に比べ平凡的な上、筆者の知人と名前が酷似してるあたりにヘボさが伺える。

第1巻 第1話
コンボイ誕生! ゼビウス大激戦の巻

プログラマを目指す主人公、「天竜 研」がパソコンショップに2D5インチのフロッピー(この辺が当時の時代を語る)を購入しに行くところから物語は始まりますが、それよりも「それにBASICも出来てあの価格 最高のコストパフォーマンスだ」等と言ってのける店長(自己申請パソコンレベル:BASICなら少しはわかる)のセリフが自分的に気になります。価格14800円、容量2Kバイトのファミベを「最高のコストパフォーマンス」と推せる店長はかなり商魂がたくましいメモリ稼ぎ大好きなマゾクリエイターではないかと推測されます。同じく店長の「ファミコンゲームも少し研究してみる価値はあるんじゃないかな」というセリフ、これがこのマンガの暗黒面を綴る序章になろうとは……。

店長からゼビウスの大会があることを聞いた主人公とその仲間。大会優勝のみならずゲスト参加でデモ実演予定の館名人(ちなみに髪型はアフロ)をも超えてやろうという高いこころざしは若いながらになんとも立派ではありませんか。
で、どうやってそれを彼らは目指そうかというと、

ゼビウスのプログラムを改造するんだ
ゼビウスのプログラムを改造するんだ

いきなりゼビウスのロムを吸出し、無敵モードにチートして敵出現パターンを研究しはじめたではありませんか。あまつさえ御丁寧にロムライターで焼き直している始末。それにしても配線関係の描写が何とリアルで細かいことか。確かにこの攻略法は間違ってはいないのですが、児童誌で扱う攻略法としてはあまりにも現実的過ぎやしませんか
かくして大会で館名人を破った3人はコンピューターボーイズ(通称:コンボイ)と呼ばれるようになるわけです。

第1巻 第2話
バンゲリング帝国を死守せよ

コンボイエキサイトバイクの完成だ
コンボイエキサイトバイク(改マーク付)の完成だ

超難度版エキサイトバイク、その名も「コンボイ版エキサイトバイク」作成。いきなり第2話冒頭でハックロムを作成してます。しかも単なるオリジナルマップへの変更にとどまっているような軽改造ではないらしく、コースの最後に特殊操作(後の格闘ゲームで導入された必殺技コマンドなどの亜系と推測)を入力しなければいけないらしいです。これはおそらく独自に作成したソースを組み込んでいるものと推測しますが、たった1話にしてケン君はCPU6502を自分のものにしつつありますか。まぁやってることはともかく一馬くん「そこがゲーマーたのしみなんじゃないか。最高にスリルのあるゲームができるファミコンでなくっちゃ!」、なかなか良い事を言っています。現在の主流を成す無難でフレンドリーなだけのゲームの存在を否定する気はありませんが、やはりゲームを愛するものたるもの、己の現在の実力に満足せず、常に遥かなる高みを目指して進みたいものです。いつか自分がロードランナーのマップを差し替えたハックロムを作った暁には、それにあやかって「コンボイ版ロードランナー」とでも名付けることにしましょう。(2003/6/18追記 ホントにその名前で作ってしまったよ…)

それはともかく話を戻しましょう。コンボイ3人が例の店に行って見ると初の悪玉登場。子供たちから奪ったファミコンを取り返す名目で主人公たちはゲームを用いて戦うことになるお約束の展開ですが、そこで使うゲームというのが

コンボイ版エキサイトバイクで勝負だ!
コンボイ版エキサイトバイクで勝負だ!

…あー、なんかさっき褒めたのちょっと後悔。いきなり独自作成のハックロムで勝負を挑みます。無論相手は未プレイです。勝つためには手段を選ばない主人公たちの意思が伺えますね。そこで主人公たちのコントローラーさばきを見た敵のセリフ

悪玉「ドクター444」の名ゼリフ
はでなアクションでコントローラーをつかっちゃって…わるいまんがの影響か…?
そんなことしなくてもほんもののゲーマーは指先だけで勝利するのさ…

ゲームマンガ史上、ココまで当たり前なことを言う敵がいたでありましょうか。やはりゲーマーたるものクールな姿勢でゲームに接していきたいものです。にしてもこのセリフ、「音ゲーなどで無駄にリアクション付けてプレイしているが肝心のスコアがさっぱりで、ワイワイ騒ぎながら身内で回しプレイしてる連中」に対して言うなど実に実用的だと思います。で、結局この勝負は上記黒メガネの男「ドクター444号」が率いてきた下僕、「キングゴリラ」が使った謎の技(俗に言うエレクトリックサンダー系列のものと思われる)によって負けるのですが

裏技なんてプログラムした本人でも気づかぬところにあるもんだぜ
裏技なんてプログラムした本人でも気づかぬところにあるもんだぜ…

シビレます、ドクター444号!先ほどのセリフといい、あなたのセリフにもうメロメロです!悪玉らしくインチキしてるのは当然なのですが、少なくとも言ってることだけはインチキ呼ばわりしてるケン君より重みがあります
で、結局一方敗れたコンボイ達は再戦を約束し、悪玉の彼、ドクター444号は「なんなら束になってかかってきてもいいぞ」と挑発します。もっとも束になってかかれるような複数人数対応のソフトがファミコン初期にはありませんから、それを見越して発言したのでしょうが。しかしそこで主人公にまたも不穏な動きが…

コンボイ版バンゲリングベイ
「コンボイ版バンゲリングベイ」 メモリーを64kバイトに増強して改造してあります
バンゲリング帝国軍は3つのコントローラーで操縦でき3対1の戦いが出来るんです

またしてもハックロム。その名も「コンボイ版バンゲリングベイ」!ファミコン初期にして通信対戦機能を搭載。あまつさえ主人公達が帝国側プレイでの1vs3。もはや勝つことに対してなりふりかまっていないと思わせるような非常にえげつない仕様です。かつてゲームセンターあらし等のマンガでは敵が改竄したロムに対して不利な戦いを強いられるというパターンはありましたが、その逆をやってのける主人公というのは前代未聞です。というより、ここまでくるとどちらが正義かわかったものじゃありません。おまけに今回は敵が先日の謎の技を使おうとすると

コントローラーに電圧がかかるようにしてあったのさ!!
コントローラーに電圧がかかるようにしてあったのさ!!

容赦なく電圧攻撃。相手がロボットだったからいいものを……かつてゲームセンターあらし等のマンガでは敵がムーンサルトや炎のコマ封じにあれこれ試行錯誤していましたが、その逆をやってのける主人公というのは前代未聞です。やはりここでも主人公側が正義を主張するのは厳しいと思われます

アクションリプレイで、かつての「ファミコンロッキー」が「アクションロッキー」として復活して連載したように、ファミコン風雲児も「ゲームラボ」あたりでより一層妙にリアルで実用的な気がする内容で復活してくれると感涙モノですね。

その他名場面

ドットチェンジ
●ファミコン風雲児名物「ドットチェンジ」。しかし攻略における効果のほどは不明。まさしくコンボイの謎

ファミベ
●何かあればファミベを活躍させる主人公。最高のコストパフォーマンスと店長が謳うだけある

コンボイスピリッツ
「アクセルとハンドリングだけででもコンボイスピリッツだ」 言葉の意味はわからないけど気迫に満ちた顔

残機潰し
●どういう条件下でのスコアアタックなのか不明だが、残機潰しによる稼ぎを弟に伝授する主人公ケン

ファミコンでパソ通
●ファミコンでパソコン通信を本気でしようと画策する主人公達。無論当時の野村證券はまだファミコントレードを出していない時期
にしても、貰おうとするソフトタイトルのラインナップがかな〜り不穏な気がするのは気のせいだろうか

携帯ファミコン
●卓也が自作した携帯用ファミコンを新幹線でプレイする3人。
ゲームボーイアドバンスでファミコンが出来るようになるまで
実に10年以上の月日を要した事になる。ようやく時代がコンボイに追いついたというところか。

胸のリンゴマークがトレードマークな彼
●スーパーチャイニーズを逆アセンブルして解析し、手始めにキャラクタデータを抽出しはじめた
FBI特務捜査官シャーロック。まさしくNESファイルの画像を閲覧、編集できるソフトへの
先駆け的構想と言えよう。常に時代の最先端を歩んでいたコンボイたち。

いしのなかにいる
●壁ハマリバグ。戦場の狼は確かにバグの多いゲームだったけど
解析・改造ばかりかこういうネタまで臆することなく扱うとは…


等差数列の和
「ハル」に1+2+…+10000を解かせてCPU速度を計測しようとするも即答される場面。
会話中も計算してるあたりに当時のマシンの遅さが推し量れる。
ちなみにうちのペンティアム2GHz・ひまわり言語にて同様の測定をしたら1〜2秒でした。

機械の体
●コンピュータ社会を影で支配する巨悪組織「シャドウ」、その首領こと「ミスター=シャドウ」
先ほどの「ハル」はまだいいとして、首領の本名が「ゲイツ」というのは
本気で作者が某M社に消されかねなくないか?

惜しむべくは、この漫画はあまり数が出ていないので入手が非常に困難なところです(特に後半)。もしこの作品に興味を持ったなら、下記のページにて復刊のリクエストをしてみるのもいいでしょう。

復刊ドットコム『ファミコン風雲児』復刊リクエスト

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