ゲームクリエイター列伝
風の中の昴 砂の中の銀河

人が作るもの逸話有り。それはビデオゲームとて例外にあらず、ただ考えただけで即具現化できるものではありません。数多の試行錯誤や特出したセンスを繋ぎ合わせ、長い月日と数々の困難を越えた結果、晴れて成功を収めたゲームをクローズアップし、ドキュメント仕立ての漫画で紹介しようというコンセプトの元に描かれた作品、それが講談社「ゲームクリエイター列伝」なのです。以下敬称略。

ゲームの歴史を創った男達

単行本「ゲームクリエイター列伝」
1巻  左上:三上真司  中央上: 薗部博之  右上:鈴木裕
2巻  左下:久夛良木健  中央下:宮本茂  右下:山内一典

見てのとおりゲーム通ならほぼ知っているであろうほどに、そうそうたる面々であり、あくまでも大成功を収めたゲームしか語られていません。個人的には「デスクリムゾンを創った男達」とか「はじめてのおるすばんを創った男達」とかを読んでみたいところですが、それらはちょっと叶いそうにありません。

さて、早速中身です。第1巻第1話は「バーチャファイターを創った男達」。主人公は鈴木裕。バーチャファイター以前だとスペースハリアーとかアウトランとかが代表作で、とにかく昔からゲームにおける3D表現を追求してきた方ですね。作品中でもワイヤーフレームの棒人形を見て「これで新しいゲームが作れるなあ!」と仰られてます。ポリゴン製のゲーム自体はPCのフライトシミュレーションなど、アーケードでもナムコとかが昔から挑戦してはいましたが、まだまだ未発達の時代。飛行機や車を動かすことはあってもよもや人を動かそうだなどとは考えも付かない時代です。当時のCPUは今ほど速くないですから、徹底した高速化処理のアルゴリズムも求められます。まさに数々の困難に立ち向かう男達の姿が描かれるのにうってつけの素材です。数々の困難を乗り越え、製作も佳境に入りいよいよモーション作成の段階。だがしかし鈴木裕は部下の製作したパンチの動きに納得がいかない。「これじゃダメだな」と言い放つ。そして彼のとった言動

今からオレを殴ってみろ!!

今からオレを殴ってみろ!!

熱すぎる!なんと言う少年漫画的な熱すぎる展開!身を挺して体全体から繰り出すパンチのモーションを教えようとは、実にしびれます。また、千載一隅のチャンスだけに本気で殴ってみたくもなります。といいますか既に物創るってレベルじゃねーぞ!とかツッコミたくなります。ちなみに2巻収録の「スーパーマリオブラザーズを創った男達」ではキャラクターとの一体感あるジャンプアクションを創るために

マリオごっこ

アスレチック場に行って運動します。古来よりゲーム漫画の主人公は素早い動きをするために手でコマを回転させたり、弾幕回避のために球場でピッチングマシンを使って動体視力養ったりしてるわけでして、それならゲームを創る側も負けずに実践してしかるべきということでしょう多分。さて、先ほどの台詞「これじゃ駄目だな」はゲームクリエイター列伝を読み解く上で実に欠かせないキーワードでして

これじゃ駄目だな1 これじゃ駄目だな2 これじゃ駄目だな3

これじゃ駄目だな4 これじゃ駄目だな5

これじゃダメだな

展開を盛り上げるお約束的位置付けの重要部分なのです。まさにこれこそがゲームクリエイター列伝クオリティ。同講談社のMMRマガジンミステリー調査班なら、その直後に「なんだってー!?」などと続くところでしょう。そう考えるといっそこの漫画の登場キャラクターの名前もカタカタ表記のほうが似合ってたかもしれません。MMRではキバヤシとかタナカとかナワヤとかでしたが、こちらはクタラギとかスズキとかソノベとかetcで、おお、まさにそんな感じの語感。またお約束といえばバーチャファイターを創った男達・後編(バーチャファイター3)およびダービースタリオンを創った男達にて

バーチャファイター3絶望 ダービースタリオン絶望

バーチャファイター3の悪夢を見る加来徹也(左)
夢の中の須田PINにダビスタ山積みを告げられる薗部博之(右)

夢オチ。世の中ではこの悪夢が現実になるケースのほうが多いのですが、そもそもゲームクリエイター列伝ではあくまでも成功をおさめたひとにぎりのゲームしか紹介されないので、すぐさま夢オチと気づかれてしまいます。もっとも、バーチャファイター3の場合はバグ発生でやたらバージョンアップされたりとかはしてましたが。他のお約束パターンとしては「開発以外は上司だろうが宣伝部だろうがすべて敵」とかいう逆境四面楚歌な構成とか、「発売日にゲーム屋へ売れ行きを見に行くがゲーム自体が見つからない→実は大反響」といった感じの逆転ホームラン的展開構成があり、まさに徹底したテンプレート重視のストーリー構築ぶり。そんな感じで物語を盛り上げながら伝えてくれるゲームクリエイター列伝は内容の信憑性のほどはどうかわかりませんが、なかなかにゲーム好きを感動させてくれる一品です。

その他名場面

5万本程度

ダービースタリオンを創った男達より
広告を打ってくれなかったことをやむなしとする薗部博之。
製作規模にもよりますが、今だと1万本売れれば収支トントンくらいで作ってる所も結構あるかと思われます。


いつかは女スパイや大統領の娘

バイオハザードを創った男達より
女性キャラを出そうとするも部下に止められる三上真司。
男女平等主義が声高に掲げられる今でこそ、ゲームに登場する女性キャラの比率は半々に
近づきつつありますが、当時はまだ舞台背景などによる必然性のほうが重視されており、比率が低かったのです


スカイライン

グランツーリスモを創った男達より
宣伝部の人が開発中のをプレイしたとたん「車が空を飛ぶ」。
製品化前とはいえ、上にぶっ飛ぶなんてこともあるんですね


次世代コントローラー ゲーム機はハードよりソフト

プレイステーションを創った男達より
新しいコントローラーの必要性を説くデザイナー・後藤禎祐(左)と、面白いソフトの重要性を説く久夛良木健(右)
なんといいましょうか、初心忘れるべからずという言葉の重要性を再認識させてくれます。


Xとか3とか

プレイステーションを創った男達より
作中に記述が無いのでどこのメーカーの方かは存じませんが
あなたの願いはそのうち叶うような気がします


はわわー裕さんが来ちゃいました はわわー裕さんが来ちゃいました

コミックボンボン増刊アブラカタブラ掲載、三国志大戦を創った男達より(単行本未収録)
AM1研・大原徹の前に現われる鈴木裕。
バーチャファイターを創った男達の時とは豹変し、見事に三枚目なチョイ役へ。

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