月下の棋士 王竜戦
端歩突き最強伝説

「A級B級など関係ねぇ。全プロ棋士がトーナメントで争うんだ。こいつぁ待ったなしの壮絶な戦いになることうけあいだ!決勝はドームでやる。ドームを満杯にするんだ!オーロラビジョンに盤上に振りかざす手がでっかく映ってよぉ。タイトルの名称は『王竜戦』だ!」

…スタートボタンを押すと、こんな感じでプロローグが始まるこのゲーム。既に原作からして変なやつばっかりな将棋漫画とはいえ、将棋という題材でここまでアツイセリフを語ってくれるのはまことに恐れいります。ちなみに、このセリフを語る「森 圭太」という人物、説明書には名前すら紹介されていません。ともあれ、セリフが終わると、あたかもコミックスをそのまま取りこんだかのような登場キャラ紹介。きっと原作の雰囲気を出すために、このような手法を取ったのでしょう。間違えても手抜きなどではないはずです。えぇ。

最初の相手は関崎勉。振り駒は既に済まされたのか、こちらが先手になってました。気を引き締めつつも、初手は原作の氷室君同様▲1六歩、要するに端歩突きです。いえいえ、これがまた馬鹿にしてはいけない手なのです。コンピュータ将棋において、形成判断しにくい序盤は最初の数手をあらかじめ丸暗記させてることでフォローしてることが多いので、それ以外の手を指すことによってCPUの持つ辞書を狂わせられます。つまり、相手がコンピュータである限り、端歩突きはそれなりに有効な手なのです。

▲1六歩    △3四歩
▲1五歩    △6ニ銀
▲1八飛    △8四歩
▲7八金    △8五歩
▲1六飛    △4ニ銀

▲6八銀    △5四歩

▲3六飛    △3三銀

世間的には悪手とも取れる▲3六飛△3三銀の交換をしてしまうあたり、さすがは氷室君です。いまさら単なる筆者のミスだなんて言えません。

▲5六飛    △8四飛
▲9六歩    △3ニ金
▲7六歩    △9四歩

▲7五歩    △5ニ王

▲7七銀    △2四銀

▲6六歩    △3五銀

▲6五歩    △3三角


▲7六飛    △6四歩
▲6六銀    △6三銀

▲7七桂    △7四歩

▲4八王    △7五歩
▲同銀     △8三飛
▲6四歩    △7ニ銀
▲9七角        

相手の角を自陣に成らせても攻めを休めない勢いで先手の端角、無論予定進行は▲7四銀からの▲6三歩成り。でも、この「もなか流ひねり飛車」はおそらく初段以上の相手には通じないと思いますので真似しないように。少なくとも普通に8筋からひねった方が早いです、えぇ。さて、只でさえ押され気味の後手はここでどう応手するか見物です。が、ここでなんと後手は意外な一手を放ってきます。

△2四銀!

これは最善の一手ではない。最強の一手でもない!

深読みの出来ないヘボな私には到底浮かばない一手です。なにか深い考えがあるのでしょう。……と思いきや、その後はなにも取り上げるべきことなく勝手に相手が自滅していきました。氷室君曰く「なかなか将棋知ってんじゃねーか」。そう言うものなのでしょうか。「そろそろ本腰入れるか」。もう終わってるんですけど

まぁ最初の相手はこんなもんかと思いつつ、初手端歩突きで快進撃を続けていく氷室君。だが一向にCPUが強くなる気配は見えません。CPUの思考時間だけがどんどん長くなってはいますが。そして何の苦労も無く戦いは最終の滝川戦。さりげなく戦いの舞台はドームになっています。一応最後なので気を引き締めてかかります。こちらは後手。滝川の初手▲2六歩に対して△9四歩を突いて、いざ戦闘開始です。

とにかく、ここまで進むとCPUの思考時間の長いこと長いこと……そうそう、一応このゲームにおいて、こちらにだけは制限時間がありますが、気にしたことはありません。さほど考える局面にならないせいか、なにも考えずに1手10秒の早指しで事が足ります。そんなこんなで時間だけはべらぼうにかかった最終戦は滝川の72手で投了という結果で終わりました。最初の相手である関崎戦と同様自陣右翼の駒を働かすことなく終わり。これでいいのか滝川名人!?

まぁ強さがウリの将棋ゲームが氾濫するこの世の中において、たまにはこういう初心者向けのゲームが出てもよろしいのかもしれません。したがって別段必勝法を書くほどのゲームじゃないのですが、この原作のファンで将棋をやり始めたという初心者が端歩から進めるのは立派な攻略法です。せっかくですから、原作同様端歩突きからスタートしてこのゲームを満喫しましょう。このゲームをはじめたときから、あなたはもう無敵の氷室君なのです!一応攻略としては、1六飛で横筋を守りつつ右側で穴熊を目指し、相手の攻めを待つ一間飛車穴熊が安定して勝ち進めるパターンではないかと個人的に思います。慣れてきたら端歩からの棒銀なども攻めの基本を身につけるというのには良いでしょう。このゲームの攻略法において難しい定跡本などは必要ありませんので、一度やって登場棋士達の濃いセリフ群に乾いた笑いを発しながらプレイすることをお勧めします。

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