ワンダープロジェクトJ 機械の少年ピーノ
少年よ 大志をいただけ!

「ワンダープロジェクトJ 機械の少年ピーノ」を発売した会社はエニックス。そう、ゲームの代名詞とも言える「ドラゴンクエストシリーズ」、通称「ドラクエ」を出したあのエニックスの作品なのです。制作が社外とはいえ、自社のブランドでドラクエ以外のモノを出すというのは下手をすればこれはブランドの信用問題にも関わります。そのため新しいゲームを発売するという事は他のメーカーよりも重要な決定事項ではないかともさえ思えます。にもかかわらず、ヒット作が出て即座に守りに入っては安定した売上げが望めるゲームばかり作る他会社を蹴散らすかのごときこの姿勢、常に新しいものを作ろうとする姿勢はまさにゲームファンには嬉しいかぎりではありませんか。まぁモノは言いようで、「46億年物語」や「鈴木爆発」を出したエニックスといえば、これ以上なく納得いくような適切な言い方も無いかもしれません。

このゲームは主人公ピーノに対し、プレイヤーがティンカーという妖精型アンドロイドを介して様々なことを教え、ピーノに隠された様々な回路を起動させて行くことが目的となります。世界観は実に平和的で、ほのぼの系とでもいいましょうか。アンドロイド(このゲームでは「ギジン」と表現される)であるはずのピーノ君が実に有機的に振舞ってくれるのが最大の要因でしょう。とにかくピーノ君はギジン技術の最新鋭を持ってして作られただけあって限りなく人間に近く、そして我ら凡人には考えもつかないような行動を平気で起こしてくれるほどに賢いのです。

通常、日本社会で生活を営んだものの感覚では、即座にゴムボールは「投げるもの」という指令が大脳から無条件に直接伝えられてしまいます。ところがゴムボールをはじめて見るピーノ君は違いました。柔軟な発想を持つピーノ君は何をするかと思ったら、突如ゴムボールの匂いをかぎはじめたのです。きっと合成樹脂のなんともいえないまったりとした香りを喫したことでしょう。そしてこれが、私とピーノ君とのコミュニケーションの第1歩でした。

とにかくイベント進行の為には、「ピーノ君にボールを投げさせる」というをマスターさせなければなりません。が、ピーノ君はプレイヤーである私の心までも読んでいるのか、匂いをかいだ後には踏みつける、考え込むなどの行動に走り、しまいには「これあきた〜他の事をしたい〜」などというように、ことごとく素敵なリアクションをとってくれました。仕方ないのでしばらく放っておくと、今度はピーノ君が家のドアを祈りを捧げて開けて外に出たかと思うと、それを止める間もないほどに、すかさず脇にある井戸の中へ自由落下していくではありませんか。これで3日の修理…

気を取り直して「ゴムボール=投げるもの」というようにひたすら仕込み直します。その間に庭のニワトリに対して「見て見て!腕を鍛えるッス」などといって腕力の鍛錬をはじめるピーノ君。面白いからそれを正解ということにして彼のリアクションにマルをプレゼントします。しばらくののちピーノ君曰く「わかったぞ!」これで彼は「ニワトリ=腕を鍛えるもの」ということををマスター出来ました。めでたしめでたし。

そんなこんなでピーノ君との楽しいコミュニケーションをとりながらゲームを先に進めると、サーカス団がやってくるイベントが出てきました。スポーツ大会、宝さがしなど、とにかく楽しげなことにはことごとく首を突っ込むピーノ君&ティンカー。このイベントにももちろん参加してサーカス団にピーノ君が芸をするよう身売りさせます。サーカス団にてピーノ君が目にしたものは玉乗りの玉。しかし今までボール系で目にしたものは先ほどのゴムボールのほかにサッカーボールのみ。見た瞬間に「玉乗りの玉=乗るもの」とは結びついてくれないだろうとは思いつつも、自分の大きさほどもある玉を投げる蹴るかするのを期待してみる私。するとそこは賢いピーノ君。私の思惑など遥かに超越し、なんと自分の大きさほどもある玉乗りの玉を丸々飲み込んでしまったではありませんか!ちなみに玉乗りの玉を飲み込んだことで体力が回復してます。まぁプリンが大好物なピーノ君は決して余すことなく皿まで丸呑み、栄養剤も瓶ごと丸呑みというぐらい食欲旺盛な子ですから玉乗りの玉だってきっと繊維質豊富で美味だったことでしょう。

とにかくピーノ君の賢さに尽きるこのゲームですが、ゲーム自体は実に丁寧な作りで好感が持てます。世界観にマッチした温かみのあるグラフィック、独特の世界観。なにより、とにかく一つ一つのリアクションがオーバーなピーノ君を見ているだけでも、それだけで心和みます。かくいう私はピーノ君の頭をポカポカ叩いては心を和めてたりしますが。昨今のゲームはリアル志向、壮大スケール志向、萌え志向売上高志向などさまざまですが、何故かこういったほのぼの志向なゲームは見つけるのが困難です。このゲームを今プレイするのも決して時代遅れな事ではないでしょう。いや、むしろそう言ったゲームが出ない今だからこそ、このゲームの存在が忘れ去られてはいけない事だと思います。このゲームをプレイすることによって、プレイヤー自身の忘れかけていた心の回路を開いて心がピンピーン状態を体験するのもまた良いものです。

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