シャドウゲイト
おお勇者よ、死んでしまうとは何事だ

「悪魔上ドラキュラ」「弟切草」「バイオハザード」など、「恐怖」をテーマにしたゲームは色々ありますが、その中でもアドベンチャーゲームはそれを演出する上でかなりアドバンテージのあるジャンルではないかと思います。実際、他のジャンルに比べて探偵物やホラー物が圧倒的にその比率が高いのもその特性が生かしやすいからかもしれません。今回紹介する「シャドウゲイト」はその「恐怖」という題材を徹底追求したアドベンチャーゲームです。多分

スタート直後、主人公はシャドウゲイトと呼ばれる城の前の扉からスタートします。髑髏をあしらったその扉はファミコンにしてはかなり緻密に描きこまれていて、グラフィッカーの職人技を感じさせてくれます。ソレを説明するメッセージ欄では、この中に入って魔王を倒せという目的が語られます。主人公は「シャドウゲイト」ではなく「シャドウゲート」と連呼していますが、そのような些細なツッコミをしてはいけません。製作者達だって人間ですから連絡の不備などで間違いが生じることもあるでしょう。たとえそれがゲームのタイトルだとしても。とにかく目の前に扉があります。メッセージによると開けて中に入らなければいけないらしいので、せっかくだから開けましょう。主人公曰く「これが恐怖への入り口というわけか…」。ええ、そうですとも。これから存分に恐怖を体験することになります。

中に入ると前と右に扉が。正面の扉を開けようとするとカギがかかっている模様。なるほどこちらはフラグを立ててからなのかと解釈し、右の扉を開けてみることに。しかし、なんとこちらにもカギがかかっているではありませんか。あたりを調べてみてもカギが落ちているはずもない。開始3分で詰まった。仕方ないのでスゴスゴと扉まで戻って色々調べると、扉にあしらわれた髑髏の中にカギがしっかり入っているではありませんか!なんて恐ろしいゲームなんだ。なんとか正面の扉が開けられたので進むと目の前に本がおいてあったので手にとって見ます。すると本を手にした瞬間足元の床に穴が

わたしは ふかい ふかーい やみの なかへと
てんらくした。
そして そこによこたわる ドクロたちの
なかまになるのを まつだけになってしまった。
ざんねん!!
わたしの ぼうけんは これで おわってしまった!!

開始5分でゲームオーバー。なんて恐ろしいゲームなのでしょう。ゲームオーバー時にはこれまたヤケに気合入れてタイリング処理された死神のCGが。まぁいきなりの理不尽ぶりに納得いかない部分はあるもののゲームオーバーらしいので、気を取り直してコンティニュー。そしてやや進むと下におりるはしごがあるので下りてみることに。

わたしは くらやみを はしごづたいに おりていった
はっ はしごがない!!
おもわず あしを ふみはずして しまった。
くらやみに らっかして しぬことは
わたしの うんめいだったのかも しれない・・・。
ざんねん!!
わたしの ぼうけんは これで おわってしまった!!

再びゲームオーバーで死神登場。気合を入れて描かれているのは、どうも彼をよく見ることになるかららしい。それにしてもこの主人公、自分を調べると「私こそが真の勇者だ」などと言うだけあって、穴に落ちて死ぬことを運命の一言で片付けるあたりもある意味只者ではなさそうです。ともあれ再びコンティニュー。こんどは慎重に進めてみることに。しばらくののち、すると今度は慎重に進めすぎた結果、手元のたいまつのストックが切れて消えてしまった模様。

ああっ ひが・・・!!
たのみのつなの ひがきえてしまった。
くらい!! みわたすかぎり まっくらやみだ!!
わたしは あかりを もとめて てさぐりで
いどうしようとした。
ゴン!!
そのとたん あしがすべり かべに きょうれつに
たたきつけられてしまった。
ざんねん!!
わたしの ぼうけんは(略)

……今度は壁にぶつかって死んだか、コイツは。「勇者」というと、ドラクエシリーズの印象が深いおかげでゲーム用語的には強い存在の一つとして位置付けられているけど、もしこのゲームが始祖だったら、まず間違いなく貧弱の代名詞になっていたことでしょう。そう「洞窟探検家」という意味で知られる「スペランカー」とまったく同じ運命を辿っていたのかもしれないのです。ともあれ、あれこれ進むにつれ、色々とアイテムが手に入るわけですが、持ってるだけでは駄目で身に付けなくては効果を発揮しないものも無論あります。どうやらコマンドを「つかう」→「マント」→「セルフ」とすると自分自身に使うみたいなので、それで早速マントを装備。ついでに同様にそのコマンドで先ほど手に入れた剣を「つかう」→「つるぎ」→「セルフ」で装備しようとします。すると、

わたしは つるぎのはを ひだりむねについた。
・・・ドクドクと ちが わきでてくる!!
ああ!! なんて おろかなのだ。
じぶんの いのちを じぶんで たってしまうとは!!
・・・わたしなきあとの せかいは やみに つつまれて
しまうであろう・・・
ざんねん!!(略)

なんておろかなのだ。ええ、その通りですとも。このように随所に死にイベントを用意してくれてるゲーム。これはもう間違いなく死に様を楽しむゲームでしょう。そういう意味ではタイトーのLDゲーム「タイムギャル」の派生といえるかもしれませんが、コレはアドベンチャーゲーム。とりうる選択肢はそれに比べてはるかに広く自由度が高いです。その広さを最大限に広げているのが、多彩なダミーアイテムダミー通路。「どうやってここを越えるのだろう」「このアイテムをどこで使うのだろう」とゲーム中は悩まされるが、クリアしてみれば実はその存在そのものがブラフであることがザラ。かなり意地悪いです。製作スタッフとの知恵比べと言えなくもありません。昨今ではアドベンチャーゲームというジャンルはノベル系などに取って代わられてしまい、ほぼ絶滅状態ですが、このシャドウゲイトはアドベンチャーにはアドベンチャーの良さがあることがわかる良作です。悪さもわかりますが。根強いファンがいるためかGBカラーにもリメイクされてたり64で続編が出ていたりするこのゲーム。不親切な洋ゲーの味がわかる人はやってみる価値はあると思います。

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