濱西栄司、2010、「社会的排除と「経験の社会学」――三つの論理と接合のワーク理論と動態』第3号、3-18

 
社会的排除と「経験の社会学」――三つの論理と接合のワーク

「要約」

 本稿の目的は、「社会問題」と呼ばれる状況、とりわけ「排除」の状況を生きる人びとの経験を分析するための新しいアプローチとして、フランソワ・デュベの「経験の社会学」を検討することにある。記述と分析の具体例としてはメルボルンのマージナルな若者に関する調査を取り上げる。

 従来のアプローチでは、重層的・複合的な排除問題を一元的なものに還元してしまい、当事者の複雑な主体性をうまく描くことができていない。それに対して「経験の社会学」は、(1) 統合・戦略・主体化という三つの論理・観点から経験の多元的な分析を行ない、(2) 当事者がそれぞれの論理を結びつける複雑なワークに焦点を当てる。さらに、従来のアプローチは社会やシステム(およびその抑圧)を過大評価することで、当事者を客体化し、研究者による一方的な読み込みを正当化してきた。それに対して「経験の社会学」は、(3) 社会・システムが分裂し、自律する三つの論理の狭間に個人が置かれることで、「行為」能力を衰退させることこそ排除の真の問題であると主張する。それゆえ、三つの論理を自力で接合しようとするワークが重要になる。そして「経験の社会学」は、(4) 当事者が三つの論理に基づいて語り、場を組織するという観点から、当事者を客体化しない社会学的介入・対話法を重視する。このような特徴をもつ「経験の社会学」は、「包摂的」アプローチとして重要な意味をもち、レジーム類型や排除のパラダイムを考慮に入れたうえで、日本にも適用可能なものである。 」

 キーワード:社会的排除、社会的経験、アラン・トゥレーヌ

 

1.はじめに

 【略】

 

2.当事者の語りを組織する三つの論理/視座

(1)統合の論理

統合の論理

言及されている議論

I) 自分自身の定義

役割を内面化した統合的ID

※ミードのI/Me論

O) 他者との関係性 

我々/彼ら

※ホガートの内集団・外集団論

T) 関係性の賭金

価値

※デュルケムの宗教論

解体) 

危機の行動

※シカゴ、アノミー、相対的剥奪論

(2)戦略の論理 

戦略の論理

言及されている議論

I) 自分自身の定義

機会と結びつく地位

※ハビトゥス論、ゴフマン

O) 他者との関係性 

競争関係

※クロジェの組織論、モース、ジンメル

T) 関係性の賭金

「権力」

※ウェーバー、オルソン、資源動員論

解体)

開放への障害

ティリー

(3)主体化の論理

主体化の論理

言及されている議論

I) 自分自身の定義

アンガジュマン

※サルトル

O) 他者との関係性

主体の認知や表現への障害と紛争

※トゥレーヌ

T) 関係性の賭金

主体のさまざまな歴史的定義

※活動家や社会運動

解体) 

疎外

3.事例(行為の各論理の記述)

(a)共同体と解体――統合論理に基づく行為の場の解体

 

(b)労働と排除――戦略論理に基づく行為の場の解体 

 

(c)解体から労働階級へ――主体化論理の接続へ  

 

(d)排除の増幅へ――戦略論理の更なる解体へ

 

(e)解体と排除からレイシズムへ――解体した主体化論理との結びつき 

 

(f)解体と排除と疎外から社会的論理全ての否定へ        

 

4.事例(ワークの分析)

 【略】

5.経験の社会学――二つの論点

(1)システムと個人の関係

 【略】

(2)研究者と当事者の関係

 【略】

6.おわりに

 【略】

 

 

参考文献

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