●目立たなかった傑作
『究極戦隊ダダンダーン』が発売されたのは1993年の秋。ちょうど『スーパーストリートファイター』、『餓狼伝説スペシャル』、『バーチャファイター』が発売されていた頃で、最も対戦格闘ゲームが期待されていた時である。その点を考えると、あまりに発売時期が悪かったと言えるだろう。
『ダライアス外伝』など、やってみればプレイヤーをうならせるゲームでも、この時期に当たったため、潰れてしまったゲームは数多い。このゲームもその典型であった。人気以前に、基板があまり出回らなかったのが痛かった。
●戦隊ものへの熱いオマージュ
一見して分かるが、そのキャラクター像は“タイムボカン”シリーズを彷佛とさせるデザインになっている。しかも、主題歌は子門真人。開発スタッフののめりこみ方は本格的だ。
また、各面のスタート時には、「魔海の恐怖!襲いくる驚異の生命体」などと副題が付いていた。そのセリフをちゃんと声で言ってくれるところが素晴らしく、雰囲気を盛り上げていたのだ。
●アーケードゲーマーは本格派がお好き?!
アーケードゲームでは、今も昔も“本格派”のキャラクターが強い。一部には個性の強いキャラも人気があるが、それも本格派のキャラがゲームの格を高めてくれて成り立っている場合が多い。その気質から、異色キャラが独自のファン層を築き上げ、それがヒットに結びつくのはなかなか難しく感じる。
その点からも、このゲームのキャラクターや世界観も注目を集めにくかったと思う。それは、近作の『パワーストーン』なども同様なのではないだろうか。
●1対1タイプのCPU戦のお手本のようなゲーム性
このゲームは対戦はできないが、1対1のボス戦を中心に進んでいく。これは、古くからある格闘ゲームの形態で、ストIIの原形となったタイプ。古くは『ファイティングファンタジー』(1989・データイースト)、以降では『ウォーザード』(1996・カプコン)などと似たタイプである。
秀逸なのは、敵の動きに対応して、きちっと行動すれば倒していけるようになっているところだ。このタイプのゲームは敵のアルゴリズムが命。敵の攻撃をくらいながら強引に倒すしかないのでは面白くも何ともない。
その点、このゲームはボスの繰り出してくる技に対応しながら戦える。しかも技を返していくにはテクニックが必要で、状況によって難しい場合も出てくる。そのバランスが絶妙なのだ。変な技で単純にはまらない、という観点からも緻密にできていると言える。
●秀逸だったアクションの爽快感
このゲームはたたく、蹴るなどの感覚がとても気持ちよくできている。たとえばキャラを飲み込んでしまう巨大なボール状の植物を蹴飛ばすのは、サンドバックをたたくような楽しさがある。格闘ゲームの影響か、当てたときの敵のひるみ方やヒットバックがよくできていて、爽快感を増しているのだ。モアイのボスは攻撃すると少しずつ壊れていくなど、随所に工夫が凝らされている。
さらにその爽快感を増しているのが投げの存在である。ほとんどのボスは投げ飛ばすことができた。対戦格闘ではできない、自分よりはるかに巨大な敵を投げ飛ばす楽しさがそこにはある。身長差で3倍以上もあるダッカを投げ飛ばすさまはすごいものがあった。
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●襲いかかる奇想天外なキャラクター
アクションゲームの面白さは、敵キャラクターのデザインやゲーム性によるところが大きい。『究極戦隊ダダンダーン』でも、魅力的なボスキャラが楽しませてくれる。コナミ伝統のモアイはなぜか巨大な手がついていチョップしてくる。変型するスライムは、針が付いたボールになったり、弾をとばしてきたり、天井に張りついたりと、個性豊かな攻撃を繰り出してくる。
キャラクターの攻撃パターンが面白く、それぞれが個性的で差別化がはかられているのが面白いところだろう。
●ボス攻略の楽しさとハードルの高さ
最初のうちは、それぞれのボスの攻撃に対する対処法がわからず、苦労したものだ。たとえば、風雷鬼の雷神波(飛び道具)はすぐ飛び込んで投げることができ、風神天舞(回転アタック)はスライディングなどの下段攻撃で返すことができる。これらは、敵の攻撃を観察し、対処法を考えることによって進歩していくのだ。分かれば分かるほど優越感にひたることができる。
開発者との知恵比べがどのボスも存在しているのが面白い。ただ、このようなアクションゲームはシューティングなどと比べ、見た瞬間に対処法が分かりにくいのが欠点である。当時、似たタイプのゲームがあまりなかっただけに、プレイヤーのハードルは意外に高かったのかもしれない。
●手に汗握る最終決戦
最終面になると、それまで数画面の固定ステージだったフィールドが、スクロール画面になる。本格的に敵の基地へ乗り込むのだ。ここで子門真人の歌う主題歌が流れ、いやおうなくゲームを盛り上げる。展開、世界観の統一という意味では非常に完成度が高い。
そして、プレイヤーを悩ませた最大の強敵、ダッカーが出現。回転した巨大メカの軽快な動きは、当時としてはかなりのハイレベルな表現であった。敵ボス3人との白熱した最終決戦を制すればめでたくエンディングだ。
●稼ぎも熱かった…
このゲームの魅力の一つに、主人公それぞれでメインに使っていく必殺技が違うことがあげられる。別の攻略法をあみ出さなければならないのだ。そのパターンをハイスコアを目指してあみ出すのが楽しかった。
一番の稼ぎの目玉は、小鉄によるドラゴンの空投げだ。ドラゴンをしゃがみ投げすると体力が減らないのをいいことに、時間ぎりぎりまで稼ぎまくったものだ。最後には、ラストボスの爆弾をいかに壊すかに焦点が移り、厳しい争いとなっていった。
稼ぎと言えばシューティングのような印象があるが、アクションの稼ぎも奥深い。見えにくい工夫を積み上げるアクションゲームの稼ぎは、実に頭脳労働なのである。
●君を忘れない…
このゲームをあらためて思うのは、ゲームは完成されていても、時代性がともなわないとダメだという悲しい現実である。売れないゲームに名作なしという観点から言えば、このゲームは厳しいかもしれない。しかし、1コインでがんばって最後まで進んだプレイヤーの満足度は、その尺度でははかれないのだ。その数は少なくとも、プレイヤーの心に深く残る1作だったと言えるのではないだろうか。
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