●ド迫力の映像・サウンド効果
ダライアスといえば、3画面の大型筐体の迫力、美しいグラフィック、強烈なボディソニックとOGR氏の迫力あるサウンド、とすべてにおいてパワフルなゲームである。この作品が生み出された背景には、『アフターバーナー』などの体感ゲームの影響があるだろう。セガの一連の大型筐体ゲームは、その筐体と画面の迫力でプレイヤーを虜にした。それならば、人気のあるシューティングで、映像・サウンド効果で突出した魅力のものを作れないか。その構想は、ゲーム史上に残る作品を生み出すことになった。
●わかりやすい操作系とシンプルなゲーム性
しかし、ダライアスがプレイヤーに愛されたのは、その迫力とうらはらのとっつきやすさにあったといえるだろう。大型筐体であるものの、当時からのゲーセンでの一般的なデバイスであるジョイスティックとボタンを採用。これが、世のプレイヤーの心を、しっかり捉えた要因だったと思う。
また、ゲームシステムも実に分かりやすい横スクロールの定番ともいえる形。このゲームの企画者の藤田氏は、『アルカノイド』などを作り上げた経歴を持つ。オーソドックスなゲーム性をまとめあげ、時代に合わせて仕上げていくという方向性を持つ人であった。このように、目立つ部分以外に、オーソドックスなゲーム性が人気の秘密だったこと忘れてはならないと思う。
●出荷数が少なかったダライアス
発売当初から話題を呼んだダライアスだったが、出回りの数は著しく少なかった。一部の大きなゲームセンターを除けば、入荷したのはタイトー系列のゲームセンターのみ。冷静に考えれば筐体の値段は高かったし、プレイ時間は『アウトラン』に比べて比較にならないくらい長い。インカム面から見ても入荷に二の足を踏むのは当然だったかもしれない。
しかし、どのゲームセンターでも人気は非常に高かった。百円玉は筐体の上に塔を築き、順番待ちする“置きコイン”の光景が見られた。ゲームセンターによっては“置きコイン禁止”の張り紙が見られたものだ。
●努力すれば道が開ける楽しさ
なぜプレイヤーにダライアスは愛されたのであろうか。一つには、易しい難易度が上げられると思う。もちろん数回でクリアできるほど易しくはない。しかし、今のカルト化したシューティングと違い、努力すればクリアが見える難度は、プレイヤーに希望を与えたものだ。誰でもうまくなれば20分程度は余裕で遊んでいた。それがインカムの問題にもなり、置きコインを産むことになった。
しかし、やりこめば良い思いができるという感覚は、まさにビデオゲームの本質的魅力である。それは、何度もプレイするだけでクリアできる軟弱なRPGとは決定的に違う深い満足感だ。それを多くのプレイヤーに感じさせてくれたのが、ダライアスだったのである。
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●サウンドと世界観の一体化
インカムの点では不利な、不必要に長い巨大戦艦の浮上シーン。まず、先触れとして浮遊機雷が出現。警告音と共に徐々に巨大戦艦は浮上し、その姿を明らかにしていく。そこで響き渡る荘厳なしらべとボディソニックの力強い鼓動には、心を強くゆさぶる力がある。
それは、音源が良くなるにつれてゲーム音楽が失っていった、原初的な感動をもった音だった。人を感動させるゲーム音楽とは、音源の良さでも楽曲単体の完成度でもない。優れたゲーム自体のシチュエーションと、それに適合した音色とメロディーラインなのだ。ダライアスは、それを強く感じさせるものだった。
●使いにくかったレーザーとウェーブ
決して難しくないダライアスだったが、初期バージョンではレーザーとウェーブに対する敵の耐久力が高かったのは有名な話である。そのため、ミサイルでクリアするのが定番となっていた。むしろパワーアップしてウェーブで戦うのは、マニアのステイタスとなっていたものだ。特にレーザーでピラニアを倒すのは独特のコツが必要とされ、クジラを倒すのはさらに困難だった。しかし、クジラでのウェーブでのドリル弾稼ぎは伝説となり、その後に発売された『ダライアス外伝』『Gダライアス』では、意図的に稼ぎが可能になっている。これはシリーズものならではの伝統の魅力といえるだろう。
●弾切れとの奥深い戦い
気付きにくいダライアスの特殊なゲーム性に、3画面による弾切れ現象がある。画面が長いので、自機から放たれる弾が画面上に表示される弾数は限られている。つまり敵を撃ちもらさないように、あらかじめ先読みして弾をばらまいておかなければいけない。
ダライアスでは弾切れに敵の特殊なアルゴリズム、地形のからみも相まって非常に深い内容になっていた。しかも編隊を全滅させたときのみ編隊ボーナスが入る。しっかりその腕が反映される点数システムになっていたのである。
●凄いゲームとはなにか?
ダライアスはゲーム性だけ見れば平凡だ。しかし、その凄さは狭義のゲーム性では語れない。その魅力はグラフィック、サウンド、ゲーム性、そして時代背景が一体となってかもし出されている。結局、プレイヤーはゲームによって心ゆさぶられる体験を得たいのである。それはハイレベルのSFXを駆使した映画を見て感動するのと似ている。
『グラディウス』で体験した、ちっぽけな地球でのせせこましい争いを超えた、宇宙でのめくるめく戦闘シーン。その夢を引き継いだのが『ダライアス』である。前例のない巨大な3画面、強烈なボディソニックと迫力あるサウンド、美しいグラフィックとデザイン。加えて、自分の実力でそれを体験できたという達成感が、その感動を倍加するのである。ゲームセンターという特殊な場所で、当時で最高の感動を与えてくれたのがこのゲームだったと思う。
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